DOCTOR WHO 青い箱の中の少年   作:ナマリ

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これで今回のエピソードは終わりとなります。次回からはついに最終章!



第十一話 THE PHANTOM THIEF'S NAME IS DOCTOR〈怪盗ドクターからの挑戦状〉PART6

 

「足早に逃げられる可能性もある、すぐに追う!」

ドクターたち4人は、警察署の外に安置しておいたターディスの中へと駆け込んでいく。

「すごい、こんな小さいのに広い……」

ファイラはターディスの中を見て、感嘆の声をあげたが、ベルスの方はそれを気にしている余裕は無かった。

「待てー! ドクター!」

ターディスの外から聞こえてきた声に、ドクターは扉から外を覗く。

「やはりお前もグルだったか、怪盗ドクターを返せ!」

「申し訳ないが警部、真犯人を捕まえるために同行してもらってるんだ。それまで待ってて?」

そう言うと、ドクターは扉を強く閉めて鍵もかけた。

「おい待て! 逃げるなーっ!」

ゴンはターディスに飛び移ろうとしたが、煙のように消えてしまい、そのまますり抜けてしまった。

 

 

「素晴らしいよロベルク。どこも視聴率がうなぎ上りだ」

「それはそれは。引退試合ですし、今まで以上に力を入れたおかげですよ。本物のドクターを使うのはやはり良いアイデアだった」

「ああ。良いオチを期待しているよ」

「それはもちろん」

宇宙船の中、ロベルクは操縦室で宇宙の果ての雇い主と連絡を取っていた。

「次こそ、宝石を落とさずに持ってきてくれよ」

「もちろん。ですが最後に一つだけテストをしたい。これが本当に本物かどうか」

ロベルクはサイレンスバイオレットを、ライトに透かしながら見つめる。

彼は自動操縦に切り替え、操縦席から立ち上がった。

「エネルギー残量は、100%。となると、再充填まで一週間ほどか」

紫に光るその宝石を見つめながら、黒い廊下を歩く。5メートルほど歩いた後、壁に取り付けられたギラギラとした銀色の機械のところで立ち止まり、それに手を伸ばす。

その機械の蓋が開かれると、そこには様々な色の宝石……、怪盗ドクターが盗んだものがそこに取り付けられていた。

ロベルクは、そこにサイレンスバイオレットを一つ取り付ける。その瞬間、機械は轟音と共に、宝石からエネルギーを引き出し始める。ロベルクはそれを見て口角を上げた。

「ロベルクさん」

轟音の中、誰かの声が確かに聞こえてきた。声がこちらに歩き、光に照らされると、それがベルスであると分かった。

「なぜここに?」

「どうして俺まで、あそこで捨てたのか知りたくて」

ロベルクは大きく息を吸って答えた。

「捨てたわけじゃない。もうこれ以上、お前たちを怪盗として扱うことに嫌気がさしたんだ。お前たちをこれ以上悪党として使うわけにはいかないとな」

「本当、ですか?」

「もちろんだ。10年間お前たちを育ててきた。だがもう私に頼って生きる必要は無い」

そう言うと、ロベルクは優しい顔で、腕を広げた。

「この星、地球は美しい星だ。黒くて汚い宇宙とは隔絶されている。ようやく見つけたこの星はお前たちにとって理想の世界だ」

「それは、そうかもしれないですけど……」

ベルスはその言葉に動揺していた。ロベルクからの甘い言葉。予想していた答えとは違ったのだ。

「だから、私の事は忘れて幸せに生きろ」

ロベルクはそう語り、ベルスの手を強く握る。

「それもまた嘘だ」

影の奥から、ドクターがファイラと華を連れて現れた。

「地球で幸せに生きろだと? 違うな、ただ地球に置き捨てるだけだ。用済みになったからな」

「部外者が勝手に妄想を語るんじゃない。私が彼らに向けている愛情は本物だ」

「だからといって何も言わずに地球に置いていくか? 金も文化も何も教えずにただ捨てるだけなんて! そんなのは愛じゃない、ただの厄介払いだ。それに一番の嘘はこれだ」

ドクターはソニックドライバーで、さきほどロベルクが操作していた銀色の機械の音量を上げる。

『エネルギー噴射まであと10分』

聞こえてきた機械音声。それを聞いて、ロベルクは不機嫌な顔を見せる。

「ただエンジンを作動準備しているだけだ」

「わざわざエンジンの作動に宝石を使うか?」

ドクターは機械の中を覗き、そこに置かれている五つの宝石に指をさす。

「この星に訪れた際にエンジンが故障したんだ。だから代用している」

「あの五つの宝石は大きなエネルギーを秘めてる。それをエンジンの代用にでも使ったらどうなると思う? エネルギーの噴射の余波で、地球は半分吹き飛ぶ! 地球もろとも彼らを消して、証拠隠滅でもするつもりか?」

