Sword art Online ~Doctor game~ 作:アルクトス
さてさて、またまた軽く失踪しておりました。どうもアルクトスです()
いやまあ仕事が忙しかったとかいろいろあったわけなんですが、何とか執筆に踏み切ったわけとしましては同時に投稿しているpixivの方で『続き待ってます』という温かい言葉をいただきまして……GWということもあって死ぬ気で書きました。
続きは、またお待ちいただくことになると思いますが、ボチボチやっていきます。
「俺とキリトでわざとラインを踏む。皆は隙を見て、攻撃の用意だ!」
作戦と言えるほど捻ったものではないが、現状の情報で打てる手はこれくらいのものだ。
声を張り、攻略部隊のメンバー全員に伝えると、各々から力強い返事が返ってくる。
「ああ!」
「おいサ!」
「おうよ!」
「やったるぜェ!」
「解った!」
さて、と早速キリトと視線を交わし、互いに頷くと一気に駆け出した。
床全体を駆け巡るラインをなんとか躱しつつ、離れていた他のメンバー付近にまで近づくと、ラインを踏んだ。
ターゲットサークルである同心円が俺の頭上に展開され、それが固定された瞬間、後方に思い切り飛び退く。
「衝撃波が来るぞ、構えろ!」
俺の声にリーテンとシヴァタと二人がすぐに動いた。
二人が寄り添う形で隙間なく盾を構える。意図を察した近くのメンバーは二人の背後に急いで向かう。
ごうんっ! と空気を押しつぶしながら、目の前に黒い足が降ってきた。
同時に襲ってきた衝撃波を、俺は小ジャンプで躱し、シヴァタたちはきっちり盾で受け切った。
すかさず構えると、横に振り回すソードスキルでは同士討ちになりかねないと判断して、三連斬り下ろし《シャープネイル》を始動させる。シヴァタたちの背後から飛び出してきたエギルは《グランド・ディストラクト》を、クラインは三連撃スキルである《オーバル・クレセント》を繰り出す。
他のメンバーも続々と続き、眩いライトエフェクトが黒脚、そしてキリトの方に迫った黒腕へと少なくないダメージを与える。
「よっしゃあ!」
「イケるぜ!」
咄嗟の作戦だったが、得られた思わぬ好感触にエギルやクラインが雄叫びを上げる。
トッププレイヤーである攻略集団である彼らの対応力に舌を巻きつつ、再びラインを踏むというのを行なっていく。
今度はターゲットサークルが足元に現れ、黒腕が伸び上がってくる。回避したところに次々とソードスキルを叩き込み、ボスのHPが削られていく。
慣れてくると他のメンバーがそれぞれグループを組んで、それぞれでボスに攻撃を加えていくパターンが出来上がっていった。
初めのうちはクラインが別グループの呼び出した足が放った衝撃波に巻き込まれてしまい、掴まれるというハプニングもあったが、数をこなすうちに危なげなくこなせるようになっていき、十数分もするとボスのHPバーは四本目に到達していた。
「ここまではなんとか、か……」
ボスが完全新規であったりの初見殺しを思うと、HPが半分を割っても形態変化する様子がないことはずいぶんと有情に感じるが、このままで終わってくれるとは到底思えない。
などと考えつつ、四本目のHPバーを削りきろうとソードスキルを構えた瞬間だった──
「おい、壁を見てみロ!」
アルゴが驚愕を声音に乗せながら叫ぶ。慌てて周囲を見渡すと、何やら壁面が不規則に蠢きはじめていた。
「……A隊、B隊の順に階段から退避!」
攻略レイドのリーダーであるキリトから咄嗟の指示が飛ぶ。ここまで削ってきたHPは惜しいが、初見殺しにあって本当に命を散らすようなことはあってはならない。
幸いにして、SAOはデスゲームであるが故か、ボス戦においては脱出の手段が必ず用意されている。
──だから、この第五層ボス部屋においても脱出は可能だと、俺は……俺たちは信じ込まされていた。
「……なあ、エム!」
