DOCTOR WHO 青い箱の中の少年   作:ナマリ

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少し忙しくて更新が空いてしまいました。
今後は週に1度程度の更新になるかもです


第十一話 THE PHANTOM THIEF'S NAME IS DOCTOR〈怪盗ドクターからの挑戦状〉PART2

 

「本当に美しい! ついにこれが私の手に入るのね……」

華はそのダイヤを防ぐ強化ガラスを、どこからともなく取り出した小型のハンマーで破壊し、その中のブルーティアーズを掴んだ。

「本当に綺麗……、これさえあればようやく……」

光を取り込み、反射するそのダイヤを見てうっとりする彼女の横、突然誰かが彼女の腕を掴む。

「ただの人間ならこれで眠ってただろうな……! だけど僕は人間じゃない、この程度の麻酔は効かないよ」

煙が晴れると、そこにはドクターが立っていた。

「あら、それも考慮するべきだったわね。でももうこれは……私のものよ」

そう言って彼女は立った今手に入れたそのダイヤを見せびらかす。

「まさか怪盗ドクターの正体が女性とは。けど華じゃないな。彼女に成りすましてる!」

「ええその通り。けどどこで気づいたの?」

「君が突然ダイヤの前に来たから怪しんだのさ。だから華本人かどうか確認してみたんだ。華に成りすますには、彼女を知らなすぎる」

ドクターはその手に力を込め、ゆっくりと彼女の腕を引き寄せようとする。

「もっと早くに気づくべきだった……! こんな場所に来ようなんて、今考えればおかしい話だ!」

「ありがとうドクター、ターディスのおかげですんなりここに侵入できた」

「彼女はどこだ? どこにいる!?」

「さぁ。あなたが自分で探してみたら?」

「いいや教えるんだ! 彼女はどこにいる!? 教えないとこの腕を折るぞ!」

ドクターは怒りの形相を浮かべながら、その腕を反対方向に曲げようとする。

「随分と危なっかしいのね。けど残念、目的は果たしたし……さようなら」

そう言って掴まれた腕を外し、ドクターを柔道の背負い投げのように飛ばし、煙玉をその場に投げつける。

その煙が晴れた向こう側、そこには黒いコートに身を包んだ赤い仮面の女性が立っていた。

「さよなら、また会いましょうね」

ブルーティアーズをコートの中にしまい、フックショットを取り出し天井の通気口の中に向かってそれを放った。

「待て! 逃がすか!」

ドクターはソニックドライバーを彼女に向ける。すぐに見失ってしまったが、少しは情報を得ることが出来た。

「すぐ消えたわけじゃない……まだこの博物館の中に居るはずだ!」

彼女の持っていたフックショットの機械のデータを解析し、その場所を追跡できる。

「ほら、みんな起きてくれほら!」

煙を吸い、眠ってしまった警部たちを起こそうとするが、随分深く眠っているようで起きる気配はない。

「ああもう全く! 僕一人で上まで行くよ!」

彼らを踏まないように走って行き、上階へのエレベーターへと走っていく。

 

 

地球館の地下2階、古代生物の化石が展示されているこのフロアにも多くの警備が張り巡らされていた。

現時点で何の異常も無いため、このフロアを警備している警官たちはあくびをかいていた。しかしその中に突然異常が割って入る。近くのエレベーターから突然少年が現れたのだ。

