無機物も有機物も見境なく食べるエイリアンは「死者の惑星」でも出てきましたね。大群なのは同じですが、あちらはでかい。
「ほら、どうぞ」
エリがジュースを華に持ってきた。華はありがとうと言ってそれを受け取って飲む。華は渋い顔をした。
「これって青汁?」
「ミレスター・ジュースよ?鉄分がすごい含まれてるの。味も美味しい」
「未来だと味覚も違うんだ…」華はジュースを口から遠ざけた。
「苦手?」エリが聞く。
「私は好きじゃないみたい。持ってきてくれたのにごめんなさい」
エリはいいのよと答えた。
「誰にだって好き嫌いはある。マクドナルドは私苦手」
華は再びジュースを口につけた。やっぱり渋い味がする。それに奥には血の味のようなものも。
「エリさんはどうしてこの船に?」
華は素朴な疑問をぶつけてみた。せっかく未来で友人ができるチャンスだ。
「両親の遺産なの。私が引き継いだ」
エリの顔はだんだんと暗くなっていく。何かを思い出すたびに。
「両親はこの船の設計者で。昔からこの船にはどんなものがあるだとか聞かされてた。」
「他の人には知らないような?」
「もちろん。カラオケルームがどこかの部屋についてるとか…」
「本当に?行ってみたいなぁ」華は興味津々だった。未来の船の設計者の娘とは。
「でもこの船ができた後に事故で亡くなっちゃって。両親がこの船の一部屋を持ってたから受け継いだってわけ。」
二人はだんだんと打ち解けていった。エリの年齢を聞くと18歳だとか。若いとは思っていたが年齢は近いほうだ。
「あなたは14歳?両親なしにあの男の子と一緒に?」
「そうなの。彼は旅人で、ここに連れてこられた」
「旅…ね。私もしてみたいわ」エリがすくっと立ち上がった。
「それにしても異常があったら電話しろって……今のところなにもないけどなぁ」
華がそう呟いているころ、市場の離れた場所では事件が起きようとしていた。
「なんだか冷えない?」
「ああ。船内暖房は聞いているはずなのに」
男女のカップルが市場の精肉店の前で話している。どこからか冷えた風が吹いてくるのだ。
その時、何かが上から落っこちてきた。ハトのフンのように、女性の首元に落ちた。
「んっ…?何……?」
女性が首元に触れる。何かがあり、それを手でつかむ。それを目の前に持ってくると…
「キャッ!虫!」
そういった途端、天井からバグラの大群が降り注いできた。女性は叫ぶ間もなく虫の群れに包まれた。
「アキナ!!」男性が叫び女性を引っ張ろうと手を掴むと、その手は一瞬で骨と化した。
すぐに市場の中は狂騒に包まれた。女性を喰らいだんだんと増えていく虫の大群。なすすべなく何人もの人間が喰らわれていく。
「何か騒ぎが…?」エリが華に言う。
「行ってみよう!」華が走り出す。逃げる人々をかきわけると、そこにはさっきも見た白い虫、バグラが。
「バグラ!ドクターに電話しないと!」
携帯の電話帳からドクターに電話をかける。バグラも追ってくるのでそれから逃げながらだ。
「ドクター!市場にバグラが現れた!」
「何だって!?今エレベーターでそっちに向かってる!」
ドクターとの短い電話が終わった。華はさきほどドクターが乗ったエレベーターの近くに走っていく。エリもそれについていく。
「ドクター!ドクター!」エレベーターのドアを叩きながら叫ぶ。その数秒後ドクターと江原がエレベーターの中から現れた。開いてからも気づかず叩くものなので、ドクターを少しだけ叩いてしまっていた。
「痛いな!どこにバグラが!」ドクターが走り出す。しばらく走るとその先には白い虫の大群が。
「天井を食い破ったのか?まずいな…」
「どうしてまずいの?」華が質問をする。
「さっき言っただろ?この船にはフォースフィールドが張られてない。このままだと空気がだんだん抜けていって窒息するぞ!」
ドクターが再び走り出す。向かうのはエレベーターの近くにある大きな操作盤だ。操作盤を開いてソニックドライバーの光を当てる。
「簡易的なものだけど弱いフォースフィールドぐらいなら張れるはずだ!」
「弱いフォースフィールドだとどうなる?」江原が質問する。
「空気の抜ける時間を長くできる。上手くいけば3時間、上手くいかなくても1時間はある!」
ソニックドライバーから出た光が操作盤を動かす。時折火花を散らしながら。最後に大きな火花を散らした後、ドクターは光を当てるのをやめた。
「インストール完了だ!最後に一度当てるだけで…」
何かが展開するような音が聞こえた。ドクターは歯を鳴らした。
「よし!フォースフィールド展開完了だ!でもそれ以上の問題が…」
ドクターがバグラの大群に目を向ける。華はドクターの腕を握ったまま。
「奴らが中心で繁殖したのは致命的だな…このままだと他の居住区まで落ちるかもしれない!」
「どうするのドクター!?」華が聞く。
「奴らの侵入経路は分かったけど弱点までは分からない!奴らを止める方法は…」
「そういえばさっきライターの炎でひるんでた!もしかしたら…」その言葉を聞いてドクターは顔色を変えた。
