ここからは禍憑サンたちの会話を同時翻訳でお送りいたします。(捏造全開)
ごめんよ桑名江・・・
バシンッ!!バシンッ!!
「先輩・・・!先輩ッ!!!起きて下さいッ!!!」
頬を強く叩かれ俺は意識を覚醒させた。
全身は節々が痛み、己の生の実感を訴えている。
目を覚まして飛び起きた彼の周囲は凄惨を極め、爆炎で煤けた地面は何メートルも抉られその傍らには同胞の遺体が無残に打ち捨てられている。
至る所に同胞の遺体が転がっている。
火傷で爛れて絶命した同胞。
無残に斬殺され無念の表情で息絶えている同胞。
此度の作戦は失敗したのだ。
「クソッタレ・・・ここは・・・?」
「イヤぁ~先輩っ!運が良かったっスねぇ~!幾千ブッパに巻き込まれて軽傷だなんてツイてるっスわ!!」
「ははっ!じゃあ先輩の幸運に
地獄が現出したような周りと反対に、きわめて明るい声をかけてきたのは俺の後輩。
付き合いが長く、くだけた態度で接するのは泥鎧。
何度も戦場を共にした最高の友だ。
もう一人は部下に配属された鎧武者。
槍を使った突進が特技で、新兵故に硬い口調だが、頼もしい仲間だ。
俺は泥鎧、鎧武者に現状を把握するため指示を飛ばした。
「現状を報告しろ」
「了解、部隊は敵巫剣の幾千の斬像により面制圧を受け壊滅、現在撤退戦を強いられてます・・・」
「連中は面制圧でこちらの部隊は全滅したと判断、他の部隊を追撃しに向かったっス」
巫剣とは、我々禍憑の仇敵の総称だ。
我らの大願を有史より阻む存在である。
彼女ら―――女しか存在しない―――巫剣は、刀が姿を持った存在であり、核として巫魂を使い奇跡を起こす。
我ら禍憑は禍魂を元に体を形成する。
共に魂を元に肉体を維持する禍憑と巫剣。
類似点はあるが、その基本的な戦闘力の差は大きい。
現状は最悪。
巫剣の幾千の斬像と呼ばれる面制圧攻撃を受けて、部隊は俺たち三人を残して壊滅。
巫剣達は他の部隊の掃討戦に移ったようだ。
「是非もあるまい。我々は敵との遭遇に注意し、本隊に帰還する」
―――了解
本隊は戦場より離れたところに待機しており、戦力を温存しているだろう。
彼らと合流し、部隊を再編することで反撃に転じるべきだ。
二人の返答に俺は頷き、行動に移した。
「泥鎧・・・今回の作戦、やっぱりオカシイですよね・・・」
「あン?俺らが使い捨てにされるなんてよくある話じゃね?」
二人が無駄口を叩いている。
巫剣は何時襲撃を仕掛けてくるか分からないと言うのに。
気楽なものである。
そんな彼らを俺は嫌いにはなれなかった。
「だって僕たちを正面からぶつけても、地力が違うのに勝てるわけないじゃないですか」
我々、低位に属する禍憑の攻撃では、巫剣に何度攻撃しても、有効なダメージを与え難い。
それに比べて、彼女たちの攻撃を食らえば俺たちは瞬く間に倒されてしまうだろう。
奇策、搦手を用いて巫剣の裏をかき、勝利を模索する。
個々の戦力が劣る我々は常に念入りな作戦が必要なのだ。
「ダイジョブだって!こっちには百戦錬磨の先輩がいるんだぜ!さっきだって先輩がギリギリまで頑張ってくれたからアイツらも俺たちが死んだって確認しないで消えたっしょ!」
「先輩の直属の部下で本当助かりましたよ・・・」
「そうそう!無敵の金棒先輩についていけば問題ナシ!そうっスよね!先輩!」
必殺のゼロフレーム金棒が炸裂するぜ――!