「ひどい……」

華がそう呟くと、ロベルクは顔をしかめて頭を抱える。

「まったく、君たちの妄想もいい加減にしてほしいところだ。なぜ私のことを信じない? ただの子供の妄想に付き合っている暇は無い」

「言っておくが僕はただの子供なんかじゃない、ドクターだ。本物のな」

ドクターはロベルクに迫る。

「ドクター、そうか、ハッハハ、すっかり忘れていたよ。お前が“ドクター”だってことを!」

ロベルクはそう叫ぶと、ベルスを捕まえ、その頭に銃を突きつける。

「とっととこの船から降りろ! これは俺の船だ、お前らに乗る資格はない! でないとコイツの頭を吹き飛ばすぞ!」

「ロベルクさん!?」

「お前の言う通りさ、いい加減隠してたって何も変わらない。本当、お前たちはいい道具だったよ。だがもう用済みだ」

ロベルクは三つ目の瞳で睨みつけながら、ドクター達にも銃を向ける。

「とうとう本性を出したか」

「この仕事が終われば、余生は穏やかに過ごせる! 趣味の悪い連中の興行のために、子供をわざわざ育てる必要もなくなる!」

彼の顔からは穏やかな表情が無くなり、まさしく宇宙のヤクザらしい、凶悪な顔へと変貌していた。

「だからといって地球を吹き飛ばす必要は無い!」

「証拠隠滅だよ、ついでに厄介な連中も消せる。ジュドゥーンもまさか吹き飛んだ星から俺が逃げたと思わない」

そう語ると、ロベルクはドクターの足元に向かって弾を撃つ。

「ターディスがあるんだろ? それでとっとと逃げればいい。ここから消えろ!」

自分の知っているロベルクではないことを知り、ベルスはその目に涙を浮かべている。

「俺、拾って育ててくれたロベルクさんのことが好きだったんだ、だから俺、役に立ちたくてこの仕事をしてきたのに」

「そのために育ててきたんだ。まさか、俺にとって唯一の子供だと思ってたのか?」

ロベルクはにやけた顔でベルスの方を見る。

「これが最初じゃないな」

「ああ、何度もやってきたさ。怪盗稼業じゃないが、子供が主役だとみんな面白がって見るのさ。大人の汚いところよりも無垢な部分が貴重だからな」

「彼らはもう中学生ぐらいの年齢だ。もう無垢な子供じゃなくなる。だから捨てるのか」

「ああ。だが今回が最後だ。見逃してくれたっていいだろ?」

その言葉に、完全に彼への信頼を失ったベルスは、その怒りを表すようにロベルクの腕を強く握る。

「痛っ! 何するんだ!?」

「あんたのことは信じないってことだよ!」

そう言うと、ベルスの体がだんだんと緑色に変化していく。

「まさか、嘘、だろ……」

ロベルクは体から力が抜けていくように、地面に倒れ込んでいく。

ベルスの見た目は、完全にロベルクそのもになっていた。

「俺はスティールフォルムだ。自分から触れるなんて」

「作戦はなんとか成功、だな」

ドクターはベルスのもとへ駆けより、彼の肩を叩く。

『エネルギー噴射まであと7分』

しかし、装置は完全に停止したわけではない。ドクターは銀色の機械に向かっていく。

「ドクター、なんとかできそう?」

「ダメだ、既にエネルギーの10%が使われてる。もし宝石を取り外しても日本が吹き飛ぶぐらいの被害が出る!」

「10%でそんなに!?」

「宝石は全ての力を使えば宇宙を破壊できるほどの力がある、これだけで星にダメージを与えるのは容易い」

ソニックを照らし、なんとか無効化できないかするが、効果は無い。

「デッドロックシールがかけられてる! ああクソッ!」

機械はさらに轟音を上げていく。このままでは、エンジンの噴射によって地球が甚大なダメージを負ってしまう。

「エンジンの見たことも無い部分が使われてる。これじゃ解除できない」

ベルスとファイラも、機械を操作するが、ロベルクの隠していたこの機械には手も足も出ない。

「元のエンジンに繋げられれば、操作して宇宙でエネルギーを放出させられるんだけど……」

ファイラが、運転席の方を眺めながら操作する。

「元のエンジンとは遮断されてる。エネルギーが船内で逆流してるし、放出以外に方法が無い!」

ドクターが装置をいじりながら、頭を掻く。ここからではエネルギーを操作しようがない。

「そういえばさ、この宝石のエネルギーって何に使われるんだっけ?」

華がドクターの肩を叩いて質問する。

「船のエンジンに代用されてるが、立派な兵器だ。いわば宇宙クラスの核兵器ってところで……」

