DOCTOR WHO 青い箱の中の少年   作:ナマリ

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第3話完結です。
今年には少し進められたらいいなぁ
第4話はなるべく早いうちに……


第三話 PLANET OF THE OGRES〈鬼の惑星〉PART4

 

銀次はその頃、家康の屋敷へ到着しようとしていた。

「家康様、鬼に連れ去られた者の一人が帰ってまいりました!」

「何だと?」

道中でなったのか、銀次の服は汚れ、体は怪我をしていた。そして手にはドクターのソニックドライバーが。

「家康様。鬼の住む場所を突き止めました。なんとかそこから命からがら脱出しここまで。鬼たちは我らの町を襲うつもりであります。鬼の好きにさせていては、家康様の天下を取るという夢も叶わなくなってしまいます」

「そうか、ご苦労だったな……そうであれば看過することはできない。今こそ鬼退治といこう」

 

 

「長、報告があります。人里から数多の兵士がこの森へ向かっています」

「やはり来たか……戦える者をかき集め、兵士たちを返り討ちにしよう」

長は部下に命令を下し、いよいよ鬼と家康軍の戦いが始まろうとしていた。

ドクターと華、そして譲之介は家康の元へとまずは戻る準備をしていたが、「危ないのでここにとどまっていてください」と言われ、動き出せずにいた。

「でも鬼と人間が戦ったら、人がたくさん死んじゃう!何とかして止めないとドクター!」

ドクターは座って思考を巡らせているようだが、華は気にも留めない。

「ねぇ、ドクターも何か言ってよ!」

「いや、そうか……そういうことだったのか」

「何か気づいたんですか?」

譲之介の質問に、ドクターは早口で答える。

「どうして未来に鬼が存在しないと思う?それはまさに今日、ここで絶滅してしまうからだ」

譲之介と華はそれを聞いて呆然とした。

「いや、ちょっと待ってよ。家康は言ってたよね?鬼一人に対して兵を百人動員しても勝てないって……」

「あれは僕たちに行かせるための嘘みたいなものだろう。鬼がそれほど強かったら、ここまで数は減ってないはずだ」

鬼は今まさにこの戦で滅び、そして後世には伝説とだけしか伝えられないこととなる。ドクター曰く、そういったことは珍しい事ではないらしい。

「じゃあ、どうするの?」

「歴史がどう転ぶか見守るしかない。決着がついたらターディスを取りに行こう」

華はそれを聞いて肩を落とす。ここには戦に出ない女子供がたくさん居る。もし戦に出た鬼たちが全滅すれば、ここの鬼たちもすべて殺されてしまうだろう。

「まだここには鬼の子供たちが残ってる。この子たちまで……」

「子供……」

ドクターはその言葉を聞いて考えを巡らせる。そして一つの結論にたどり着いた。

「そうか!子供か!」

「鬼の子供たちがどうかしたんですか?」

譲之介は興奮しているドクターに質問をする。

「華、僕が昨日の夜言ったはずだ、子供たちは未来だって!」

「確かにそう言ってたけど……」

「この子たちがまさに文字通り未来なんだ!よし、ターディスに取りに行くぞ!」

ドクターは荷物を持って走りだす。華と譲之介はよく分からないままドクターについていく。

しかしその瞬間、兵士たちの大声が聞こえてきた。

「今の何?」

「勝鬨があげられたんだ。つまりは鬼との戦が始まった合図だ」

「では急がないと!しかしここから家康様の屋敷までは距離がかなりあるのではないですか?」

譲之介が言った。鬼の里まで来るのに1日近く時間がかかった。徒歩で、仮に走って言ったとしてもかなり時間がかかることは確かだ。

「大丈夫。馬を使って行けばいい」

 

 

