鬼といえば鬼滅の刃ですね。でもあっちの鬼は角があるイメージあんまりないですね
ドクターと華はこの時代に合うような服に着替え、屋敷の中で山へ行く準備を始めた。
「ねぇドクター、いいのこんなことして?」
「こんなことって?」
「歴史に介入することよ。漫画なんかじゃ過去の出来事には不用意に手を出しちゃいけないって言ってる。実際そうじゃないの?」
「当然だ。歴史はとても脆くて少し手を出したら崩れてしまう」
「じゃあどうして徳川家康の頼みを聞いたの?」
「彼が言ってただろ、『私の首がとられるのも時間の問題』だって。徳川家康はこの後江戸幕府を開く。もし鬼のせいで家康が史実通りに天下をとれなくなったら?」
「たしかに……」
華は納得した。
「歴史に僕たち以外の存在が介入し、歴史が変わりかけるなんてことはザラにある。これは歴史を変えるんじゃなくて、歴史を元通りにすることなんだ」
「じゃあ鬼をこのままにしておくと歴史に影響が起こるかもしれない……ってこと?」
「その通りだ。鬼が何者なのかも突き止めないと。ただの時間旅行よりスリルがあるだろ?」
華は大きなため息をついた。時間旅行は楽しいが、スリルのある冒険はもう疲れてきたのだ。
二人の準備は終わりかけると、部屋に突然兵士が入ってきた。
「あの!お二人が鬼の一族というのは本当でしょうか!?」
「え、あ、ああそうだけど…」
ドクターがそう返事をすると、その兵士はドクターの手を強く握った。
「某は、譲之介と申します!昔から鬼について研究していたんです!」
「へ~、そうなんだ!」
兵士はパッと見、華と同じぐらいの年代に見えた。昔はこれほど若い子でも戦に駆り出されていたのか。
「本当はこんな争いごとは苦手で、兵士になりたくはなかったんです。でも大好きな鬼とこうして面と向かい話ができるだなんて……!」
譲之介はドクターの手を強く握った。痛いぐらいに。
「あ、ああそれは良かったな……」
そこに槍を持った別の兵士が、戸を叩いて言った。
「準備ができたならもう出発するが」
「ああ。僕たちはもう準備できてるよ」
ドクターと華は、みなりを整え、譲之介を含めた兵士達と共に鬼の住む山へ向かうこととなった。
ドクターと華は街の中を歩く。
兵士たちと共にいるため、商人から物を買うなどといったことはできない。
「こういう時代といったらやっぱり団子とかじゃない?」
「団子より美味しいものはたくさんある。寿司は美味しいぞ。既にこの時代にはある」
「へー、じゃあ終わったら食べに行こうよ!」
「でも正直、21世紀の寿司のほうが僕は好みだな」
話している二人を、後ろからいかつい顔の兵士が押す。
「早く歩け」
「まったく、こっちは鬼の説教しに行ってあげるって言うのに」
「鬼さん!そんな怒らないでください!寿司なら僕があとで買ってきますから!」
譲之介がドクターの背中をさすりながらなだめる。
「なんだ、これぐらいで怒って食ったりするようなほど短気じゃないよ」
そんな話をしているうちに、人の行きかう街はうしろのほうへに去っていた。
そして目の前に見えるのは、鬼の住むという山。
「ここが家康が戦をしていた平原か」
「鬼が現れ、兵士たちを奪い山へと帰っていったのです。私たちだけでなく、敵の軍の兵士たちまで」
「なんで兵士を奪っていくんだ?もし殺すならわざわざ連れ帰ったりしないはずだ」
「ひょっとして実験……に使ってるのかも」
華が言った。
「ああ。エイリアンなら地球人を実験台に使うのはよくあることだ。でもどうして戦の時に?」
「鬼はこの山の奥にある里に住んでいるという噂です。誰も立ち入っていないため、情報は少ないですが」
譲之介が手にした巻物を広げながら言った。
「大丈夫だ。鬼の勘で行けるさ」
ドクターは先陣を切って進みだした。兵士たちもそれに連なって進んでいく。
山の中は木が茂っていて、じめじめとした空気が進むにつれ大きくなっていく。
ぬかるんだ土には、鬼のものと思われる大きな足跡が。
「お前たちは鬼の一族と言ったな?」
「え?そうだけど…」
兵士の質問に華が返す。
「鬼にしてはお前たちは人間的だ。なぜだ?」
「僕たちは鬼と人間のハーフなんだ。人間の方の血が濃いから人寄りの姿に」
「へぇ~、人間と鬼って交配できるんですね!」
ドクターの嘘を信じる兵士達。華はそれを見て少し笑った。
「華、鬼たちについてひとつの仮説を思いついたんだ」
「仮説?」