興奮して語る泥鎧。
俺たち禍憑は、巫剣との正面からの交戦はほぼ死を意味している。
しかし、中位の禍憑である俺、金棒ならば巫剣に有効な打撃を与えられる。
何度か連中を撃退した実績もある。自分で言うのも何だが、戦力と実績においては俺の右に出るものは少ないだろう。
「おい、無駄口を叩くな。奇襲を警戒しろ」
だが、奇襲を受ければ容易く屠られる今の状況で、無駄口を叩くのは頂けない。
気を引き締めろと注意を促す。
すみませんと謝罪し、口を閉じて周囲を索敵する二人。
本隊までの道は長い。
俺たちは警戒して本隊への道を進んだ。
「っ!待て!」
遠くでしのぎを削る、金属音が耳に届いた。
何処かで戦闘が起きているのだ。
後方で警戒を続けている二人に止まるよう呼びかける。
「敵っスか」
「了解」
瞬時に戦闘態勢へ意識を切り替える。
俺たちは歩みを止める。
歩く音が消え、静かな周りからは戦闘の音がより鮮明に聞こえる。
聞き耳をたてた俺は、状況を正確に理解する。
本隊へと向かう途中で味方の残存部隊と巫剣が戦っているのだ。
瞬時に決断する。
「敵は味方の残存部隊と交戦しているようだ。我々は戦場を偵察、可能なら味方の撤退を援護する。しかし、壊滅寸前なら見捨てる。」
部下は苦味が走った表情をしているが、頷く。
この先の味方が壊滅寸前なら、援護しても我々の屍が増えるだけだろう。
所詮我らは矮小な禍憑。三人程度で出来ることは無い。
「俺たちは出来ることをやる。いいな?」
目標を定めた俺たちは、迅速に戦闘地帯に急行する。
急いで到着した戦場では、味方の禍憑が、岩の影から山なりにエネルギー体を投射し、必死に抵抗を続けていた。
地面に炸裂するエネルギー体は、一種の爆雷と化し、巫剣の接近を許さない。
敵の巫剣は三人おり、禍憑の攻撃を刀で切り払い、あるいは高速で動いて回避に徹している。
彼女たちの視線は残存部隊に向いており、後方で偵察しているこちらに気付いていない。
奇襲をかけるなら今しかあるまい。
「敵はこちらに気付いていない。まず、鎧武者が突撃し、連中の守りを崩す。それに俺が追従し、奴らに打撃を与える。倒れた巫剣に、泥鎧が止めを決める。」
過去に何度も敵に致命を与えてきた必勝の形。
この状況ならば、有効な打撃を与えることが可能だ。
「頼むぜ~切り込み隊長!」
「成功したら大金星、いいとこもらってすみません!先輩!」
「やれやれ」
鎧武者を
調子に乗った鎧武者は俺が一番槍だと己の獲物を得意そうに振り回す。
少々ノリが軽いきらいがあるが、いくつもの修羅場を乗り越えてきた大切な仲間だ。
此度も俺たちのチームワークなら乗り切れる。
「先ほど仲間をヤられた礼だ。俺たちのチームプレイで巫剣御一行様をクールなパーティに招待してやろう」
「フヘヘっ!血が抜けてクールになるのは連中っスけどね!」
「寒ッ!泥鎧のつまらないギャグで僕が先に凍ってしまいそうです!!先輩!!!」
肩の力が抜けて程よい緊張感が残る。
コンディションは最高、今ならどんな無茶でも出来そうだ。
「俺たちなら出来る。行くぞ!」
俺たちは目を合わせ、巫剣に悟られないようにゆっくりと後方から近づく。
近づいたことによって、敵の全貌が見えてきた。
赤い巫剣が味方の禍憑に火炎放射を行っており、彼らを岩の影から移動させない。
黄色の巫剣が禍憑の集中砲火に晒されているが、彼女は回避に自信があるのか、禍憑達の攻撃は有効な打撃を与えれない。
最後に、青い巫剣が待機している。彼女は周囲を警戒しているのだ。今は一番厄介な存在だろう。
「青いヤツをやる。武者、頼んだぞ」
「失敗したらなんか奢れよ。夢のマイホームでもいいっスよ。」
「ははっ!そりゃ失敗したら破産だ」
鎧武者は静かに槍を構えた。
ボロボロの外套からは想像できない程の闘志を上げる。
「吶喊する・・・!」
神速の踏み込みで、瞬く間に青い巫剣に槍を突き立てる
しかし、敵も一筋縄ではいかない。
寸前で我々に気が付き、身を捩り鎧武者の直撃を避けた。
「っ!」
紙一重で避けた彼女。脇腹を浅く斬りつけた程度で済んでいる。
体制を立て直して、反撃に移る気配を見せる。
そうはさせない。
「・・・フンッ!」
彼女の死角に控えていた俺は、隙だらけな脳天目掛けて金棒を全力で振り下ろす!
