正義の罪科   作:アグナ

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航路を探す

 そしてオレは目を覚ます。

 腕につけた機械端末がオレの状態を事詳しく解析する。

 

 意識の覚醒を確認。

 

 バイタリティ良好。

 

 マスター候補―――識別番号(ナンバー)13

 イサク・ラフマーン

 

「これ、何時も心臓に悪いな……」

 

 意識の覚醒と同時に自動で起動した腕の端末を擦りながら口に出す。

 テレビとかの故郷でも見かけた家電ならともかく最新鋭の機器に慣れ親しみの無い身としては魔術以上に不気味に映るのだ。

 魔術は魔術師であるからして原理など、何故、このようになるかが理解できる分、まだ良いが、この手の機械は原理からして意味不明だ。

 

「ふうむ、極めた科学を錬金術っていう理由が何となく分かったな」

 

 よ、と安眠を促す機能美に包まれた、温かみからは欠けるベッドを発つ。

 僅かながらに残る睡眠衝動を理性で断ち切り伸びをする。

 

「今日はいよいよファーストオーダーか」

 

 カレンダーを流し見しながら、「いよいよ」かという緊張と「ようやくだ」という感傷に包まれる。

 

 此処は―――人理継続保障機関カルデア。

 幼き見た憧憬を胸に、俺は今、人類最新にして最前線の戦場に居る。

 

 

 

 

「ずッ、ぁ―――ッ!」

 

 赤色の槍が残像を残して首元に迫る。恐ろしい速度である。

 喉笛を穿ち、命を絶つ、必死の槍を済んでんのところでオレはやり過ごした。

 

 目の前には茫洋とした顔色で、しかし身も凍るような隙の無さの槍使い。

 如何にその姿を真似た偽者とは言え、使う技は紛れも無く人類史に名を刻んだ英雄のそれに相応しい―――改めて意識を引き締め両手に構える黒塗りのナイフを握り直す。

 

「いち、に、さんッ!!」

 

 フェイントを交えてステップを踏み、青い槍使いとの間合いを詰める。

 元より距離があっても意味を成す相手ではない。

 加護が故に遠距離攻撃は効き辛く、獣の如き敏捷さは遠近を瞬き一つで塗り替える。

 ならば常に自分の間合いに置くまで。

 どうせ、俊敏さではこっちが劣るのだ。

 

 体も劣り、技も劣る―――ならばせめて不利を削る。

 

 要は気概と気合。どうせ勝てぬからと逃げ腰で如何とする。

 

 倒れるならば前のめりに。

 諦めから起こる奇跡など無いのだから。

 

「ハァ、ハァ、ハ―――ぁ―――……!」

 

 眉間、喉、心臓からなる上段三段突き。

 槍が三つと錯覚するような連続技は最早、視認で回避不可能。

 反射で身体を丸め、二つを回避し、三つ目をナイフで弾く。

 

「う、おおお……!」

 

 三つ目を穿ち、腕が伸びきった僅かな隙を見て突撃。

 左のナイフを投擲し、回避した直後を狙い打つため右のナイフを構える。

 

「―――!」

 

 無言の気合。敵もさることながら巧い。

 オレがそう動くと読んでいたとばかりに、槍で横薙ぎに払う。

 回避ではなく迎撃。

 

 読み間違えたオレは一瞬、踏み込みが遅れる。

 その隙を青い槍兵は逃がさない。

 

「ごふ……!」

 

 強烈な左ストレートが胴体に叩き込まれる。

 下より体で勝る相手。オレを倒すのに一々やりを使う必要は無い。

 人一人、殺すならば刺殺で無くとも殴殺で十二分。

 

 吹き飛ばされるオレを吹き飛ぶ速度より早く青い槍使いが詰める。

 

「―――――……」

 

 「終わりだ」か、「仕舞いだ」か。

 英雄の影を再現した陽炎はそんなことを言ってこの戦いに幕を引く……。

 

神は偉大なり(アッラーフ・アクバル)―――!!」

 

 オレの呪文(ことば)に応じて魔術回路が起動する。

 因果変成―――槍が目測を誤る。

 

「ッ!?」

 

 青い槍使いが困惑する。

 有り得ない偶然に目を見張っている。

 

