DOCTOR WHO 青い箱の中の少年   作:ナマリ

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そういえば再び投稿を初めてから一か月が経過しました。早いものですね
この一か月で10万文字以上は書いた気がします。気が狂うかと


第七話 BROADCASTING ACCIDENT〈明日の犠牲者〉PART4

 

テレビが砂嵐へと変化した途端、テレビは赤い電気のようなものを纏わせた。これが先ほどの“番組”なのだろうか? ともかく、誰から見てもこれが危険なことは分かる。

「ドクター……ドクター今すぐ逃げて!」

「ヤツは光よりも素早い! そう簡単に逃げることは……」

「いいから早く!」

華がそう発破をかけると、ドクターは扉を開け部屋から急いで出ていく。

テレビに纏わりついた電気が“怪物”のような姿へと変貌し叫ぶと同時に雷のようにテレビから放たれた。

「ドクター!!」

そして放たれた光は廊下を走って逃げるドクターを追いかけるように部屋から出て行った。華は部屋から出てドクターの方を見る。

「逃げて! 早く……」

華がそう言い終わる前に、赤い電気はドクターの体に直撃し、彼の体を貫いた。口から黒い煙のようなものを上げながら、その場に倒れ込む。

「嘘……嘘ドクター! ドクター! 死なないで!」

華は倒れる彼の元へと駆け寄った。まさか、ドクターが死ぬはずはない。いままでどんな恐ろしい存在を前にしてもケロッとした顔で危機を乗り越えてきた。そんな彼が死ぬはずはない。

「ドクター! ドクター!」

必死に彼を揺らし、頬を何度も叩く。しかし一切の反応が無い。嫌だ、そんなことが……華は涙を浮かべながら彼を何度も揺らす。

「ドクター……!」

溢れる涙が動かなくなった彼の頬を濡らす。彼の瞳がもう開くことは……

「うおおぁーっ!」

「嫌ああああーっ!?」

突然叫びながら起き上がったドクターに華は驚いて後ろに倒れ込む。良かった、なんとか生きていた。

「生きてたなら死んだふりなんてしないでよ! こっちは本当に死んだかと…… いや待って、なんで生きてるの!?」

「普通の人間なら死んでただろうな。でも僕には心臓が二つある! だから一応生きてはいるけど……」

「心臓が二つ!?」

「前に言わなかったっけ!? タイムロードは心臓が二つあって……ぬああーっ!」

しかしドクターの様子がおかしい。胸を抑えながら壁にもたれかかる。

「どうしたの!? 大丈夫!?」

「アイツが僕の心臓を一つ止めたんだ! 今は大丈夫だけどタイムロードは心臓が一つで動けるようできてない! だからもうすぐ死ぬ!」

「ええっ!? 結局死ぬの!?」

悶え苦しむドクターに華は慌てる。生きてたと思ったら死ぬだなんて……

「ああ! ヤツは今僕の体の中に居て暴れまわってる! けど大丈夫だ! たとえ死んでも再生できる! タイムロードには再生エネルギーというものがあって、体が死ぬとそのエネルギーで治療するんだ! 見た目が変わるからもう中学生じゃなくなるかもしれないけど背に腹は代えられない!」

「待って待ってどういうこと!?」

「いやちょっと待てよ……ぐああっ!? 何故だ!? 再生できない!? まだ再生エネルギーは使い果たしてないはずなのに!?うおあっ!」

ドクターはその場に倒れこみ胸を抑えて苦しみ続ける。

「その再生ってのもダメなの!?」

「ヤツが僕の体の中で暴れてるせいだ! マズい! これじゃ僕は再生できずに……完全に死ぬ!」

さっきの電気の怪物がドクターの体の中で暴れている。そしてそのせいで彼の体は“再生”とやらができないらしい。とにかくこのままではドクターが死んでしまう。

「どうすればいいの!? まさかこのまま死ぬの!? 嫌だよ! 私まだ別れ言ってないし……」

「まだ僕が死ぬと結論づけるな! 今から6分後に完全に僕が死ぬ確率は90%! だけど助かる方法を今考えてる! えーとえーと……があぁっ! とにかく他のみんなを呼んできてくれ!」

