地デジはデジタルって表示されないので物足りないです
「おい、アイツはどこに消えたんだ!?」
突然目の前から封じられたはずの電気の怪物が消滅した。見張っていろと言われていたのに逃がすとは…… 町田警部は頭を抱えた。そんな彼の前にドクターが走って現れた。
「ドクター! 悪い、逃がしたみたいだ」
「いいや逃げたんじゃない。電波をあちこちに放って自分は消えたのさ」
「電波を……あちこちに放った!?」
「今日本中のあらゆる電波塔や放送局を飛び回ってるはずだ。NHK、日本テレビ、フジテレビ……」
「まさか、あの番組が日本中で流れるってこと!?」
栄美が不安そうな目でドクターに迫る。
「ああその通りだ。しかもさらに厄介なのはあの電波が変質したってことだ。わざわざ人の情報をあちこちのデータベースから引きずり出さなくてもよくなった。増殖してどんなテレビにでも入れるようになったからね」
「つまり、どうなる?」
「電波の入ったテレビの前に居る人間を殺すようになった」
まさかの事実に一同は戦慄する。テレビに映った名前の人物を殺すのではなく、テレビを見た人間を殺すようになったとは。先ほどまでとは危険度が段違いだ。
「どうするんだ!? 日本中にあれが散らばるだなんて!」
「僕もこうなるとは予想してなかった! さぁどうするどうする!? 早くしないとテレビの前の良い子のみんなが全員死ぬぞ!?」
ドクターは頭を叩きながら考えを巡らせる。こんな状況をどう打開する? さきほど自分が死にかけたときはすぐに対処法が浮かんだが、日本全土に殺人電波が回ることになるとは。どうするどうする……
「なんとかして、その電波を止められないかな? 電波には電波、みたいな……」
頼の一言を聞いて、ドクターは驚くような顔をする。
「さすが参謀だ! よし、電波には電波で対抗する!」
ドクターはその場で走り回る。それを聞いて何かいい策を思いついたようだ。
「電波には電波……?」
「思いついたはいいが人手が足りない! かなりの緊急事態だから急がないと! 僕と華だけでやるにはあまりにも時間が……」
頭を抱えるドクターに対し、翔は自分の事を指さす。
「俺たちは?」
「そうか、少年探偵団! 君たちが居た! しかも警察だっているし」
日本各地のテレビ局は突然乱入してきた謎の電波に混乱していた。突然強い信号で、かつどんな手を使っても元の番組に戻せない。
「おいおいおいおい! 一体何がどうなってる!?」
「分かりません! 急に電波が上書きしてきて……」
「こんな電波ジャック見たことないぞ!? 大体何なんだこの番組は!?」
日本テレビの放送室。突然現れた奇妙なゴミ処理場の映像に頭を抱えていた。
「一体誰がこんないたずらを……」
「ディレクター! どうやら他のテレビ局でも……同じような映像が流れているようです」
「何? うちだけじゃないのか!?」
日本各地のテレビを見ていた家庭も突然目の前に現れた謎の映像に驚いていた。チャンネルを変えても変えても同じ映像が映る。
「どうしたんだろう、テレビ壊れたのかな……」
「買い替え時ね」
千葉県の警察署のターディスの前、雨が一段と強く降る中、ドクターはある任務を与えようとしていた。
「さて少年探偵団の諸君と町田警部。それと華。今から作戦を伝える」
「どんな作戦?」
「君たちに全公共放送のテレビ局にこのアンテナをつけてほしい」
「アンテナ……?」
突然黒いアンテナを手渡される。家の屋上についているようなアンテナだが、形は少し丸っこい。
「事は一刻を争う。既に日本全国に公共放送を通じてあの番組が流れてる。しかも今度はテレビの前の人間を殺す仕様だ」
ドクターはアンテナをいじりながら解説を続ける。
「それを防ぐために、それ以上の電波を放つ。ターディスからこのアンテナに向けて妨害電波を放てるようにしてある。君たちがすることは各テレビ局にこれをつけること」
「けどどうやって?」