 しかしこれは偶然ではなく必然。

 より正確にいうならば必然的に起こる偶然(・・・・・・・・・)である。

 

 極めて珍しい虚数という魔術属性、それを生かす数秘紋の魔術。

 この二つからなる、確率の実数化という特異な魔術によるものだ。

 

 動揺を尻目にオレは自らを鼓舞するように獰猛な笑みを浮かべて右手に握るナイフを構えて呪詛を唱える。青い槍使いは動揺を力ずくで抑えて構えるが……。

 

 もう遅い―――。

 

 左手は虚空を掴むように。

 右手は虚空を引くように―――黒塗りのナイフを番える。

 

 さながら弓の構えであり―――これは弓である。運命と言う、必然を乗せた。

 

「―――この手に担うは勝理なり(アル・ファトフ)

 

 青い槍使いが応対する。

 かの身は視認する遠距離攻撃を容易く迎撃する加護がある。

 ゆえに見えている射撃など取るに足らず、弾いて詰めればそれで終わり。

 しかし―――迎撃が間に合わない。

 

 槍使いは何故かそう直感した故に迎撃から回避へと行動を移して……。

 ―――トスッ、と背後を何者かに押される感覚があった。

 

 鍛え上げられ、引き締ったその胸板に異物があった。

 丁度、心臓の辺りに一つの突起物、鏃が突き出ていた。

 

「―――――」

 

 無機質な演算脳に浮かぶ数多の疑問。

 理由不明な致命傷は、消滅するその刹那にも解決されることは無かった。

 

 

………

……………

…………………

 

 

「ふう……」

 

 青い槍兵の影が消えるのを見送りながらイサクはそっと息を吐く。

 彼とは丁度三百回(・・・)めの交戦であったが相変らず恐ろしい。

 

 これで本家本元はもっと強いというのだから底が知れない。

 

「聖杯戦争……英霊同士の戦いか、オレじゃ秒も持たないだろうな」

 

 先ほどの青い槍兵のもっと強いのが七騎。

 己が願いをかけて全力の死闘を演じるのだ。

 

 遥か極東の果てで行なわれていた万能の杯をかけた戦いはそれはもう凄まじいものであっただろうに。

 

「―――それじゃあまるで英霊と戦うこと前提だな。俺たちはマスター、使役し援護することこそが本分だろ」

 

「……あれ? カドック? 珍しいな、こんなところで」

 

 シミュレーターが描き出した仮想戦場が消えれば、無機質な部屋にオレ以外の人影。

 同じカルデア所属、マスター候補のカドック・ゼムルプスがいた。

 

「珍しいな、じゃないだろ。もう既に定刻ギリギリだ。いつまでシミュレーターで訓練しているんだ。今日は所長の、召集したマスター候補たちに関する説明回だろ」

 

「あぁー、そういえばそんな話もあったようななかったような……」

 

「お前は……この間の空間特異点F発見の時は熱心にしてたのに、重要事件だけがカルデアの対処するべきものじゃない。人類史をより広く眺め、より長く存続するべく行動する、それがこの人類史という宇宙を観測する天文台、カルデアのあるべき役目だろ」

 

「おお、まるでキリシュタリアみたいだな、カドック」

 

 カルデアの唱えるその崇高な行動理念を言うカドックに思わず同じく同僚であり、所属するAチームで最も優秀なチームメイトにして統率者、キリシュタリア・ヴォーダイムを口にする。

 すると、何故か褒めたはずなのにカドックは壮絶に嫌そうな顔をする。

 

「ッチ……それは嫌味か?」

 

「いや、褒めたつもりだけど……なんでそんなに不機嫌に?」

 

「……はあ、君はもう少し人の気持ちを察することを覚えた方が良いよ」

 

「うん?」

 

「ッとにかく、早く管制室に行くんだね。君は僕らAチームの中で最も合流が遅かったんだから。君みたいな奴がなんでAチームに配属されたかは知らないけれど、下らないところで足を引っ張るようなマネだけは止めてくれ」

 

「分かってる」

 

 確かに、カドックの言う通りだ。

 オレは一番、遅くに彼らのチームに加わった。

 そういった意味では今のオレは彼らの中で一番遅れている。

 