ふと、キリトが大声を上げながら天井を指差した。
見上げると、ずっとそこにいたはずのゴーレムの巨大な顔が、忽然と姿を消していた。視界内にはボスのHPバーは残っているので、倒せたわけではないし、床のラインは今もずっと動き続けている。
なら、顔はどこにいったのだろうか。
嫌な予感がする。天井をくまなく見回すが、どこにも姿が見え──
「シバ、だめっ!」
階段方向からリーテンの悲痛な叫びが聞こえた。
目を向けると、ほんの今し方まで階段だったはずの場所からボスの顔がゆっくりと現れていた。
目を疑いたくなる状況に、今にも噛みつかれようとしているシヴァタでさえ動くことができなかった。ただ一人を除いて──
「アスナっ!?」
口が完全に生成され、噛みつかれようというその時──アスナが動いた。
咄嗟にシヴァタを押し出して、代わりに自らがボスの口に咥え込まれてしまったのだ。
「階段が……口になりやがった!!」
突然の出来事にエギルが困惑の表情で叫ぶ。
慌ててHPバーを確認しながら、駆け出す。今はまだアスナのチェストプレートに阻まれているおかげでHPの減りは微々たるものだが、赤い損傷エフェクトが離れたところからでも確認できる。軽金属装備でそこまでの耐久値もあるとも思えないし、本格的にHPが削れるまで幾ばくもないだろう。
「エギル、額の紋章を攻撃してくれ!」
同じように駆けながら、キリトはこの層のゴーレム系モンスター共通の弱点である額の紋章に攻撃をするよう指示を飛ばす。
すぐに額に向けて斧を振りかぶるエギルだが、その手は振りかぶったところで止まってしまい、代わりに首を激しく左右に振られる。
「ダメだ……こいつ紋章がねぇ!?」
「な……」
そんなはずがない、とさらに加速しようとしたところで後方のアルゴから「待て!」と鋭い声が飛んでくる。
「わかったゾ。この部屋そのものがボスだったんダ!」
「……!」
──そうか。【虚空の巨像】とは神出鬼没に現れるあのゴーレムのことを指すのではなく、ボス部屋そのものがボスであるが故の虚像という意味か。
つまり、俺たちはボスの胎の中に囚われたようなものだ。侵入は容易でも、脱出は困難を極める。
この部屋のどこにでもあのゴーレムは腕や脚を出すことができるし、階段を顔に変じさせてしまうことも容易なのだろう。
今でもレイドメンバーたちは懸命に武器を振るったり、アスナを噛み砕こうという巨大なアギトを必死に食い止めとうとしているが、弱点である紋章を見つけなければ意味がない。
なら、紋章はどこにある……床か、天井か、壁か。
と、ここでついに限界を迎えたのだろうアスナのチェストプレートが硬質の破砕音ともに砕け散った。
「アスナ────っ!!」
キリトの絶叫がボス部屋の中で虚しく反響する。
──ここまでなのか。
ここでアスナが死ぬようなことになれば、脱出も叶わない今の状況ではメンバーが恐慌状態になることは想像に難くない。それに、相棒を失うことになるキリトのことを思うと……
必死に思考を回転させる。だが、視界の端に見えるアスナのHPバーがとてつもない速度で削られていく焦りが、俺の思考を鈍らせていく。その時だ。
「……あれは!!」
ゴーレムの口腔内から鎌が飛び出してきた。
その鎌は今にもアスナを食い散らかさんとする歯列へと噛ませられると、僅かに開いた隙間から這い上がるようにして、とあるプレイヤーがこの絶望的な状況にあるボス戦の場に参戦してきた。
「……ミト?」
──第五層ボス攻略レイドメンバーの最後の一人、ミト。
あの日、アスナがスカウトに向かってから、何があったのかを俺は知らない。
第一層ボス攻略以前にあった出来事についても、結局知らないままだ。
だけど、俺が唯一知っていることがある。彼女はアスナにとって無二の親友であり、彼女もまた同じようにアスナを想っていることを。