無防備な脳天に直撃を受け、余りの衝撃に青い巫剣は吹き飛ばされた!
吹き飛ばされるのは計算済み。
その先には泥鎧が待機しており、止めを刺すのだ。
「先ず一人―――」
泥鎧が刀を逆手に握りしめ、巫剣の喉を掻っ切ろうとしている。
これで一人倒せるはずだ。
しかし、俺は違和感を覚える。
俺の全力の振り下ろしを食らったにもかかわらず、脳天から血飛沫一つ上がっていない。
鎧武者の槍が通用する相手なら、あの一撃で絶命してもおかしくない。
嫌な予感がする―――
そして、その予感は的中した。
「先輩ッ!!!こいつ、
その巫剣の喉に泥鎧の刃が突き立てられている。
しかし、喉の先が強固な結界で守られているのか、文字通り全く歯が立たない!
先ほど俺が金棒を直撃させる前に、彼女は結界を纏ったのだ。
禍憑の強さが保有する禍魂に左右されるのだが、巫剣も保有する巫魂の量で強さが決まる。
ならば、泥鎧の刃が一切通らないコイツはどれほどの相手なのだろうか。
絶望。
その二文字が頭に過ぎる。
それだけの差が存在する、という事だ・・・
「クソッ!泥鎧ッ!下がれ!そいつは
俺が叫ぶと、泥鎧は脱兎の如く逃げ出す。
瞬間、その巫剣の体が淡く光る。
奥義と呼ばれる膨大な巫魂が解放される前兆だ。
危機感が最大限警鐘を鳴らす!
俺は全力でその場から離脱した!
隣を見ると、鎧武者も全速力で走っている。
その場に崩れている建物の影に飛び込む。
巫剣の方に視線を向けた時、それは起こった。
青い巫剣を中心に、泡と水で出来たドーム状の結界が展開される!
その結界は周囲を押しつぶし、俺たちが壁にしている建物など存在しないかのように吹き飛ばした。
「ガアァッ!!!」
巻き込まれた俺の口からは踏みつぶされた動物のような鈍い声が出る。
鎧武者と同じ方向に仲良く吹っ飛ばされてしまう。
「ふざけるなァ!本当にアレが巫剣なのかッ!!!!」
俺は、桁外れの圧力をまき散らす巫剣を前に、盛大に愚痴をまき散らした。
「まさか・・・まさか、あいつら
数多く存在する巫剣は、結構な数が無銘、
しかし、いくつもの戦場を経て、強大な巫魂を持つに至った巫剣は、通り名を持つ。
それが
そして、一騎当千、万夫不当の名を欲しいままにする
「奴らッ!めいじ館の巫剣かッ!!!!」
「戦場の死神ですかッ!!!無理ですっ!!!サッサと逃げましょうっ!!!!!!」
通常の禍憑では一切歯が立たない
それらが大量に所属し、徒党を組んでいるめいじ館という集団は、禍憑にとって悪夢に等しい。
ただでさえ強力な
遭遇すれば下級の禍憑は死、あるのみ。
死と絶望を体現したに等しい存在なのだ。
最初から勝機など無かった。
味方の部隊は禍憑を引き寄せるエサでしかなかったのだ!!
