ふたりは断罪黙示録 作:弐式炎雷
タイトル詐欺。それは序盤で満足してしまう二次創作にありがちな失敗。
この物語の主役が全然活躍しないように思われるが――ヒーローは遅れてやってくる法則にしたがえば別段、詐欺と言われる程のことは無い。
要は無理矢理にでも出番を作って戦闘させればいいだけのこと。
都合のいいイベントを見繕えばどんな莫迦でもそれらしいものは書けるものだ。
ペロロン「強引に事件を起こし続けた為に作中時間経過が三ヶ月という驚愕の作品があるそうな」
ブルー・プラネット「巨大な物体が来ているというのに余裕だね、ペロロン君は」
『インベリア王国』の新兵器か、と呟いたところで虚しいだけ。
とにかく、予想外の大物モンスターは視界の中でどんどん大きくなっていく。相対距離がそれだけ近いからだが。
そもそもアレは空を飛べない筈だ。
ペロロン「色は黒。黒いオーラも確認した。……普通の『
変異体などという雰囲気も感じられない。けれども序盤に居るわけがないのは
居てはいけないモンスターが居るということは現地に『アインズ』だの『アインズ・ウール・ゴウン』の関係者が居るのでは、と。
その仮説が正しいとなると今作は『リメイク』品になってしまう。けれどもそんな予定は組まれていない。
少なくともリメイクなど一つも存在しない。
ペロロン「……で、迎撃する? 二人だと火力不足だけど」
ブルー・プラネット「ここは素直に主役にやってもらおう。タイトル詐欺、駄目絶対。という気持ちで」
ペロロン「……我が
姿だけならとてもかっこいい。――背中に赤い
ブルー・プラネット「……〈
勝手に戦闘を始めようが自己責任である。
分別のつかない子供ではない。だからこそ彼が何をしようが止める気は無いが主役を無視するのは頂けないと判断しておく。
仲間に連絡している横で攻撃を開始したペロロンチーノの様子を伺い、実況など忙しくなってきた。
いくら高レベルプレイヤーとて耐久力が高いモンスターを数発で撃滅できるはずもなく――
長期戦は当たり前。
元より倒しきれるとも思えないし、どうして飛んできたのか、原因を探ることも大事である。
それらを全て台無しにする
魔法の矢が何発も目標モンスターに当たるのを確認。しかし、面白いように掻き消される。
当たってはいる。あまりの頑丈さで折角の攻撃が小石をぶつける程度にしか見えないだけだ。
擬音としてはボスッボスッというくぐもったもの。
ペロロン「……えー。少しは効いた振りとかして動いてくれればいいのに」
ブルー・プラネット「正に豆鉄砲。折角の
ペロロン「……まあいいや。そろそろ撤退します。……というかアレ。俺達を狙ってる? そうじゃないなら村の方を優先させた方がいい?」
ブルー・プラネット「……その前にシャルティア。よろしく頼むぞ」
シャルティア「
ペロロンチーノの背中に乗ったままシャルティアは魔法を行使する。連絡は彼女にも届いていた。
これは別に都合の良いイベントではない。
流れ作業のように連絡をした結果である。
地上に魔法によって生み出された門が出現し、黒い山羊の人型モンスターと白銀の
本当なら二人よりも多くの仲間も現れればいいのだが、かの二人が主役なので見せ場を作らないと事態が進みそうになかった。*1
もちろん、不利を感じれば彼らとて
たっち「……おお、本当に
ウルベルト「でも、普通の奴ですよね。……普通というか特殊召喚のまま」
ブルー・プラネット「我々は村の探索に行くので、そのモンスターはお譲りします」
上空からモザイクモンスターが声をかけた。それに対し、たっち達は上からとは思わなかったのか、辺りに顔を巡らせていた。
声質によってはすぐ傍で聞こえる。このように彼らの聴覚は通常の人間より優れている為、このような現象を起こす。声
たっち「上か……。了解しましたー」
ウルベルト「……やっとと思ったら巨大モンスターとの戦闘……。もしかしてこういう役回りでしょうか?」
たっち「それぞれ役が決まっているなら従いましょう。抵抗すると無駄な脇道ばかり増えてしまいます」
ウルベルト「そうですね。では、……少し運動をしましょうか」
ペロロンチーノの攻撃をものともしなかった巨大モンスター『
胴体が地面にぶつかったので着地のようには見えなかった。
一〇メートルという巨体は目測だと小さく見えるのだが三階建ての一軒家ほど。それが猛烈な勢いで落下すれば結構な振動が発生する。