鬼の里近く、家康の命により里の場所を探しに一人の兵士が馬に乗りながら現れた。

「確かこのあたりだったか……」

彼は槍を背中に、刀を腰に携えている。仮に鬼が襲ってきても返り討ちにできる装備だ。槍は効かずとも、目などを狙えばいい。

「ドクター、馬を奪おうとしてもあんな装備じゃ返り討ちにされるよ?」

「こういうときのためにこれを持ってきてるんだ」

ドクターは荷物の中から小銃を取り出した。見た目からするに未来のものだろうか。

「それでどうするの?」

「こうするんだ」

ドクターは兵士のうなじに向かって引き金を引き、銃口から音を立てて現れたレーザー弾が彼のうなじにヒットした。

兵士は意識を失い、落馬した。

「ドクター!殺したの!?」

「まさか、殺しは嫌いだ。これはただのショックガンだよ。1時間は目覚めないはずだ」

ドクターは華と共に乗馬。馬の扱いには慣れているというドクター。馬もすんなり彼らを受け入れたらしい。

「それで、僕はどうすればいいですか?」

馬には3人も乗れない。ドクターは少し思案してから話した。

「君はここで鬼たちを見守っていてくれ。それとこれがショックガン。もし兵士が来たり兵士が起きたら撃ってくれ。それと、心臓は狙わない様に。そうすると死んでしまうから」

ドクターは譲之介に別れを告げ、馬を走り出させる。森の中は足場も悪く、途中で降り落されそうになるが、この馬は優秀なのか、二人とも森を抜けるまで落馬することはなかった。

そして森を抜け、平原へたどり着く。既にそこでは戦が始まっていた。鬼たちは棍棒を手に家康軍の兵士と戦っている。

槍はあまり効いていないようだが、既に家康軍は対策を撃っていた。火をつけた弓矢で鬼を撃ち抜く。すると鬼の体は燃える。その戦略が効いたのか、戦場には鬼の黒焦げの死体がいくつも残っている。

「ひどい……」

もちろんそこには人の死体も多かった。まさしく死屍累々。しかし進むにはここを通るしかない。ドクターは馬を走らせていく。

鬼と人との争いを横目に、平原を突き進む。ドクターは一言

「争いごとは嫌いだ」

と呟く。時折焦げた草も見えながら、平原を抜けて町中へ。

町人は馬に乗り駆けてゆくドクターと華を奇異の目で見つめていた。途中曲がり切れずに商店に激突してしまうが、なんとか落馬せずに立ちなおし、そのまま町中を突っ切って家康の屋敷へ。

「屋敷に行くなら門を通らないと!」

「真正面から行ったら捕まる。僕たちは兵士たちから鬼の一族だと思われてる。今や家康たちは鬼を滅ぼすことに無我夢中だからな。見つかったら殺される」

「じゃあどうやって行くの?」

「裏口か……もしくは壁を越えるか!」

 

 

ドクターと華を馬を停め、家康の屋敷へ馬にくくりつけられてあった鞍を使い壁を登って侵入した。

多くの兵士は戦に出ているのか、中にはほとんど誰もいない。

「今がチャンスだ。とはいえ誰かがいるかもしれない。怪しまれないよう、忍び足で……」

庭の石を鳴らさないように進み、廊下へと足を進める。

「ターディスってどこにあるの?」

「恐らくこの屋敷のどこかの倉庫に。とにかく屋敷中を見つからない様に回って……」

「おい!そこで何をしている!」

ドクターと華の前に現れたのは銀次だった。二人の兵士を連れて廊下を徘徊していたのだった。

「まずい!華、君は別の方向へ逃げろ!」

「わ、分かった!」

ドクターと華は銀次から逃げるため、二手に分かれることとなった。

「お前たちはあの男を追え!」

銀次は華のほうを追いかけるようだった。刀を鞘から出し、片手に華を追いかける。

しかし少し逃げた先は行き止まり。壁をいくら叩いても忍者屋敷のように隠し扉は出てこない。

「どうしてこんなことをするの!?昨日は守ってくれてると思ったのに!」

「私たちの目的は最初から鬼の居場所を明かすこと。鬼の一族……いや、それに成りすましたお前らを利用してな。あくまで私が生き残って家康様に場所をお伝えするために自衛しようと思ったまでだ。それにこの鬼の道具は素晴らしい。夜道でも安全に町へ戻ることができた」