栄美が質問をする。確かにこのアンテナをテレビ局につけろと言われても、そこまで行く手段や、どこにつけるかが分からない。
「簡単なテレポートを使う。つい最近70世紀の闇市場で売ってたのをターディスに取り付けたんだ。実はペテンにかけられて、数百キロしか移動できない短距離用を買わせられたんだ。使い道無いと思ってたけど、つけて正解」
ターディスをポンポンと優しく叩きながら自慢げな顔を見せる。
「さっきから思ってたんだが本当にお前は探偵なのか?」
町田警部がドクターに怪しい目を向ける。
「ああもちろん。宇宙一の探偵さ。とにかく、テレビ局前に着いたらなるべく高いところへこのアンテナを立ててくれ」
ドクターがみんなにそれだけを伝え、ターディスの中へと入ろうとする。
「まだ……僕怖いんだ。おじいちゃんを殺した犯人は嫌いだ。でも、本当にできるかどうかって考えると……」
頼はこの状況に怯えていた。ただでさえさきほどドクターが苦しみ死にかけたところを見たのだ。ただ死体を見るよりもよっぽど恐ろしい。
華はゆっくりと彼の前に近寄って行って、その手を掴んでゆっくりと諭す。
「私も……怖いんだ」
「お姉ちゃんも怖いの?」
「……うん。でもみんなのために戦わないとって思ってる。とても怖いかもしれないけど、今は頼くんたちにしかできないの」
「僕たちだけが……」
「そうだよ。大丈夫! ドクターはさっき死にかけたけど、ああやって今は元気でしょ? アイツはいつもああやってみんなのために戦ってくれるし、みんなの傍に寄り添ってくれる。だから心配しなくていいよ」
頼は彼女の言葉に安堵する。確かに、彼はさっき死にかけたがそれを乗り越えたのだ。恐怖を乗り越えた。
「それに……今は私だっているし」
華は笑顔を彼に向ける。
「お姉ちゃん……」
「ドクター、これをテレビ局の高いところにつける。それでいいんだな?」
「ああ。あとは僕がやる」
「ターディスで全部できるの?」
華がドクターに聞く。妨害電波を放つと言ってもターディスから全てのテレビ局へ、全国に向けて放つことはできるのだろうか。
「まさか。日本最大の電波塔を使うよ」
「日本最大の電波塔? スカイツリー?」
華は日本で一番高い建物であり、日本最大の電波塔の名前を出す。しかし探偵団のみんなはそれを聞いてもパッとしていない。
「今の時代は東京タワーだよ。それを使う」
「あっ、そっか……」
華は少し顔を赤らめる。そんな彼女を見て、頼も顔をなぜか赤らめさせている。
「俺たちは町の平和を守る少年探偵団だ! だけど今は日本の危機を救う! お姉ちゃんとドクターと刑事さんは臨時隊員ね!」
翔が発破をかけるために自分たちの事を名乗る。日本の危機を救うために立ち上がるのだ。
「探偵団って……ごっこ遊びか」
町田警部はそんな彼を見て微笑む。
「日本を救うごっこ遊びなんて最高じゃない?」
華が頼の手を握りながら町田の方を見る。
「ああ。その通りだな」
「よし! 転送準備完了だ! それじゃあみんな到着したらちょっと吐気を催すかもしれないが我慢してくれ。それでは……幸運を祈る」
ドクターがターディスのボタンを押すと、全員がターディスから放たれた光に当たり、各テレビ局前へと転送されていく。
「ここって……あの玉、フジテレビね?」
華はフジテレビへと送られていた。フジテレビのシンボルとも言える「はちたま」を前に少し興奮する。
「2009年と言えば『イケメンパラダイス』が……いや、あれってもう少し前だっけ? ってそんなことどうでもいいから早くアンテナをつけないと!」
華はドクターから託された使命を思い出し、フジテレビの建物に向かい走っていく。
「だけどどうやって高い所まで上がればいいんだっけ?」
高い所にアンテナをつけるといっても、そこまで上がる手段を教えられていなかった。少なくとも外階段のようなものは無いし……
ふと手に違和感を感じて見てみると、そこには『サイキックペーパー』が握られていた。