「ちょっと君、ここで何してるんだ? 今は閉館中だぞ」

「公安の少年部だ。怪盗ドクターが現れた」

エレベーターの中から現れた少年、つまりドクターはサイキックペーパーをその警官に見せる。

「公安の少年部? 聞いたことない」

「ほんの数日前に設立されたからね。すぐに浸透するよ」

とはいえ彼の提示した手帳にはそう書かれている。嘘ではないと信じ、警官はそれを信じた。

「それで、怪盗ドクターが現れたって、それでどうしたんだ?」

「ブルーティアーズを盗まれて逃げられた。けどまだこの中に居る。捕まえないと」

「分かりました、すぐに全員に伝えます」

「ああそうだ、何か持ってないか? 僕が持ってるものと言えばこの……光るねじ回しぐらいで」

ソニックドライバーを光らせながら見せつける。

「ならこれ、拳銃でも持っててください。足止めぐらいはできる」

「銃なんてダメだ! 物騒だから持たない主義なんだ」

「こんな状況でそんなわがままを……」

「じゃあ代わりに麻酔弾とか無い? それなら使う」

「はいはい……まったくこれだからガキは」

「ガキがなんだって?」

つい失言をしたと口を閉じ、黙って麻酔弾を少年に渡す。

「どうも。過度な暴言は上に通告するからな。こう見えても中学生で公安、エリートだからな」

そう言ってドクターは彼にそう告げ、別れて麻酔弾を込めた拳銃を手に進んでいく。

「怪盗ドクターが現在地球館の中に居るとのこと、警備の警官は全員警戒せよ」

警官の男が無線で各警備にそれを伝える。すぐに厳戒態勢となり、博物館の警護は全員怪盗ドクターを見つけるために動き出した。

「どこだ、一体どこにいる……」

ソニックドライバーの音で位置を確認し、拳銃を手に周りを見渡す。

解析によれば、怪盗ドクターはこの地下2階にいるはず。通気口はこの階で一旦シャットアウトされているため、地上に上がるためにはそこから出なければならないはず。

そう考えていると、何かが視界の端をかすめる。

「そこか!?」

麻酔弾を放つが、外してしまう。弾は近くにあった化石……の隣の壁に直撃した。

「もし当たってたら多額の賠償金だったな、慎重に行かないと」

今の影が進んだ方向へと向かう。その先は階段だった。

「上がって行ってる」

ドクターもそれを追跡していく。このまま屋上か外へ行かれれば逃げられてしまうかもしれない。

しかし2階の階段のところには二人の警官が立っていた。

「今誰か通らなかったか?」

「いいえ誰も」

彼らがここで監視していたなら、簡単には抜けられないはず。ということは一つ下の階だろうか。

「ありがとう、引き続き階段で監視していてくれ!」

そう言ってドクターは下の階へと降りようとする。

「今のガキ、なんだったんだ? 銃持ってたけど」

「さぁ……。俺は次、上の階見てくるよ」

そう言って一人の警官が上へと向かおうとするが、その話を聞いていたドクターが戻って来る。

「君、もしかして下から来た?」

「なんでそんなこと聞くんだ」

上がろうとしていた警官の一人が足を止める。

「ここの警備にわざわざ二人もいらないはずだ。しかも同じ階に。厳戒態勢という知らせが来たなら尚更、別れて確認するものだ。まさか談笑してたわけじゃないよな」

「勘がいいのね、ドクター」

一人の警官は突然、女性の声へと変わった。そしてその瞬間、姿がさきほどの怪盗ドクターへと変わった。

「姿を自在に変えられる……まさに怪盗らしいな、けどただのマジックじゃあない」

「嘘だろ、今確かに警官の姿で……」

突然姿が変わった彼女に対し、警官の男は目を丸くして驚いた。

「逃がすか!」

ドクターが麻酔弾を放つが、あっさりと避けられてしまう。

「じゃあねドクター」

怪盗はそのまま階段を軽やかに駆け上がっていく。

「君も来い、このまま屋上へ行くつもりだ!」

ドクターにそう言われ、唖然としていた彼はそのまま階段を上っていくドクターに着いていく。

 

深夜0時は既に建物の明かりがほとんど消え、近くの公園のライトもすべて消えている。見えるのはパトカーなどの明かりだけ。屋上からはそれがはっきりわかる。

階段を上がる途中、ドクターの通達により怪盗ドクターが屋上を目指していることは既に全員に知られていた。パトカーなどは博物館の周りを囲み、何百人もの警官が銃を構えている。少なくともここから降りて逃げるのは難しそうだ。

