エレベーターをドクターは走って降りる。そこには既に何百人が詰まっていた。
「船長!どうなってるんですか!?急にこんな人が…」江原の部下と思われる人物が人ごみの中から出てきた。
「それよりも避難スペースを探すんだ!モニターを貸してもらう!」
ドクターが人ごみの中をかき分けていく。華は多すぎる人に押し流されながらもドクターのもとへ。
「船の全体図にはコントロールルームの横には何も表示されてない。だけどドライバーでデータをあぶりだせば…」
モニターに向けてドクターがソニックドライバーを向ける。画面は異音を立てた。すると全体図のコントロールルームの横の部分に大きな部屋が出現した。
「よし、本当にあったな!」再びドクターがモニターにドライバーを向ける。
部屋が大きく揺れ、部屋の右側の壁が消えて大きな部屋が現れた。
「あれは避難スペースというより…避難シェルターだな。ほら華みんなをあの中に案内して」ドクターが華の背中を押す。
華は部屋に近づき、人々を誘導していく。
「ここに入って!こっちは安全だから!」
動揺しながらもだんだんと大きな部屋の中へと入っていく。エリと江原は最後だった。
「私は船長だ。この船を…」
「僕に任せて大丈夫。あなたも避難して」
江原はそう言われシェルターの中に。エリもその中へと入っていった。
「じゃ、私はどうすればいいの?」華がドクターに聞いた。
「船を操縦してくれ」
ドクターがコントロールルームの巨大なモニターにドライバーを向けると、そこから操縦桿が煙と共に出てきた。
「これで操作するの!?」
「マリオカートは得意なんだろ?大丈夫だ。ハンドルリモコンみたいなものだから」
そう言うとドクターはエレベーターのほうへと向かった。
「船長に操作させればいいんじゃないの!?」
華が操縦桿を握りながら言った。
「今からやるのは少々…アレでね。江原船長が見たら怒るから。」
ドクターがエレベーターにソニックドライバーを向ける。扉全体に撫でまわすようにすると、エレベーターはガチャンと音を出した。
「よし!これで金属の密度を高めた。ここまで来ても簡単には食い破られない!」
「私はどうすればいいの!?」華が叫ぶ。
「大気圏に突入させるんだ。操縦桿を思いっきり押せば船は地球に向かって落ちてく」
「あなたはどうするの?」
「僕は別にやることがある!君は操縦係だ。いいね?」
ドクターがモニターの前に立ち、ドライバーで何かの情報を表示させる。
「もうやっていいの?」
「ああっ、ちょっと待って!」
そういうとドクターはモニター近くにあったマイクに声をかけた。
《こちらコントロールルーム!乗客の皆さん、部屋に入って、静かにして、部屋のどこかに掴まっていてください!ヤマタノオロチ参号は地球に…不時着します!幸運を!》
そう言ってドクターはマイクの電源を切った。
この放送で未だバグラに襲われていない区間はパニックに陥ることに。しかし言われた通り部屋に入り手すりなどに掴まる者も多かった。
「よし華、操縦桿を押せ!」
ドクターに言われ華は操縦桿を前に倒す。
ヤマタノオロチ号は大きく前傾し、地球へと落下を始めた。
バグラは船の中、そして表面から船を喰らい続けている。
無音の宇宙から地球へ。船はだんだんと炎を轟音と共にまとい始める。
炎は船の外だけでなく、バグラの開けた穴から侵入していた。居住区のほうへと炎が近づいていく。
「防火壁展開!」
ドクターがレバーを引くと、居住区のそれぞれの部屋の扉が鋼鉄にすり替わった。
「炎が近づかないと作動できないシステムなんだ。消火栓なしでもいい理由だ!」
バグラはなすすべもなく、炎に焼き尽くされていく。エレベーターを喰おうと降りていくバグラも炎に巻き込まれ炭と化した。
「ドクター!いつまで押し続けてれば!?」
「僕が合図したら今度は思いっきり引け!」
ドクターは掴まりながらモニターにドライバーを当て続けている。
「どこだどこだどこだ……」
地上では突然上空に炎をまとった物体の登場に戸惑っていた。
「あれはヤマタノオロチ号です!長官、このままでは地上に落下します!」
ヤマタノオロチ号は地表にだんだんと近づき始めていた。しかし華はいまだに操縦桿を押したまま。
「ドクター!熱いしもう地上も近い!墜落しちゃう!」
「待て!見つかりそうなんだ…よぉし!見つけた! ……新新羽田空港か!華!操縦桿を引いて右に曲げろ!」
華は言われた通り力いっぱいに操縦桿を引いた。ヤマタノオロチ参号は少しずつ後傾し、右に曲がっていく。
「でもこのままだと墜落する!」
「大丈夫だ!えーっと、ソニックドライバーの波長を500%にして…」
新新羽田空港では飛行機の出発は止まっていた。数時間前、空から炎をまとい何かが落ちてきていたからだ。
「これは何だ…?」
「電話ボックス…ですかね?」
