ところでシリーズ2のDVDを買いました。関さんの吹き替え付きです。とても良いです。
「なるほど、それで宇宙一の名探偵とやら、策は何かあるのか?」
「ああもちろん。残る二つの宝石がある場所は?」
「アメリカの自然史博物館にイエローラフ、もう一つは日本のお台場、科学未来館にサイレンスバイオレットがある」
「日本に二つか……、予告状はまだ届いてないか?」
「そんな短いスパンで来るものじゃない。それぞれ1週間ずつ間が空いてた」
「つまり、次の犯行は7日後が濃厚か。だが予告状が届くまで待ってる時間が無駄だ」
そう言うと、ドクターはターディスの中へと入っていく。
「おい、どこに行くんだ?」
「予告状を取って来る。次どこが狙われるか、あらかじめ知っておいた方がいいだろ?」
「確かにその通りだが、どうやって取って来るつもりだ?」
「教えてあげよう、これはタイムマシンだ」
そう言うと、ドクターは青い箱と共に、妙な音をふかしながら消えていった。
「現れるだけじゃなく、消えることもできんのか……タイムマシンだと?」
警部が驚きながらそれを目撃したのもつかの間、今度は後ろから風が吹いて来たかと思いきや再び青い箱が現れた。
「取って来たよ。これが次回の予告状だ」
手に一枚の手紙らしきものを持ちながら目の前で消えた少年が再び現れ、警部は口を開けて驚く。
「いいからこれ、中見てごらん」
彼に渡され、手紙を開いて中身を読む。そこにはこう綴られていた。
「10月13日 深夜0時、宝石『サイレンスバイオレット』を頂きに参ります。怪盗ドクターより」
「次の狙いはサイレンスバイオレット、つまり科学未来館だね」
「13……13日だと!?」
「試しに一週間先に行ってみたんだけど何もなくて。で、試しに12時間後に行って見たらそこでこれを見つけた。思ったより次の犯行が早いな」
「タイムマシンってのは随分と便利なんだな……、しかしあと二日じゃないか、今から包囲網を張れるかどうか」
次に怪盗ドクターが現れるのは三日後。というより、既に時刻が0時を過ぎているので今は11日、あと二日。そこから準備をするとなると時間的にとても厳しい。
「相手はテレポートが使える。包囲網を張ったところで今回みたいに逃げられるのがオチだろう。そういえば前回と前々回はどんな手法で盗み出したんだ?」
「俺は直接見ていないが、最初の大英博物館では警備の一人に成りすましていた。その次、ルーヴル美術館では厳重な警備の中、天井から現れた。皆天井も警戒していたはずと言っていた」
「ヤツは他人の姿に変わることができる、さながらルパンだな。今回の事件は当然として、二件目の事件でも誰かに成り代わっていたんだろう。つまり次も同じような手口で来るはずだ」
「なら次は警備に携わる者達をしっかりスキャンしなければ」
「ただの怪盗ならそれでも十分だろう。だがもし相手が……僕の想像している相手ならそれをしても不可能だ」
そう言うと、ドクターは階段へと歩いていく。
「どんな相手だと?」
「それを今から確認する!」
ドクターが向かったのは2階。怪盗ドクターを止められなかったため、警備していた警官たちは誰も彼も頭を抱えて今後のことを考えていた。そんな彼らの中に割って入るように、ドクターが彼らの顔を次々と覗き込む。
「一体何なんですか?」
「さっき怪盗ドクターが化けていた警官。彼を探してて」
「えっ、リュウジのことですか?」
そう言って、さきほどドクターが階段で遭遇したあの警官が現れる。
「リュウジ?」
「山本隆二、一応同期です。怪盗ドクターが成りすましていたと聞いた時は驚きましたが、そういえばそれから見てなくて。一緒に今回の警護に関して互いに愚痴をこぼしてたんですけど」
「彼はこの建物のどこかに居るはずだ。怪盗ドクターが現れる前、どこで最後に見た?」
「トイレに行くと……」
その言葉を聞き、ドクターはすぐさま彼を連れて最寄りのトイレへと駆け込む。
こんな状況の中、一つだけ個室トイレが閉まっていた。ということは……、ソニックドライバーを鍵に当てて開く。
「やっぱり、さっきの彼だ」
「リュウジ!」
トイレでうなだれるように気を失っている山本隆二がそこに座り込んでいた。同僚の彼の手引きでなんとか目を覚ます。
「成りすました人物になっている間、コピー元の人物は気を失う……、ヤツの正体はスティールフォルムで確定だな」
博物館2階の広場を借り、ドクターは今回の事件の警護を担当していた幹部たちを集め、会議を開いていた。ホワイトボードを用意し、そこに様々な情報を書き込んでいく。