「ここは屋上、もう逃げられないぞ」

何人もの警官隊を連れ、ドクターが屋上へとやって来る。怪盗ドクターがコートを肌寒い10月の風になびかせながら、そこに立っていた。

「あらら、ここまで来られたら私も終わりね」

「華はどこに居るか教えるんだ」

ドクターは拳銃を手に彼女に向ける。

「それともう一つ聞きたいこともある。なぜ“ドクター”と名乗ってる?」

「そんなことより、ブルーティアーズのことはどうでもいいの?」

その手に掴んだダイヤを煌めかせながら見せつける。

「どうでもよくはない。それを何に利用するかによるけど」

「怪盗が盗む理由はただ一つ。お金のためよ」

「なるほど、ならどうでもいいな」

そう言ってドクターは銃を彼女に突きつける。

「僕の質問に答えるんだ! 何故ドクターと名乗る、華の居場所は?」

「すぐに気づけなかったあなたの失態よ、人に頼らずちゃんと自分で探しなさい」

「話を逸らすんじゃない!」

「でも事実」

「……それは」

その言葉を聞いて思った。彼女が華に成り代わっていたのに気づけなかった。守らなければならないのに、守ることができなかった。

「一体いつからだ?」

「彼女がターディスに向かう前よ」

「テスト期間が終わって、僕はすぐにターディスへの旅に誘った。そして準備した後に彼女はターディスへと来た。その直前ってわけか?」

「そんなところね。ここに来る前にあなたに見せてもらったダイラスの銀河、とても素敵だったわ」

「そりゃどうも。感謝してるならすぐに投降しろ」

ドクターは変わらず銃を彼女に向ける。

「野蛮ね、銃で殺そうとするなんて」

「麻酔弾だ、僕は殺しが嫌いでね」

「へぇ。噂通りドクターは人殺しの武器を使わないのね」

「やっぱり僕の事を知ってる、どこで知った?」

「みんな知ってるわ。あなたは英雄だから」

「英雄? 一体何の? すまない、心当たりがありすぎてね」

「タイムウォーを終わらせた英雄、でしょ?」

「どうして……そのことを知ってる? それを知ってるのは限られた人だけのはずだ!」

タイムウォー、自身と関連のあるその戦争を終わらせたのは確かに自分。だが誰にも見られずそれを終わらせたはず。そのことを知っているのは自分自身と、かつての自分の仲間だけだ。

「仮にも英雄の名前を使って泥棒行為とは許せないな、しかも僕の名前だ」

「ただの泥棒なんて居ないわ。生きるために盗むのよ」

怪盗ドクターは腕時計をいじりながら、屋上の端へと向かう。

「何をするつもりだ?」

「こんなに囲まれてるんですもの、飛び降りるしかないわ」

そう言って彼女はだんだんと端に近づいていく。

「早まる……わけじゃないな、カイトでも出して空に飛んでいくつもりか?」

「そんなことしてもすぐ捕まるわ、ほら」

彼女が指をさした先、そこには警察のヘリコプター。彼らも怪盗ドクターを捕まえるため、空にまでも網を出している。

「だから、飛び降りることにしたの。下にも警察は居るけどね」

「だが何の策も無しに諦めて飛び降りるわけじゃない、そうだろ? だってタイムウォーまで知っている人間だ、しかも姿を自在に変えられる。君はエイリアンだ」

「ええその通りよ。じゃ、また会いましょうドクター」

そう言って彼女は腕時計のボタンを押し、そして屋上から飛び降りた。

「待つんだ! 待て!」

ドクターが彼女を追いかける。そのまま端から身を乗り出して下を見るが、そこに彼女の潰れた死体は無かった。つまり、落ちる前に消えたということだ。下で見ていた警官たちも目の前で消えたことに驚いている様子だった。彼女が消えたその場所をにソニックドライバーを向ける。

「テレポートしたのか……! けど一体どこに!?」

ドライバーを光らせながらそこに光を当て続ける。

「クソッ、随分と複雑なテレポート方法だ、どこに行ったかまるで分からない……」

ドクターの後ろで見ていた警官たちも、身を乗り出した下を眺める。

「まさか、今確かに飛び降りたはず」

「彼女は宇宙の技術を使ってる。テレポートなんて朝飯前だろうな」

ソニックドライバーをしまい、夜空に光る月を眺める。

「一体華は、どこに居るんだ……」

 

 

 

どこか分からない建物の中、体が妙に冷える。夢でも見ているのだろうか?