ただ、アニメだと距離感が狂い、このモンスターがとても巨大に映ってしまう。
しっかりと測れば常識はずれな大きさにはならない筈である。そこは技術者の不備か、それとも発注ミスか。
全身が黒く、同じく黒いオーラを漂わせる巨大モンスター。
現れた様子から自分で飛んできた、というよりは何者かに吹き飛ばされてきたような感じだ。
ペロロンチーノの攻撃であれば逆方向に飛んでいなければ方向的におかしい。よって、彼の攻撃よりも強い衝撃が加えられたと考えるのが一般的である。
では、その攻撃をしたのは何者なのか。
たっち「……という説明だとこのモンスターを攻撃するのは間違いに聞こえますね」
ウルベルト「本当の敵は別に居る。というパターンでしょうか。月並みですが嫌いではありません。さあ、出てこい。随分と尺を取られてしまったのでここらで活躍しないと次が無い気がしますから」
ダイスを振った目によって与えられるダメージが決定する。その際――
そんな概念はこの世界には無い筈だ。どこのTRPGだ、それは。
たっち「……地の文同士で喧嘩しないでください」
ウルベルト「……細かいルールなんか頭に入らないし、覚えていられる人は少数。だから日本で流行らないし、動画も少ないんだ。あったとしても●●とか●●●●関連ばかりだし」
ファンタジー要素が無く、原作の雰囲気が掴めない。
ルール的には間違っていない筈なのに受ける印象が違うだけで面白さが変動するのは
ウルベルト「……絶賛飛翔中のあのモンスターのACってどのくらいでしょうか? 相当ありそうなものですが……」
たっち「四〇以上かな」
数字だけ提示されても読者にはさっぱり理解できない。
何かに例えてもらわないと――*4
どの道、
たっち「かなり硬い
無駄話しをしつつ迎撃体制に移行する白銀の騎士。
まずは飛び込んでくる超大型モンスターをいなす。
――と文章で書くと簡単にやってのけてしまうのが玉に瑕。実際にはそんなに簡単にできるわけがない。
想像と現実は違うのだから。
無数の触手が乱雑に蠢く状態で飛んでくるモンスターを剣と盾で捌ける筈がない。すぐに判断を下し、隙の大きい部分を見定め、突貫する。
ウルベルトは上空に避難する。――彼は
たっち「……うーん。この勢い。大きさ。感じ方が違うのか……迫力がある」
そう言いつつも最小の動きで
慣性の法則に従えば触れる事自体が無謀。ついでに摩擦熱も考慮してほしいところだ。
ただ、感触として剣がぶつかる時の反動が少ない。盾に当たる時は確かに衝撃が来るのだがしっかりと防御できている。
それは相手に攻撃の意思が無かったからか。いや、それだけでノーダメージなどあり得るのか。
空中に居るウルベルトは上空への進出に対する空気圧や息苦しさがあるかどうかを分析する。モンスターは二の次だ。
飛距離が短いから何とも言えないが、と内なる心で独白する
重力や様々な重圧は無く、強風ではないから分からないが体感的な風の強さも気にならない。
上昇負荷が無いのか、と疑問に思ったり――
ウルベルト「結構な勢いで飛んだら血流が狂うのがお約束の筈……。つまり物理現象が無効化されている? 法則の無効化だとすれば摩擦熱も無しって事ですか? まさか……」
空気圧などが無効化されていれば宇宙に出たり入ったりすることも容易となる。
さすがに大気はあるはずだから窒息しないと説明がつかない事がある。
眼下に広がる大地は紛れもない星だ。それが存在しているという事は無視できない法則がある。それを無効化するとどうなるのか。
重力の強い場に向かって移動を延々と続ける。
星は大きな天体の遠心力に捕まって公転軌道を取る。そしてそれは立派な物理法則だ。
生物が生物足りえる理由の一つである『大気』の存在も当然無視できない。
いや、無視してはいけない問題だ。
植物が育つのは何故か。
日光があるから。大地に栄養があるから。微生物が存在しているから。
ウルベルト「……そんなものゲームにあるわけがない」
大気はある、というのは説明文だけだ。実際に大気までデータに組み込めるはずがない。
出来るのは数字の移動だけだ。まして、本物の大気をどうやってゲームの中に取り込む。
仮想空間の中に。
プレイヤーはあくまで脳内で感触を味わっているだけで実際に窒息死などしようものなら事件である。餓死も同様に。
考察をしている間、たっち・みーは脇に逸れたモンスターを一瞥する。
多少は動いているようだが勢いよく起き上がって攻めてくる気配は感じない。
