正義の罪科   作:アグナ

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そこそこ好評だったので特異点Fまで頑張って書きたい。
我輩、エタ作者なのでござる……。

時にFGO今回のイベント。
縛りプレイしているせいか全く進まん。

パルさんとシェヘラザードと今回鯖フレ縛りが辛い。
……もう主力で殴って進めようかな。


航路を探る

 人理継続保障機関フィニス・カルデア。

 

 現所長オルガマリーの父にして前所長マリスビリー・アニムスフィアによって発足したこの機関の目的は端的に言って人類史の保証にある。

 

 果たしてマリスビリーが真にその大儀を遂げることのみを目的として作り上げたのか、はたまた別の目的も付随していたのか。

 その真意はともかくとして、少なくともこのカルデアが人類史の末永き継続を望んで作られた組織であることに間違いはない。

 

 人類史の保障と言う大儀を掲げているだけあってその設備は凄まじく、公にならなかった歴史の真実すら広い観測する『事象記録電脳魔・ラプラス』や地球と言う惑星を一つの生命と定義し、その魂を複写した擬似天体、いうなれば地球のライブラリとして機能し、先の百年を観測可能とする『疑似地球環境モデル・カルデアス』などと。

 

 流石は『時計塔』を束ねるアニムスフィアの力と言うべきか、一族の執念が成せた業というべきか、中にはかのアトラス院の技術提供によって作り上げられた擬似霊子演算機までもがあるのだから、異端性は極まっている。

 

 だからだろうか、今回のファーストオーダーに当たり呼び出されたマスターらの中にも一風変わった人物が居た。

 

 ただマスターとしての才を保有する。その一点で呼び出された魔術師見習い所か、魔術の存在すら知らなかった一般人。昨日まで普通に学生をしていたという魔術観点から見れば超が付くほどの異端者が居た。

 

「いたた……うう、酷い目にあった……」

 

 茶色の瞳に癖のあるオレンジ色のセミショート、傍から見て右側のシュシュが特徴的な十代半ばの少女―――その名を藤丸立香という。祖母がドイツ人という以外、一般人の少女である。

 

「その……なんというか、災難でしたね」

 

 そしてそんな彼女に付きそうカルデア職員の制服を着た紫色の髪に眼鏡が特徴的なやや陰のある少女はマシュ・キリエライト。

 マスター候補であり、Aチームメンバーに属する。

 

「居眠りしてたのは私の落ち度だし追い出されたのもしょうがないとして、あんな放り投げる勢いで追い出したのはどうかと思う……ていうか放り投げられたし」

 

「今回のミッションはそれこそ、カルデアの意義、人類史の継続保証において重要なミッションの一つでしたから。所長もそれだけ気を張っていたんだと思います」

 

「……これからどうしよう」

 

「追い出されてしまいましたからね……。こうなるとファーストミッションへの参加は難しいでしょうから先輩の個室にご案内します」

 

 そういって立香を先導するように歩き出すマシュ。

 カルデア職員として務めているだけあって足運びに迷いはない。

 

「―――でも、なんで素人だ一般人だ言っているのに一般枠なんてあるんだろ?」

 

 道中、ふとオルガマリーが怒りとともに吐き出した罵倒を思い出してポツリとリオが言う。それに対してマシュは丁寧に答えを返す。

 

「それは実験段階の霊子転移(レイシフト)実用に際して多くのマスター候補者が必要だったからですね。マスター候補としての適性……ひいては才能は先ほど所長が述べた通り稀少なものですから魔術師にとって本来重要な家系や血筋を気にしてはいられない状態だったんです。それこそ、魔術を知らない一般人であっても候補者に選定したように」

 

「へぇ……それにしても魔術師か、やっぱりまだピンとこないな」

 

「……先輩は外の世界で普通に生活していらしたんですよね」

 

「あはは、まあね。つい先日まではただの学生。まさか熱心なスカウトに応じたら魔術とか人類史とか、そんな凄い話に関わることになるとは思わなかったけど」

 

 困ったように笑う立香。その顔を何故かマシュは不思議そうに除きこんだ。

 

「どうしたの?」

 

「いえ……外の世界……ここからは青空が見えませんから」

 

「ああ、標高六千メートルだっけ?」

 

 言って、丁度外周に当たる通路に差し掛かった二人。

 見上げるほどの大きな窓から外を眺めればそこは一面白銀の世界、吹雪と曇天のみが全景を成している。

 

「ひゃー、確かに此処からじゃあ青空は見えないな」

 

「はい。……あ、でもドクターが言うには年に数回程度ですが晴れるときがあって、その時はそれこそ澄み切った青空が一望できるとか」

 

「標高高いからね。ここから見る青空なら凄く綺麗だろうなぁ、ちょっと見て見たいかも。マシュはそれ、見たことあるの?」

 

「いえ、私は……」

 

「―――ようやく発見。ってマシュ?」

 