アスナが頼ってきて、命の危機にある時に、ミトは絶対にアスナの元へとやってくる。
「──早く! 今のうちに!!」
鎌が噛まされ、ミトが口腔内から必死に押し留めることで、一時的にアスナのHPの減りが緩やかになる。
鋭く叫ぶ声に思考は冷やされ、改めてボスの紋章がどこに消えたかを考える。
床、天井、壁のいずれにも紋章はない。この部屋がボスそのものであるなら、どこかに必ず紋章は存在するはずだ。ならば、自ずとどこにあるかが見えてくる。
「皆、ラインを踏んで腕と足を出してくれ! その中に弱点の紋章があるはずだ!!」
ゴーレムの顔周辺に集まる仲間たちへ向けて声を張る。
「了解! 」「わかっタ!」「おうさ!」
キリト、アルゴ、クラインの三人が同時に応答し、他のメンバーも続くように行動を開始した。
◆◆◆◆
視界右端の装備欄に表示されている鎌の耐久値がジリジリと削られていく。
私自身も必死に力を込めているけど、ボスの圧倒的膂力を押し返すには全く足りない。
「ミト……」
私の名を呼ぶアスナの声は、酷く弱弱しい。
「私は……まだ、自分を許せない」
負い目だからと、今回のボス戦への誘いを無下にしてしまったこと──
その命が失われる時を見たくないからと、アスナを置き去りにしてしまったこと──
「──だけど! 私は、アスナを……絶対死なせない!!」
これは誓いだ。
負い目だからではない。
友だちだから──今度こそ、その命を目の前で散らせはしない。
ありったけの力を込めて、今にもアスナを噛み砕こうとするボスを必死に押しとどめる。
◆◆◆◆
「ありました!!」
絶叫をあげたのは、俺とは反対側の壁面近くに陣取っていたリーテンだった。
急いで振り向くと、リーテンは右足の脛辺りを指さしていた。しかし、重金属装備の彼女の機動力では上昇し始めた右足を捉えることはできない。
「逃がすか!!」
キリトと二人、全速力で駆け出す。互いに剣を肩に構え、跳躍系突進技の《ソニックリープ》を始動させようとすると……
「頭を下げろ、キー坊!」
背後から突然と声がかかり、指名されたキリトは咄嗟に体を丸めた。
その右肩を踏みつけ、飛翔するのはアルゴだった。
すでに俺はソードスキルを始動させ、跳躍を始めていたが、AGIの数値は彼女の方が高いのだろう。悠々と俺を飛び越えて、ボスの右足の紋章へと迫っていく。
「当たれェェェ!!」
紫色のライトエフェクトを纏わせ、アルゴが起動したのは突進技の《アキュート・ヴォールト》だ。
クローの猛撃がボスの右脛を深々と抉り、紋章をかき消すと同時、耳を劈くような咆哮が響き渡った。
階段付近へ振り返ると、ボスが思い切り口を開けながら咆哮していた。その勢いのままアスナとミトの体が投げ出される。
◆◆◆◆
キリト君やエムさん、他の攻略メンバーも協力してくれたこともあって、私は何とかボスのアギトから解放された。
途中でミトがボス戦に参加してくるとは思わなかったけど、おかげで私は命を散らすことなく生き延びることができた。
「────ミト」
どんな風に声を掛けたらいいかわからず、言葉に詰まってしまった私に、ミトも少し躊躇うようにして聞いてきた。
「……ダメージは?」
ミトの言葉で私はHPバーを改めて見てみる。
残り三割を切って、危うくレッドラインにまで差し掛かるといったところだったけど、ほかに異常はなく、そのまま戦い続けることは可能だ。
「大丈夫……」
そう答えるけど、直前まで受けていたダメージ感覚のせいで声が思わず引きつってしまう。
すぐに気付いて表情は取り繕ったけど、長い付き合いのミトにはすぐに見破られてしまった。彼女はまるで私を奮い立たせるように挑発的な笑みと一緒に手を差し伸べてくる。
「なら、まだ……戦えるね?」
ミトの手を取り、私は立ち上がる。
「もちろん!」
ミトと、また一緒に戦える──そのことがたまらなく嬉しい。
