東方影住録   作:ツメナシカワウソ

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夏期課題が鬼のように出されました。コツコツやってきます。投稿もコツコツやってきます。


第23話『昔話と魔王と憧れと』

《博麗神社周辺にて》

よぉ。お前さん方と千夜住の言うところの『新キャラ』の灰徒だ。俺は今知人の千夜住が厄介なことに暴走してるからソイツをなんとかするためにこの世界で力のありそうな霊夢とかいうヤツに止めさせることにした。

まぁ、その前にも紅い霧が出てたりしてたが、生憎ソッチを止めるのは俺の役目じゃない。というわけで、問題の千夜住がいるトコまで霊夢を運んでやったまでがお前さん方の言うところの『前回までのお話』。じゃあ、今回のお話を始めるぜ。

 

俺は能力で霊夢を千夜住のトコまで飛ばした後、力を貸してやるついでに仕込ませて貰った霊夢自身の妙な道具を起動する。

 

「あー。あー。聞こえるか霊夢?こちら灰徒だ。聞こえたら返事してくれ」

 

『灰徒!?なんでアンタの声が!?』

 

おーおー戸惑ってる戸惑ってる。が、からかっている場合じゃないことぁ常人ならわかるだろ。と、言うわけで、霊夢には悪いが詳しいコトはカットの方向で行く。

 

「細けえコトぁ気にすんな。それより、ソッチに千夜住がいるだろ?ソイツの眼と髪の色に注目しろ。千夜住は能力を使う時に一瞬眼の色が左右で同じになる。その隙に衝撃を与えりゃ、今度ぁ髪が白色になる。更にもう1発加えろ。後はその都度説明する」

 

『・・・わかったわ』

 

「ものわかりが良くて助かるね。じゃあ、頼んだ」

 

俺はそれだけ言うと、更に仕込ませて貰った監視カメラを起動する。只のカメラじゃない。見たい方向をしっかりと映してくれる有能なヤツだ。要は・・・アレだ。アレ。VR。まぁいい。兎に角、ソレを起動すると俺の視界が二つに割かれる。一つは今立っている場所。もう一つは千夜住とその他がいる場所。片方の目の前に千夜住がいる。予想通り赤ん坊の如くきゃあきゃあ言いながら馬鹿の一つ覚えみてぇに突進してらぁ。それに対して霊夢以外のヤツらは全員戦闘不能か。情けねえ。かくいう霊夢も劣勢としか言いようがねぇし、ここのヤツらは全員弱いのか?まぁ、アイツが強すぎるだけな気もするが。だが、流石にこれでは霊夢が殺される可能性があるから、サポートでもしてやるかな。

 

「ハァ・・・しゃあねえ」

 

俺は一瞬愚痴を零すと、霊夢にしてやったように千也住のトコまで飛んだ。じゃあ、俺は千夜住ほど器用じゃねえから、他のヤツに『ナレーション』とやらをやってもらうぜ。

 

 

《紅魔館内にて》

「ぎゃあああああああ!!ああああああ!!」

 

「よぉ霊夢さんよ。助けに来てやったぜ?」

 

「はぁ・・・はぁ・・・なんで、此処に?」

 

「あー。まぁ、強いて言うなら千夜住をなんとかしねぇと俺が面倒な生活をすることになるからだな。背中の触手ハッキリ言って邪魔だし、収納出来るようにアイツにしてもらう」

 

突如現れた灰徒に、赤子のように暴れまわる虚が気付き、悲鳴のようなものをあげる。

 

「おー。怖いか?俺が怖いか?怖いよなぁ?だってこんな姿なんだからなぁ?」

 

「からかってる場合じゃないでしょ!早く虚さんに攻撃を!」

 

そこまで霊夢が言ったところで、灰徒が腕で制す。

 

「まぁ待て。アイツの精神状態は子供そのものだ。今はアイツが新たに能力を使うのを誘発させることが優先だ。その為にはアイツを挑発し、消耗させんのが手っ取り早い。お前さんは後ろで待機だ。いいな?」

 

霊夢は黙って頷き、後方へ引き下がる。

 

「あ、そうそう。ついでに教えとくよ」

 

「・・・何?」

 

霊夢が聞くと、灰徒は残酷で、妙に美しさを感じさせる笑みを浮かべる。

 