「そうじゃなくて、宝石一つ一つにどんな効果があるの?」

「例えばサイレンスバイオレットなら時空を歪ませられる。どの宝石も、時間や空間を物理的に破壊するための道具だ」

「それなら……」

華がサイレンスバイオレット以外の宝石を取り外し、装置を起動させる。

「何するんだ!? エネルギーが暴発するぞ!?」

「時空ごと暴発させたら?」

華がドクターに笑いかける。

「なるほど、そういうことか!」

 

 

『エネルギー噴射まであと1分』

「クソッ、あのガキども……」

あちらこちらが光る船内で、ロベルクはようやく目を覚ました。

「どこだ! どこにいる!」

転がっていた銃を手に、あちらこちらに銃を向ける。ドクター達はどこに行ったのか。少しの間探すが、どこにも居ない。

「どうせエンジンは停止できない、諦めて帰ったか」

ロベルクは銃を下げ、宝石の取り付けてある機械のもとへと向かう。

「50%分もエネルギーが使われているとは。地球ごと吹き飛ばせるだろうな」

機械に取り付けてあるエネルギー指標を眺めながら、ロベルクはほくそ笑む。このまま宇宙へ逃げ出せばいい。

小さく笑いながら、そこにある宝石を撫でようとするが、なぜか宝石に触れることなく、すり抜けてそのまま基盤に触れてしまう。

「何だ!?」

機械に取り付けられていたのは、宝石ではなく、ホログラムの投影機であった。ボタンを押すと、宝石のホログラムは消える。

「バカな、あいつら取り外して行ったのか!? だがエンジンは既に50%。今更どうしようも……」

しかし、一つだけホログラムではなかったものがあった。一番左に取り付けられている紫色の宝石、時空を歪める力を持つサイレンスバイオレットだ。

「まさか……!」

『エネルギー噴射まであと10秒』

「クソッ!」

ロベルクはサイレンスバイオレットを取り外す。

「残り9秒」

「8」

「このままじゃ……!」

ロベルクは操縦室へと急ぐ。

「7」

「6」

「5」

「4」

操縦席に座り、エネルギーを遮断するためのボタンを押す。

「3」

「2」

「1」

「間に合わな…」

「0」

その瞬間、船は紫色の雲のようなものに包まれ、嵐のような轟音と共に、光りながら消えていった。

 

 

 

「ロベルクの船はどこに消えたの?」

「時空の渦に飲みこまれた。行き場所は分からないが、少なくとも、現代の地球じゃないはずだ」

船からは遠く離れた公園。そこにドクター達は避難していた。ここからでも、船を消したあの紫の雲は濃く見えた。

「サイレンスバイオレットのエネルギーだけを使わせて船を渦に飲みこませるなんて、随分と酷いことを考える」

「ドクターが言ってたことを思い出しただけ。地球が半分吹き飛ぶよりはいいでしょ? 殺したわけじゃないし」

華はドクターの肩にもたれながら言った。

「ごめんね、恩人なのにあんなことになって」

華はベルス達の方を見ながら申し訳なさそうに言った。

「でもこうしないと俺たちは死んでた。むしろありがとう」

ベルスは、二人に頭を下げた。

「うん、むしろ巻き込んでごめんなさい」

ファイラも同じように頭を下げた。

「いいのいいの。私そんな過去のことは気にしないタイプだから。だけどこれからどうするの?」

「利用されてたとはいえ、犯罪者に変わりはない。まずは罪を償うところからだ」

ドクターはベルスとファイラに厳しい目を向ける。

「ちょっと! いくらなんでもそれは厳しくない?」

華がそれに反論しようとするが、ドクターは華の肩を掴んで言った。

「何の罪もない君を攫って利用したんだ。それに世界中を騒がせた。罪を償ってしかるべきだ」

「それはそうだけど……」

「いいんです、勝手にドクターって名前も使ったし。怒られても仕方ない」

ファイラは下をうつむきながら、悲しそうな目をしている。

「ああ。そうだ、自首しに行く前にこれだけは渡しておくよ」

そう言うと、ドクターは二人に船から奪った四つの宝石を投げ渡した。

「僕が持ってたってしょうがない。光り物は趣味じゃないから」

「でも……」

ベルスが返そうとするが、ドクターは受け取ろうとはしない。

「地球じゃ珍しい宝石だ。そこそこの価値があるから売ればいい金になる。地球で暮らすには不自由じゃない程度にはな。それと推奨するわけじゃないが、君たちは自分の種族の能力を活かさないのか?」