銀次は懐からソニックスクリュードライバーを取り出し、それを鳴らす。

「やっぱりあなたが盗んでいたのね……!」

「お前たちは一応“鬼の一族”だ。ここで首を撥ねさせてもらおう。女に手を上げるのは趣味ではないが……」

銀次は刀を思いきり振り上げ……

振りかざす前に、不思議なエンジンの音と共に華の周囲にターディスが現れた。

「なっ、青い箱……!?」

銀次は突然目の前に現れた青い箱に呆然としていた。華はターディスに救われ、安堵した。

「もう!どうしていきなり二手に分かれようだなんて言うの!」

「しょうがないだろ、でもその間にターディスを取り戻せた。追手だけど、なんとか撒けた。走るのは得意なんだ。よし、それじゃあ……」

ドクターはターディスの扉を開き、銀次の前に出る。

「その箱を返すとはまだ言っていないぞ」

「僕は宇宙人なんだ。地球のルールに従うと思うか?」

ドクターは懐から銃のようなものを取り出し、銀次の目元で光らせる。すると銀次は気を失って後ろに倒れた。

「麻酔光銃だ。出てくる光を見せると眠らせられる」

「ショックガン使えばよかったのに」

「あれは遠距離用。こっちは近距離用なんだ」

ドクターは倒れた銀次の手からソニックスクリュードライバーを奪い返した。倒れた銀次がしっかり眠っているのを確認し、ターディスの操作盤へと戻る。

「よし。じゃあ華捕まってろ。鬼の里まで行く!」

 

 

青い空に緑の大地。入植者なら誰もが羨むであろうこの土地に独特のエンジン音をふかしながらターディスが着陸する。

「座標はここで合ってるな……」

ドクターはターディスの扉を開き、その広い大地を見つめた。

「ようこそ。ここがおとめ座の惑星、オガスだ」

ターディスの中から、子供の鬼たち、女性の鬼たち、そして譲之介が出てきた。

「すごい……あの青い箱がまさか……中が広いだなんて!」

「驚くのはそれだけか?瞬間移動もできるのに」

ドクターはターディスで鬼の里に向かい、そこで鬼の生き残りを連れ、「もう何にも追いやられることの無い平和な世界」と説明し、やがて鬼が支配することとなるこの星、オガスへと連れてきたのだ。

譲之介はそこにただ置いておくわけにもいかないということで、

鬼たちは目の前に広がる平和な大地に驚きつつも、喜びからか涙を流している者もいた。

「この星はなんの侵略も受けない。一切の戦も起きない」

「ここがその土地……」

「でも……お父さんたちは……」

鬼の子供の一人が悲しい顔で地面を見つめる。ドクターはそんな子の前に立ち、腰を下げて同じ目線にしてから話し始める。

「君たちのお父さんたちは君たちを守るために戦いに行ったんだ。もしもあのまま君たちが残っていたら、君たちもまた殺されてしまう。いいかい、お父さんたちの意志を君たちが継ぐんだ」

鬼の子はうんとうなずく。

「大丈夫なのかな、この世界で」

「この星はやがて発達した機械文明を持つことになる。この子たちの手で未来が切り開かれていくんだ」

「このことが分かったから鬼のみんなをこの星に?」

「ああ。一つの文明の誕生に僕たちが一つ手を貸したんだ。たまにあることさ」

「良かった。ここからドクターの言ってたオガスが生まれるのね」

「歴史的瞬間が見れてうれしいか?さぁ、僕たちの出番はここまでだ。」

ドクターは譲之介と華を連れ、ターディスに戻る。そして船はあのエンジン音をふかしながらこの星を後にした。

 

 

