DOCTOR WHO 青い箱の中の少年   作:ナマリ

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気付いたら今回で30話です。前まで中断してたところが15話までだったのでもうそのぐらいまで来ましたね。完結まで駆け抜けていきます


第六話 FEAR OF HOLES〈卑弥呼とスサノオ〉 PART5

 

「華! 先に行くんだ!」

「先に行くったってドクターはどうするの!?」

「こんな時のためにこれを用意してある! ほら、手投げ弾!」

ダーレクから逃げるドクターと華。ドクターは途中で立ち止まり、懐から小さな爆弾のようなものを取り出してダーレクに向かって投げつける。

それはダーレクの目の前で炸裂し、アイカメラを破壊した。

「視界を破壊された! 至急予備のパーツを用意する!」

二人を追っていた一体はカメラを破壊され後退していく。

「武器は持ってないんじゃなかった?」

「ダーレクとは遭遇する機会が多くてね、さすがに学習したよ。最低でもあの程度の武器は持ってないとダメだって」

今が逃げるチャンスだ。二人はそのまま通路の先に向かって走っていく。

「ヤツらはあくまで100体程度の少人数部隊。裂け目が閉じるっていう予想外の事態で船もこれ一隻しかない」

「じゃあなんとかなるってこと?」

「いいや、ダーレクはそこまで甘くない。100体でも十分この時代の人類を一掃できる程度の力はある」

「じゃあ人類滅亡の危機ってことじゃん!」

「その通りだ。だけど今回は僕がいる! ターディスに戻ってこの船を別の場所にテレポートさせるとか……」

二人が急ぎながら走る中、曲がり角で何かと衝突してしまう。まさかダーレク……

ではなく、そこに居たのはスサノオだった。

「二人とも! 無事だったかこりゃあ良かった!」

「何で君がこんなところにいるんだ?」

「アンタが穴の中に落ちたっていうから追いかけたのさ。その後に気を失って、目が覚めたらここだ」

「ここはダーレク船の中だ。穴の中に自分から飛び込むなんて随分と勇気があるんだな」

「あんたが言えたことか? ところで見てほしいものがあるんだよ! きっと驚くはずだ! 俺も驚いた」

「見てほしいものって?」

「“ヤマタノオロチ”さ」

スサノオはそう言うと、ドクターの手を引っ張って連れていく。華は後ろからダーレクが来ないかどうかを警戒しながら二人を追う。

辿り着いた場所は何らかの装置がたくさんある、もう一つのコントロールルームと思われる場所だった。

「あの穴はダーレク船の中へランダムで転送するようになってたのか。だから君はここで目覚めた」

「説明はいい。とにかくこれを見てくれ!」

スサノオが指をさしたのは大きな画面だった。そこに映っていたのは白い体に八つの頭を持つ怪物の姿だった。

「これってまさか……ヤマタノオロチ?」

「ああ、俺が退治したヤツさ。ここで目にしたから驚いたよ、まさかオロチはバケモノの操る怪物だったのか!?」

「そういえば最初にそんなこと言ってたな。君がヤマタノオロチを退治したって。てっきり言葉のあやかと」

「事実に決まってるだろ? 八塩折之酒を飲まして退治したんだ」

ドクターはコンピューターを操作して情報を表示させる。このオロチの正体は一体何なのか。

「殲滅型戦略兵器“エイトヘッド”。怪物ではなく兵器だよ。だけどダーレクが作ったものじゃない」

ドクターは操作盤にソニックドライバーを向け、更なる情報を引き出そうとする。

「せんめつが……何だって?」

スサノオが聞き返す。随分と長い名前なので一度じゃ聞き取ることが出来なかった。ドクターは「正式名称はそこまで重要じゃない」としてもう一度言ってくれることはなかったが。