ドクターは頭を掻きながら二人にそう告げる。

「……ありがとう、ドクター」

「逃げるなら早くしろ、これで僕が警察を呼ぶ前に」

ドクターがターディスに取り付けられた電話に手を掛けながら言った。ファイラが最後に感謝を告げ、二人は宝石を手にどこかへと走り去っていった。

「正直じゃないね。素直に送り出せば良かったのに」

「相手はただのコソ泥だからな」

そう言うと、ドクターはターディスの中に入ろうとする。しかし、その瞬間大きな声が聞こえてきた。

「おいドクター! おーい!」

現れたのはゴンだった。部下を引き連れて現れた。

「怪盗ドクターはどこに行った!?」

「さぁ? 日本にはいると思うよ」

「お前、言ってたよな? 必ず怪盗ドクターを捕まえてみせると。それが解放する条件だ! この変な青い箱で早く連れてこい!」

「確かにそう言ってたな。じゃあ、捕まりに行くよ。ちょうど、こんなところにポリスボックスがあるわけだし」

そう言うと、ドクターはターディスの扉を開く。

「何だと? まさかお前が……」

「ああ、まさか僕がそうじゃないって信じてたのか? 残念、僕はドクター。唯一無二のドクターだ。ドクターと名乗るのは僕しかいない」

そう言うと、ドクターは華と共にターディスの中に入り、中から鍵を閉めた。

「おい待て! 逃がすかーっ! 出てこい怪盗ドクター!!」

ゴンはターディスを叩き、部下たちに開かせようとするが、びくともしない。

「いいの? あんな風にからかって」

「怪盗ドクターか。悪くない名前だ。僕が貰っておくことにしたよ」

「まさか、何も盗んでないくせに」

「いいや盗んだよ。これをね」

ドクターは操作盤をさすりながら、華にそう語る。

「えっ、ターディスって盗品なの!?」

「数千年前のことだ。もう時効だよ」

そう言って、ドクターはレバーを引く。ターディスはいつものエンジン音を立てながら、その場から逃げ去っていく。

「怪盗ドクターめ! 必ず捕まえるからなぁーっ!」

ゴンはドクターが消えた空に向かい、大きくそう叫んだ。

 

 

「私疲れちゃった。ベッドってどこにあるっけ?」

「突き当りを3回右に曲がればあるよ。」

ドクターはモニターを眺めながら、華に簡単に教えた。

「ありがと」

華がその場から消え、操作室にはドクターとターディスだけが残されている。

「裂け目、信号、僕の名前……」

シャウターが体験したものと、同じことを経験した怪盗ドクター。なぜ彼らの前に現れたのか? ドクターはレバーを引き、タイムウォーに巻き込まれた、スティールフォルムの星へと向かった。

 

全てが滅びた星、かつてスティールフォルムの栄えていたその星に、ターディスは大きな音を立てながら着陸した。ドクターは信号を探る機械を手に、そこに降り立った。

信号がわずかに残る、裂け目があった場所。そこを目指して歩き出す。もはや何もないこの星に唯一残った未知なるそれを探して。

数分歩くと、機械が大きく反応を示す。ドクターはそこにソニックドライバーを照らした。

「そうか、ここにあったのか」

目には見えないが、確かにここに裂け目が開いていた痕跡がある。ソニックがそう解析したのだ。

「音も拾えた」

ドクターはソニックドライバーを耳に当て、ゆっくりとボタンを押す。そこからは、裂け目から拾った音を聞こえた。

微かな声、誰のものか分からない声。それが聞こえてくる。それを聞き、ドクターはハッとした。

 

「ドクター、来い、ドクター」

 




「とても微弱なんだ。でも範囲が広い。グレイヴの発していた信号は確かに強いものだったが宇宙の果てまで届かないものだ」

「だけど裏にあった信号は宇宙の隅々まで届いてる」

「我々は信号を発する裂け目を見つけ、その先の世界を支配せよという指令を受けた部隊だ」

「……箱だ。箱が失われた」

「それは戦争の中失われた。史上最大の兵器。宇宙を支配することも、破壊することもできる」

「私は裂け目の向こう側の箱を目指してやってきた」

「裂け目の中で、あなたのことを知ったの」

「箱とは一体何なんだ? どうして僕の名前を裂け目は教えるんだ!?」


「僕が教えてあげよう。信号を放つ、その箱の正体を」

次回
LOST BOX〈ロストボックス〉
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