つい顔が綻んでしまう。それはミトも同じようで、挑発的な笑みはとうに崩れてしまっている。
「さあ、ボスを倒すよ」
微笑みながら、剣と鎌を合わせる。
カチンと微かな金属音とともに、私とミトはいまだ続くボス戦に向けて駆け出した。
◆◆◆◆
「くそっ……!!」
これまで順調だったボス戦だったが、ボスの行動パターンが変化して以降はなかなか攻めきれずにいる。
原因はボスが一定時間ごとに放ってくる咆哮がデバフスキルとなっていることだ。防御力減少や視覚明度ダウン、聴覚ダウン、平衡感覚ダウンにスリップダメージと効果が多彩で、感覚異常を喰らってしまうと手足の攻撃を避けることが難しくなってしまう。
その上、咆哮をキャンセルしようと弱点の紋章を叩こうにも、紋章はボスの手足を駆け巡っているため、もし見つけても場所によっては剣や斧では射程が足りずに歯痒い思いをすることになる。
「見つけたぜ!」
「駄目だ、遠すぎる!」
今度もそうだ。クラインが右足の脛上を指差すが、すでに上昇を始めてしまっている今の状態では剣や斧では突進系スキルを使っても届かない。
唯一届くかもしれないアルゴもちょうど反対の位置にいるため、跳躍したとて届きはしないだろう。
「はあああああ!!」
そこへ濃紫
ボスの咆哮モーションがキャンセルされ、巨大な顔は怯みモーションとともに少しの間天井へと引っ込んでいく。
「皆、ラインを踏んで! 紋章は捉え次第、私が叩く!」
声をあげたのはミト。先ほどの攻撃も彼女が放ったものだろう。
どうやら武器依存の特殊スキルのようで、威力はボスのHPの減り方からして大きくはないようだが、追尾効果を持つ長射程攻撃というのは、今回のボス攻略において非常に有用なものだ。
「任せた!」
そこからの戦闘はミトの参戦で紋章への攻撃が安定したこともあり、ボスのHPバーの四、五本目を削るのに大きな問題が起きることなく進んでいった。
「残り一本!」
現在時刻は七時四十七分。攻略開始から一時間弱でボスのHPは最後の一本と、初見であることを思えば順調にいっているが、ここまでの戦いを思うと茅場晶彦がどんな仕掛けをしているかもわからない。
「──ヴォオオオオオオオオ!!」
HPバーが最後の一本に到達したことで、天井にある顔がけたたましい咆哮を上げ、その眼の色を碧から真紅へと変えた。
「パターンが変わるぞ、全員警戒!」
キリトの叫びに、レイドメンバー全員が警戒姿勢を取る。
床面に広がるラインが外周部へと散っていき、壁面を伝って、未だ咆哮を上げ続けているボスの顔へと集まっていく。
「……ンだよ、あれはァ!?」
その不穏な光景にクラインが震えた声を上げる。
ボスの顔を中心に巨大なターゲットサークルが現れ、不気味なほどゆっくりと手、胴体、足とゴーレムの身体が形成されていく。
そうして膝下まで湧出したところで、ボスは這い上がるような動作を始めた。
「ゴーレムが降りてきやがるぞ!!」
「──全員後退!」
エギル、キリトが叫ぶ。
その声が届く前には全員がフロア端に向かっていた。直後、轟音ととてつもない衝撃とともに、ボスが着地する。
「デケェ……」
体高十メートルを軽く超える巨体を前に、誰からか圧倒されるような声が漏れる。
全身に刻まれたラインが、その眼と同じように碧から真紅へと染まっていく。数秒ほどで末端まで赤く染まると、再び轟くような咆哮を上げた。
「だけどこれで最初の作戦通りに戦える……」
思わず気圧されそうになるところへ、キリトが皆を奮い立たせるようにして叫ぶ。
「ラスト1本、全力で削るぞ!!」
「「「おう!」」」
俺を含むレイドメンバー全員からの勇ましい声を受け、キリトは作戦指示を飛ばす。
事前の編成通り、タンクを集めたA隊がブロック。アタックとヘイト管理がB隊と振り分け、予想される攻撃パターンを伝えると、アスナとミトを連れ立って一気に駆け出した。
──俺ももう、出し惜しみは無しだ!
