DOCTOR WHO 青い箱の中の少年   作:ナマリ

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一日目は一気に2本です。


第一話 TERROR SCHOOL 〈転校生〉 PART2

 

「あの…仁って子、知ってるの?」アキが華に聞いた。

「知ってる…っていうか、今日の朝、あいつのせいで遅刻したみたいなものだから…」

「隅田くんのせいで?」

「そう、遅刻しそうだったから走ってたの。いつもの道は工事してたから遠回りしててさ。それで曲がり角のところでぶつかっちゃって…」

「それは…華が悪いんじゃない?」アキが言った。

「それもそう…だね」華がシャーペンでノートにドラえもんの絵を描き続けながらつぶやいた。

「しっかし、転校生ってのは本当に人気者だね」

アキが言うように、転校生、隅田仁の周りには人だかりができていた。人見知りの少ないこのクラスにとって転校生は絶好の暇つぶしだ。男子に女子が彼の周りに。

「なぁなぁ、隅田って前にどこの学校に居たんだ?」

「あー…学校には通ってなかった」

「どうして?中学までは義務教育でしょ?」

「日本ではね。海外に居たんだ」

「えー!ってことは…帰国子女!?すげー!」

この2年B組が今年度始まって3番目にうるさい瞬間だ。1番はクラスのやんちゃ者が先生に殴りかかったときだった。

「ってことは、英語得意?」女子の一人が聞いた。

「もちろん、僕は天才だから」

「じゃ、誰も知らないような英語言ってみてよ!」

「うーん、そうだなぁ…」仁が少し考えてからからこういった。

「アロンジィ!…とか、みんな知らないだろ?“さぁ行こう”って意味だ」

「うおー!すっげー!」

こんなことで騒げるなんて馬鹿みたいだ…と思いながら華は見つめていた。

「間違えた、本当はフランス語だった…でも盛り上がってるみたいだしいいか。」仁は小声でぼやいた。

華は仁を見ながら疑問を抱いた。どうして彼は遅刻したのに怒られなかったんだろう…いや、遅刻したのか?仁のもとに迫る。

「ねぇ!」大声で彼を呼んだ。あまりに大声だったので周りが驚いた。そのあとに「ごめん、声が大きかった」と訂正して再び言葉を連ねた。

「どうして私は遅刻したのにあなたは遅刻してないの?私のが早く…学校に着いたはずなのに!」

「ちょっとした裏技があってね。それを使ったんだ」

華が仁の手をつかんだ。

「裏技?教えて」

「あー…日本人にはできない技だから…ほら、外国流の技で一部の人しか使えない。フーディーニって知ってる?」

「知ってる!脱出王だろ!」男子が叫んだ。

「日本じゃマイナーだけど、知ってる人がいて良かった」仁が彼に笑顔を向けた。

「裏技なんて…ありえない。あの場所じゃ私よりもどうやったって…遅いはず」華は疑いの目をさらに強めた。きっと金やらなんやらで怒られなかったに違いない。

帰国子女は金持ち。そんな偏見が彼女にはあった。

「帰国子女だからって金をたくさん持ってるわけじゃない。日本人は偏見が好きだな」仁は華の心を読んだかのように言った。

「なんで…私の考えてることが?」華が目を丸くして驚いた。

「メンタリズムが得意なんだ。帰国子女だから」仁はそう言って指を鳴らした。周りはどっと笑いに包まれた。

華は呆れたかのようにアキのもとへと戻ってきた。

「アイツ、絶対何か裏があるよ…裏技というより、チートかなんか使ったに違いないよ」

「ゲーマーの華ちゃん特有の例えね。週末はどうせゲームとアニメ鑑賞でしょ?」アキが華に言った。

「だってそれ以外にすることないし…」

「たまにはイマドキの女子っぽいことしてみたら?タピオカジュース飲むとか。そうそう、原宿にまた新しいタピオカの店できたの。週末に行かない?」

アキが華を誘ったが、華は乗り気でないようだ。

「やだ。絶対並ぶでしょ?私並ぶの嫌いなの。」

「なのにディズニー行くのは好きなの?」アキが言った。

「ディズニーは別。それよりもアキバ行かない?ちょうど買いたいゲームが先行で売ってて…」華が誘うが、アキは逆にそれに乗り気ではなかった。

「私はパス。アキバはオタクの街でしょ?」

「家電の街!」華が訂正を入れた。

「その通り。秋葉原は家電の街だ」仁が突然二人の前に現れた。

「「うわっ!?」」華とアキは驚いてすこし後ろに下がった。

「まったく日本人は偏見が好きだな。オタクは悪者じゃない。確かに人間だから色々と問題行動も起こすが…華、家電が好きなのか、良い趣味してるな」

仁が華を指さして言った。

「家電が好きというよりゲームとかが好きで…」華はそこに訂正を入れた。

「ドラえもんも好きか?」仁が華の書いたノートを見つめて言った。

「え?ああもちろん…大好きだけど…」

「僕も好き」仁が笑顔で華に言った。華もそれを見て笑みがこぼれた。

その瞬間に休み時間が終わるチャイムが鳴った。次は2時間目だ。

「おっと、じゃあまた後で」仁は手を振った。華は少しだけ手を振った。

「アイツ、絶対に華に惚れてる」アキが華に手を振る仁を見ていた。

「まさか、そんなわけない」

「そう?華って意外と…美人のほうだよ?オタッキーなせいで残念な美人というか…」

「私はオタクじゃない、良い?」

「オタクはみんなそう言う」

数学担当の先生が入室し、2時間目の授業が始まった。

 