たっち「……序盤でこのモンスターと出会うとは……。中々に歯ごたえがあってよろしい」
ウルベルト「後でブルー・プラネットさんに叱られそうですね」
巨大モンスターが突っ込んだ場所は雑木林。ちょっとした災害が起きていた。
毒液を巻き散らすモンスターであれば大急ぎで修復しないと確かにブルー・プラネットの激怒が確定してしまう。
自然を破壊する者は仲間でも容赦しない。
第六階層の壁のデザインにふざけた事をしようとすると威嚇してきたほどだ。
たっち「……マーレ。後で指定した場所の修復をよろしく頼むよ」
仲間の雷が降り注ぐ前に手を打つ聖騎士。
全てに対応していると無駄に時間が無くなってしまう。正義と言えど出来ない事は自覚している。
人はこれを『適材適所』と呼ぶ。
たっち「このモンスターが問題の強敵……という雰囲気ではないですね。ということはまだ居るというわけだ」
ウルベルト「どう見ても普通ですから。丁度、飛んできた方向に道が出来てます。行きましょう」
異世界らしい化け物が居て
異世界サイコー。
予想の一つは『ワールドエネミー』と呼ばれるイベント専用のボスモンスターだ。
ゲーム会社が設定した数は三二体。しかし、その中に
歩き出してすぐに気づくたっち。
自然な会話の流れで頼んだもののマーレの魔法などで現地の大地が再生するものか、と。
自分達はゲームによって設定された存在だ。その能力も。
であれば荒唐無稽な魔法という概念で出来る、と思う方がどうかしていないか。
空は飛べてもいい。しかし、現地の物質にどれだけ干渉できるのか――
ウルベルト「そういう所を気にする二次創作は……、一人か二人くらいしか居ませんよ*6」
たっち「本筋にしか興味のない読者のための二次創作ばかりですものね。こういうところを
しかし、転移して目的地に向かおうとするタイミングを見計らったかのように
そもそも都合よく事件など起こるものか。自分達の周りばかりに、と。
たっち「はー、きっとネタが浮かばないから事件で誤魔化す手法ですね。全く想像力の欠如した二次創作だ」
ウルベルト「……そうしないと話しが進まないから仕方がありません。自然な流れのまま進めるのは結構大変ですよ。まず転移自体を否定したら……、我々の存在価値が無くなります」
たっち「……所詮空想の産物ですよ」
ウルベルト「……それを言っちゃあ……おっと、月並みな言葉が自動で……」
会話しつつも歩き続けている。
互いに話し終わるまで待たなければならないのは文字の世界の功罪ともいえる。しかし、同時であれば実に見にくくなってしまう。
重なりを防ぐ上で色々と妥協しなければ小説として成り立たない。
それよりも徒歩だとやはり目的地まで遠く感じるな、と。
ウルベルトは飛べるがたっちは地道に駆け足で行くしかない。魔法のアイテムを使えばいいかもしれないけれど――
たっち「……面倒くさい。単なる平原より瞬間移動がいいです」
ものの数分で諦める聖騎士。
長距離移動はゲームの中でも辛い。出来れば道中に色々なモンスターが蔓延っていてくれればいいのに、と愚痴を垂れる。
どこか子供っぽい。そんな一面も無いとは言えない。
初めから終わりまで堅苦しいままではゲームを楽しむどころではない。だからこそ息抜きは必要で、精神の癒しが無ければ人間としても保てるはずがない。
久方ぶりの外。それも青空。
両手を空に向かって伸ばしてクルリと一回転しても叱られることは無い。
ウルベルト「……それだとミュージカルですよね」
たっち「音楽に乗せて……。出来ればケチャは勘弁してください」
ウルベルト「今は不穏な音楽が似合いそうなんですが……。音のない文字の世界では迫力に差が出ますね」
スキップしながら進むたっちと直立不動の姿勢で――しかも空中で――進むウルベルト。
そんな絵面をアニメで映したら爆笑ものなのに。
なんだその紙芝居――
たっち「……オバロらしくない何かですよね」
ウルベルト「……地の文にも声優を起用すれば面白いのに。●●なんとかさん*7か、●●さん*8あたりがいいでしょうか。どちらも渋い声で楽しそうです」
たっち「もう一人の●●さん*9は声の勢いが強いですから、そちらはアニメ版オーバーロードの
しばらく平原移動しか無いので。場繋ぎですよ。
それともワープ三昧がいいですか。読者の対象年齢が一気に小学生レベルまで落ちますが。