つい先日、現実側からメッセージとともに送信されたガシャットを《ゲーマドライバー》とともにアイテム欄から実体化させる。
ガシャットの起動スイッチ
『ゲキトツロボッツ!』
起動した《ゲキトツロボッツ》を、同じく起動させた《マイティアクションX》とともにゲーマドライバーのスロットへ装填。
「大・大・大変身!」
ゲーマドライバーのレバーを引き、周囲に展開されるセレクト画面の中からエグゼイドのものを選択。
まず俺は《仮面ライダーエグゼイド マイティアクションゲーマー レベル2》へと姿を変える。そして《ゲキトツロボッツ》の空間生成装置
『アガッチャ!』
音声とともにロボットゲーマが俺の身体に組み付き、装甲へと変わる。
『ぶっ飛ばせ! 突撃! ゲキトツパンチ! ゲキトツロボッツ!』
俺は《ロボットアクションゲーマー レベル3》にレベルアップした。
左腕に装備されたゲキトツスマッシャーが特徴で、見た目の通り格闘戦が得意の形態だ。
「さあ……改めて、ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」
お決まりの決め台詞とともに、俺は駆け出した。
それに気づいたボスがその巨大な拳を振り上げる。
「おい、危ねぇぞ!」
ボスが拳を振り上げても怯むことなく突っ込んでいく俺の姿に風林火山のトーラスが警告するように叫ぶ。
──だが、俺は止まらない。迎え撃つように俺も左拳を構える。
「オラァ!!」
構えた左拳を駆け出した勢いのままに振り抜く。
ボスの放った拳と激突するが、激突勝負で俺の拳が負けることはない。
人一人を簡単に握りつぶしてしまうほどの巨腕を打ち払い、ボスを怯ませる。
「──今だ、突っ込め!!」
「了解!」
回り込んでいたキリトが左足のふくらはぎあたりへ、二連撃《バーチカル・アーク》を叩きこむ。続けてアスナも上下二連突き《ダイアゴナル・スティング》を繰り出す。
右足へもクライン、エギル、ウルフギャングがアキレス腱のあたりを抉るように武器を振るい、着実に痛打を与えている。
アルゴは壁面を駆け上がり、額にある紋章を狙い、飛び上がる。
しかし、ボスもただ打ちのめされるだけではなかった。真紅の眼が怪しく光り、
「させない!!」
ミトが地上からライトエフェクトを纏わせた分銅を放ち、ボスの顔側面を強かに叩いた。
おかげでアルゴを捉えていた視線は外れ、その眼から放たれた怪光線は壁面を焼き付けることになった。
「キー坊、紋章は移動しないみたいだぞ!」
攻撃のチャンスを逃したアルゴだったが、空中に躍り出たことで有益な情報をこちらに寄越してくれた。
「アスナ、エム!」
ここまでの攻防でボスのHPはずいぶんと削れた。
──攻めきるには今しかない。
キリトの合図で、俺とアスナは全力で走り出した。
「グォオオオオオオオオ!!」
咆哮とともに、ボスは怪光線をアスナに向けて放つ。
しかし怪光線はアスナを捉えることなく、シヴァタ、リーテン、トーラスの全力の防御によって阻まれる。
「行け、額の紋章を!」
「はい!」
続けて振るわれる巨腕を受け止めながら、シヴァタはアスナに向けて喚いた。
声を受け、アスナは一瞬でトップスピードにまで加速すると、壁面を蹴り上げ、駆け上がっていく。
ボスは再び、アスナを狙って怪光線の用意をするが、今度は眉間を打ち付ける分銅が、その発射を妨害する。
「──させない、って言わなかった?」
