《紅魔館内にて》
「ああー!ああー!」
突然起き上がった虚は、赤子のような奇声を上げながら、どこからともなく取り出した黄金狂で魔理沙に殴りかかる。
「あぶねっ!?おい!どうしたんだよ虚!」
「ううううー!えあー!」
魔理沙の声がまるで聴こえていないかのように、今度は背に悪魔の翼を生やして飛翔し、全身を紫色の服で包んだ少女・・・パチュリーに飛びかかる。
「危ない!避けろ!」
そう魔理沙が叫ぶも虚しく、パチュリーは黄金狂にミンチにされる寸前で魔法を使う。
「チッ・・・流石にやばいかも。こぁ」
「は、はい!」
パチュリーの呼びかけに応じて、小悪魔が彼女の腕を支え、魔力を分け与える。
「いいいいいいいいいいいいい!!!」
なんとか虚の攻撃を防ぐことに成功するも、またも赤子のように急にそっぽを向き、全く別の方向に飛んでいく。
「ふぃー。なんとかなった・・・のか?」
魔理沙がそう呟いたのが先か、はたまた悲劇的事象が起こるのが先か。次の瞬間、おびただしい量の鮮血が飛び、その場にいた者の服を汚し、赤いカーペットに吸収されていく。
「あ・・・ああ、あ・・・」
「・・・そんな」
「うううああああああ!きゃああああ!きゃあああ!」
そこには、変わり果てた姿の、フランとレミリアが、虚に心臓をえぐられた状態で転がっていた。
そこには、血を浴びて欲しかったものを手にした赤子のように喜ぶ虚の姿があった。
「嘘だろ・・・?こんな・・・こんな・・・」
「お嬢様・・・妹様・・・」
「・・・みんな、これは夢よ。私達は夢を見させられてるんだわ」
ふと、パチュリーがボソボソと世迷言を吐く。
「でも、お嬢様と妹様は・・・」
「違う!だっておかしいじゃない!?レミィ達は吸血鬼、最も強く、賢い存在の筈なのよ!?じゃあやられるわけないじゃない!?」
「・・・」
あまりのパチュリーの変貌の具合に、残された二人が顔を見合わせる。今まで彼女達は、血の流れる戦いというものを、知識で知らなかったためだ。確かに弾幕ごっこなどでも怪我はするし、少しでも力加減を間違えればそれこそ死に直結するものだってあった。しかし、彼女達はこの『凄惨な死』という光景を知らなかったのだ。
遂に、残った二人も、狂気の世界に囚われ始める。
「あぁ・・・もう、終わりだ・・・ハハハ・・・」
「死んだらお嬢様に会えますように・・・会えますよね?」
そして、完全に現実から逃げた三人は、無残に首、腕、その他諸々を引き千切られた状態で紅魔館の跡地に捨てられていた。
そこからの幻想郷は終わったも同然であった。虚は手当たり次第に目に映ったものを殺して回り、僅かながら人間の住んでいた集落が幻想郷から消えるまでは二日もかからなかった。幻想郷中の力あるものが束になってかかったが、一瞬で肉塊と化した。挙げ句の果てには幻想郷の管理者ですら八つ裂きにされ、最後の希望であった筈の博麗の巫女まで全身の骨を折られて死んでいた。
もう、ここは、瓦礫の山の肉塊の海、そして訳の分からないものがあるだけのディストピアでしかなかった。
書いててボソって言ったこと
「最近病んでんのかねぇ・・・」