「家康様、鬼の里を探しに行った者から報告です」

「何だ?」

「鬼の里と思われる場所は発見しましたが、鬼は一匹も居なかったと……」

「逃げたか、それともここに倒れている鬼で全てか……」

家康は馬上から戦の痕を見つめる。自らの兵士、鬼の兵士、数えきれないほどの死体がそこに転がっている。

「深追いは無用だ。仮に逃げたのなら我々の手で斃せるほど弱い者だろう。これで鬼との戦は終わりだ」

家康は手に持った刀をゆっくりと鞘に戻す。その時、部下が再び声を出す。

「それと、屋敷で銀次が鬼の一族である二人に襲われて青い箱を奪われたとか……」

「なんだと?」

それと同じ時刻、青い箱、ターディスは家康たちから離れた平原に着陸した。

「ドクター、どうしてここに?」

「最後にひとつだけやらないといけないことがあるからね」

その青い箱の扉を開く。すると目の前には体中傷だらけ、ところどころには火傷の痕が残る。そこには鬼のゲンゾーが居た。

「お前たちは……」

「ひどい傷……手当しないと!」

華はターディスに戻り、どこかにあるはずの救急箱を探しに行こうとする。

「いや、あの状態じゃもう助からない」

「じゃあ何?助からない人を前にして……」

長は体力ももう限界なのか、その場に倒れこんでしまう。

ドクターと華、譲之介はすぐさまゲンゾーの元へと駆け寄り、ドクターは彼を腕に抱える。

「ああ、鬼のみんなを守れなかったことが……ゴホッ、私にとっては心残りなんだ。戦には負けた。人間は我々より力で劣るとはいえ、その数は侮れない……このまま里が見つかり、逃げ場をなくした子供たちが……」

「そんなことはない。彼らは殺されることはないんだ」

「そう。鬼の生き残りのみんなはもっと安全な……国に行ったんだ。」

華は言葉を濁した。別の惑星に行っただなんて信用されないだろう。

「そうか……ありがとう。君たちが送ってくれたのか?」

「その通りだ。だけど僕たちは感謝されに来たんじゃないんだ」

ドクターは深い呼吸の後に言葉を続けた。

「君たちが守った子供たちは、やがてこの広い空をまたぐことになる。そしてまたこの国に現れる。今度は人と交流するためにね。あなたたちが未来を紡いでくれたんだ」

「そうか、嬉しいな……」

「僕たちはお礼を言いに来たんだ。彼らの代わりに。『ありがとう』と」

「いつか見たいな、そんな世界が」

「見れるさ、きっと」

ゲンゾーはゆっくりを目を閉じ、その生涯を終えた。その顔は安らかなようだ。

「……だから戦は嫌いなんだ」

ドクターはそっと呟く。

 

 

「本当にすごい……鬼の一族、じゃあありませんでしたね。華さんにドクターさん」

譲之介はターディスの家の近くまで送られていた。

「もし家康に何してたんだと聞かれたら、鬼から命からがら逃げたと言わないとダメだぞ。鬼に近しいと思われれば打ち首になるかも」

「もちろんですよ!でも今回の体験はすごく貴重だと思うんです。何か別の形で残してみたいな……」

「なら、今の戦乱の世が開けたら何か本を書いてみるといい。きっと大ヒット……の足掛かりにはなるかも」

「いいですねぇそれ!鬼の生態を書いてみるとか?」

「それは君の好きにしていい。じゃあ僕たちはもう行くよ」

「じゃあ元気でね」

華は笑顔の譲之介に手を振って別れを告げる。

ドクターはターディスの操作盤をいじり、発進させ、戦国時代に別れを告げる。

「鬼は日本ではおそらく絶滅。だがその噂は消えたわけじゃない。鬼は伝説となって語り継がれていくんだ」

「譲之介が?」

「ああ。彼もまた歴史を語り継ぐ語り部の一人になるんだ。まぁ創作だってバカにされるかもしれないけどね」

ターディスは時間の渦の中を暴れるように進み続ける。華は惑星オガスのことを思っていた。

鬼の惑星、オガスは時間の渦を流れていくターディスと同じように、時間の流れと共にだんだんと発展していく。

やがてその土地はビルの建つ大都会となり、宇宙へと飛び立っていくのだった。故郷である地球を目指して。

 




次回は舞台を現代に移します。第一話と同じ学校になりますが……
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