【掌編集】ビー玉と石ころ~艦これその他盛り合わせ~ 作:T・G・ヤセンスキー
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身体の上にかかる重みに、ふと眠りから覚めた。
重いまぶたを薄く開けると、見知らぬ女と目が合う。
……誰だっけ。
頭がぼうっとして、状況がよく呑み込めない。
女はにんまりと笑みを浮かべ、私の下腹部からへその方へ、そして腹から胸へと、ゆっくりゆっくり、にじり寄ってきた。
必要以上に身体を密着させ、まるでナメクジのようにずりずりと、私の上を這い進んでくる。
……誰だったっけか、この女。
……ああ、眠い。意識がはっきりしない。
……私はまだまだ眠りたいのだ。
胸の位置まで達した女は、そこで私に向かって、また笑みを浮かべ。
お名前は? と尋ねた。
……なんだ。この女。
名前も知らない相手の身体にまたがって。
……しかも、それは私の身体だ。
……頭がぼうっとする。
……ああ、眠くてたまらない。
口を開いて名前を告げようとしたが、どうもうまく声が出てこない。
くぐもった声が低く漏れたような気もするが、ちゃんと発声できたかどうか、自分でも定かではなかった。
「……○○△? あなた、○○△って言うのね?」
不自然な程に明るく楽しそうな女の声が聞こえたような気もするが、自分の事を女がなんと呼んだのか、それさえもはっきりしない。
くぐもった声で再度名乗ろうとしたような気もするが、自分の声がちゃんと相手に届いたのかどうか、意識がどうにもぼんやりしている。
「……○○△♪」
「……○○△♪」
歌うように女が呼びかけて来るが、霞がかった私の意識には届かない。
……私は、眠りたいのだ。
……ああ、それなのに。
女は私にまたがり、私の上に寝そべり。
しまいには、図々しくも私の上でまどろみはじめた。
……なんなのだ。この女は。
……私の方が眠りたいのに。
かすかな苛立ちも感じたが、それよりも今はただ、眠たくて仕方がない。
胸の上に女の重みがかかっている。
息苦しいというほどではないが、どうにも気になってしまう。
……私は、眠りたいのに。
胸の上に、女の身体のぬくもりを感じる。
規則正しい寝息のリズムとともに、女の背中が上下する。
吸って、吐いて。
また吸って、吐いて。
いつしか、女の重みは意識から薄れ。
私自身も、まどろみの中に沈んでいった。
……この女が何者なのか。
……私のことをなんと呼んでいたのか。
……今はもう。
それもどうでもいい。
……私は、眠りたいのだ。
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──以上、映画『となりのトトロ』の中でメイに乗っかられている時のトトロの気持ちでした。
Fin.
※イメージというかモチーフは五月病マリオの人の有名なあのトトロ画像