「わ、わかった! 町田さん! みんな! ドクターが!」

それを聞いてすぐにみんなが華たちの元へとやって来る。事は一刻を争う。

「どうした!? ドクターは生きてたのか!?」

「生きてたんだけど死にそうらしいの!?」

「なんだと!?」

「僕が完全に死ぬまであと5分! ここにAEDはある!?」

ドクターは苦しみながら町田に聞く。

「あ、ああもちろんだ。ここに置いてある!」

「今からそれを持ってきてくれ! あと必要なものはコンセント! 電気を通せるケーブル! あとメロンソーダにアンパン! それと華が持ってるスマートフォン!」

「何でメロンソーダとアンパンが必要なの!?」

「僕の好物だからさ! ぐああーっ! それと含まれてる成分が必要!」

「わ、分かった! 探偵団のみんなははメロンソーダとアンパン買ってきて! 私はえーと……充電器のケーブル! ちょうど持ってた! これをどうすれば!?」

「あとは僕がやる! 急いでくれ!」

ドクターに言われたものをみんなでかき集め持ってくる。残された時間はあと5分。町田警部は急いで警察署の一階に備え付けてあるAEDを持ってきた。頼たちはゆっくり会計をする店員を急がせ、すぐにアンパンとメロンソーダを購入した。

ドクターは苦しみながらコンセントに充電ケーブルを刺し、円を描くように地面に置いた。そしてその中心に華のスマートフォンを配置する。

「買って来たよ!」

レジ袋を引き裂き、ドクターはアンパンとメロンソーダを思いきり口の中に流し込んでそれを食べる。苦しみながら食べているためか一部口からあふれ出ている。

「死の間際に食べるアンパンとメロンソーダは格別だ!」

「軽口言ってる場合!?」

「AEDを用意したぞ!」

ドクターは口にアンパンとメロンソーダを含みながら、自分の服を脱いで胸に電極パッドを貼り付ける。

《心電図を調べています。患者に触れないでください。心電図を解析中です……心音が異常です》

「僕はタイムロードだからな! みんな離れろ! 出力を上げる!」

ドクターはそう言うとAEDに向かってソニックドライバーを当てると、AEDは火花を上げた。

「ねぇ本当に大丈夫なの!?」

「出力を10倍に上げたんだ! 死ぬほど痛いがやらないと死ぬ!」

ドクターはAEDのボタンに手をかける。

「そうだ言い忘れてた! 華!」

「何!?」

「君のスマホが壊れると思うから先に謝っておく」

「ええっ!?」

全員が自分の傍から離れたことを確認し、ドクターがAEDが発動させる。ドクターは叫びながら大きく震え、ケーブルで作った円の中に電気の塊のようなものを吐き出し、勢いで後ろへと吹き飛んでしまう。

AEDは今の衝撃でショートし、黒く焼け焦げてしまった。皆、吹き飛び気絶したドクターの顔を覗こうとする。

「ドクター……? ドク……」

 

ドクターは大きく声を上げて華に向かって倒れた。華はゆっくりと彼のことを抱きかかえる。

「どうだ……? 僕の心臓、ちゃんと2つ動いてるか?」

華は彼の胸に手を当てる。

「……うん。ちゃんと動いてる」

「それは良かった……今の電気ショック、二度と味わいたくないね。アンパンに含まれるアンとパンの成分とメロンソーダの炭酸と保存料がシナプスと電気信号を乱しやすくなるからそこにAEDの電気ショックを与えて……」

