遊戯王ARC-V Rーe:birth   作:深海の破壊大帝

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たぶん遊戯王世界はカード1枚を買うにしても莫大なお金がいる。


謎の決闘者 狂った道化師

――質量を持ったソリッドビジョンの実現により生まれたアクションデュエル――

――モンスター、そしてデュエリストが一体となったこのデュエルは人々を熱狂の渦に巻き込んだ――

 

「巻き込まないでほしかったんだけどな・・・」

 

「ん?どうしたの遊矢?」

 

「いや、なんでもないよ、柚子。」

 

 目の前のピンク髪の少女、『柊柚子』が俺に話しかける

 いかん、独り言が口から洩れたようだ

 

 俺がこの世界に来てから記憶で言えば10年と言ったところだろうか

 これが本編と同じ世界観なら世界が再構築されたのも10年ほど前なのだろうか?

 

 『遊戯王ARC―V』遊戯王テレビアニメシリーズ第5作目にして

 新たな召喚法『ペンデュラム召喚』が登場し、主人公 榊遊矢はその召喚法を使い、別次元からの侵略者と戦いながら

 父 榊遊勝から受け継いだ『エンタメデュエル』で人々に笑顔を与えながら成長していく

 大まかな流れで言ったらこんな所である。

 だが、問題は主人公 榊遊矢の正体――

 

「ちょっと遊矢!?」

 

「ん?な、何だよ、柚子?」

 

「本当に大丈夫?妙に考え込んじゃって」

 

「い、いや、今日来てくれたあの子、入塾したんだろ?

 修三さんと俺だけで講師の人数足りるのかな~って思ってさ」

 

「ん~そうね。

 たしかに2クラスに分けて講義するのも・・・これ以上は厳しいわね。

 講師のバイト募集の張り紙でも出そうかしら?となると出せるバイト代は・・・

 いや、でも講師を増やしたって場所が・・・」

 

 どうやら柚子を思考の海に沈めることに成功したようだ

 これなら10分は戻ってこないだろう

 

 俺の10年より前の記憶

 それはこの世界と似たような世界がアニメとして放送されていた世界である

 この世界の様にデュエルが様々な物の中心となっている世界ではなく、

 ただの普通のカードゲームとして存在する世界、OCG次元とでも呼ぼうか

 俺はその世界で生きる、ただの遊戯王好きの男だった

 

 今や覚えているのはそれだけ、死んだ記憶もなければ、時空の狭間に落ちたわけでもない

 いや、記憶がないだけかもしれないが・・・

 とにかく気づくとこの世界に居て『榊遊矢』となっていた。

 物語の主人公である『榊遊矢』に、つまり

 

「おーい!遊矢!!お客さんだぞ」

 

 厄介事が舞いこんで来るわけだ

 大声でこの休憩室に入ってきた、この遊勝塾の塾長代理『柊修造』

 そして、その後ろから入ってきた黄色と黒の縞模様のスーツを着た揉み上げとサングラスが特徴的な男

 

「やぁやぁ、キミが榊遊矢君ですか~お会いできて光栄です。

 あ、申し遅れました。

 ワタクシ、アクションデュエルの現役チャンピオン

 ストロング石島のマネージャー兼プロモーターをしております

 ニコ・スマイリーと申します。」

 

 胸に両手をクロスさせた独特のお辞儀をする胡散臭そうな風貌の男『ニコ・スマイリー』

 やっぱり来たか・・・

 

 原作との相違点として俺以外に挙げられるのはまず、遊勝塾の経営が傾いていないことだ

 もちろん、最初は広告塔兼塾長である『榊遊勝』が失踪し閑古鳥が鳴いていたのだが

 元々若干コアなOCGプレイヤーだった俺が臨時講師として教え出してから、生徒の人数が回復というか、若干オーバー気味になってしまったのだ。

 卑怯者の息子のレッテルはどうしたんだ?

 まぁ、エクストラデッキを使う召喚法を教えている塾がまだ少ないのもあるだろうが。

 

「LDSのイメージキャラクターを務めるストロング石島の、そのファン感謝デーにぜひ遊矢君をお招きしたいのです。」

 

「俺が、ストロング石島と?」

 

「そう!戦えるのです。

 3年前の戦いを貴方に継いで欲しいのです!」

 

 独特の口調と仕草でそれとなくこちらを煽ってくるニコ・スマイリー

 チャンピオンのプロデューサーの名は伊達じゃないな

 煽っているが嫌味さは感じない

 

『ストロング石島』現役アクションデュエルチャンピオンにして

 レオ・デュエルスクール、通称LDSのイメージキャラクター

 3本の角のようなヘアースタイルと肩パットを装着したマッチョな大男

 世紀末な風貌だが性格は誠実で堂々としている

 使用デッキは『バーバリアン』となかなかコアな人

 

 3年前、原作通り、彼との王座決定戦で当時チャンピオンだった榊遊勝が失踪したことにより

 ――チャンピオンに『なってしまった』男

 

「ほれ、この通り、準備は万端整っております。」

 

 そう言い

 ニコ・スマイリーの懐から出されるファン感謝デーのポスターの端っこに、ご丁寧に顔写真付きで『≪スペシャルマッチ≫ 伝説再び―榊遊勝の息子 榊遊矢君がチャンピオンに挑戦!!』と書かれている。

