東方影住録   作:ツメナシカワウソ

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最近急にシリアスが書きたくなったので書きます。


第26話『巫女様強化計画』

《博麗神社周辺にて》

月が輝き、草木も眠る丑三つ刻。霊夢は灰徒に呼び出され、宴会もそこそこに、博麗神社周辺の森に連れてこられた。月が出ているとはいえ光がほぼない分、相当歩きづらかったが仕方あるまい。

 

「・・・で、なんなのよ?こんな時間に呼び出して」

 

「あぁ。悪いな。ちょいと俺がやろうとしてることに関係あるんだが・・・その前に一つ聞こうか」

 

その言葉と共に、灰徒の不気味な笑みが消え、彼のまるで刃物のような眼光が霊夢を突き刺す。

 

「お前・・・何故アノ時本気を出さなかった?」

 

「あ、あの時って何よ?」

 

「とぼけんじゃねえ。千夜住の野郎が暴走した時だよ。俺が行かなかったら確実にアイツはお前を殺したぞ?なのにお前は本気を出さなかった。ソレは何故だって聞いてんだ」

 

確実にさっきまでとは雰囲気が違う、凍てつくような冷徹な声で灰徒は霊夢を問いただす。

 

「それは・・・虚さんをなるべく傷つけないようにするためで・・・」

 

「チッ・・・そうかよ。まぁいい。お前が嘘を吐くってんなら、こっちも手がある」

 

そう言うと灰徒は何処からともなく、妖しい光を放つランタンを霊夢に向ける。すると霊夢の後ろにランタンの光で影が出来る。その影はなんとも、なんとも醜い色をしていた。

 

「見ろ。コレがお前の隠し持っていた醜い部分だ。普通の人間ならココまで汚れねえが・・・まぁ、あとはお前らで話しやがれ。俺は見物する」

 

灰徒は三歩下がって霊夢の方を向いて胡座をかく。

 

「ちょっと!これは一体何・・・え?」

 

灰徒を呼び止めようとした霊夢が何かに気付き、振り向くとそこには、自分がいた。しかし、巫女服やリボンは黒く、その目は青かった。それ以外は、瓜二つだった。

 

「フフフ・・・」

 

「だ、誰よ。アンタ」

 

「私はアナタよ?アナタの醜い所はなんでも知ってるの。臆病者さん?」

 

「何ですって・・・」

 

「だって、自分の尊厳の為に本気を出さないで戦って死にかけるだなんて、臆病者そのものじゃない?それに、いつものお遊びじゃなくて殺し合いだって分かってた癖に本気で戦わないだなんて、なんてお馬鹿さんなのかしら?」

 

「なっ・・・違」

 

「違わないわ。本気を出さなかった理由も嘘。アナタは本気を出して負けると後がないから本気を出さないんでしょ?そうしなきゃ悔しいものね?でも、それが原因で大切な仲間を自分で助けられなかったじゃない?」

 

「・・・違う」

 

「違わないのよ!アナタは自分の手で人を救わないと気が済まない!でもその為には本気を出さなきゃいけないかもしれない!そうしたらプライドが傷つく!結果的にアナタは人なんかよりも自分のプライドの方を選んで死にかけた!なんてイイザマ!アハハハハハハハ!」

 

霊夢は絶望した。怖くて逃げていた事実を、他でもない自分自身に見せつけられて。口では必死に否定するが、全て本当なのだ。次第に霊夢の目の輝きが失われていく。

 

「もうアナタみたいな自己中心的なエゴイストは幻想郷にはいらないわ!その内アナタはまた自分のプライドを優先して仲間共々殺されるから!これからは私が博麗 霊夢として生きていくのよ!アハハハハハハハh」

 

高笑いを上げていた影は、突如として灰となって消える。

 

「ふぅ・・・やれやれだぜ。お前さん相当な捻くれ者だな」

 

「ええ・・・その通りよ。私はもう、こんな所にはいられない・・・」

 

そこまで言った霊夢を、灰徒が胸ぐらを掴む。

 

「お前、ふざけてんのか?」

 

「え・・・?」

 

「いいかよく聞け。一回自分の弱さを知ったぐらいで『自分は無価値だ』だの『他より劣ってる』だの言うんじゃねえよ!じゃあどうにかしてそこから変わろうとしろよ!お前が本当に仲間を自分の手で助けたいと思ってたんなら、そこまでの力を手に入れりゃいいだろうがよ!俺はいつまでもそうやって変わろうとしない人間がなぁ、大っ嫌いなんだよ!」

 

その言葉が、霊夢の目の輝きを取り戻す。それを見た灰徒は、霊夢を離す。

 

「・・・わかったわ」

 

「・・・そうかい」

 

「・・・一つお願いがあるんだけど、いい?」

 

「・・・なんだ」

 

「・・・戦う方法を教えてほしいの」

 

「ふむ・・・明日の早朝、ここに集合な」

 

こうして、灰徒による霊夢強化計画がスタートした。




いいこと書いた。多分。

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