DOCTOR WHO 青い箱の中の少年   作:ナマリ

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今回の次でこのエピソードも終了です。書いてて思ったんですがこの話が一番長いです。


第五話 SPORTS DAY 〈運動会〉 PART5

 

《次のプログラムは1年のクラス対抗リレーです!》

 

学校中にその放送が流れる。それに合わせ、1年生の保護者達はカメラやスマートフォンを用意して我が子を撮ろうとする。

しかしそのリレーが始まる前に、突然空の上に雷を伴う黒雲が現れ、校庭は暗く夜のような姿へと変貌してしまった。ドクターと光輝は外に出てこの異常な空を眺める。

「あんな雲が出るはずない。今日の降水確率は0%のはずだろ?」

「失敗したから現れたのさ。おそらく設置した14の装置のうちの一つに異常があったんだ。だから完全に裂け目を開くことはできず……エネルギーの奔流が溢れてる」

黒雲はバリバリと放電しながら広がっていく。学校だけではなく既に町全体を覆い尽くしていた。

「どうすればいいんだよ!?」

「異常を起こしている装置は家庭科準備室にあるやつだ。すぐにそれを見つけてまた置くんだ!」

「分かった。すぐに向かう」

「いや待て。きっとソータの仕業だろう。装置は家庭科準備室から奪われたんだ」

「ならソータを見つけて、装置を奪い返さないと」

「そうだ。彼がどこにいるか……」

「二人とも何してるの?」

聞きなれた声。後ろを振り向くとそこには壁にもたれかかった華が立っていた。

「こんなところで何してる? 次は2年のリレーだ」

「そんなことより話があるの。今日は雨が降らないし、曇りだって予報も出てない。なのにあんな雲が出るなんておかしい。ドクター、あれはあなたがやったの?」

「そうだがあれは予想外だ。僕はただ裂け目を開こうとしただけで……」

ドクターが弁解を始めようとした瞬間、後ろから足音が聞こえてきた。

「あれこそがドクターの作戦なんだ。あれを使って人々を殺すつもりだ。君以外の人間をね。彼にとってそれ以外の人間なんて邪魔だから」

ソータが三人の前に現れ、華へと近づいていった。そしてそのまま彼女の肩に手を回す。大知性体が戻った今、彼には実体がある。

「あれでみんなの事を、殺す……?」

「心配しないで、僕が止めるよ。君のことも傷つけさせやしない」

「眉唾物だな。あの黒い雲は裂け目を開くためのエネルギーが外側に放出されただけにすぎない。この運動会の場に居る全員を殺せるほどのエネルギーはあることに違いはないが」

「勘違いさせるようなこと言うなよ」

「だけど僕はここにいるみんなを殺すためにやったんじゃない。むしろ全員が死ぬのは君のせいだ、ソータ」

ドクターは彼の事を睨みつける。

「どうして僕のせいだと?」

「裂け目を開くための装置をお前は奪った。そのせいであれが現れた」

「そんな嘘で僕と華の仲を引き裂くつもりか?」

「それはお前の事だろ?」

ソータは指で頭を掻いてイライラを募らせる。

今のドクターの顔はソータに対する怒りを感じる。しかしその怒りは自己中心的なものじゃない。確かに何かを想っているが故の怒りだ。

「ドクター……」

華はそんな彼を見て思い出す。宇宙船ヤマタノオロチ号で見せた心のある姿を。

「大知性体はどこにいる?」

ソータはドクターに静かな怒りを持ちながら質問を放つ。

「彼なら体育倉庫に閉じ込めてあるよ。鏡の次は倉庫の中に閉じ込められるなんてね。不憫だが仕方ない」

「だが今の彼ならその程度破壊できるはずだ」

「ああそうさ時間がもう無い。君が奪った機械の装置を返してもらおうか」

ドクターはソータに対し手のひらを差し出す。ソータは少し考えた後に装置を取り出した。やはり彼が持っていた。だが装置をドクターにではなく華に渡した。

「どういうつもりだ?」

「どうしてこれを、私に……?」

意図が掴めない。ソータに対し疑問の目を向ける。

「ドクターに騙されるな華。それは世界を壊せるほどの力を持った機械なんだ。破壊してくれ」

「違う違う! それは裂け目を開くための機械の一部なんだ! それが無いと、このままじゃエネルギーの奔流が溢れて大きな被害が!」

ドクターとソータ。ドクターとソータ。二人の言う事のどちらが正しいのか。ずっと考えてきたのにまだ分からない。ソータのことが好き。でもその感情で決めていいのだろうか……?