 

2時間目の授業はほとんど仁の独壇場だった。新たな単元の連立方程式をほとんど一瞬で解いてしまった。

「それで、この問題の答えがわかる人?」先生がそう言った途端に仁が手を挙げた。

「答えは3です。でもそれはプリント通りにやったら。板書とプリントで言ってることが違うんですけど…」

仁が指さしたところの式の符号は-だった。しかしプリントでは+。

「あぁすまん。板書のほうが正解だった。もう一度やり直して…」

「じゃあ答えは6です」一瞬で仁が答えた。

「既に計算してた?」

「いや、このぐらいは暗算でできないと」

今日初めて連立方程式を学んだというのにこの適応力…学校には通っていなくても塾などに通っていたのだろうか。

「なぁ、仁って塾とかに通ってたのか?」

「大昔ね。今は通ってない」

2時間目終わりの休み時間も隅田仁のことで話題は持ちきりだった。華とアキは教室の中がそうとううるさかったので、廊下に出て近くの階段に座っていた。

「海外ってさ、連立方程式小学生のときとかに習うのかな?」華がアキに言った。

「そんなわけないでしょ。アイツは頭が良いだけだよ。ほら、A組の田中なんか毎回数学で100点とるぐらい頭良いし、いるよそういうのも」

「だけど…今日習ったのを一瞬でだよ?とても人間業とはぁ…」

「ま、そんな話は置いといてさ。恋バナとかしない?」アキが話を変えようとした。

「悪いけど私好きな人とか居ないから。この学校の男子はどっちかというと…地味だし」

「その気持ち私にもわかる。なんというか普通というか…ならさ、こんなうわさ話知ってる?」

「何?誰か付き合ってんの?」

「違う違う、この学校に居るっていう“頭ババア”ってやつ」

「頭…ババア?」華が首をかしげた。

「その話、僕にも聞かせてくれるか?」仁が二人の間に顔を出した。

「「うわっ!?」」二人はさっきと同じように驚いた。

「さっきから唐突に出てこないでよ…心臓に悪いなぁ」華が小さく怒った。

「ごめん、でもその“頭ババア”ってのが…気になって。どんなのなんだ?」仁はそれにやたらと興味津々なようだ。

「いいけど…」アキはしぶしぶ承諾した。

「その名の通り、頭だけのおばあちゃんのお化けで、夜に学校に現れて「頭はいらねぇがぁ」とか聞いて襲い掛かってくるんだって」

「今どきそんな怪談話…」華は呆れたようだった。

「火のないところに煙は立たない。いつからそんな怪談話が?」仁は詰め寄った。

「今から10年ぐらい前に頭のない死体が学校で見つかって。それから話が大きくなってそんな妖怪が」

「まさか、アキ信じてたり?」華が言った。

「お話としてちょっと面白かったから」

「それでそのなくなった頭は見つかった?」

「いや、結局見つからずじまいで…それからたまーに行方不明事件とかが町で起こるようになって。関係ないところにすら頭ババアが関わってるとか…」

「なるほど、そいつは今もこの町に?」仁が質問した。

「さぁ?あくまでただの怪談話だから。行方不明事件もどっかの犯罪者のせいよ」

「本当に?10年前以前にそんな事件は多かった?」

「そこまでは…知らないわよ」

「なるほど、おもしろい話が聞けて良かった」仁は満足した顔でトイレへと去っていった。

「アイツ、もしやオカルトフリークかなんか?」華が言った。

「帰国子女って変な奴多いのかも。」アキもまたそう言った。

 

 

転校生のやってきた一日が終わった。6時間目のホームルームが終わり、部活に行く者もいれば家へ帰る者も。部活に入っていない華はそのまま家に、テニス部に入っているアキは華に別れの挨拶を告げた。

「じゃ、家でアニメばっかり見ないように」

「悪いけど、昨晩のは神回だったからと5回は見ないと」

そう言って華はアキに手を振って下履きに履き替えた。

「あぁ、遅刻10回記念。宿題増やされちゃったぁ…」

華はぐちぐち言いながら校門へと近づいて行った。今日やってきた転校生の仁は囲まれながら校門の近くにいた。

「アイツ、好き好きオーラでも出してるのかな?」華がつぶやいた。

「なぁ仁、お前の家ってどこにあるんだ?」

「家?どうして家に住むんだ?」仁は相変わらず変な答えを言って周りを笑わせた。華はそんな仁を横目に校門を出た。

「あっ、華!」華の後ろから別の少年が走ってきた。

「あっ光輝」華が少年を呼んだ。

「なぁ、週末って…空いてる?」光輝と呼ばれた少年はなにやら予定に華を誘うらしい。

「ごめん、今日の週末は…別に出かけるところがあって」

「分かった、ロストボックス2の新作買いに行くんだろ?」光輝が言った。

「…分かった?」

「そりゃあお前はゲームオタクだし、だろうと思って。」

「それで何に誘おうとしたの?」華が壁によりかかって言った。

「そのゲームの新作、一緒に買いに行けたらなぁ…って思って」光輝が顔をすこし赤くほてらせて言った。

「なぁんだ、そんなことだったの?じゃあ一緒に行こうよ。一人で行くより楽しいだろうしさ」華が光輝の手をつかんで言った。光輝はさらに顔が赤くなった。

「じゃ、私今日は早く帰って宿題終わらせないといけないから!」そう言って華は走っていった。光輝はどこか嬉しそうな表情をしていた。

 

 

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