「なるほど、ダーレクが拾ったのか。それをこの船に乗せていたが自然に再起動して船から脱出、そして君たちの元へ現れて襲った」

「まさかヤマタノオロチの正体がロボットだっただなんてね。ヤマタノオロチ号作った人が聞いたら驚くだろうなぁ」

「ロボットだか、きかいだかなんだか知らないが、こいつは俺が退治したんだ。すごいだろ?」

「自慢のためだけにここに呼んだのか?」

「え? いや、別にそういうわけじゃなくて……」

ヤマタノオロチの正体が兵器。しかもかなりの破壊力を持っている兵器だ。これがもし使えるなら……、ドクターはこれを見てある作戦を思いついた。

「スサノオ、ヤマタノオロチは今どこにいる? まさかバラバラにはしてないよな?」

「酒を飲ませて何回か矛を刺した後、動きが止まったから卑弥呼の命で洞窟の中に閉じ込めたんだよ。天岩戸っていう……」

「つまりまだオロチは居るって訳だ! どうだ華、ダーレクを倒す良い案が思いついた!」

「まさかオロチを使ってダーレクを倒すってこと?」

「その通りさ! こいつには強力な兵器が搭載されてる。エネルギーを一点に集中させてダーレク船に発射する。そうすればダーレクもろとも船は木っ端微塵。すべて解決って寸法だ! スサノオ、そこまで案内してくれないか?」

「あぁもちろんだ。けどそれより先に村まで戻らないと」

今はダーレクの船の中。邪馬台国ではない。

「そうだったな。ちょうどここに転送(トランスマット)装置がある。華、スサノオ、そこに立ってくれ」

言われるがままに丸い台座の上に立つ。上にはビームを発射するような機構が設置してある。

「ねぇ、これって安全?」

「一度原子に分解してから再構成する。別に死ぬわけじゃないよ」

「分解!?」

それって一度死ぬようなものなんじゃ……と不安に思ったが、ドクターも何度か経験しているらしい。ドクターも台座の上にやってくる。

「ちょっと吐気を伴うかもしれないが我慢してくれ」

そう言うとドクターは機械に向かってソニックを向ける。すると上からビームが発射され、三人は原子へと分解される。

 

 

「緊急事態! ドクターを逃がした!」

「人間たちに我々のことを明かされれば計画は全て水の泡だ!」

数分後、ダーレク達はコントロールルームにたどり着いていた。そこにはトランスマットの操作履歴が残っていた。

「他の場所でも計画は続行できる! 我々の事を知った邪馬台国の人間は全員抹殺せよ!」

ダーレク達もさきほどのドクター達と同じくトランスマットを起動した。

 

 