 事は人類史の存続に関係する大問題である。

 そんな大事を解決するに当たって彼らの足を引っ張る存在になるなど最悪だ。

 あの日見た憧憬を裏切らないためにも追いつく努力をしなくては。

 

 

 

 

 

「―――特務機関カルデアにようこそ」

 

 揃う四十九名の魔術師を眼前に据え、鋭い視線で白髪の、まだ十代半ばだろう少女は威風堂々と歳に見合わぬ立ち振る舞いで言った。

 

「所長のオルガマリー・アニムスフィアです」

 

 現代魔術師の総本山『時計塔』。

 その十二学科が一つ『天体科』を統べる名門アニムスフィアの性。

 名門に生まれた才媛、であれば若くして所長の身分も頷けよう。

 

「あなたたちは各国から選抜・発見された稀有な才能の持ち主達です。才能とは霊子ダイブを可能にする適性の事、魔術回路を持ちマスターとなりうる資格の事。この才能を持つあなたたちは今まで前例の無い、魔術と科学、この二つを融合させた最新の魔術師に生まれ変わるのです」

 

 演説するオルガマリー。

 しかし、それを傍目にイサクが見ていたのは自分以外の魔術師たちの姿だ。

 

(何人かはやれそうなのはいるけど、カドックたちほどじゃないな)

 

 平時、戦場に身を置いていたツケか。

 こうして初めて見る相手がどれほどやれるか見てしまう。

 

(単純な強さだけ測るなら何人かはカドックやオフェリアよりは強いけど……あの二人ほどの怖さが無い。倒すのは面倒だけど殺すのは簡単そうだ)

 

 戦争は精神的強さも案外馬鹿に出来ない。

 火事場の馬鹿力が成すどんでん返しの怖さをオレは良く知っている。

 一時、ともに戦争をかけた医者も言ってたではないか。

 

 極限の中でこそ、人はその真価を発揮するのだと。

 

(そういった意味ではあの二人の方が断然怖い。後は……)

 

 と、演説を聞き流しながら魔術師たちを見渡していると。

 一人……精神的に図太そうなのを発見する。

 

「スゥ……スゥ……」

 

 立ったまま寝ている一人の少女。

 集う魔術師たちでも群を抜いて、隙だらけだ。

 恐らく、否、間違いなく素人。ともすれば魔術師であるかも怪しい。

 

(そういえば適性持ちは一般枠からも集めてたっけ……?)

 

 ということはあそこで眠りこけている少女は一般人。

 素人の魔術師にすら劣る全くの素人と言うことになる。

 

 よって―――。

 

(あの子、怖いな)

 

 全くの一般人。魔術の魔の字も学んでいないような表社会の人間。

 そんな彼女が魔術とか人類史の継続とか、そんな絵空事を聞かされて尚、マイペースで居る。異常事態の中で平静であるという異常。

 仮に戦場に立たされてもいつも通りで居られそうなほどの豪胆さ。

 それはまさに力の強さとはまた別の、精神的な強さになる。

 

「―――ッ、私の目の前で居眠りだなんていい度胸ね!」

 

 どうやらイサクと同じく眠りこける少女を発見しただろう、オルガマリーがまさに怒髪天といった勢いで少女に詰め寄る。

 そのまま、面食らった表情で驚く少女を外にたたき出した。

 

「……ふむ」

 

 魔術回路をこっそり起動。

 そのまま自分を模した使い魔を形成する。

 ドッペルゲンガー。もう一人の自分。

 虚数属性のオレが得意とするこの世に反射するもう一つの鏡面存在。

 

「ちょっと頼む」

 

「ああ、任された」

 

 さりげなく普通の魔術師が目を剥くような所業を簡単にやってのけながら追い出された存在を追って、イサクもその場を後にした。




原作からして意味不な虚数属性。
きのこよ、そろそろ正確な説明をしてくれないだろうか……?

と、原作者様への僅かながらの不満はともかく、虚数属性なオリ主君。
数秘紋とあわせたなんちゃって魔術のオンパレード。

>なんで虚数属性と数秘紋?

A:僕はね、青子さんが好きなんだ。後、虚数ってなんか何でも出来そう感ない?




ところでまほよ二部はいつ?(特大の不満)
三部作って言ってなかったっけ?(半ギレ)
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