そういえば50話を突破していました。100話も意外といけるのかな・・・
「私はソンターラン帝国、第五十四艦隊のストライク! 我らをここに封じ込めた憎きシャドー議会に我々は宣戦を布告する! 決してソンターランは彼らには屈しない!」
武器庫の中で、ジャガイモのような頭をしたエイリアンが武器を取り、互いを鼓舞しあっている。
「ソンターハ! ソンターハ! ソンターハ!」
そんなジャガイモ頭たちはこれからの戦いに興奮しているのか、かけ声のようなものを上げている。
「あいつらは何なの?」
銃や剣、バズーカなどの陰に隠れながら、華たちは彼らを眺めている。
「ソンターラン。戦争好きのエイリアンでね。戦争で負けたヤツらがここに捕まってたんだ」
「本当、エイリアンの動物園って感じ」
3人はソンターランに気づかれないよう先へと進む。
「あと20分。いよいよ時間が無くなってきました」
ジェーンが不安そうな声を上げる。
「しかもこんな囚人たちの中を進むだなんて……」
武器庫の中には、ソンターランだけでなく様々な囚人たちが集まってきていた。ここで武器を調達し脱出するのが目的だ。だが彼らはここが20分後に火の海になることをまだ知らない。
「囚人同士で喧嘩はするだろうけどこちらから手を出さなければ平気さ。僕たちを囚人の一人だとみんな思ってる」
囚人たちは、ドクター達の事を気にもせず通り過ぎていく。
「作戦に必要なモノ、それはシャウターを止めるためのものだ。それが武器庫にあるはずなんだけど……」
すれ違う囚人たちと目を合わせないように進んでいく。ここには危険なエイリアンばかりなのだ。
「あった、拡散型音響兵器だ」
ドクターが遠くに置いてあるそれを指さす。それは赤く光っている。
「音響兵器?」
「音で破壊する兵器さ。あれが必要なんだ、取ってこないと」
華を置いて、ドクターがお目当てのものへと一直線に進んでいってしまう。ジェーンはなんとか追い付いている。
「ちょっと待ってよドク……」
華が彼を追おうとした瞬間、目の前にいた背の高いエイリアンにぶつかってしまう。グレイ型エイリアンの見た目で、囚人服を着ている。
「あ、あの……ごめんなさい」
そのエイリアンは口のようなものを開いてこちら側の顔を覗いてくる……
「ひぃ……! ド、ドクター! ドクター!」
「何だ、どうした?」
彼に目を向けた途端。目の前からそれが消えていた。
「ガンでも飛ばされたか?」
「え? 別になんでもないよ」
今何かに襲われかけていたのに、華は一切気にしていないようだ。まるで今あったことが無かったかのように。
「何もないなら心配ないな。お目当てのものは手に入った。ほら、これ」
赤く光る、丸い卵のような機械だ。
「音で破壊するって、刑務所をぶっ壊すとか?」
「そんな野蛮な使い方はしないよ。シャウターへの対抗策さ。少し改造すれば……」
「ドクター……!」
突然、エコーのかかったような声が辺り一面に響き渡る。
「この声は……前に聞いたことあるな」
「ドクターだ、ここにドクターがいるぞ」
武器庫の中の机の上に、それは立っていた。背が高く、頭の大きいグレイ型のエイリアン……
「そう、そうだよドクター! 今私にアイツに襲われそうになって……」
「サイレンスだ。目を離すとそいつの記憶を失う」
サイレンス、と呼ばれたエイリアンはまるで演説をするかのように叫ぶ。
「我らの敵が、ここにいるぞ!」
サイレンスがその巨大な指をドクターに向ける。その瞬間、武器庫は一瞬の静寂の後、囚人たちの持つ武器がドクターを狙った。
「なるほど、ここには僕の知り合いがたくさんいるわけだから……看守の服着てなくてもバレる可能性があったな」
狙われた恐怖からか、華とジェーンはドクターの腕を掴む。
「ドクター、我らソンターランの敵! 何度貴様に我らの邪魔をされたか……!」
ジャガイモ頭のエイリアン、グレイのような背の高いエイリアン、骸骨のような鎧を被った兵士、顔中に獲物の歯を付けている怪物、ゾンビのような見た目をした修道士……とにかく、誰も彼もドクターに対し憎しみの眼で見つめている。
「や、やぁみんな久しぶり! って言っても直接じゃなくて伝説とか童話で僕の話を聞いたのもいると思うけど……そう、僕がドクターだ」
それを聞いてドクターに銃を向けているエイリアンは一斉に怒りの声を上げる。
「貴様を殺せば私は宇宙の英雄となれる!」
ソンターランの一体が銃を掲げた。
「ちょっと何言ってるの!? こんな状況じゃどう考えても殺されるでしょ!?」
華が自分を誇示するドクターに抗議するが、彼は余裕そうな表情だ。
