DOCTOR WHO 青い箱の中の少年   作:ナマリ

15 / 66
久々の投稿です。DWのS12も最終話を迎えましたね。賛否両論ありますが個人的にはノンストップで退屈しないシーズンでした。
ちなみにこの回はS12が始まる前にもう書き始めた物なので・・・


第四話 HIDDEN SHADOW〈学校に潜む影〉PART1

鏡の向こう側には何が潜むだろう?

反転した世界か、別の次元か、それとも、何かの生命体か。

古より鏡は異世界への扉と言われてきた。また、無限の世界を形作る合わせ鏡は不吉なものとして伝えられてきた。

鏡はいつの時代も、恐怖の対象として恐れられている。

それは昔だけではなく、現代も。

「蒼汰ー?どこー?」

体操服の少女が、人の少なくなった学校の中で人を探している。

まずは理科室の中へ。あるものといえば薬品にガイコツぐらいで、人の影は見えなかった。

次に入ったのは家庭科室。教室の中では一つのミシンが電源を落とされることがないまま、ずっと空回りしている音が鳴り響く。

不気味に感じた少女は家庭科室を出ていく。

電灯も落ち、窓からの夕陽だけの薄暗い廊下を進んでいく。

その途中で、ふと一つの木製の扉に視線が向いた。数ある教室の中でも、古くからあることが分かる。

その扉は施錠されていなかった。ドアノブに手をかけ、ミシミシと音を立てながら扉を開く。

探している男の子が、その中に居るような気がしたからだ。

中はただの家庭科室の倉庫だ。あまり手入れはされていないらしく、ダンボールやらが雑に置かれている。

その中で光る何かを見つけた。不思議とそれに吸い込まれていくような感じがする。

その正体は姿見の鏡であった。

「綺麗な鏡……美人に写る」

少女はその鏡をたてかけるため、ダンボールらをどかして置くことができるスペースを作った。

鏡をゆっくりとたてかけ、鏡に映る“綺麗な”自分をまじまじと見つめる。

そこで小さな違和感に気づいた。こちらが鏡を見ているはずなのに、まるで鏡がこちらを見ているような……

すると、小さな声が聞こえた。

「君もおいでよ」

すると、鏡の中から手が現れ、少女の腕を強く掴んだ。

 

 

学校のチャイムが鳴り響き、放課後が始まる。ただしすぐに帰れる放課後ではない。

6月に控えた運動会の選手決めのため、今日はクラス一同残ることとなったのだ。

「あーあ、今日は家に帰ってゲームしようと思ったのに」

「華は何の種目に出る?私は障害物競走かな~」

家にとっとと帰りたい華と、選手決めにウキウキしているアキ。

「なぁ、仁は何の種目に出るんだ?」

「そうだなぁ、棒倒しとか……」

「棒倒しなんて、今の時代ないだろ?」

「そうなの?あれ大好きなのに」

隅田仁……ではなくドクターは既にクラスで男子の友達を作っており、よく話している。

 

―――――「すまないけど僕はもうこの学校から去る。今度退学届けを出す」

 

華の頭の中に、彼が前言った言葉がよぎる。

そういえばドクターはなぜまだ退学していないのだろう?