卑弥呼達は穴に落ちていったスサノオ達に呆然としていた。しかし儀式はもう終わったのであとは神の怒りを買わぬようただ祈るだけ。

そうすると、突然まばゆい光と共に誰かが現れた。それはドクター達三人だった。

「スサノオ……、なぜここに!?」

「バカな、その少女は生贄として穴の中に落ちたはずだ!」

今度は落ちたはずの人間が突然目の前に現れて驚く卑弥呼達。次から次へとおかしなことばかりだ。

「落ちたけど戻って来たのさ。面白いマジックだろ?」

「やはりこのドクターという者達は我らの国を脅かす怪物に違いない! 未来から我々を陥れようとしにきたのだ!」

玉藻がそう言うと、兵士たちがドクターに刃を向ける。

「僕たちの事を危険視するのは勝手だけど今はここに危機が迫ってる。君たちが神と崇めている存在が君たちの事を殺しに来る」

「そうだとすればそれはお前が神の怒りを買ったからだ、ドクター!」

「まぁ間違いではないけど、どちらにせよ国が滅ぶ危機だ。そうだろ卑弥呼? 神から何か言葉が来ているはずだ」

「ええ、来ています……」

卑弥呼は意識を集中させ、神の言葉を聞き取る。そこからは激しい憎悪と殺意を感じた。

「抹殺せよ、抹殺せよ……。神がそう言っています」

「卑弥呼、君が兵士たちに命令するんだ。この周辺の村全てに対しなるべく遠くへ逃げろと。でなければヤツらがやってきて君たちは全員抹殺される」

「しかし我々は神を怒らせたのです。これは天罰です」

「目を覚ましてくれ姉貴! ずっと分かってたはずだ。頭の中に響く声が邪悪な存在だってことを! ただあんたは恐れていたから従っていただけ、そうだろ!?」

「……私はこの国を守らねばなりません」

「今はドクターがいる。もうそんな重荷を背負う必要はない!」

スサノオが必死に卑弥呼に対し問いかける。こんなことを信じず、家族の事を信じていたあの頃の姉。それにスサノオは戻ってほしかった。

「しかし私は守らねばならないのです! もうあなたの家族を助けられなかったようにはしたくない! 人々の幸せのために……」

「……すまねぇな。俺の事考えてくれてんのに」

その事実がスサノオは嬉しかった。犠牲にしたのは自分自身。だけどそれが姉の使命感を煽っていたのだ。もしこれが自分の責任だというのなら、自分が変えなければ。

「けど結果として生贄が何人も死んでる。何も変わっちゃいない! この国は守られてなんかいないんだよ!」

「国を守るための……尊い犠牲です。そのために多くの人々が救われるのなら……」

その瞬間、まばゆい光がここにいる者達の目をつんざいた。その光の先に浮かんでいたのは、一体のダーレク。

「あれは……まさか神!? ついに我々の目の前に降臨なさった……」

一人の兵士が(ダーレク)の元へと近づいていく。

「やめろ近づくな! そいつは神なんかじゃない!」

「おお、神よ……」

忠告するドクターの声は聞こえないのか、兵士は矛を捨て、膝を立てて神の前にひざまずく。しかし……

 

「抹殺せよ!」

銃口から放たれたビームが彼の体を貫き、叫び声を上げながら兵士の男はゆっくりと後ろに倒れ、死んだ。

その瞬間、その場に居た人々はパニックへと陥る。神に恐れおののき逃げる者、これは運命としてただその場にひれ伏す者。

「死にたくなければみんな逃げろ! 神はダーレクだ! このままだと全員殺される!」

ドクターが大声で人々に告げる。中には事の重大さを理解する者も居た。

「卑弥呼、今からでも遅くない! すぐに命令するんだ!」

「しかし! ずっとこの国を導いてきた神を裏切るなど……」

「あれは君たちを導いてきたんじゃない! 操って来たんだ! 自分たちのためだけに利用していただけさ!」

卑弥呼は分かっていた。ずっと前から。ただそれに襲われることをずっと恐れていた。平伏し生贄を捧げ続けていればこの国は安泰だと思っていた。だがそれももう終わり。長年の努力が水の泡となったこの瞬間を認めることはできなかった。

「この時代だ、穴の神を信仰するのはおかしいことじゃない。だけど……」

「しかし私は……」

卑弥呼は、スサノオに目を向ける。

「頼む、姉貴……」

彼のその一言が、彼女の心を氷解させた。

「……分かりました」

卑弥呼は手を伸ばし、混乱する兵士たちの注目を集める。

「……皆の者! 逃げるのです! たとえ相手が神でも今はこの国を脅かす存在! この国にとって最も大事なのは存続すること、生きることです!」

ダーレクの攻撃が飛び交う中、卑弥呼の言葉が響き渡る。

「姉貴……」

「さぁ逃げなさい!」

人々はその言葉に安堵し、一目散に逃げていく。

「これが本当に正しい判断かどうかは私にもわかりません。しかし、今は生きなければならない。そう思います」

「それで十分さ。君も逃げるんだ。君はまだ死んじゃいけない」

ドクターのその言葉を聞き、卑弥呼もダーレクの元から逃げていく。

「卑弥呼様! 私もお供いたします!」

そんな卑弥呼を玉藻も追いかけていく。しかしドクターの前で立ち止まり、一言だけ告げた。

「ドクター、私はまだあなたを許したわけじゃない」

「いつも僕は許されないことをしてる。慣れっこさ」

玉藻と卑弥呼は人々と共に遠くへと逃げていく。ドクター達は心配するが、今は先に進まなければ。

「スサノオ! オロチの元へ案内してくれ!」

「ああ! 天岩戸はあの山のふもとにある!」

スサノオが指をさしたのはここからそう遠くはない山。

「思ってたより近いな。ダーレクの攻撃が心配だが向かうぞ!」

「ドクター、もちろん走るよね?」

華はドクターに一言聞く。

「ああもちろんだ。遅れるなよ!」

 

 

