【掌編集】ビー玉と石ころ~艦これその他盛り合わせ~ 作:T・G・ヤセンスキー
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「龍田の机の上で見つけたノート……見ちゃいけないとは思いつつ、つい開いちまった」
「……なんだあいつ、ポエムなんか書いてんのか。……いつもいじられてばっかだからな。……ふふふ、この機会に、あいつの弱みを握ってやるぜ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
――もう好きと思った。
蒸し暑く風のない夜
窓の外の街灯が室内を照らす
背を向けて眠る男のうなじに
汗の球が浮かんでいる
それを見ながら
もう好きと思った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……恋の詩か?なんだなんだあいつ、乙女じゃねぇか、たまんねぇなァ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
男の肌からは
すえた汗の匂いが微かに漂い
昏い欲望を掻き立てる
男を起こさぬように
目覚めさせぬように
首筋にそっとくちづける
淀んだ室内の空気よりも
なおも熱く湿った男の肌
その肌の上ににじむ汗の匂い
肌の下を流れる血流の温度
男を起こさぬように
目覚めさせぬように
男の肌にしるしをつける
これはわたしのものだと
わたしだけのものなのだと
所有者のしるしを男に刻む
たぶん朝には消えてしまうだろう
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……これ、ひょっとして提督のことか?まさかな……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
このまま男が目覚めなければいい
目覚めれば 男はきっと私を叩くだろうから
男はいつもわたしには乱暴で
わたしが近寄ろうとするとひどくぶつのだ
だからわたしは眠る男にくちづける
このまま男が目覚めなければいいと思いながら
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「あの野郎! 龍田になんてことを!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そして欲望は加速する
汗を啜っていたはずの口が
いつしか肌を喰い破り
流れる血潮を吸い上げて
鉄と塩、あなたの味を口の中に満たす
喉の奥に流れ込み
腹の中に溢れかえり
身体全てに男の温度が行き渡り
互いの身体の境界が曖昧になる
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……」
「フフフ……なにこれ怖い」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
このまま目覚めなければいいと
わたしを叩くことがなくなればいいと
そう思いながら そう感じながら
――もう好きと思った。
――もう、すきーと思った。
──モスキート思った。
P.S.
やっほ~、天龍ちゃん~?
ちなみにモスキートって、蚊のことだからね~?
あと、人のノート勝手に読んだりしたらだめよ~?
龍田より♪
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ダジャレかよっ! そんでまた騙されたああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
Fin.
※こんな感じの小ネタが多めです