「心配するな、ヤツらはあらゆる方向から僕を狙ってる。つまり……」
「ドクターを殺せ!」
ジャガイモ頭が銃を放つ。
「伏せろ!」
その合図で華たちは一斉に伏せて攻撃を避けた。避けられた弾丸は反対側に居た修道士に当たる。それに反撃するかのように、彼らもまた攻撃をする。
「貴様らは我らソンターラン帝国に宣戦布告をした! 殲滅する!」
その瞬間、ドクターを狙っていたはずの囚人たちは互いに殺し合う戦争を始めた。弾丸や閃光が武器庫の中を覆い尽くす。
「これも作戦のうち!?」
「まさか、イレギュラーだよ! けど良かった、互いに潰し合いを始めたおかげで僕の話は終わった!」
「二人とも大丈夫ですか!?」
囚人たちの間からジェーンが銃を持って現れる。
「僕たちはなんとか平気。すぐに出るぞ!」
武器庫の中で始まった戦争の中をかいくぐり、なんとか武器庫の外へと逃げ出すことが出来た。
「ジェーン、ロックを!」
「ああ、今やってる!」
武器庫のロックは手形でできる。ジェーンは操作パネルに手を載せて武器庫のドアをロックする。
「これでヤツらは出れない。中で戦争もおっぱじめたし、それに夢中で出れないことにも気づかないだろう」
「けどシャウターがここに来たら開くかもしれません」
「その場合は……全滅してることを祈ろう」
なんとか武器庫から目当てのものを手に入れて一同は安堵する。
「これを管制塔のメインコンピューターに取り付けて、発信される信号でこの刑務所全体を覆い尽くす。そうすれば万事解決ってわけだ」
赤く光る機械を華に見せる。
「そんな簡単に上手くいきますか?」
「ずっとイメージトレーニングしてたからきっと平気さ。それとこれも。この機械持ってるせいで手がいっぱいだから、君が持っていてくれ」
そう言うと、ドクターは黒い長靴のようなものを華に手渡した。
「これ何?」
「詳しい話は後。時間が惜しい」
武器庫を離れ、一同は管制塔へと向かう。残り時間は15分だ。
シャドー議会。突然ジュドゥーンの動きが止まったことに彼女は驚いていた。
「どうしたのです、早く歩きなさい」
動かないジュドゥーンを強く叩くが、怒りもしなければ何の反応も無い。
「一体何が……」
「おーい! マズいことになったー!」
突然後ろから叫ぶ声が聞こえてきた。ドクターだ。
「ドクター、なぜここに?」
「話はまた後で、既に囚人がここに入り込んできてたんだ! メディの皮を使ってね」
「一体どういう……」
今度は奥から緑色の怪物が叫びながらこちらに向かってきている。スリジーンだ。
「なぜこんなところにスリジーンが!?」
「今言わなかったか? とにかく逃げるぞ!」
「でも彼が!」
彼女は動かないジュドゥーンに指さす。まるで凍ったように動かない。
「ヤツの仕業でジュドゥーンは全て使い物にならない! 他に警備はいないか?」
「こんな事態は想定していません! 指令室の警備以外は全てジュドゥーンで……」
「なら指令室に向かおう! それにここのバリアは既に解除されてる!」
「何ですって!?」
「いいから逃げるぞ!」
彼女の手を引き、ドクターはこの先にある指令室へと向かう。
「かわいいかわいいドクター、私の手で引き裂いてあげる!」
爪をカチカチと鳴らしながら、こちらへと向かってくる。スリジーンの体は大きい。二人よりも歩幅は広く、着々と二人と距離を詰めている。その巨大な手も含めればすぐに狙えそうだ。
指令室では、突然バリアが解除されたことに大きく混乱していた。
「一体何が!?」
「バリアが解除、ストームケージから来たいくつもの船がこちらに向かっています! 止められません!」
「ジュドゥーンの警備は!?」
「突然、全員が停止しました! 一体何がどうなって……」
オペレーターの女性の一人が、こちらに向かう二つのシグナルを見つける。
「何者かがこの指令室に向かっています、アーキテクトと……ドクターです」
「ならすぐに開けるんだ!」
指令室のリーダーはオペレーターに命令をする。しかし彼女はその後ろを追う人影に注意した。
「しかし、何かが二人を追っているようです! 少なくとも議会の人間ではないのは確か」
《いいから開けなさい!》
指令室に女性の声が響き渡る。それを聞いてすぐさま扉を開く。
そしてその隙からドクターと女性が入って来る。
「この扉は頑丈?」
「ええ、スリジーンには破られない程度に」
「それは良かった」
そのことを聞いてドクターはソニックの光を扉に当て、扉は強く閉まる。なんとかスリジーンから逃げきることができた。