既にダーレク達は何体もやって来ていた。

既に人々はダーレクの脅威を知っている。口封じのためその人々を次々と抹殺していく。

国中に飛び交う、この時代には似つかわしくないビームが人々の体を貫いていく。

「これは……まさに阿鼻叫喚。我らの国ももう終わりなのか」

「いいえ、終わることはありません。我々にはドクターが居ます」

宮殿まで逃げて来た卑弥呼と玉藻。何人もの兵士たちがその宮殿の門を守っている。

「しかしこの災厄をもたらしたのもドクターです」

「確かにそうとも言えるでしょう。しかしこれは決別の時なのです。神との」

玉藻は苦い顔を卑弥呼に向ける。

「私はずっとあなた様のために仕えてきました。民に私はあなたの弟と嘘をつきながら……それでもあなたと、この国のために」

「これが終わればあなたのその役目も終わります。ずっと辛かったでしょう。嘘ということは……」

玉藻は背中に携えた弓を手にする。

「いいえ、まだ終わるわけにはいきません! 私の役目はたとえどんなことがあってもあなたをお守りするということ!」

その瞬間、宮殿の扉が破られた音が響き渡る。ダーレクが現れたのだ。

「何を考えているのです!」

「たとえ神の言葉が無くとも、あなたがこの国をまとめたのは事実! 私は神のためではない、あなただからこそ仕えた! 最後のその時まで私は仕えます!」

玉藻は弓と矢を手に、侵入したダーレクへと向かっていく。その顔に涙と怒りを浮かばせながら。

 

ダーレクからの攻撃をかいくぐり、ドクター達は山のふもとへとたどり着いていた。

「時間が無い。早くやらないとダーレク達がこの国の人々を全滅させる」

「そうなるとどうなるの?」

「邪馬台国の人が全滅するなんて歴史には無い。歴史が変われば現代にも影響が出る。君が生まれなくなる可能性だって」

ドクターは不安な目で華の方を見つめる。

「それは……かなりヤバい事態ね」

「この穴だ。ここにオロチを閉じ込めた!」

スサノオは洞窟の入り口を塞ぐ大岩をどけようとする。華とドクターの二人も加わり、三人がかりで岩をどかした。

「ここは昔卑弥呼がよく遊びに来てた洞窟なんだ。そこそこ広いからオロチが眠っている間にここまで移動させた」

「天岩戸は天照(アマテラス)が引きこもった洞窟だって、昔なんかのゲームで知ったよ」

「卑弥呼は天照だという説もある。どうやらその説は正しかったみたいだな」

ドクターは懐中電灯を取り出し、暗い洞窟の中を照らす。そこには大きな白い怪物……すなわちヤマタノオロチがそこには居た。しかし襲ってくるような気配はない。完全に停止している。

「これがヤマタノオロチ……、いやエイトヘッドか。思っていたより随分と大きい」

それはドクターと華の10倍はあると思われるほどの巨体。兵器というのにも納得だ。

ドクターはオロチの傍に近寄り、ソニックを当てて再起動を試みる。

「ドクター、それっていきなり起動して大丈夫なの? 危険じゃない?」

「危険だが僕が操作する。ソニックをリモコン代わりにして……、おい待て、嘘だろここまで来たのに!」

ドクターは突然顔色を変えてこちらを見つめた。

「どうしたんだ?」

「エネルギー切れを起こしてる。電池切れと言った方が分かりやすいかな? 起動するためのエネルギーが足りないから動かない。このままじゃダーレクを倒すことはできない!」

ドクターはオロチの上に座り込み、頭を抱える。

「エネルギー切れ……それじゃあ何かエネルギーを与えれば?」

「無理だ。太陽光発電には対応してない。宇宙の技術だからもっと別のエネルギーが……」

宇宙の技術、宇宙のエネルギー……それを聞いて華はあることを思い出した。さきほどドクターから貰ったあの眼鏡をドクターにかける。

「いきなり何だ」

「それで見えない? 使えそうな“エネルギー”」

それを通して華を見ると、そこには金色の粒子が浮かんでいる。そうそれは……

「そうか、ヴォルテックスエネルギーか! 僕たちの体にはそれが付着してる! ダーレクが使えるならコイツにだって……」

ドクターはソニックを自分と華の体に当ててドライバーにヴォルテックスエネルギーを吸収させ、オロチの体に向けて放つ。

するとオロチの赤い瞳が光りだし、機械がこすれる音と共にオロチがその体を起き上がらせる。

「すげぇ、ヤマタノオロチが生き返りやがった……!」

「心配するな。僕が操作してるから誰も襲わない」

ドクターはオロチの上にまたがり、ポンポンとその巨体を叩く。

「これで邪馬台国は救われるのか?」

「ああ! 後は僕に任せてくれ」

ドクターと共にヤマタノオロチは洞窟の外へと出ていく。目指すは神の穴。そしてダーレクの殲滅だ。

 




次回のチラ見せ

「心配するな。俺は英雄だからな」
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