 雑談交じりに二人で歩いていると後ろから声をかけられる。

 二人して振り向けば、そこには一人の青年が居た。男らしく短めに切り揃えられた黒髪と焦げた様な褐色の肌。軍人のような黒で統一された服装とそれ故、目立つ赤いマフラー。

 白衣のカルデア職員服や同じく白を基調としたマスター候補生の服とは異なる個性を前面に出した格好である。

 

「あ、イサクさん。今はまだブリーフィング中では……」

 

「使い魔を置いてきたから問題なし。そういうマシュは……所長のブリーフィングで居眠りかました剛毅なマスター候補のエスコートかな?」

 

「はい、先輩を個室にお送りするところでした」

 

 親しげに話す二人。

 顔見知りなのだろう、と言うことは彼もまた……。

 

「と、そちらに紹介が遅れた。オレはイサク・ラフマーン。見ての通り……とは制服着てない分からないだろうが、そこのマシュと同じマスター候補でAチーム所属だ」

 

「ええっと……私は藤丸立香です。宜しく、ラフマーン……さん?」

 

「畏まらなくて良いよ。歳は二つ、三つ違う程度だろうし。それにどうもここじゃあオレは煙たがれているから話せる相手とは気軽にいきたい」

 

「そういうことなら、じゃあイサクで」

 

「ではオレもマシュと同じように名前で呼ばせてもらおうか……先人としてようこそカルデアに歓迎するよ、立香」

 

 微笑を浮かべ挨拶しながら左手を差し出すイサクに返礼と立香も応える。

 左手を差し出してきた辺り左利きなのだろうかと立香がふと、イサクの左手に目を落すと変わったモノが目に入った。

 杖に絡みつくような蛇の紋様。

 赤い刺青のようなものが左手の甲にある。

 

「―――しかし見るからに一般人だ。君、本当に魔術師じゃないんだな」

 

「え、あ……あはは、そういうのって分かるんですか?」

 

「まあね、こうまで近づいてようやく感じられる魔力もそうだけど、此処の連中はなんというか立ち振る舞いに隙が無いから。その点、君は隙だらけだったし」

 

 肩を竦めて言うイサク。一見、馬鹿にしているように受け取れるが雰囲気や口調からしてただ思ったことを口にしているだけなのだろう。

 友人から誰とでもすぐに仲良くなれることが特技だと評された立香は、何となく勘違いされそうな人だなという感想を覚える。

 

「うん、マシュが君に近づいたのも何となく分かるな。良くも悪くも君は普通の人っぽいからね」

 

「先輩は今まで出会ってきた中でも一番人間らしいです」

 

 納得したように言うイサクと追随するようにコクコクと頷くマシュ。

 そんな彼らの言い分に思わず首を傾げる立香。

 

「……私ってそんなに個性無い?」

 

「ああ、いや。そういう意味じゃなくて。……魔術師なんて変り種に、しかもそれと協同する職員だからね。ここは世間一般的に見て変わっている人ばかりだ。だから君のような普通の人間と言うのが稀少なんだよ。すまない、馬鹿にしているつもりはなかったんだが……オレはどうも口が上手くない」

 

「いえいえ、大丈夫です。馬鹿にしているつもりがないのは分かってましたし」

 

 悪びれるイサクに立香は両手を振って断る。

 それにしてもどうやら誤解されやすいという自覚はあったらしい。

 

「って、あんまり雑談で足を止めさせるわけにもいかないな、オレもファーストミッションは外せないし……オレも送ろう」

 

 いつの間にか立ち話をしていた三人はイサクの言葉にそれぞれ頷いて歩き出す。

 

「それにしてもイサクさん。何故、ブリーフィングを抜け出してまで先輩に?」

 

「少し気になったからかな。此処じゃあんまり見かけない人種だしね」

 

「ここは大半が魔術師、ないしは魔術を知る人々によって占められていますからね」

 

「そういうこと。と、オレが言えた義理じゃないな。オレもその変わり者の仲間であることに違いは無い。……まあ、その変わり者達にも馴染めていないわけだが」

 

「その、イサクさんは客観的に見て余り言葉選びが……」

 

「君にまで言われたか……やっぱりコミュニケーションの下手さが足を引きずっているな。カドックなんかどうもオレを嫌っている節があるし」

 

「ですがキリシュタリアさんやペペさんとは傍から見ても仲がよろしいように見えますよ?」

 

「あの二人はちょっと別枠だろう。ペペは単に誰とでも親しくやってけるからだし、キリシュタリアは……まあ、これは別に良いか―――」

 

「………」

 

 随分と親しげに話すイサクとマシュ。

 立香は思わず無言で興味深げに二人を眺める。

 本人はコミュニケーションがどうこうと言っているが、どうやらマシュとは例外のようだ、というより……。

 

「ん? どうしたんだ立香、って悪い。少し仲間外れだったか」

 

「いや、それは別に……ただ、」

 

「ただ?」

 