それは青い箱。側面には扉と「POLICE PUBLIC BOX」と書かれた看板……ターディスだ。
「よぉしターディスとリンクした!フォースフィールド1000%展開!」
ドクターがソニックドライバーを空に向かい向けた瞬間、ターディスが黄色い光を放出し、ターディスの周りに球状の大きなバリアのようなものが展開された。
「何だこれは!?」ターディスを見ていた男が叫んだ。
「おそらく…危険です!逃げましょう!」
二人はそのまま空港内へと車に乗って走り去っていった。
「さぁ華!不時着するぞ!アロンジィ!」ドクターは高揚し叫んだ。
「キャアアアア!」
華の叫びが終わる前に、船は地面に激突。爆発音と共に暗闇へ意識が消えていった。
「華…華!」
華のほっぺたを叩きながら誰かが名前を呼ぶ。その声はだんだんと大きくなっていく。
華はゆっくりと目を開けた。目の前にいたのはドクターだ。
「ようやく目が覚めたな。大丈夫、軽いショックと脳震盪だ」
「船は…?墜落したの…?」華は体をドクターに支えられながら歩き出す。
「揺れはとても大きかったが船体は無事だ。生存者はシェルターに入っていた人に、居住区に居た数千人。計…2万人ぐらいか。居住区の生存者は少なかった」
「何人…死んだの?」
「あの船には10万人乗ってた。残念ながら8万は死んだ」
「そんな…」華は地面を見て気分を落とした。
「でも2万人も生きてた。その中に僕たちが。これはとても幸運なことだ」
「どうやって助かったの?」
「ターディスのフォースフィールドを1000%に展開してこの船全体を包み込んだ。落下の衝撃を80%軽減。ターディスが地球に落ちてなかったら今頃死んでたけどね」
ドクターは笑顔で答えた。
「まったく…本当に怖かったんだから」華がドクターの肩を叩いた。
「運が味方してくれるって言っただろ?」頭ババアに襲われたあの時の言葉を再び発した。
「バグラは全滅だ。地球に持ち込まなくて良かった」
船から出た二人。外は警察やら救急車で大慌ての様子だった。
「…それで虫は全滅。あっ、彼が助けてくれたんだ!」江原が記者の取材を受けていた。船から出てきたドクターを指さす。
「こういう取材は好きじゃない。ターディスに乗ってトンズラしよう」ドクターは華を連れてさっさと歩き去っていく。目的地はターディスだ。
「華!」遠くで取り調べを受けていたエリが走ってきた。
「ありがとう。あなた達のおかげで助かったわ」
「まさか、君がくれた情報のおかげだ。」ドクターがいやいや、という風に手を振った。
「そうだよ。ありがとう」華がエリに握手をした。
「どこに行くの?」エリが二人に聞いた。
「遠い空の彼方。私たち実は…タイムマシンで来たの」
「タイムマシン!?ってことはあなたたち未来から!?」
「いや、僕はエイリアンで華は過去の人間なんだ。未来人か過去人かは…曖昧で」ドクターが答えた。
「そうなんだ…なんだか複雑ね」
「私も。私たちはもう遠くに出かけなきゃいけないの。エリ、元気でね」
「ああ。元気で。」ドクターも一言言った後、ターディスへと乗り込んだ。
「これがタイムマシン?」エリがターディスに指をさした。
「そうなの。見てて!」
華がターディスの中へと入っていく。エリはターディスがどうなるのか、興味津々で見つめていた。
……しかし1分経っても何も変わらず。すると中から華とドクターが出てきた。
「ちょっと!?燃料切れってどういうこと!?」
「さっきフォースフィールドを展開したせいで使い切ったんだ。時間は飛べるけど±10分だけ」
「どうしたの?」エリが華に聞いた。
「さっきエネルギーを使ったせいでターディスがエネルギー切れ起こしたんだって。どうするの!?」華がターディスをトントン叩きながら迫る。
「あー…時空の裂け目から燃料が補給できる。ロンドンのカーディフにある」
「ロ、ロンドン!?ここ日本だよ!?」
「だから困ってるんだ。ターディスをそこまで持っていくには金と時間が…」ドクターが悩んでいると、横から男の声がした。
「それを運ぶのか?」
江原だった。後ろには大きな浮かぶトラックが。
「命を救ってくれたんだ。箱ごとトラックで送ろうか?」江原のトラックがピッピッという音と共に扉を開いた。
「おぉ!ありがたい!人助けはするもんだな!」ドクターが江原に抱きついた。
「さぁ!カーディフまでターディスを運ぼう!長旅になるぞ?」
ターディスがトラックに積まれ、華はエリとお別れの儀式を行った。ハグしたのだ。
ドクターと華、そしてターディスを乗せたトラックが出発する。落ちたヤマタノオロチ号を後にして。
「ドクター、燃料補給したらどこに行く?」
「そうだな……次は過去に行くか?」
ドクターは笑顔を華に向けた。華はドクターの腕をがっしりと掴んでいる。
二人を乗せたトラックは、空の彼方へと飛んで行った。
次回の舞台は…過去です。戦の中に飛び込んでいきます。