DW、ようやくS12が来ましたね
第5話も楽しみです
ドクターたちを運ぶ鬼。ドクターは今この状態で鬼に交渉しても意味がないと悟り、何もしゃべらなくなっていた。
いつもは耳がおかしくなるほど喋っていてうるさいドクター。華は珍しいと感じた。
鬼がやってきたのは森の奥にある大きな谷。一本橋がかけられている。
「まさかこの橋を渡るのか? 」
兵士が不安そうに言った。
「何度も通っているということは耐久性には問題ないんだろう」
ドクターがソニックドライバーをいじりながら言った。
鬼は不安定な橋の上を歩き始める。大きな体でこの橋を渡るとなれば落ちそうなものだが、ドクターの言った通り何も問題はなく、鬼は橋を渡り切った。
橋を渡った先にあったのは岩でできた門。鬼が片手でその門を開く。
その先にあったのは、岩や木の大きな家々達。つたが絡まっている様子からはこの村が古いというのが分かる。これが……
「鬼の住む村、か」
家々の中からは小さい鬼、体の青い鬼、様々な鬼が現れ、網に捕まっているドクターたちを不思議そうに見つめていた。
「ゲンゾー、罠にかかったのか」
「ああ。長にこいつらの処分を決めてもらう」
ゲンゾーと呼ばれたドクターたちを捕まえた鬼は、村の奥へと進んでいく。
ゲンゾーはやがて村の中にある大きな木製の家の中へと入っていった。
木製といっても町にあるような瓦屋根の家ではなく、木を適当に切り倒して、それを研磨などせずに並べたような煩雑なものだった。
「長、人間たちを連れてきました。どうも鬼の言葉が使えるようで」
ゲンゾーはドクターたちの入った網を開いてドクターたちを長の前に出した。
長は黒い皮膚に白いひげをたくわえ、髪はほとんどない分、大きな角が印象的だ。
「鬼の言葉が使える……?」
長はドクターたちに神妙な顔を向けた。
「鬼の言葉が使えるんじゃなくて、僕たちが同じ言語を使えるように変換されてるんだ。いや、違ったかな?」
「なぜ我々の里へ侵入しようとした?」
長は荘厳な雰囲気を醸し出しながらも、その口ぶりにはどこか優しさも感じられる。華とドクターはそれを確かに感じ取った。
「実はその……キノコを探してて!そうしたらたまたま罠に引っかかってしまって……」
「よせ華。嘘なんて言ったってすぐに見破られるし信用も無くす。ここは正直に言おう」
ドクターは深く深呼吸をしてから口を開いた。
「徳川家康からの命で君たちと話し合いをしに来たんだ。」
「その者の名は聞いたことがある。人里で名を広めている男だな。……それで、話があるというのなら聞いてみよう」
「それで、どうして君たちは人間の戦に介入するんだ?里に隠れて過ごしているなら、出てくる必要な無いように思うけど」
「人間には分からないだろう。我々は住む場所を追われ、このような人も寄り付かない里でしか暮らすことができない。生き残った鬼も今や我らだけ。人間たちの戦がもしこのまま拡大すれば、いずれは我らの里へ戦火が広がる。」
「なるほど、戦が続けば自分たちの住処がまた奪われるから……ということか」
「本当にもうここにいる鬼で全員なの?」
「ああ。我らは長い間人間から隠れ生きていたが、それももう終わってしまう。少しでも長く我ら鬼の一族が存続するため、人間たちの争いを止めなければならない」
「なるほどねぇ。だがわざわざここに居ることもないんじゃないか?それこそ君たちの故郷、オガスにでも帰ればいいじゃないか」
長に他の鬼たちがそれを聞いた途端、「思い出した」かのような反応をすることにドクターは期待していた。しかし鬼たちの反応はとても薄いものだった。
「オガス?それは……一体何だ?」
「何って、君たちの故郷さ!惑星オガス、こんなちっぽけな森、日本とは違って大きな宇宙にある星さ。君たちはそこから来たんじゃないのか?」
「勘違いしているようだがね、君。我々はずっとここで暮らしてきた。証拠だってある」
長は部下の鬼に命令を出し、ある書物をとってこさせた。