華は気になり、おもむろに席を立ってドクターの元へと行く。

「ねぇ仁、そういえばまだ退学してないよね?」

「なんで仁って呼ぶんだ?」

「えっ?ほら、ドクター……なんて呼んでたらみんなが不思議がるでしょ?」

「確かに。筋が通ってる」

「で、なんでまだ居るの?」

「その話についてはまたホームルームの後。先生が来るぞ」

ドクターがそう言ったすぐにチャイムの音が鳴り響いた。ホームルームの時間だ。

「なぁ仁、華が退学がどうのこうのって……」

「ああ、引っ越しするまでの時間が伸びただけだよ。とうぶんはこの学校に居る」

先生が扉を雑に開けて入ってきた。たくさん荷物を持っていたため、丁寧に開けることができなかったのだ。

「よし、と。じゃあ号令」

先生の合図で、クラスの号令係がホームルーム開始のあいさつを始める。

「タイムロードアカデミー以来かな、こんなあいさつするのって……」

日本の学校での様式美である号令にどこか懐かしさを感じる。2000年近く前のことを。

「着席」

号令係の合図で全員が一斉に座る。

先生はクラスの学級委員会を黒板の前に集まらせる。学級委員の一人である書記係が委員長とこそこそ話をしながら黒板に「運動会 選手決め」と書いていく。

「えー、それでは運動会の選手決めをしたいと思います。今年の学校全体のキャッチコピーは百花繚乱で……」

クラスの委員長が原稿を見てたんたんと読み進める。

華は退屈だったので、ふと校庭の方を見る。華の席は窓際で前から4番目。

今の時間帯は他のクラスも同じようにホームルームをしているため、校庭には誰も居ない。

そのはずだった。校庭で体操服姿の少年がトラックに沿って走っている。他に同じようなことをしている人は見当たらない。少年が一人で走っているのだ。

「それじゃあクラス選抜リレーのメンバーを決めたいと思うのですが……」

「はいはい!じゃあ私推薦したい人がいまーす!」

アキが手を挙げた。

「はい、皆城さん。誰を推薦したいんですか?」

「私は華がやったらいいと思いまーす!」

「えっ!?」

校庭に気を取られていた華は驚いた。

 

 

 

「はぁ~、なんでリレーのアンカーに……」

「いいじゃないか。走るのは得意だろ?バグラに追いかけられたときはかなり早かった」

ホームルームでの選手決めが終わり、ドクターと華は教室横の階段に座り談話していた。

「そういうあんたはどうして短距離走にしたの?」

「一番早く終わるからさ。僕は忙しいんだ。いちいち運動会に出てる暇なんてない。まぁ僕は心臓が二つあるし肺も人間より強い。長距離走向きなのは知ってるけど、ズルだと思って」

ドクターは少しはにかんだ。

「それで退学まだしない理由って?」

「これさ」

ドクターはポケットの中から入っていたとは思えないほど大きな機械を取り出した。それは赤と青に光っている。

「それって信号を追う機械?」

「ああ。例の信号はこの学校の中のどこかから発せられてる。それを解明するまではこの学校からは去らない」

「なるほど。じゃあ私は関係ないから帰るね」

華は手すりに手をかけて立ち上がる。

「え?ターディスでどこか旅に行かないのか?」

「それは運動会が終わってから。それまで練習しないと」

「ターディスはタイムマシンだ。10日旅したって1時間後に戻せる」

「人間には人間の時間ってものがあるの。あんまり行ってると時間感覚おかしくなっちゃう」

「確かにそうだな。じゃあ僕は信号を解析しながら短距離走の練習してるよ」

華はドクターに手を振って別れた。ターディスの中ではやりたいゲームがなかなかできない。通信対戦ゲームなんかはなかなかつながらない。華はそろそろゲーム三昧の生活に一度戻りたかったのだ。

久々にゲームができることにウキウキしながら華は帰りの道につく。

校門から出ようとしたとき、後ろから声をかけられた。

「華!」

「あっ、光輝!」

「なぁ、どうして先週末ロストボックス買いにいかなかったんだ?俺ずっと返事待ってたのにさ」

「あっ、あー!ごめん。その日実はお墓参り行ってて……スマホも親に奪われててさ」

これは真っ赤な嘘だ。ターディスの旅に夢中になって頭から抜けていたなどと言えない。いったところで意味不明な言い訳にしか聞こえないだろう。

「なんだ、そうだったんだ……それでロストボックスは買えたか?」

「いやぁ、それが売り切れててさ……」

華はまたもや嘘をついた。

「じゃ、今度は今週末に買いにいこうよ!今度こそは何も用事ないからさ」

「ごめん、俺は週末に部活の練習試合がやってさ……休めないんだ」

光輝はサッカー部に加入している。他の学校と比べそこまで忙しくないものの、練習試合などはしっかりあるのだ。

「あっ、そっか……ごめんね」

「いいって。もし買ったら面白かったかどうか聞かせてよ。じゃ」

光輝はカバンを背中に持ち、手を振りながら学校へと走って戻っていく。

「……はぁ。なんだかまずいことしちゃったなぁ」

華は落ち込みながら、自宅へと帰っていく。

そのころドクターは、薄暗いターディスの中で操作盤をいじくりまわしていた。

「信号は確かに学校の中からだ。でもどこから出てるんだ?」

操作盤のスイッチを何度も押しながら、ドクターはディスプレイを見つめる。

「駄目だ。信号があまりに弱すぎる……」

ドクターはため息をつきながらディスプレイを手でどけた。

「やっぱりまだ学校で調査するしかないか……」

 




このお話の元ネタは映画「学校の怪談3」とアニメ学校の怪談の第5話です。
第一話も学校の怪談だったじゃないかと言われるとぐぅの音も出ません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。