正義の罪科   作:アグナ

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新しい紙幣に渋沢栄一が選ばれたそうですね。
これを期に誰か金銭流通を利用した全く新しい聖杯戦争とか書いてくれないっスかね。例えば、経済学系の英霊召喚してお金の流れで勝敗決める的な。

エルメロイⅡ世の事件簿最新刊で明かされたハートレスの手段と聖杯戦争を悪魔合体させた話……面白そうじゃね?
ほら流通もまた霊脈に通じる巨大な流れだし。


聖杯的な魔力エネルギーは十分だと思うしネ!



航路は定まる

 数刻前―――。

 

 四十九部屋の個室。これより始まるファーストオーダーがため、その部屋の主は殆どが出払い、人気は皆無。ただ一つ、灯りの灯った部屋を例外として。

 

「詰まる所、君達マスター候補というのはレイシフト……人間を霊子化させて過去へ送り込み事象に介入する行為、それに対する適性者のことを言って、君も含んだマスター候補者達の目的は今から十二年前の歴史に確認された特異点の破壊というわけさ」

 

 もぐもぐと口を動かしながら端末の映像混じりに説明する男の名はロマニ・アーキマン。カルデアの医療部門で責任者を務める人物にして、数時間前まで不在だった最後の個室に居座っていた不法侵入者だ。

 

「なるほど―――ところでやっぱり、空き部屋でサボるためとはいえ、乙女の部屋に成る予定の場所に不法侵入とか本当にどうかと思うんですよ私は」

 

「うわああ、まだ言うかい!? それに関してはホントにすまない! 配慮が欠けていたと謝ったじゃないか!」

 

 マシュとイサク。優しい同僚と別れた彼女は早速、割り当てられた個室の扉を開けて中に入ると……ゆるふわな雰囲気の不法侵入者と遭遇した。

 

 本来は立香のベッドとなる場所には見知らぬアイドル動画を垂れ流し、饅頭を摘みながらポケーと白衣の男が居座っていたのだ。

 

 当然立香は悲鳴をあげた。何故か男―――ロマニも悲鳴をあげた。

 

 そして何やかんや(痴漢騒ぎ)があった後、ようやく身の潔白(ただサボっていた)を証明したロマニは暇つぶし(サボり続行)を兼ねて、知識に乏しい立香にカルデアと言う機関と今回のミッションに関する説明をしたのであった。

 

「まあ、それはもう良いとして……聞く限りそれって結構危険じゃないですか?」

 

「うん、まあ危険だねえ。何せ、特異点。正しい歴史には存在していなかったはずの地点だ。もしかしたらその時代に存在しない存在や存在してはならないモノがあるかもしれないからね。それも含めて未知数がゆえの特異点だ」

 

「……ですか、マシュとイサク大丈夫かなぁ」

 

 所詮先日まで一般人でしかなかった立香にとってスケールも責任も大きく感じる今回のミッション。その概要を聞いて知り合ったばかりの友人二人を心配する。

 すると、立香の口から出た名前にロマニは驚いたとばかりに声を上げる。

 

「案内されたって言ってたけれど君はマシュとイサク君に案内されたのかい?」

 

「ええ、あれ……言ってませんでした?」

 

「聞いてなかったよ。でもそうか、マシュはともかくイサク君も? 彼の性格を考えて大事なミッションのブリーフィングを放置するなんて有り得ない筈なんだけどなぁ、むむむ……」

 

「イサクって、そんな真面目な人なんですか?」

 

 唸るロマンに立香はふと覚えた疑問を問いかける。

 第一印象からして何処かマイペースな青年が真面目と言うのがどうもイメージとして結びつかなかったのだ。

 

「うーん、真面目かといわれれば結構な頻度で居なくなったり、勝手に行動したりと割かし不真面目なんだけどね……ただ今回のような人類の明日に関わるような事件やその対策何かになると態度が変わるんだよ」

 

 例えば今回のような。人類の存亡に関わるようなカルデアの本分たる役目に徹する時だけ、イサクは普段とは別人染みた態度で事に臨む。

 

「そうなんですか」

 

「うん。カルデアはその使命として人類の未来を保障するというところだけれど、彼ほど忠実にその役目を全うしようとしている人材を僕は他に知らないよ。それこそ、マスター候補の誰よりもね。彼がサボるときは大概、その使命に関係ないときだし、サボった時も大体はシミュレーターを使った模擬戦闘訓練しているしね」

 

「なるほど、なんていうかカルデアの役割にしか興味ないって感じなんですね」

 

「そう、多分だけど。人類の未来を保障するという役目をカルデアが帯びていなければどんなに強引に此処へ連れて来ようとしたところでマスター候補として此処に立っていることはなかったんじゃないか、そう思えてならないよ」

 