「本当に……本当に良かった!」

華はつい安心のあまり涙を流して彼の事を強く抱きしめてしまう。ドクターは痛い痛いと言いながら引き離そうとする。

「だって私……本当に、本当に死ぬかと思ってぇ……」

「君をこの時代に置いて死ぬわけないだろ?」

「う、うん……」

華はなおも涙をこらえきれずに顔をぐしゃぐしゃにして彼の事を抱きしめる。

「でもちょっと待って……? 私のスマホ……」

「未来の新型を今度買ってあげるから許して?」

それを思い出し、華は涙溢れる顔でドクターの肩を強く叩いた。

「ドクター、本当に無事なのか?」

町田警部が彼に聞く。

「心臓はちゃんと動いてるしヤツは僕の体から綺麗さっぱり消えたよ。ただの人間だったらアレに襲われた段階で死んでたけどね」

ドクターは町田に向かって笑顔を見せる。

「それでヤツはどこに消えたんだ? 死んだのか?」

「いいやまだ消えてない。そこにいるよ」

そう言うとドクターはケーブルの円に向かって指をさす。そこには何も見えない。

「何も見えないけど……」

「ちょっと待ってくれ。町田警部、ラジオを持ってきてくれ」

そう言われ、町田警部は隣の部屋に置いてあった少し古い型のラジオを持ってきてドクターに手渡す。

「えーと、周波数を合わせて……」

ラジオをいじり、ドクターはそこから取った周波数のデータを円の中心にある華のスマホに向けて放つ。すると、その円の中にテレビに纏わりついていた、あの赤く光る怪物が現れた。電気の線が繋がったような姿だ。

「これがあの番組で、人々を殺した犯人さ。僕の体に入り込んで殺そうとした」

「おじいちゃんを殺した犯人……」

「嘘だろ、なんなんだこれは!?」

頼たちはその怪物を見て目を丸くして驚いた。

「これって何なの? 電気型エイリアン?」

「いや、生物じゃない。これは電波さ。テレビ番組を映す電波」

「電波……?」

怪物はまるで吠えるようにこちらを襲おうとするが、怪物を囲んでいるケーブルがバリアのようなものを出していてこちら側には手を出せないようだ。

「おっと、随分と狂暴だな」

「電波って……こんな目に見えるものなのか? 俺は最近のテレビ事情にはあんまり詳しくないが、最近のテレビ電波ってこんな感じなのか?」

町田は華たちに聞くが、皆首を横に振って答える。

「宇宙のテレビ番組の電波だろうね。星々の間で番組に遅延が発生しないよう、かなり高度な通信規格を使ってる。地球の規格で言うと10Gぐらい。何かをきっかけにして地球の千葉県に飛来したんだ」

「じゃあこれは“宇宙のテレビ番組”そのものってことなの?」

「ああそうさ。だけどこいつに悪意は無いし、意思だってない。命令されたことをただこの星で実行に移していただけ」

「番組に名前が映った人間の元へ行って、殺すって番組……?」

そんな悪趣味な番組が宇宙にあるのだろうか? 華たちは少し怪しんだ。

「悪趣味な番組は宇宙にたくさんある。クイズ番組で一番間違えた人を殺したりする番組とかね。でもこんな番組は初めて見る。少しばかり調査する必要がありそうだ」

ドクターはソニックドライバーにその“電波”の情報を移し、更なる情報を調べるためターディスへと戻るため歩いていく。

「おいドクターどこに向かうんだ? こいつをここに置いたままなのか? ここは警察署だぞ?」

「大丈夫だ。そいつは番組に名前が載った人間しか狙わない。それに今バリアを張ってるからそこから出てこれないよ。見張っていてくれ」

そう言うとドクターは走って去っていく。華もその後を追っていく。

「見張っていろって……コイツを?」

町田警部たちは、その電気の怪物に目を向ける。

 

 

「やっぱりターディスの中って安心するね。安全な場所だし」

「ターディスは必ずしも安全なわけじゃない。だがあの電波は入ってこれないはずだ」

ドクターはソニックに記憶させた電波のデータをターディスのコンソールへと移す。宇宙のあらゆることを検索できるターディスでその出所を探る。

「よーし見つけた。あれはドゥークって星系からやってきた電波だ」

画面にはその星系と思われる銀河の集合体が表示されている。

「それってどんな星系?」

「テレビ好きの星系だ。あそこのテレビ番組は面白いよ? 宇宙カラスがやってる料理番組がお気に入り」

ドクターは操作盤のキーボードをいじる。

「そしてその星系のマルバって星からあの電波は送り出されたらしい。テレビ番組の名前は……『ビックリ! 星間ビリビリアワー』?」

「何そのふざけた番組?」

「なるほど、ドッキリ番組か…… 星系全体の住民のデータベースを拾ってそこからランダムで映し出された人物の元へ“電波”が行って電気ショックを与えるってドッキリ番組か。僕たちが見たあの番組とよく似てる内容だ」

「電気ショックって……まさかドッキリ番組で人を殺すの!?」

人を殺すだなんてドッキリでも何でもない。宇宙ではよくあることなのだろうか?