「なんか兄妹みたいだなって思って。見た目は欠片も似てないんだけど……雰囲気と言うか、空気と言うか」

 

 立香の言葉にイサクとマシュは不思議気に顔を見合わせる。

 

「や、別に思ったってだけだから。特に何と言うわけじゃなくて……」

 

「ん、別に構わないよ。それにしても下に見たつもりはないんだが、君も中々、鋭い。流石はマスター候補と言うだけはあるのか」

 

「え? 兄妹なんですか?」

 

「まさか、全く似てないだろう? ただマシュとオレとが似た雰囲気だと言うなら、多分その通りだ。より厳密にいうならば似た境遇というべきか」

 

 な、と視線を送るイサクにマシュもまた頷く。

 事情は良く分からないが、ともかく二人は共通の何かを持っているらしい。

 

 

 

 ―――そうして雑談交じりに足を進めていればあっという間に目的地到着する。

 

「はい、此処が君の個室ね。基本的には私室として自由に使用して良いよ」

 

「ありがとうイサク、マシュも、ここまで案内してくれて」

 

「たいした労力じゃ……痛ッ!」

 

 立香に割り当てられた部屋の前でお礼をイサクらに言っていると突然、イサクが悲鳴を洩らす。何事かと見ればイサクの頭の上になにやら白い物体がいた。

 

「フォウ! フォウ! フォウキューフォウ!!」

 

「痛たたッ! おい、ペシペシやるなフォウ! ていうか、前々から思っていたけどお前なんかオレにだけ当たり強くない?」

 

「フォーウフォウ! キュウキャウ!!」

 

 白い物体は見れば丁度掌サイズほどのリスじみた小動物のようだ。フォウと呼ばれたそれはペシペシペシペシと必要以上にイサクの頭を叩く。

 

「フォ、フォウさん、そんなに叩いては……」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「ああ、何時ものことだしいい加減馴れた」

 

 オロオロと心配するマシュと不意の出来事に面食らっている立香を傍目にフォウの首根っこ辺りを無造作に掴んで引っぺがすイサク。

 フォウは大変不満のようでじたばたしている。

 

「フォウ、フォーウ!!」

 

「全く。オレが嫌いなのは何となく無かったからそう何度も食って掛かるなよ」

 

「いえ、多分ですけど。フォウさんはイサクさんを嫌っては無いと思いますよ」

 

「フォウ、フォウウウ!」

 

「えっと……」

 

 勝手に知ったるかという三人(?)に対して自体を掴めない立香が視線を彷徨わせているとイサクは片目を瞑り困ったように肩を竦めながら説明する。

 

「こいつはフォウって言ってカルデア内を自由に歩き回っている謎生物だ。この通り何故かオレにだけ当たりが強い」

 

「へ、へえー……よろしくフォウ?」

 

「クー、フォウ」

 

 おっかなびっくりにフォウへ手を差し出しながら言うとフォウは耳をピンと立て返礼のように声を返す。……こちらこそということだろうか?

 

「―――ふむふむ。どうやらフォウさんにライバル認定されたようです」

 

「え゛!? 分かるの!? ていうかライバルって!?」

 

「マシュは一番、フォウと付き合いがあるからな。後、ライバル視は多分、一番の友人を取られるって言う……って痛たたたッ!」

 

「ああ! ダメですよフォウさん!」

 

「キャウ、フォーウ!!」

 

 ペシペシペシペシと抗議するように再びイサクの頭を叩きだすフォウ。

 それを見てマシュが止めに入る。

 

 その内、一通り叩いて気がすんだのかピョンとイサクの頭から飛び降りるとそのままトテトテとカルデア内の廊下を駆け去っていく。

 自由なフォウの振る舞いにイサクは頭を掻きながら一息吐く。

 

「やれやれ……」

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、言ったようにいい加減馴れた。と、まあ乱入者(フォウ)のせいで話が逸れたけど、改めて此処が君の部屋ね。言ったように自由に使って良いから」

 

「あ、はい」

 

「そういうわけでオレたちはこの辺で。もう少し親交を深めたいところだけど、オレたちはファーストオーダーがあるしな」

 

 居眠り事件のせいで管制室を追い出されてしまった立香だが、部屋への案内のため抜け出してきたマシュと単純な興味から管制室を抜け出してきたイサクはこれから規定通り任務遂行に当たる。

 

「ここまで案内ありがとね二人とも。任務、これから気をつけて」

 

「ああ、落ち着いたらまた話そう」

 

「それでは先輩、また」

 

 片手を挙げて応えるイサクとぺこりと一礼するマシュ。

 立香を送り届けた二人は揃って来た道を戻っていく。

 再びの会うこと約束して―――。




色々、案はあったけどシンプルに公式の藤丸立香ちゃんで名前は落ち着きました。
因みにクォーター設定はオリジナル。
ドイツなのは彼女が武内曰く、「女体化した衛宮士朗」というコンセプト的に。



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