視界がぼやけていて、目の前がどうなっているか分からない。

「ん……」

しかし、夢の中にしては妙に感触がリアルだ。尻に何かが当たっている。椅子の上に座っているのだろうか? そして腕は縄で縛られているみたいだ。それが分かった瞬間、目の前がはっきりとしてくる。

「……!? ここ、どこ……!?」

目の前には何やら分からない、緑に光るコンピューターらしきものがいくつも置いてある。

「目が覚めたか。ということはアイツはバレてしまったみたいだな」

「誰!?」

暗闇の中から男の声がする。やがて光に照らされその男の顔が見えた。

「三崎華、手荒な真似をして申し訳ない」

その男は緑色の顔をしていた。そして額に三つ目の瞳があり、それは自分ではなくあちらこちらをせわしなく見ていた。

「しかし我らのためだ、少しばかり君の姿を借りさせてもらっていた」

「姿を、借りる……?」

「ああ、ブルーティアーズを盗み出すためにね。彼女のことだ、成功するとは思うが」

そう言って男は彼女の周りを歩いている。

「ここは一体どこなの!? 一体何が……あっ」

眠い頭は覚醒し、ここに来るまでの事を思い出した。

「ドクターに誘われて、ターディスのある学校の裏校庭に向かったの。けど扉に手を掛ける直前、誰かに話しかけられて、肩を触られて……、目が覚めて、ここにいた」

「まさかドクターの仲間を利用できるとは思って居なかった。しかし警察に二度目の犯行がバレた以上、新たなやり方が必要だったのでね」

「私を攫って、一体何が目的なの!?」

その言葉を聞き、緑の男は息を吸い込んでゆっくり答えた。

「私は怪盗ドクターのパトロンを務めているロベルク。彼らの盗みを支援するのが私の仕事。君はドクターの知人だ、だから利用した。君が二人居てはドクターに勘づかれるし、本体はここに幽閉したわけだ」

「盗みの支援って……泥棒!?」

「まぁ端的に言うとそうなるな。ただし我々は怪盗だ。そこを間違えられては困る」

「怪盗って、良い人なものでしょ? 怪盗キッドとかルパンとか。誘拐するなんて……」

「フィクションの怪盗と同じにされては困るな。我々は盗み方にちょっとしたエンターテインメントを加えているだけだ」

ロベルクと名乗った男は、指を擦りながら彼女の前に立って喋り続けている。

「残る宝石はあと二つ。それさえ手に入れば、君の事は解放する」

「宝石を盗むって、一体どうして……」

「悪いがこれ以上の質問には答えられない。大丈夫さ、すぐに済む」

そう言うと、ロベルクは闇の中へと消えていってしまった。

「ちょっと……ちょっと待ってよ! 怪盗って何なの!? ここはどこなの!? ドクター! 助けてー!」

 

 

「ほら、起きろ!」

ドクターが眠っている警部の男の頬を強く叩く。すると彼は驚くように飛び上がった。

「何だ!? 現れたのか、怪盗ドクターが!」

「ああ。現れて逃げられた」

「何だと!? 待て、俺が追う!」

「もう遅い。既にあれから1時間経ってる」

「1時間……一体何があったんだ?」

「ヤツは腕時計の中に麻酔の煙を仕込んでいたんだ。それを放って、ブルーティアーズの警備を君含めて、全員眠らせた」

「腕時計に麻酔……そんなことがあり得るのか?」

「どう考えてもこの星の技術じゃない。相手は宇宙の怪盗ってわけだ」

ドクターは立ち上がり、ブルーティアーズのあったところを見つめる。

「お前、怪盗ドクターを捕まえると約束したよな? なのに逃がしたのか?」

「眠っていたアンタには言われたくないね。大丈夫だ、この僕が必ず捕まえる」

「でも逃げられたんだろう? ならもう追えない、終わりだ」

そう呟くと、警部の男は落ち込むように顔を伏せた。

「いいやまだ終わりじゃない。宝石は全部で五つ、そして現時点で盗まれた宝石は三つ。つまりあと二回、ヤツは現れるはずだ。そこを狙う」

「しかし相手は俺たち警察がこれほど手を尽くしても捕まえられなかった相手だ。そう簡単に捕まえられない」

「確かに、地球の警察では限界だろうな。だけど今回は僕がいる」

そう言うと、ドクターはブルーティアーズのあったところに手をかける。

「ヤツはドクターという名前を使い怪盗稼業をしている。しかも僕の友人を攫って利用した! これは明らかに僕に対する挑戦状だ。宇宙の怪盗が相手なら、宇宙一の名探偵が相手をしてやる! 僕はドクター、怪盗ドクターを捕まえて見せる!」

 




次回のチラ見せ

「それが彼の終わらせた戦争、そして私の種族が滅びた戦争」
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