青い巫剣のドームは固定され、広がらなくなった。
しかし、ドームの外からそれに触れると体から煙が上がり、急激に体内の禍魂が失われるのを感じる。
これほどの結界を維持するとは。
桁違いの巫魂を保有しているのだ。
「イカレてる・・・こんなのどうすりゃいいんですか・・・」
絶望する鎧武者。
その視線の先では青い巫剣の元に他の巫剣が集まっている。
「クソッタレ・・・!撤退する!泥鎧はどうした!」
俺は、周囲を眺め、対岸の建物に頭から突っ込んで動かない泥鎧を見つける。
ここからでは生きているか判断が出来ない。
どちらにしても彼を引きずって撤退するのは無理だ。
冷酷だが、彼を見捨てる決断をする。
全員が死亡するのは部隊の長として認めるわけにはいかない。
本隊にめいじ館の巫剣の存在を伝える義務がある。
その判断を告げるため鎧武者に向き直った時、巫剣に動きがあった。
黄色の巫剣が、青い巫剣の隣に立ち、意識を集中させる。
最初は水のドームに比べれば、大したことのない力だった。
徐々に、徐々に力の圧が強まっていく。
石の影に陣取った禍憑の部隊は発狂寸前で、巫剣に向かって絶叫した!
「奴らァッッ!!!"厄災″を使うつもりだッ!!!!何としてでも阻止しろォ――――ッ!!!!!」
その言葉を皮切りに、狂ったように爆撃を開始する禍憑たち。
しかし、水のドームに阻まれて、一切攻撃が通らない。
「こんなのどうしようもない・・・撤退しましょう、先輩!」
「無理だ・・・」
撤退を進言する鎧武者だが、俺はその言葉を切り捨てざるを得ない。
黄色の巫剣が発動しようとしている技は、厄災と呼ばれている。
徐々に巫魂を増幅させ一気に解放する。
その威力は山を崩し天を割る。
気象や天体を操る恐るべき一撃で、生半可な巫魂保有量の巫剣には使えない。
しかし、めいじ館の巫剣なら使えるだろう。
厄災の爆心地から出る余波は想像すらできない。
その中心地から今更逃げ出しても助からないだろう。
「腹を括るしかないか」
「先輩・・・止めるんですか?」
「ああ、それしかない」
仮に連中を止めるために水のドームに飛び込んだとして、どれくらい生きれるだろうか。
引いては死、向かっても死。
それなら、死なば諸共だ。
「最早退路は無い。連中に特攻を仕掛ける」
「・・・・・」
鎧武者の返事はない。
しかし、そこには覚悟を決めた男の顔があった。
俺は金棒を構え、ドームの前に立つ。
隣では、鎧武者が玉砕の覚悟で槍を力強く構えた。
「もし、生き残れたら。先輩。僕にその金棒持たせてくださいよ。」
「無理だな、この金棒は俺の証。死んでも離すかよ」
ニヤリと男臭い笑みを浮かべる。
俺達の視線の先には規格外の巫魂を纏った巫剣が見える。
その波動は大気、天と地を揺るがし、この場に破滅的な滅亡が現出することを予感させる。
覚悟は決まった。
「行くぞっ!!あのスカしたクソッタレの顔面に一発ブチかますッ!!!」
「了解ッッ!!!」
捨て身でドームに特攻を仕掛ける。
先ずはドームの壁を壊し、中に侵入しなくては。
しかし、俺たちは予想を裏切り、ドームの壁に激突することは無く素通りできた。
ドームの中では俺たちの禍魂が急速に失われる。
一刻の猶予はない。
鎧武者はその神速の踏み込みで吶喊した。
彼より足の遅い俺は後に続く。
「オラぁ!」
吶喊した鎧武者の鋭い一撃。
それは黄色の巫剣の顔を正確に狙った。
だが、横から割り込んだ赤い巫剣に簡単に弾かれてしまう。
間を置かず俺が追撃を仕掛けるが、今度は青い巫剣に割り込まれてしまう。
「はっ!さっきのリベンジのつもりか?来いよッ!!!」
「■■■、■■■■■!」
「何言ってんのか分からん!!!」
巫剣が言葉を解す等、思えるはずもない。
うっとおしいノイズを放つ口を潰すべく、金棒を突き出す。
しかし、敵は
必殺の勢いで放つ突きも半身になり躱されてしまう。
―――やはり正面からでは無理なのかッ・・・!
諦めが胸に過ぎる。
その意思が挫かれた瞬間に状況は更に悪くなる。
「グウゥゥゥッ!!!!!」
鎧武者が白熱する火球に襲われる。
赤い巫剣は鎧武者の踏み込みの隙を突いて、己の力により火球を発生させ迎撃したのだ。
万事休す。
結局俺の判断はこの戦場に向かった時点で間違っていたのか。
諦めかけた俺に、鎧武者の魂の雄叫びが届いた。
「まだだッ!!!!」」
彼は、槍の先端で器用に火球を絡め取り、その先端に火を宿らせた!