「ここが指令室か! なかなかいい場所だ。いい機械も揃えてるし」
「ドクター、一体何が起きたのです? アーキテクト、無事ですか?」
「ええ、なんとか」
「アーキテクト? アンタの名前?」
ドクターは彼女にそう質問する。
「ええ、私の名前よ。知らなかった?」
「初めて知った。いつもアンタとかアナタとか君とでしか呼んだことがなかったから」
「あなたも同じでしょう?」
「確かにそうだ。それより議会周辺の様子はどうなってる?」
ドクターは指令室の前方へと歩いていく。大きなモニターからはストームケージ、そして議会周辺が映像で映し出されている。
「ストームケージの焼却処分まであと10分か」
「それ以上の問題が今はあるでしょう? 囚人がここになだれ込んで来る」
「それも大問題だな。ただでさえ華を助けに行かないといけないのに……」
「今は囚人たちをなんとかしなければ。ここの技術が彼らに奪われれば宇宙全体の危機となります」
「とっくのとうに宇宙の危機さ。ここに向かってる船は何隻?」
「およそ100隻」
「一隻につき100人以上は乗ってるな。監視役のアトラクシは何やってる? ああいうのが逃げ出すのを取り締まるのが仕事じゃないのか?」
「エネルギーの充填中でしたから、それにまさかここのバリアが破られるとは想定してませんでしたし」
「それは僕も想定してなかった。解決手段は?」
「バリアさえ張れれば侵入は止められます。しかしこの指令室ではできません、制御室でないと」
「制御室のコンピューターは破壊された。直すのに最低でも10分はかかる。時間が無い。そうだ、ストームケージに行くのはどうだ?」
「またそれですか……」
「華を助けるのももちろんだが、管制塔に行けば囚人に取り付けられているIDを作動させて全員を牢屋の中に引き戻すことができる。シャウターはIDが無いから例外だけど、それ以外は解決できるはずだ」
「それで、ターディスを返せと言うんですね?」
「もちろん。じゃなきゃここも陥落、宇宙に甚大な被害が起きる」
「しかしターディスがもし囚人に奪われたら? 宇宙どころか時空にも被害が出る。そんなことは許可できません」
「どちらにせよ陥落したらターディスも奪われるだろ?」
「もしここの維持が不可能になった場合はターディスもろともここを廃棄、爆破します。そのための機能もここには一応ありますので」
「なるほど……、さっきから爆破したり焼却することばかりだな! どちらにせよストームケージに向かえなきゃ話にならない! ターディスがダメならそこまでの船を用意してくれ!」
ドクターがそう言った瞬間、爆発音が遠くから響き、指令室も大きく揺れた。
「囚人の船が議会に来ました! 既に何人もこちらに向かっています!」
「この状況じゃ、船を取りに行くことはできませんね……」
「ならどうする? ここを爆破するか?」
「……ええ、最悪の手段ですが」
「けどそんなこと君は望んでいないはずだ。そうだろ?」
「……」
「ならやることはただ一つ。入って来た囚人をなんとかして刑務所に追い返す。そしてストームケージから華を助け出す!」
「あくまで理想論。どうやってするのです?」
「それを考えている最中だ。えーとえーと……」
「囚人が指令室に近づいています! なんとか侵入は止められますが、時間の問題かと」
「よし! ゴミ捨て場だ、あそこにエクストラポレーターがあった、あれを使えばストームケージに突っ込んでいける! 修理が必要だ、ソニックドライバーくらいなら返してもいいだろ?」
「ええ、そうですが……今は別の所に置いてしまっていて、持っていません」
「何だって!? ああまったく……、じゃあ何か代わりになりそうなもの、持ってない? 誰でもいいからくれ!」
それを聞き、オペレーターの一人が壁に取り付けてあったものを外し、ドクターに手渡す。
「レーザードライバーです。ソニックほど万能ではありませんが……」
「いいね、レーザーが出るスクリュードライバーか。いい思い出はあんまり無いけど……ありがとう」
レーザードライバーを受け取り、ドクターは指令室の扉へと向かっていく。
「あとは全部僕に任せて君たちは指令室に居てくれ。本当に最悪の状況になったら、自爆してよし。分かった?」
「あなたに任せるのは心外ですが、本当に上手くいくのですか?」
「さぁ、それは神のみぞ知るね。じゃあ生きてたらまた会おう」
そう言うと、ドクターは外へと走っていき、指令室の扉は固く閉ざされる。
次回のチラ見せ
「まさか……こんな外に出て、あれを起動するってわけ!?」