「ああ。僕たちが見たようなあの鬼。おそらくオガスって星の住民さ」
「じゃあやっぱりエイリアンなの?」
「ああ。だけどオガスに住む鬼は見た目こそ恐ろしいが、温厚で優しい。前行ったことがあるんだけどとてもいい場所だった」
「へぇ~」
華とドクターがひそひそと兵士たちに聞かれないように会話をする。それを不審に思った兵士が話しかける。
「なにをひそひそと話をしている?」
「え?鬼のいる場所はどこかなって話してただけだよ」
「どこか分かるんですか?」
譲之介が聞いた。
「ああ。これを使えばね」
ドクターは袖からソニックドライバーを取り出す。
「それは何ですか?」
「鬼の一族に代々伝わる道具だよ」
「それで鬼の居場所わかるの?」
「もし鬼がオガスから来たなら何かしらの機械を持っているはずだ。オガスは文明が発達しているからね」
ドクターはソニックドライバーを天にかかげる。
兵士たちはソニックドライバーを神のように仰いだ。
そして10秒ほどドライバーを鳴らしていると、ドクターは変に思ってドライバーをおろして見つめる。
「おかしいな、機械の反応がどこにもない」
「オガスとは違うんじゃない?」
華がドクターの肩を叩いた。
「確かに似た存在って可能性もあるかもしれないけど……」
ドクターがドライバーを袖にしまい、再び歩き出す。
「機械があるならたとえ壊れていても何かしら反応があるはずなんだ。それがないだなんて」
不思議に思うドクター。やはりオガスの鬼ではないのだろうか。だとしたら鬼はもともと日本に実在していたのだろうか?
山の森も深いところまでやって来た。そこで見つけた不思議なものは、鬼が通った後と思われる木が倒れている場所。岩もそこらに現れ始め、鬼の里も近くなってきたと思えてくる。
華は鬼を見たいという気持ちと、早く終わらせて団子を食べたいという気持ちが半々であった。
そんな油断をしている中。
華は地面に仕掛けられていたぴんと張ったひもにつまづいてしまう。それは罠だった。
地面から大きな網が現れ、体が反応する前にその罠にはまってしまう。
その罠にかかったのはドクターと華、譲之介と兵士の一人だった。
「うわぁ! なんだこれ…っ」
「ドクター! さっきのソニックドライバーで罠があるってわからなかったの!?」
「原始的な罠は分からないんだ! ドライバーで糸を切れるかどうか……」
取り残された兵士たちは網を引き裂こうとするが、兵士の一人があることに気づいた。
「あれを見ろ!……鬼だ!」
罠を確かめに来たのか、赤い体の鬼が目の前に現れた。
「ほら見ろ華。あれが鬼だ」
鬼の体長は3メートルほどはあるだろうか。人で言うところ、日焼けした後の体のように赤い皮膚。黒い髪の毛はぼさぼさで、その間からは黒と黄色の縞模様の角が生えていた。伝説で見るような鬼そのものだった。
兵士たちは槍を手に鬼に立ち向かう。しかし鬼の表皮は硬いのか、まったく槍の攻撃を受け付けない。
鬼は兵士の一人を持ち上げ、投げて木に叩きつける。
怯えた他の兵士は武器を捨て、一目散に逃げだす。叩きつけられた兵士も痛む体を起こして逃げ出していく。
「ちょっと! なんで逃げるのよ……!」
「勝てない相手にわざわざ立ち向かわずに退散するだなんて賢い兵士だ」
ドクターが逃げる兵士を見ながら言う。
「なぁ! あんた達鬼の一族ならここから出してくれと頼んでくれ! 」
一緒に閉じ込められた兵士の一人がドクターに言う。
「あー、そのことなんだけど、僕たち実は鬼の一族じゃないんだ」
「ええっ!? 」
譲之介は口を開けて驚いた。
「鬼の近づくための嘘なんだ。でもこの状況はなんとかして見せる」
ドクターは網の中から兵士たちを追う鬼に話しかける。
「なぁ、ここから出してくれないか! ただ旅の途中で来ていただけなんだ。僕たちは危険じゃないから」
鬼がドクターの方を向き、声を出した。
「人間が山に立ち入ることは許さない」
「お、鬼が人の言葉を分かった!? 」
「ターディスの自動翻訳機能が働いているんだろう。鬼とは会話できなかったのか? 」
ドクターが譲之介に聞いた。
「あ、ああ。まともに話す鬼なんてあんた達ぐらいしかいないと思った。これまでに出てきた鬼は唸り声しかあげなかったから…」
「それで、私たちをどうするつもり?」
「長のもとでお前たちの処分を決める」
鬼はドクターたちの入っている網を片手で持ち上げ、森の奥へと歩き出した。
次回は鬼の住む村に行きます。
鬼はどこからやってきたのか・・・?