ミトは挑発的な笑みをボスへと向ける。
それに誘われるようにボスはミトに対して巨腕を振るうが、ミトは飛び上がることで難なく回避する。
振るわれた巨腕に着地したミトは、額の紋章を狙うべく、一気に駆け上がっていく。
無論、ボスがミトの行動を容認するはずもなく、振り払うように腕を振るう。
振り落とされたミトだったが、冷静に分銅を腕に絡ませるとターザンジャンプのように反動を活かして跳躍する。
「せあッ!!」
ボスの眼前まで迫ったミトが分銅を額の紋章へ痛打させる。
怯みモーションに入ったボスを見て、ミトは俺たち三人へ振り返る。
「三人とも、最後は派手に決めて!」
「わかった──遠慮なく貰ってくぜ!」
叫び返すキリト。ともに跳躍したアスナとともに双方の最大火力のスキルを構えている。
俺もありったけをお見舞いするため、手元に《ガシャコンブレイカー》をハンマーモードで構える。
ゲキトツロボッツをキメワザスロットホルダーに、マイティアクションXをガシャコンブレイカーに挿し変えると、俺はまずキメワザスロットホルダーの起動スイッチを叩いた。
『GEKITOTSU CRITICAL STRIKE!』
左拳を振り抜き、ゲキトツスマッシャーを撃ち出す。
続いて、撃ち放ったゲキトツスマッシャーに追いつくように飛び上がると、ガシャコンブレイカーのトリガーを引く。
「さあ、フィニッシュは必殺技で決まりだ!!」
『MIGHTY CRITICAL FINISH!』
渾身の力で、ゲキトツスマッシャーの背部を叩き、スイングの要領で射出する。
怯みモーションの最中で動けないボスの額に、ゲキトツスマッシャーが迫り、痛恨打を与える。
HPバーは残り一割。紋章に強力な一撃をもらったボスはスタン状態になり、完全な無防備となる。
「ヴォアアアアアアアアアアアア───ッ!!!」
最後の抵抗か、ボスは渾身の咆哮を上げる。
しかし、裂帛の叫びを上げるアスナとキリトは怯むことなく突き進む。
「せやあああああああ!!」
アスナが放ったのは、三連突き《トライアンギュラー》。
神速の突きがすべてボスの額の紋章へと吸い込まれていき、HPバーは残り一割にまで減じる。
「これで……終わりだあああ────ッ!!」
キリトは縦四連撃<バーチカル・スクエア>を放つ。
青い輝線が赤く光る紋章に一本、二本、三本、四本と刻み込まれていく。
ボスのHPは残り─────0。
ボスの真紅の瞳が不規則に揺れる。
全身に走る赤いラインがひときわ眩しく輝く。
その光は全身に炎のように広がっていき、一瞬ののちに治まる。
全身が青く輝くクリスタルのように変じ──第五層フロアボス、フスクス・ザ・ヴェイカントコロッサスは、爆散していく。
間が開いた内に、キングオージャーも終わってブンブンジャーが始まりましたね。
ガッチャードもレジェンドが本編に出演して、怒涛の展開が続きますが、なんとこのSSでは八周年を迎えようとするエグゼイドを擦り倒しております。
……マイティノベルXも時系列的には昨年の出来事になりましたし、時が経つのは早いなぁ……
あ、ちなみになんですが私、パラドファンという方と共作で『結城友人は魔王である』というジオウと結城友奈は勇者であるという作品のクロスオーバー作品を投稿しております。
全面監修してはいますが、あちらも負けず劣らずの遅筆なので時間あるときに覗いてやってください