とある世界の再世神話 作:ひとちゅら
――良いかい
教え諭すような口調で、それは語る。
その音は
自由に選ぶことが許されたなら、誰もその
――“
だが、彼はそうすることが出来なかった。
何故ならそれを聞かされている
彼は今、『学園都市』のとある研究所に囚われている。
――そして“
世界に冠たる『学園都市』。
それはただ教育機関を中心にした、地方都市の俗称ではない。
極東にあってその姿を「玉を掴んだ龍」と謳われた日本列島。その一角にある小国の名だ。
名目上は日本国に属するものの、既に司法、立法、行政の三権も、また自衛のためと称した独自の戦力も有するそこは、各国から独立国と見做されるだけの力を有していた。
――故に“
その力とは「世界各国の数十年先をゆく」と目される科学技術。
そこではその力と地位を維持するべく、間断なく様々な実験が行われていた。
中には当然のように、国際法や数多の条約に違反するようなこともあった。
もちろん秘匿されていたが、
まさに異常の都であった。
――巨大な力。
まるで中世の城郭のように外周を高い塀で囲われた『学園都市』は、統括理事会という自治組織によって運営されている。
その力は異常なもので、名目上の主権を有する日本の経済力を世界第一位に押し上げ、軍事力においても推測ながら世界最高の
――誰にも敵わない力。
『学園都市』の外では未だ仮説すら立っていないような科学分野での発見が、ここ『学園都市』では既に技術化されていた。
外ではようやく研究の端緒が見えたばかりの技術が、『学園都市』では低コスト化を実現して民生品に使用されているも少なくない。
現行人類の持つ科学を超えた科学、すなわち超科学は間違いなく力である。
――戦おうなどという考えすら浮かばない。
その力が始末におえない点は、超科学というものが複合的な条件によって力を発揮するということだ。
それはただ兵器を奪い取れば済むというものではない。
効果的な運用には膨大な実験と実践という蓄積が不可欠だ。
それらを欠片でも手にしようとするなら、『学園都市』を敵に回すという無謀に舵を取るより、彼らからその叡智を譲り受けたほうが、安全で手っ取り早い。
――それが悪魔だ。
しかも『学園都市』は、領土の狭さに反比例して度量が広い。
誰も彼らを敵にしようなどとは考えていなかった。
――そしてもう一つは、まあ、君らのような超能力も、埒外の力であることには違いない。
『学園都市』が専有する最たる技術は超能力。
科学によって迷妄の彼方へと追いやられた魔術に変わり、
――つまり君は既に半歩、悪魔の側に立っている。
それらは通説どおり、多感な少年少女の精神性を必要とするものだった。
――まあそういう意味では、この学園都市に暮らす学生たちも同じなんだが。
ひとりの人間にはひとつの超能力が秘められている。
それを科学技術によって引き出し、鍛えるのが『学園都市』が
――だからな少年。
日本人離れした彫りの深い顔立ちの男が、色素を持たない幼子の頭に手をやり、教え諭すように語りかける。
――埒を知ることだ。法を知ることだ。理を知ることだ。力を得よ。知識を得よ。この世のコトワリを得よ。そうすれば君は君を縛る
嗄れた声の主は、身動き一つ出来ない幼児の両頬を掴んで口をこじ開けさせると、そこに芋虫のようなものを流し込んだ。
抗うことも出来ず、口腔から喉、食道、気管、肺そして胃に至るまで、体の内側を
未だ外見からは性別もわからないような幼児が、唯一多少の自由を許された頭部を前後左右に振り回して嗚咽し、苦鳴を上げるが、それを見下ろす何者かの表情は穏やかで、楽しげですらあった。
──そして君は、君になることが、できるはずだ。