一瞬で槍の穂先は蒸発するが、その火球を振り回し、俺が相対する青い巫剣に投げつけた!
「おおぉぉオオオッッッ!!!!!!!」
今こそ勝負を決める絶好の機会!!
全力で目の前の巫剣を殴打し、この場所に釘付けにするっ!!
彼女は俺の打撃をすべて弾き、直撃を許さない!それで十分だ!
その場を動けない青い巫剣は、火山の噴火を思わせる熱球に巻き込まれ少なくない手傷を負う。
チャンスは今しかない!!
「金棒先輩ッ!!!!後は頼みますッ!!!」
武器を失った鎧武者は赤い巫剣の攻勢に成す術がないだろう。
振り向くことはしない。
その言葉を背に俺は一直線に黄色の巫剣の元に駆け抜ける―――!!
「この一撃で、くたばりやがれェェェ―――ッ!!!!!」
「■■■」
しかし、目の前の巫剣が何事かを呟く。
瞬間、視界が白くなり、世界は闇に包まれた。
「ああ・・・?なんなんだ一体・・・」
どれくらい意識を失っていたのだろうか。
俺は、全身の感覚が薄れていくのを感る。
その感覚に危機感を覚えるが、体は言うことを聞かない。
目を開けるのもやっとだ。
「先輩・・・起きたんですね」
視界には鎧武者が見えた。
その手には俺の金棒を握っている。
「おい、返せ・・・それは大事なものなんだ・・・」
「はは・・・せっかく生き残れたんです。少しだけ貸してくださいよ・・・」
「そうかよ・・・」
生き残れた。
周りを見渡すと、元の面影が無いほど地形が変わっている。
本当にどうやって生存したのだろうか。
俺の疑問を察し、鎧武者は答えた。
「敵の巫剣の影になっていたんでしょうかね・・・直撃した感覚が無かったです。それで生き残れたのかも・・・」
「連中はどうした・・・」
「さあ・・・目を覚ましたらいませんでした。」
戦いは終わった。
敵を打倒することは叶わなかった。
しかし、手傷を負わせることは出来ただろう。
もう、思い残すことは無い。
「お前だけでも生きててくれてよかった・・・」
意識が暗くなっていく。
体はとっくに限界を迎えていたのだ。
最後に鎧武者だけでも生き残ってくれたのなら、俺が戦った意味がある。
満足して瞳を閉じる。
だが、鎧武者は声を投げかけてきた。
「金棒先輩、ダメです。死んではいけません」
「・・・?」
最早声を出すのも
いまわの
「僕は金棒先輩に何度も助けられました、今度は僕が助ける番なんです・・・!」
「・・・何を、する気だ」
鎧武者の張りつめた様子に俺は死ぬ前に力を込めて問う。
「僕の残った禍魂を渡します。それで生き延びて下さい」
「バ、バカな・・・!」
そのようなことをすれば鎧武者は己の体を維持できずに崩壊するだろう。
せっかく生き残ったと言うのに、死なせるわけにはいかない・・・!
「止めろ・・・!そんなことは望んでいない・・・」
「いいえ、僕が決めたんです。・・・僕を恩すら返せない情けない男にさせないでくださいよ、先輩。」
己の体から禍魂を立ち昇らせて、彼は静かな表情で言った。
「・・・そうだ、この金棒、結構遠くまで飛ばされてて、探すの大変だったんですよ・・・死んでも離さないって言ってたのに。次からはちゃんと持っていてください。コイツで、皆を救ってやってください・・・」
―――後は頼みます、先輩・・・
そして、鎧武者は大気に掻き消え、影すらも残らなかった。
一人荒れた大地に佇む。
全身の痛みは嘘のように引いた。
体の欠損は一切無く、新たに生まれ変わった気分になる。
しかし、心の中はポッカリと穴が開き、空虚だ。
「・・・・鎧武者。この命、決して無駄にしない」
俺はゆっくりと歩む。
全ての痛みが引いたはずの体で、心の痛みを抑えたまま。