「火が弱点!奴らの体はタンパク質でできてる!人間と同じだ。だから火には弱い!」
バグラの弱点がわかった。しかしドクターは頭を叩いて再び悩みだす。
「火は確かに弱点だ!でもどうやって火を?それに奴らの数が多すぎる、この場所丸ごと焼き尽くしても殲滅は不可能だな…」
ドクターがエレベーターのほうへと走っていく。
「まずは避難者だ!市場の人間をとりあえずコントロールルームへ!華!」ドクターに頼まれ、華はエレベーターに向かう人々を誘導を行った。
「エリ、あなたも逃げて!」
「私は大丈夫。この船の設計者の娘だもの。この船には乗員の次に詳しい!」
エレベーターの中に人々がパンパンに詰め込まれた。華はこれを見て不安そうな顔をする。
ドクターは迫りくるバグラにツボやら投げれるものは投げまくり、コンロを点火させて投げつけたりしながら時間を稼いでいた。
「ドクター!このエレベーターの収容人数って!?」
「200年後の未来だぞ!?100人乗っても落ちないさ!」ドクターがソニックドライバーでコンロを爆発させた。
「私たちはどうすれば!?」華が聞く。
「質問が多すぎる!少し待ってろ考えるから!」ドクターが自分の頭をたたき出した。彼流の考え方なのだろう。
突然、大きな揺れが再び襲い掛かってきた。壁に寄りかかっていた江原は倒れず。イヤポッドからコントロールルームからの通信が。
《船長!大変です!》
「どうした!?今の揺れは!?」
〈第二頭と第四頭が……落ちました!〉
「なんだと!?」
その通信はドクターにも聞こえていた。
「コントロールルームから残った頭に居る住民に警告できるか?」ドクターが江原に聞く。
「なんと言えば?」
「市場のほうではなくエンジンのほうに寄れと言ってくれ!」
「なぜ市場とは逆のほうへ?」
「数分でも長く生きられるからだ!」
江原はしぶしぶその命令をコントロールルームに下した。
「どちらにせよこのままじゃ全員死ぬ!どうやって生き延びる?ああ、ターディスがあればな…」ドクターがバグラの相手をしながらつぶやく。
「ターディスがあればどうなるの?」華が聞く。
「ターディスのフォースフィールドを拡大させて地球に安全に着陸できる。バグラ問題は後回しになるけど」
しかしターディスは地球へ落ちてしまった。ここではどうすることもできない。
そんな時、華は落ちたヤマタノオロチ船の居住区を小窓から見た。
地球の大気圏へと突入していく。炎をまといながら。炎を…
「ドクター!大気圏だよ、大気圏!」小窓の先を指さしながらドクターを呼ぶ。
「大気圏?」ドクターが最後のコンロを爆発させた後、華のもとへ向かう。
「大気圏突入の時には炎を帯びる。バグラの弱点が炎なら、大気圏に突入させて燃やせばいい!」
「おぉーっ!それは名案だ!だけどその方法には大きな欠陥がある」
「欠陥て?」
「全員死ぬ」ドクターが気分を落として答えた。
「残念だがその案は却下だ」
「いや、全員死ぬことはないわ」
エリが二人のもとへと近づいてきた。
「コントロールルームの横に緊急時の避難スペースがあるの。大気圏に突入しても燃え尽きないぐらい頑丈な壁で守られてる」
「あー……どうして君はそれを?」ドクターはエリに疑問のまなざしを向けた。
「私の両親はこの船の設計者なの。その存在を聞かされてた」
「君はその…なんというんだろうな…」
ドクターは手で丸を描きながら口を開いた。
「ファンタスティックだ!」
ドクターが空になったエレベーターへと駆けていく。
「全員乗れ!」
江原、華、エリも合わせてエレベーターの中へ。バグラの一団は別の頭の入り口へと近づいていき、エレベーターのほうへ向かうものも。
「避難スペースの収容人数は何人だ?」ドクターがソニックドライバーでエレベーターに光を当てながら聞く。
「最大で1万人しか乗れないはず」
「入れなかった人は運を信じるしかないな」
「上に居る人を諦めるの?」華がドクターに小さく怒鳴った。
「仕方ないさ。でも助かる可能性は0じゃない」
エレベーターはだんだん下へと向かっていく。コントロールルームへ。
「なぜエレベーターにその不思議なペンを向ける?」江原がドクターに質問をした。
「材質を調べてる。中国製だが…意外と頑丈だな。大気圏に突入しても燃え尽きないかも」
ドクターがドライバーの光を見ながら答えた。エレベーターと船の材質が同じなら、助かる可能性もある…
「しかし一番心配なのは不時着することだ。避難スペースに入っているとはいえ時速数百・数千キロで地面に激突すれば中に居る人間はミンチになる」
「怖いこと言わないでよ…」華がぼやく。
「真実を言ったまでだ。ハンバーグになるって答えればいいのか?」
「そっちのが怖い。だとすると結局助からないんじゃないの?」
「いや、助かるさ。華、船を操縦するゲームは?」ドクターが華に聞く。なぜそんなことを聞くのだろうと疑問を持つ暇なんてない。
「操縦ならマリオカートしかしたことない」
「十分だ」
マリオカートと操縦桿は違う…
ドクターにとっては同じようなものなのです。