たっち「それより適当なモンスターを出してほしいです。戦闘シーンをいっぱいプリーズ」
ウルベルト「序盤で極大スキル使ったら後半何もできなくなりますから、軽いジャブ程度でいいです」
その要望に応えるかのように――ご都合主義らしく――雑木林の奥から野生のラナー*10が十体現れた。*11
金髪碧眼の見目麗しい筈の少女は野生化の影響からか、見た目は
討伐対象の難度は二〇程度。
野生のラナーA「ごきげんよう」
野生のラナーB「ごきげんよう」
野生のラナーC「ごきげんよう」
野生のラナーD「ごきげんよう」
野生のラナーE「ごきげんよう」
あまり書き過ぎると文字数稼ぎと見做されるので表記は五人程度に留めておく。
全く同じ姿勢で横に一〇人並ぶ野生のラナー達。まるでアニメの設定画をコピペ*12したような安易な画風。
誰か一人くらい違う動きを見せるかと期待したが、画一的なクリーチャーに個性は無いようだ。
たっち「……こういうシュールな絵面……、古いゲームによくあったなー」
新しいゲームはモンスターが喋るようになると最初は感動するものだが後半になるとそれすら煩わしく感じるようになる。
結局RPGというのは単純作業。経験値とアイテム以外に興味が無くなり、次いで現れたオンラインゲームではアップデート待ち以外にやる事が無くなる。それと人間関係は大抵悪くなる。
実際ソーシャルメディアは歯止めが利かない程やりたい放題。都合が悪い時に使われる『言論の自由』も蛙の面になんとやら。規制だけが厳しくなる。
プレイヤーはそれでいいのかもしれないが
つまり
現れたクリーチャーも設定されたデータに忠実なだけで行動に疑問視することは無いし、それ以上の発展も無い。
おかしいだろ、と言われてもなにがどうおかしいのか、理解することなく繰り返していく。
ウルベルト「……そんな生き方を絶賛社畜魂で我々も来たんですけどね」
たっち「朝何時に出勤。午後何時に退社。夕飯を食べて就寝。……そのサイクルを死ぬまで繰り返す」
ウルベルト「うわぁ! やめろよ! もっと自由に生きたいからぁ!」
野生のラナーCは『キュアイーリム=ロスマルヴァー*13』を召喚しようとしています。
野生のラナーDは身を守っている。
野生のラナーGは花に夢中だ。
野生のラナーJは『
たっち「……Cは失敗判定にならないのか?」
ウルベルト「レトロな効果音が郷愁を誘いますねー。……なんでしょう。ヒーリング音楽でもないのに」
たっちの理不尽な攻撃。デデデン、ザシュ。ラナーAに一〇ポイントのダメージを与えた。
ウルベルトの攻撃。パワワン、キュッ。ラナーGは華麗に
ウルベルト「ちょっと待って。格闘系? しかも
たっち「私……何もしてないのに……」
ウルベルト「でも、攻撃時の効果音……ちょっといいですね」
野生のラナーCは両腕を空に向かって伸ばし、何やら呪文を唱えだした。彼女の足元には七つの光り輝く『死の宝珠』が。
たっち「違うモンスターじゃん!」
野生のラナーC「ギャルっ!」
たっちは野生のラナーCの顔面に飛び蹴りを食らわせた。野生のラナーCは一〇八ポイントのダメージを受けた。首がもげ――
画一的なクリーチャーの筈が生々しい死に方をした。経験値〇.一を入手*14。
元々悪属性のようなクリーチャーなのでたっちの
一人が死体と化したのにそこに何も存在していないかのように微笑む野生のラナー達。
確かにゲーム的だ、とたっち達は思った。
その後、暢気に遊んでいる暇は無いと気づいて、サクサクと野菜を収穫するようにラナー達の首を撥ね飛ばす聖騎士。元より異形種なので罪悪感はそれほど感じない。
ウルベルトは『
――その結果が地獄絵図。
生き残りのラナー達に高火力の炎の塊が襲い掛かる。
野生のラナーF「ぎぃやぁぁ!」
野生のラナーG「ぎぃやぁぁ!」
野生のラナーH「ぎぃやぁぁ!」
野生のラナーI「ぎぃやぁぁ!」
野生のラナーJ「ぎぃやぁぁ!」
ウルベルト「……物凄い叫び声ですね。声優さんも頑張りますな」
たっち「機械音の設定ミスってこともありますよ」
服を焼く程度だと思っていたら思いのほか強すぎた。
服だけ焼いたら裸が見えるかな、と期待していた。結果としてはヌードはヌードになった。ただし、肉が
クリーチャーを全滅させたことを意味する華やかなBGMが流れた。
どう考えても殺戮現場にしか見えない状況で流れるには場違いなほど明るい。
あと――こんなことをしている場合ではなかった。目指す村まで後少し――