「これは?」
「我々の一族に伝わる一つの書物だ。」
ドクターはその本に向けてソニックドライバーをかざす。本の材質や構成を分析しているのだ。
「紙は地球の木からできてる。装丁もかなり古いものだ。つまり……」
「どういうこと?」
「彼らはオガスから来た鬼じゃないってことだ。地球に元から存在していたんだ」
「これで分かっただろう。」
「いやいや!まだ聞いてないことがありますよ!」
譲之介が話題に突然入ってきた。譲之介は懐から一枚の巻物を取り出した。
「これは鬼に連れていかれた者たちの一覧です!彼らはいったいどこへ?まさか……食ったのか!?」
「まさか。彼らは食ってなどいない。それに我ら鬼の一族は菜食主義なのでな」
長の後ろから、鬼に連れられて足に包帯を巻いた兵士が現れた。顔は血色が良く、片手では杖をついている。
「あの方は?」
「戦地から救出してきた人間の兵士だ。」
「なるほど、つまり怪我をした兵士を助けてあげているのね。鬼たちって優しいのね」
「ああ。僕も正直凶暴だと思ってた。だけどこれなら安心かも……」
「それで、この者たちの処分を。いずれにせよ我らの里に侵入しようとしたものです。いくら話し合いが目的とは言え」
ドクターたちの後ろで動きを監視していたゲンゾーが声をあげる。
「ええっ!?処分って……ねぇドクター!」
「下がっていろ。ここは私が……」
ドクター、華、譲之介と共に捕えられた兵士が懐から刀を取り出し、鬼の長へと向けた。
「この者たちの処分は明日に決める」
「長、なぜですか?」
「この者たち……いや、この者は、我らの未来を切り開いてくれる。そんな気がするのだ」
長はドクターにその顔を向けた。
「もちろん。そのために僕たちはここへ来たんだ」
「ところで、お前の名前は?」
「僕はドクター。こっちは華。それでこっちは譲之介。それで……」
「私は銀次だ。」
「そう、銀次だ。」
「人間とまさか話ができるとは私も思ってはいなかった。もっと早く人間と話すことができていれば、鬼はこれほど数も少なくならなかったろうに。」
「だけどようやく機会が訪れたんだ。僕も最善を尽くすよ」
ドクターは長に対し、深く礼をし、長も会釈程度に礼をした。
「それでドクター、鬼の皆さんのところで一夜は明かすらしいけど……」
「明日になったら家康のところへ戻ろう。そして鬼側の事情を話すんだ。彼らが怪我をした兵士を治療していると分かれば、きっと家康も理解してくれるさ。いくら戦乱の世とはいえ人間の心は鬼になったわけじゃないからね」
ドクターは鬼から貰った葉っぱの布団で、岩の上に寝転がる。
「もし彼らがオガスから来た鬼なら、これほど文明が落ちてるはずがないな。やはり僕の勘違いだったか」
「ねぇドクター、さっき鬼の子供と話したんだ」
「それはすごい。異種族と話すなんて普通の人間じゃないことだよ。」
「鬼の子供たちも不安みたいだった。まだ幼いのに自分たちの状況とかよく分かってるのね」
「それはここまで追い込まれてしまえば、嫌でもわかるものさ。でも君たち人間はいまいち自分たちの置かれている状況がわかってない」
「どうして?現代も、日本も平和でしょ?まぁグレイヴに地球は侵略されかけたけどさ」
「平和なんて一時的なものに過ぎないんだ。災害に戦争。僕は未来の地球をたくさん見てきた。ここだけの話、第三次世界大戦だって起こるんだ」
「それは分かるよ。いつか起きるって私も知ってる。」
「地球は知らない間にいつだって存亡の危機に立たされてる。だから未来を見据えて行動すれば、きっと良い未来が訪れる…そうでいてほしい」
ドクターはゆっくりと大きなため息をつく。手に持ったソニックドライバーを宙に投げながら、言葉を進める。
「だが見据えても、知っていても、なんとかなるものじゃない。歴史は不可抗力なんだ。たとえ鬼たちがここまで少なくなることを見ていたとしても、結果は変わらない」
「本当に?」