 所詮、まだ友好が浅いせいか、やはりロマンの方がイサクに関しては詳しいようだ。それにロマンの評は聞けば聞くほど受けた第一印象からは想像できないものである。

 

「うーん、やっぱりイメージと違うな……」

 

「……あー、ちょっと僕の私見を語りすぎたかな。白状すると、これは僕が受けた印象であって彼に付いてそう詳しく知っているわけじゃないんだよ」

 

 ポリポリと頬を掻いて申し訳そうに言うロマン。

 

「彼の場合は特例中の特例でね。Aチームが招集された後にAチームに後から招集された魔術師だから、同じAチームでもそう詳しく知っている人はいないはずだよ」

 

「え?」

 

 立香は思わず意外だとばかりに声を上げる。

 マシュと親しげに話していたし、幾らか同じメンバーらしい名前も挙がっていたので付き合いがそれなりに長いと思っていたのだが……。

 

「彼は前所長……マリスビリー・アニムスフィアが直々に連れてきた人材らしくてね。ああ、らしいというのは彼の存在がマリスビリーの遺言とともに語られ、彼の死後にカルデアに現れた魔術師だったからだよ、合流したのもつい最近なんだ」

 

 当初は存在しなかったイレギュラー。

 それがイサク・ラフマーンという魔術師だった。

 

「実際、僕らも最初は面食らったよ。あの(・・)イサク・ラフマーンが此処カルデアのマスター候補としてAチームに加わるなんてね」

 

「それはどういう―――」

 

 ロマンの意味深な言葉に立香は不思議そうに問いかける。あの、とは……それほど通りのある人物だというのだろうか、あの優しそうな青年は。

 

 だが―――その疑問は今この場においては氷解することが無かった。

 問うた言葉とともに轟音が、衝撃とともにカルデアを襲った―――――。

 

 

 

 

  ―――世界が燃える夢を見た。

 

 過去現在未来の一切を問わず、終わったはずの歴史、忘れ去られた記録すら炎の渦に飲まれる。三千世界の悉く、一切例外はない。

 

 母恋しい父恋しいという童の悲鳴は届かず、無情な民は逃げ場の無い袋小路で次に来る死を予見して泣き叫ぶ。怒り、嘆き、慟哭、充満する負の感情。

 

 ―――その光景を喝采するように『悪』がいた。

 

 歓喜の声は嬌声の如く、哄笑は黒煙に曇る天上に。これがお前たちの末路だと一方的な好悪で身勝手な善意を振りかざす。

 

 ―――其の名は『憐憫』、人が持つ巨悪の性。

 

 悲劇に満ちた、惨劇に満ちた、世界を憂い。歪な形と弾劾し、一方的な手切れを突きつけた。宣戦布告と同時に全てを終わらせ、勝利宣言とともに新たな歴史が始まる。

 

 ゆえにこそ―――。

 

「まだだ……」

 

 燃える大地に単騎(ひとり)。見惚れるような輝きがある。

 

 犠牲は最小限度でなければならない。

 犠牲は最大効率でなければならない。

 犠牲は最低数値でなけれなならない。

 

 嘗て正義の味方(機械のような人間)は言った。

 十を生かすために百を殺し、千を殺すために百を殺す。

 

 しかし―――その式は間違えている。

 

 人の視点で眺めたが故に不必要な犠牲も勘定されている。真に払うべき犠牲の数を算出するにはより広義的な人類にとってという視点が不可欠だ。

 

 故にこそ―――次なる正義の味方(人間のような機械)は人類にとって害になるものを善悪を超越して殺した。

 

 しかし―――その式は間違えている。

 

 決定的滅びを回避するために殺すというが、そもそも介入せねば滅びるという状況が成立している時点で失敗している。正義の味方とは最も効率よく、最低限の犠牲で、切除するべき数値が最低でなければならない。

 

 故に必要な答えはただ一つ。

 犠牲を払わねばら無いならば、その要因のみを殺せ。

 滅びを回避するためならば、そもそも発生させなければ良い。

 

 そもそも彼らは間違えた。

 誰かの幸せを見るのが自らの幸せ?