「ああ、なるほどね」
華は入口の守衛にそれを見せて中へと入る。ついでに「中で働いている父にお弁当を届けに来た」という理由で。
「私は千葉県警の町田重蔵だ。捜査のために中に入れさせてもらいたい」
「なぜ千葉の警察の方がこんなところに? ここ東京ですよ?」
町田警部は赤坂のTBS前へと送られていた。警察手帳を入口の者に見せるが、さすがに千葉の警察が東京に単独で来るのはおかしいと思われ足止めを喰らっていた
「中で重大な事件が発生していると通報を受けた」
「だからなんで千葉の警察が…… 大体なんですかそのアンテナ」
「いいから入れさせろ。公務執行妨害で逮捕されたいのか?」
「はいはい……」
TBSの者は脅されてしまい、仕方なく中へと入れた。
「お姉ちゃんがあそこまで言ってくれたんだ。僕も頑張らないと!」
頼は既にNHKの中へと入りこんでいた。偶然にも転送先は建物の中だったらしい。
「そこの君、何をしているんだ?」
中を巡回していた警備員に見つかり、声をかけられてしまう。
「あ、あーっと……お父さんの弁当を届けに来てて……」
「ちゃんと表から入って来たか?」
「え? いや、それは……」
まずい。そう思って頼は弁解するまでもなくその場から立ち去ろうとしてしまう。
「ちょっと待て君! 待ちなさい!」
「華と町田警部はともかく、小学三年生には荷が重すぎたかな……けど警察の人間を頼ろうにも、殺人電波が日本を襲うなんて言ったって信じてくれないか」
「おいそこ、勝手にエレベーターに乗るな!」
東京タワーの1階。展望台へと昇るためのエレベーターの中。ドクターは妨害電波を放ち、殺人電波を日本各地から集めるための機械を手に乗ろうとするが、係員に見つかってしまう。展望台に上るためにはチケットが必要らしい。
「チケットの料金なんてたかだか数百円だろ? ケチケチしないでくれ」
「おい待て……」
ドクターは係員がこのの中に入って止める前にソニックをエレベーターの操作盤に当てて扉を強制的に閉める。
目指すは東京タワーの頂上。この機械を取りつけなければ。
「これでいいのかな? たぶんいいよな」
翔は既にテレビ朝日の屋上にアンテナを取り付けていた。ちょうど中に自分の知り合いがいたので彼に協力してもらったのだ。
「本当に……蓮が死んだのか?」
「そうだよ。その犯人を捕まえるためにこのアンテナを取り付けてるんだ」
「マジかよ……。でもなんでこんな雨の中アンテナを」
「細かいことは気にしないでよ兄ちゃん。俺がいままで嘘をついたこととかある?」
「そりゃもうしょっちゅう。でも驚いたよ、まさかお前がここまで一人で来るなんて。けど警備員にバレたらこれヤバいんだけど……」
「もし見つかっても兄ちゃんの責任ね」
「おい」
実の兄にそんなことを語りながら、翔は遠くの空を見る。
「頼むよドクターさん……」
「電波ジャックでこんな不気味な番組が流れるなんて……」
暗い部屋の中、テレビを眺める一人の男性がパソコンをいじりながら掲示板を見ている。
「他にも同じ人居ますか……っと。おっと来た来た」
《30分ぐらいずっとチャンネル変えても同じ画面なんだけど》
《なんか電波のエラーかなんかなんじゃね?》
《日本中のテレビで同じことが起きてるらしいよ》
自分で建ち上げた掲示板のスレッドに次々と書き込みが増えていくのを見て、男は少し面白がっていた。
まさかこのテレビ番組が今から自分を殺そうとしているなんて考えもせずに。
パソコンからふとテレビを見つめ返すと、テレビの画面にはなぜか自分の名前が表示されており、奇妙なナレーションが聞こえてきた。
《鈴木明さん…… 明日の犠牲者は以上です おやすみなさい》
そのナレーションがかかった瞬間、テレビが突然赤い電気をバチバチと放ちながら砂嵐を表示させる。
「な、なんかマズいぜこれ……」
次回のチラ見せ
《やぁ! テレビにかじりついているテレビっ子の諸君!》