「いいや殺さない。地球でもよくあるだろ? ビリビリペンみたいなドッキリ。その程度の電気ショックらしい。いままでの死傷者は0人だ」

「でも何人も地球で死んでる」

「もし電波が何かをきっかけに変質してしまったとしたら? そう、例えばこれ」

ドクターはモニターに映像を移す。そこには太陽がフレアを出す様子が映し出されている。

「太陽フレア?」

「その通り! これは星から星へ渡る電波だ。だけどその電波が他の星へ向かっている途中に太陽フレアを浴びた。そのせいで本来の目的が書き換えられたんだ。名前が載った人物に電気ショックを与えるということから、名前が載った人物を電気で殺すっていうね」

人を殺す番組の正体は変質したドッキリ番組なんてにわかには信じがたい話だが、ドクターが言うのだから間違いは無いのだろう。

「しかし僕の名前まで知るとはね。あれは電波塔を介して千葉県全体の様々な機械にアクセスして住民の情報を盗み取ったんだ。だから人の名前を知って、テレビに映すことができた」

「ドクターは千葉県の人間じゃないはずだけど」

「ターディスを経由したのさ。ターディスなら僕の本名を知ってるからね。まさか僕が狙われるとは想像してなかったよ」

「どうして地球にこの電波が?」

「太陽フレアを浴びたときの衝撃で本来のルートを外れ……地球へ到達した。電波を失った番組はそれから放送してないらしい。言ってしまえばこれは宇宙規模の放送事故だな」

「人を殺す放送事故だなんて……」

「そしてそれが千葉の電波塔に直撃。そこからあの番組を放映し始めたんだ」

「雨の日の深夜0時に放送する理由は?」

「この番組が現地時間だと深夜0時から放送されてたからさ、そして雨の日にだけ映ったのは電波が通りやすいから。イオンとか空中の電子が雨の日の湿気が高い日は通りやすい。だから電波があの番組を深夜0時の雨の日に映してた。それまでは電波塔でずっと待機」

「それでどうするの? 電波なんて倒し方が分からない」

「僕を誰だと思ってる? 心配するな。あの電波はあそこに捕らえたままだし、あとはターディスにアンテナをつけて、そこに誘導して殺人電波を封じ込める。そうすれば……」

すると突然、警報音のようなものと同時にターディスのモニターに何かが映し出される。それは日本全体だ。

「おい待て……嘘だろそんなことが」

「この音は何!? 一体何が?」

「電波が……増殖してる」

モニターに映し出された日本の地図上に、Wi-Fiのような電波のマークが次々と映し出される。

「まさか、アレが増えてるってこと!?」

「僕がさっきやった電気ショックのせいでさらに性質が変化したってことはないよな? いいやその読みは当たりだ! あれは電波だ! 形はない! だからいくらでも増えることができる!」

「増えたらどうなるの!?」

ドクターは頭を抱えて華の方を見つめる。

「さっきの電気ショックのせいでヤツが増殖するようになった。しかも日本中に電波を飛ばし始めてる!」

「あの番組が日本中で放送されるってこと!?」

「ああ、千葉県だけじゃなくて日本全体だ! これは……マズいぞ!」

ドクターがキーボードを叩きながら事の詳細を調べる。まさかの変質は予想だにしていなかった。

「警察署に捕らえた電波は!?」

ドクターはターディスから降りてさきほどの電波を封じ込めた場所へと向かう。

 




次回のチラ見せ


「ディレクター! どうやら他のテレビ局でも……同じような映像が流れているようです」
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