「で、そのスティールフォルムって?」
「触れた相手の姿になることができるエイリアンさ。見た目も寿命も人間と同じだけどね。大昔に戦争で絶滅したかと思っていたけど、今回の手口からスティールフォルムなのは間違いない。姿を自在に変える怪盗とはヤツにとって天職だな」
「つまり怪盗ドクターの正体がエイリアンだと言うのか? バカバカしい」
「証言だってたくさんある。もし信じられないなら後でターディスを見せてあげるよ、この世には人知を超えたものが存在するって証明になるし」
「待て、そもそもアンタは一体何者なんだ?」
一人の強面の刑事がドクターにペンで指をさす。
「僕? 宇宙一の名探偵で公安少年部のドクターだ、政府から特命を受けてる。ドクターってのは名前。コードネームみたいなものと思ってもらって構わない。言っておくけど怪盗ドクターとは無関係だからな、同名の別人」
それを強調しながら、サイキックペーパーで疑う彼らにそれを見せる。
「公安の少年部?」
「最近出来たんだよ。何度説明すればいいんだ? それより、次に狙われる場所が分かったんだし対策を練らないと。次に怪盗ドクターが現れるのはお台場の科学未来館。そして予告されている犯行時刻は変わらず深夜0時だ」
ドクターがホワイトボードに次々とその情報を書き加えていく。
「やり方が違うだけで、過去三件とも犯行手口は酷似している。それは警護されている宝石の周りに居る誰かに成りすましているということだ」
「先ほど聞いたが、どうしてスキャンしてもダメなんだ?」
「スティールフォルムはとても精密に姿を真似ることができる。手相も指紋も虹彩も、声も遺伝子情報も何もかもだ。機械で本人かそうじゃないかを判断するのは難しい」
「なら正体を現すまで分からないじゃないか」
「ああ……まったくその通りだ。判別する手段がつかない」
ドクターはそう呟いてテーブルに座り、髪の毛をいじる。
「怪盗ドクターを判別するために合言葉でも考えてみるか?」
「合言葉じゃセキュリティが完全じゃない。他の誰かに教えてもらえば終わりだ」
一人の刑事のアイデアをすぐさまドクターは否定し、頭を叩いて思考を巡らせる。
「スティールフォルム……。人の姿を盗み、コピーする。そしてコピー元は眠る……、もし、そのコピー元をあらかじめ特定できれば……」
その瞬間、何かを思いついたのか、マジックペンを取り出した。
「そうだ、この作戦で行こう!」
そう言うと、ドクターはホワイトボードに作戦の概要を書き始める。
暗闇の中、華は逃げられないかずっと試していた。
「すっごいキツく縛ってあるなぁこれ……」
手を動かして縛っている縄を外そうとするが、なかなかほどけない。
「もう、今しかないってのに」
ロベルクという男はここ数分姿を現していない。暗闇も目が慣れてきて段々と見えるようになってきた。そこから分かるのは、今自分が居る部屋には誰も居ないということ。足音も何も聞こえないので今が逃げるチャンス。だというのになかなかほどけない。
「何か無いかな、刃物とかソニックドライバーとか……、ソニックドライバーがいいな」
足は縛られていない。なんとか足元に何かないかと手繰り寄せようとする。すると、何か細長いものにぶつかった。
「よし、あった!」
両足で掴み、なんとか膝元まで持ってこれるようにそれを上に飛ばす。しかし顔に思いきり当たってしまった。
「イッタ!」
なんとか膝の上まで持ってくることが出来た。それはソニックドライバーではなく、ただのマイナスドライバーだった。
「まぁ……この際これでもいっか」
それを口で掴み、椅子ごと後ろに下がって壁に背もたれをくっつける。そのまま咥えたドライバーを後方の壁に投げつけ、なんとか手でキャッチする。それを使い、なんとか縄を切ることが出来た。
「まずは脱出……」
椅子から離れ、そのまま目の前にあった扉から部屋の外へと出ていく。
廊下らしき場所もさきほどの部屋と同じくとても暗い様相だった。しかし壁に流れるような緑のラインが引かれていて、それがわずかに光っている。その明かりを頼りに先へ進んでいくと、先ほどの男の声が聞こえてきた。気づかれないように息を殺してそれを聞く。
「ちゃんと今回も盗めたみたいだな。あの子が目覚めたのを見て失敗したかとヒヤヒヤした」
「今まで失敗したことなんてなかったでしょう。しかしこの宝石、とても綺麗」
男の他に、もう一人女性の声が聞こえてくる。彼女が例の怪盗だろうか?