「ああ。でもそんな世界が僕は嫌いだ。結果を変えられるものなら僕の故郷の星だって、今頃宇宙に浮かんでた」
「えっ?」
ドクターは葉っぱの布団をかけて華にそっぽを向いた。
「別に滅びたわけじゃない。まぁ、いろいろあって。今じゃ無いようなものさ。」
「そうなんだ……」
「でも一つ、君に知っていてほしいことがあるんだ」
「何?」
「子供たちは未来なんだ。君も、まだ子供だ。大人になってしまえば後戻りはできなくなる。僕みたいに」
「あなたも子供じゃない」
「見た目はね。中身は老人さ。未来は明るいとは言えないが、今の子供たちが未来を見据えれば、少なくともマシな未来にはなるはずさ」
「分かった。記憶しておく」
華はドクターとの会話を終え、ゆっくりと目を閉じる。鬼が傍にいると考えると落ち着かなくてなかなか寝付けないが、すぐ横にはドクターがいる。安心はできる状況だと自分に言い聞かせ、眠りにつく。
しかし眠らないドクター、そこに鬼のゲンゾーが現れた。
「子供は未来か。人間もそんなことを考えるんだな」
「ああ。鬼も人間も、心ある生命は同じようなことを考えるものさ」
「この子たちが心配なんだ。我ら鬼の数は少ない。もし人間にこれ以上住む場所を追われれば、この子たちに未来を見せることができない」
「心配することはないさ。子供たちは強い。いつの時代でも、どこでだって」
「ずいぶんといろんなものを見てきたみたいだな。お前らは人間の中でもなかなか良い存在だ」
「そう言ってくれて嬉しいよ」
ゲンゾーはドクターに別れを告げて消えていく。そしてドクターも眠りへ。
やがて華とドクターが眠り、寝静まった頃、銀次は目をゆっくりと開き、腰を上げて立ち上がった。
「華!起きろ!」
「んん……おはよう……」
「寝ぼけてる場合じゃないぞ。大変なことになるかも」
ドクターはポケットに手を突っ込みながら何を焦っているのかその場をずっとうろうろしている。
「どうしたの?」
「ソニックドライバーが無くなったんだ!それと」
ドクターは誰も寝ていない空っぽの布団を指さした。
「銀次が居なくなってるんだ。寝ている間に……おそらく僕のドライバーを盗んで」
「盗み出して逃げ出したってこと?」
「ああ。そして大変なことっていうのは、銀次が家康のもとに戻って鬼側に攻撃を仕掛けようとするんじゃないか、ってことだ」
「そんな……」
「しかしどうやって夜の暗闇を抜けたんでしょう?足場も悪い森の中を抜け出すなんて無理な話ですよ」
譲之介が朝とはいえいまだ暗闇が奥に広がる森を目にして言った。
「ソニックの波長を変えれば懐中電灯のような使い方ができるし、森の中の危険なものを分析しながら進むことも可能だ。銀次が使い方を知っていればの話だけど」
「あの者が逃げ出したというのは本当なのか?」
鬼の長がドクターたちの前へと現れた。その顔は昨日と違って優しさは感じられなかった。
「本当に申し訳ない。僕がもっと見ていれば……」
「いや、我らこそ監視の目を怠っていた。もし人間が我々の里に攻め込むのなら、我らも戦うしかない。」
長は部下にある命令を出した。それは里を下りて人間の動向を確認するというもの。しかしあくまで攻めてくるのは推測。
「それで僕たちの処分というのは……」
「それはこの一件が片付いたらだ」
譲之介の質問に長が瞬時に返す。今は何もできないドクターたちは里から帰るための準備をまずは進める。
銀次はその頃、家康の屋敷へ到着しようとしていた。
「家康様、鬼に連れ去られた者の一人が帰ってまいりました!」
「何だと?」
道中でなったのか、銀次の服は汚れ、体は怪我をしていた。そして手にはドクターのソニックドライバーが。
「家康様。鬼の住む場所を突き止めました。なんとかそこから命からがら脱出しここまで。鬼たちは我らの町を襲うつもりであります。鬼の好きにさせていては、家康様の天下を取るという夢も叶わなくなってしまいます」
「そうか、ご苦労だったな……そうであれば看過することはできない。今こそ鬼退治といこう」