「俺の能力さ・・・【魔王】ってんだ。危険だってのはわかったろ?巻き込まれねぇようにしろよ」

 

灰徒は次の瞬間、身体から黒い澱んだモノを放出する。

 

「IT’S・・・SHOWTIME‼︎!!」

 

部屋の隅々まで、灰徒の声が響き渡る。それは、これから始まる逆転の合図であった。灰徒は虚に向かって、彼女(彼?)と同じようにどこからともなく取り出した禍々しい剣で斬りかかる。

 

「!?あぐ、ぐうう!??!」

 

「ハハァ!痛えか!ガキがよ!さっさとくたばれぇ‼︎」

 

なんと、虚はそれを避けることが出来ず、肩に命中し、血のような赤いナニカが噴出する。それを見向きもせずに灰徒は攻撃を続ける。だが、この程度でやられる程虚も弱くはない。手にした黄金狂で剣を弾き、大きく後方へ跳ねる。

 

「バァァカ‼︎俺は全距離が間合いなんだよ‼︎」

 

だが、その抵抗も虚しく、灰徒が打ち出した火球に容赦なく焼かれる。

 

「【炎神イフリート】の地獄の業火を弾にしたが・・・成る程、悪くぁねぇ」

 

「いぎぎ!?ぎひいい!!!」

 

特に炎を受けた虚の右腕は最早原型を留めていなかったが、灰徒はそれを待っていた。

 

「ふー。ふー。ふー・・・」

 

虚が再生能力を使う。その一瞬を、霊夢は見逃さなかった。

 

「灰徒‼︎」

 

「ああ!やれ!」

 

灰徒の叫びが先か、将又それが先かはわからないが、霊夢の放った弾幕が虚を貫き、髪が白へと変わる。

 

「逃がさねぇ!」

 

灰徒がそこに追撃を加えると、二人は謎の光に包まれ、意識が無くなっていった・・・

 

 

《?????》

 

「うう・・・ここは?」

 

全てが闇に包まれた空間で、霊夢は目を覚ます。

 

「あー。やっと起きたよ。いいか?ココだと余り長い時間意識を手離すとヤバイコトになりそうだ。だからココでは絶対寝るな」

 

「・・・わかったわ。それで?一体此処は何処なの?」

 

寝耳に水なことを言われながら、霊夢は灰徒の話を聞く。

 

「多分だが、千夜住の頭ん中か心ん中のドッチかだな。いやぁコレぞ正に一寸先は闇だな」

 

「それはいいとして、なんで虚さんの心はここまで暗いの?あんなに明るい人なのに」

 

「あー。んじゃまぁ、アイツの事情でも話してやるとするかな。ソレ聞いてりゃ理解出来るさ。多分・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔々のお話。一人の少女がいた。名を仮に『由奈(ゆな)』とでもしておこう。由奈は何をやっても人より劣り、それ故にいつも爪弾き者だった。だが、由奈は人には見せていない才能があった。ソイツぁ文才だ。彼女の書く小説はかなり面白く、俺も読んだが芥川賞・・・まぁ賞状ぐらい余裕なんじゃねぇかって思った。だが、それを周りは良しとせず、ついに由奈へのいじめ・・・集団での精神的、及び肉体的な被害を与える行為が勃発した。彼女はそれに耐えきれず、自分の書いた小説と共に、海へ落ちて死んだとさ・・・

 

ってのが、前の世界の千夜住 虚(アイツ)さ。そんで、気づいたら自分の書いた小説のキャラになってて、自分の知ってる幻想(二次元)の力が使えるようになってたってワケだ。でもまぁ、色々と精神的なダメージとか、環境の変化云々が重なって、暴走したんだろうよ。心か頭が空っぽなのは、衝撃で忘れたんじゃなく、俺らの攻撃で思いが流れ出たからだ。アイツの能力の源は

アイツの幻想(二次元)への憧れだ。だがソイツぁ自分がソレを使ってくごとに薄れていく。しかし強すぎる憧れはまたすぐ湧いてくるから、一瞬の間に二撃を負わす必要があったってワケだ」

 

「・・・成る程ね」

 

「さぁて。いよいよこれからだぜ。虚を救い出す」

 




さて課題の時間だ(絶望)

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