 

 笑止―――正義の味方とは滅私奉公。

 即ち、他者救済を以って自らの幸せを願う時点で間違えている。

 

 正義の味方に救いは無い。

 正義の味方に希望は無い。

 正義の味方に幸福は無い。

 

 救いを望むのも、希望を抱くのも、幸福を得るのも、まだ見ぬ誰か。

 ならばこそ、大儀がためにこの世で最も許されざる所業を成す正義の味方に―――それらを抱く権利はなし。

 

 故に、故に、だ。

 

オレが(・・・)変わりに(・・・・)なってやるよ(・・・・・・)

 

 よって彼の名は定まった。

 この世で最も許されざる人類悪。

 (じんるい)を生かすため、(じんるい)を轢殺する超新星。

 

 一人目は間違えた。二人目は手折られた。

 ならばこその三度目の正直。

 

 今度こそ、か弱き民を救うため。

 今度こそ、明日に光を齎すため。

 

 憐憫の獣に共鳴して、地獄に生まれた新たな獣が新生する。

 照らす地平に闇は無く、遍く光があらゆる闇を一掃する。

 人類の多様性(悪性)を許さない絶対不当の輝きは正義であり悪。

 稀代の獣殺しでありながら自身もまた獣。

 

 ―――では英雄譚を語るとしよう。

 

 

………

……………

…………………。

 

 

 ―――何処だ、ここは……。

 

 その地獄を眼先に()の意識は浮上する。過去現在未来を焦がす普遍にして絶望の業火。星の新生を寿ぐ闇の輝き。地獄の住人は凄惨たるその光景を前にしかして動揺することなくただ戸惑う。

 

 ―――愚かな。視点が低い、見込みが甘い、だから詰めを誤る。

 

 轟ッ! と火の勢いが苛烈になる。

 だが、それは世界を燃やす火ではない。

 ただ一人、この世で最も許されざるものをひたすらに炙る赫怒の業火であった。

 

 ―――悪とは巨大であり、強力であり、狡知なるもの。小悪であるから? 未知であるから? 見極める努力を怠った時点で貴様の負けだ。

 

 赫怒の声が咎めるように非難する。

 そうして思い出す。直前の記憶を。

 

 ―――そうか、僕は……。死んだのか? 

 

 ただ一人を弾劾する声に僕は掻き毟りたいほどの後悔を噛み締めながら言葉を吐く。

 

 

 

 特異点F。

 

 カルデアが観測した未知の時代。2015年の未来において、本来存在するべきはずの無い領域は、将来的に人類の未来を枯らす異物と見做された。

 

 人類の文化が近い将来、潰えることを既に観測していたカルデアは、原因不明の滅びの正体をこの特異点Fだと仮定。これを調査、取り除くために四十九人のマスター候補は選ばれ、人類を救うために立ち上がった。

 

 そして、そして―――。

 

 ―――そして、レフ・ライノールの裏切りにあった。

 

 近未来観測レンズ《シバ》を作り、カルデアの活動に貢献した稀代の技師はしかして人類の破滅を望む獣の爪牙であった。

 四十九人のマスター候補は、カルデアの管理者たるオルガマリー・アニムスフィアとともに爆破という呆気ない殺傷手段によって残らず微塵と吹き飛ばされた。

 未来を担うための、希望ごとあっさりと。

 特異点に飛ぶため入ったレイシフト用のコフィンは一瞬で棺桶に早変わりしたのだ。

 

 

 

 ―――貴様は感じていたはずだ。奴の邪悪を、悪の気配を……お前はそれを見逃した。お前はそれを杞憂と受け入れた。その隙こそが連中を付け入れた。

 

 そう、悪とは卑怯であり狡知だ。

 一片の影、一片の隙さえあれば、嬉々としてその間隙を縫ってくる。

 

 ―――ああ、あぁぁあぁ……僕は……僕は……失敗したッ!

 

 僕は後悔に声を荒げる。

 だが、オレ(・・)だからどうした(・・・・・・・)と赫怒に濡れた声を上げる。

 

 ―――いいや、まだだ。奴は生きている。悪は存在している。ならば、まだだ。まだ終わっていない。終わって(・・・・)良いはず(・・・・)無いのだから(・・・・・・)終わらないのだ(・・・・・・・)

 

 レフ・ライノールの目論見に気付かなかった。

 結果として四十九人の救世主は残らず灰になった。

 

 だから? それがどうしたというのだ?

 

 レフ・ライノールは生きている。

 暗闇でほくそ笑みながら、望んだ通り事が運び喜んでいる。

 悪がいる、悪が生きている、悪が笑っている。

 

 ならばこんな所で死んでいる余裕は無い。

 ならばこんな所で死んでいる暇は無い。

 

 ただ一言、言えば良いのだ。そう……。

 

 

 

()()()ッ!! オレは終われない!」

 

 宝具解放(・・・・)―――安息の闇からイサク・ラフマーンは地獄へと帰還した。

 

 




では、英雄譚の幕を上げよう。
サカシマに廻れ、英雄よ。



―――最近、シルヴァリオシリーズの汚染がヤバイ。なんか全部、侵食されている気がする。この間も別サイト用のプロットで戦闘狂の悪役書いてたらいつの間にか本気おじさん的なものになってたし……。憧れた奈須さんの作風イメージは何処へ?
もう原型が『―』の多様(現在はただの癖)しか残ってないし。

テンプレ勇者に本気おじさんぶつけんのは駄目だろ……。
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