「悪いがこれはビジネスに使うんだ。何、今度観賞用のダイヤを盗めばいい。その時の様子もエンタメになる」
「けどロベルクさん、次の作戦をじっくり考えて実行しないと。何しろ今回の作戦はドクターを利用した作戦ですし、警戒されるかも」
「それは理解している。ドクターは用意周到な男だ。だからこそこちらも裏をかくことにする」
「裏をかくとは?」
「その作戦はまた後で“彼”を介して話すとしよう。それと、彼から既に次の予告状を渡された」
男は懐から一枚の紙を取り出して彼女に見せた。
「どれどれ次の……って、二日後!?」
「既にジュドゥーンは捜査範囲をここ地球のある天の川銀河にまで狭めたらしい。ここまで来ると時間の問題だ、エンタメも変わらず重視するが、今回の件はとっとと終わらせる」
「もうそんなところにまで……、分かりました。次も必ず成功させます、ロベルクさん」
そう言うと、女性は予告状をコートの中にしまった。
「ところで、捕まえた彼女に会っても?」
「ああ、構わんよ」
「マジ……?」
どうやらその女性は自分に会いに来るらしい。道は一つしかない、もし逃げるのがバレたら殺されるかもしれない……、とにかく、逃げるのは後回しにしてさきほどの部屋に戻り、イスに座って逃げられないフリをする。ベタだが、口笛を吹いて何もなかったかのような雰囲気を出す。
「あら、意外とくつろいでるみたいね」
部屋に入るなり、女性は馴れ馴れしく話しかけてきた。
「どうせならもっと良いイスが良かった。ソファとか」
「ごめんなさいね、予算が無くて」
そう言いながら、彼女は華に近づいてくる。
「三崎華、あなたのことはよく調べたわ。天の川中学校の2年生。ドクターと一緒に旅をしてるようね」
「どうしてそのことを知ってるの?」
「次の作戦にはどうしてもドクターが必要だったの。ついでにドクターに濡れ衣も着せられるし。そのためにドクターに関連付いた人を狙ったってこと」
「私を利用したって、一体何に?」
「これよ」
そう言うと、彼女はゆっくり華の頬に手を伸ばす。それが華に触れると、みるみるうちに彼女の姿が変わった。それは紛れもなく自分の姿だ。
「どういうこと!? 一体、ど……ういう……」
その姿を見た途端、耐えられないほどの眠気が襲って来た。しかし彼女の姿が元に戻った途端、眠気が無かったかのように消え去った。
「これが私の能力。触れた人の姿になれるの。その代わりに元ネタは眠っちゃうけどね」
彼女は笑いながら華を見つめる。
「さっきあの男が言ってた、私の姿を借りるって……こういうことだったのね。それで怪盗だなんて」
「地球でも同じでしょ? 怪盗はいくつもの顔を持つって。私だけの力なの」
その力を自信満々に語る彼女だったが、次第にその表情が暗くなっていった。
「まぁ、今は私だけ、なんだけどね」
「どういう意味?」
「昔はもっと居たのよ。私と同じ力を持つ種族が。けど戦争で滅びて……、今は私だけ」
彼女の顔は、その凄惨な過去を思い出しているのか次第に声色が低くなっていく。
「……けど今となっては悪くないわ、たくさん居たら、怪盗としての価値が下がっちゃうもんね」
作り笑いなのか、どこかひきつったような笑顔で無理矢理明るさを取り戻したようで、華にその顔を向ける。
「どうして私にそんな話するの? 怪盗の被害者なんかに」
「あなたはドクターのことをよく知ってる。私はあなたのことをよく調べたけど、足りなかったせいでドクターにバレた。調査不足ね。だから次の作戦のためにも知りたいの。ドクターのことを」
「ドクターのこと……?」
「大丈夫よ、教えてくれないからって殺したりしないわ。けど教えてくれなかったら日本じゃなくてアマゾンで解放させちゃうから」
そう冷たく言い放つのとは裏腹に、彼女はニヤニヤとこちらを見つめる。それを見て華もぎこちなかく笑い返す。
「私が知ってるドクターの事は少ない。惑星ガリフレイのタイムロード、ターディスを持ってる。賢いせいで宇宙のあちこちでお尋ね者ってことぐらい」
「なら私と同じね。私もドクターのことは深く詳しくない。悪いけど怪盗さんの助けになるようなことは言えないかも」
「あっ、そうそう。それと私が知ってるドクターのことはもう一つあるの。もしかして私の方が彼について詳しい?」
「それって何?」
「彼は戦争を終わらせた救世主ということ。私もある意味、彼に助けられたようなもの。それからずっと彼のファンなの」
「戦争……? ドクターが戦争を終わらせたって、どういう戦争?」
「宇宙最大の戦争よ。あらゆる時間、あらゆる場所が危機に晒された。……“タイム・ウォー”、それが彼の終わらせた戦争、そして私の種族が滅びた戦争」
次回のチラ見せ
「あなたって思ったより賢くないのね」