「華」

光輝は一言だけその言葉を呟いた。

「私は……私は」

華はゆっくりと装置を手にドクターの近くへと歩いていく。

「ドクターのことを信じるよ」

華は手にした機械をドクターに渡した。

「何を考えてるんだ華、彼の作戦を信じるつもりなのか!?」

「うん。彼はいつだって私の事を裏切ることはなかった。たまに……ムカつくけど」

「華……」

ドクターは自分の方を信じてくれたことに対し、感無量となっているらしい。

「ねぇソータ」

「……何だい」

「今から私の出るリレーがあるの。絶対に見ててね。私が走るところ」

そう言うと華は3人の前から立ち去る。自分が出した答えが正しいのかどうかは分からない。しかし今は目の前の競技に集中しなければ。リレーの会場へと走って行った。

「さぁこれで作戦は元通りだ。あとは裂け目を開くだけ……ほら光輝、これ持って家庭科準備室へ」

「分かった!」

ドクターから渡された機械を手に校舎の中へと入っていく。今この場に居るのはドクターとソータだけだ。

「まだ本当に計画が上手くいくと思っているのか?」

「君の方こそ華の体を奪うチャンスがさっきあったはずだ。でもしなかったということはまだ不完全だったということか」

「……いや、違う」

ソータが見せたその顔は計画が失敗したことへの落胆ではない。どこか悲しい表情だ。

「いいや、その通りだよ。まだ不完全だから彼女に手を出さなかった! だがもう僕は完全な姿になった。すぐに彼女の肉体を奪える」

「……そうか。華は既にリレーに出た。そして僕はこれからターディスに戻って裂け目を開く。体育倉庫に閉じ込められている大知性体は開いた裂け目に吸い込まれ、この世から消える。それで終わりだ。君は華の肉体を手に入れられないまま消滅する」

「その計画には欠陥があるよドクター。君はまだ気づいていないようだが」

「何?」

「既に大知性体は逃げ出している」

 

体育倉庫、既に扉は破られ中はひどく荒らされていた。

「この入れ物は不適合だ」

知性だけの存在が独り言をつぶやきながら、自身の体を形成していく。その姿とは……

 

《次のプログラムは2年クラス対抗選抜リレーです!》

 

黒雲はあくまで空を覆っているだけ。先生方は天気予報が外れるなどよくあることとして気にはしなかった。むしろ雨が降る前に出来る限りプログラムを進めなければならないとして運動会を進めていく。

リレーの準備をしている最中、先生が突然話しかけてきた。

「華、突然なんだが2回走ってもらいたいんだがいいか?」

「いきなりどうしたんですか先生、私は3番目だけじゃ……」

「アンカーだった宮崎がさっき別の種目で怪我してしまって出れなくなったんだ。一人欠けた状態じゃチームでの参加ができない。でも使いまわすのはルール上問題無いらしいんだ。だから頼む」

「それなら大丈夫ですよ。アンカーも務めます!」

突然アンカーという重大な責任を負った華。ソータとドクターの問題を気にしている場合ではない。今はただ走り、クラスに貢献することだけを考えなければ。

「リラックスだよリラックス」

「ありがとうアキ。絶対に一等をとって見せるから!」

 

 

「既に逃げ出した……ってどこに!?」

「間違いなく君を狙うだろうね。ここだよ大知性体」

ドクターの後ろから大きな影が覆いかぶさるように現れる。

「私とお前は平等なはずだ。呼び捨てにするな」

振り返るとその姿に驚いた。これは……

「おーっ……これはまた別の入れ物に変えたのか。随分と大きいな……、まさか大玉とは」

そこに居たのは『大玉転がし』の赤い大玉と化した大知性体だった。これを入れ物にするには色々不便に思えるのだが……

「貴様はまだ殺さない。絶望の瞬間をその目に見してやろう」

「何をするつもりだ?」

「こうするつもりだ」

すると突然大玉は大きな口を開き、唖然としながらもソニックを振り回すドクターを……飲みこんだ。

 




次回のチラ見せ

「僕は……僕はまた……」
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