 

 逃げ道を潰してきているな、こいつ

 まだ一般には未公開だろうが、デュエリストとしてなら受けない訳がない

 受けるの了承したら大々的に配布するつもりなんだろう

 

「どうするの、遊矢?」

 

 不安そうにこちらを見つめてくる柚子

 俺は少し考えようとしたら、突如として勢いよく扉が開いた

 

「ならん!!遊矢を倒すのはこの俺!権現坂昇だ!!」

 

「あ~ら、まだ帰って無かったのか、権現坂」

 

「3年前のことを持ち出したあげく、遊矢を当て馬にし見世物にしようなどという卑劣な考え

 この男、権現坂が許さん!!」

 

 勢いよく登場した権現坂、鼻息荒く興奮している様は暴れ牛か暴走機関車の様だ

 

「お~っと、これは権現坂道場の跡取り、権現坂昇君ではありませんか。

 さすが遊矢君、御顔が広いようで・・・」

 

 権現坂の事を知っているということは、俺のことはいくらかリサーチ済みか

 さすがレオ・コーポレーション

 

「たしかに、現役チャンピオンであるストロング石島と、ジュニアユースクラスである遊矢君では実力に差があることではありましょう。

 ですが、ワタクシは観客をあっ!と言わせるような、実にいいデュエルが出来ると確信しているのであります。」

 

 確信ねぇ・・・と言うことはあれの事も知っていそうだな、このニコちゃん。

 

「まぁまぁ、落ち着けって権現坂

 ニコちゃんもこう言ってくれていることだしさ

 それに俺が『当て馬』ぐらいにしかならないと思ってんの?」

 

「うっ、それは・・・」

 

「それに受けるか受けないかは遊矢君の気持ち次第、どうしますか遊矢君?」

 

 俺の言葉で少しは頭が冷えた様子の権現坂と煽り全開のニコ・スマイリー

 そして心配そうに見つめてくる柊親子

 まぁ、受ける気ではあるが・・・

 

「で、報酬は?」

 

「はい、もちろんご用意させていただいております。

 ご承諾くださいましたら、お礼としてレオ・コーポレーション社製の最新式リアルソリッドビジョンシステムをお納めさせていただきます。」

 

「「MA☆JI☆SU☆KA☆!!」」

 

 目に星入れて興奮する柊親子

 まぁ、型落ちの奴を修理して使っているんだから仕方がない

 この前は柚子が操作パネルぶっ叩いて壊したから、修理するのに苦労したし・・・

 渡りに船とはこのことだな

 

「わかった、了承しよう。

 ついでにうちの型落ち品を買い取ってくれると助かるんだが?」

 

「おぉ~なかなかに商売上手ですね、遊矢君

 わかりました、手配しましょう。」

 

 即決し握手を求めてくるニコちゃん

 まぁ、『いくらで』とは言ってないし強制もしていないから当たり前か

 数万にもなれば十分だろう

 商談成立の合図としてこちらも握手に応じる

 

「ところで別に勝ちそうになったら、わざと負けろとは言わないよね、ニコちゃん?」

 

「えぇ、もちろんでございます。

 チャンピオンはそういうのはお嫌いですからね、狂った道化師(マッド・ピエロ)殿」


――ワアアアアァァァァァァァァァ!!

 沸き立つ観衆、跳び立つバルーン、踊るチアガール、応援のためのフラッグや幟まで出ている

 会場である舞網スタジアムは超満員、そしてこれから行われるのは

 

「いよいよ、本日のメインイベントのお時間がやってまいりました。

 チャンピオンのストロング石島に挑戦いたしますのは~

 あの伝説のデュエルスター榊遊勝の一人息子、榊遊矢君であります!」

 

 ニコ・スマイリーの司会で今か今かとボルテージを上げる観衆

 人々が望むのはチャンピオンの新たな栄光の1ページか、卑怯者の息子の粛清か

 

「このスペシャルマッチはアクションデュエルの公式ルールに則って行われます。

 フィールド魔法 辺境の牙王城を発動!」

 

 ニコ・スマイリーの手にカードが現れ光が漏れる

 無機質で殺風景だったスタジアムに一瞬にして、鬱蒼とした森とそれに囲まれた岩の城が出現した

 

「見てください、この本物と見まごうばかりのリアルな質感!

 これがLDSの誇るソリッドビジョンシステムです!!」

 

―コツッ!

 歓声や司会、BGMが鳴り響く中でも存在感のある足音

 発生元は森の中に立つ城の天辺

 そこには3本の角のような紫色の髪をし目に赤いペイントをした、蛮族の王と呼ぶにふさわしい大男が立っていた

 

「おぉっと!!あの城の上に現れたのはー!!

 この3年間、アクションデュエルの頂点に君臨し続ける

 最!強!王者!!ストロング!石島だ!!」

 

「ウオオオォォォォォォ!!」

 

―ウオオォォォォォ!!

 ニコの紹介と共に力強い雄叫びを上げるチャンピオン ストロング石島

 観客たちもそれに合わせて歓喜の雄叫びを吠える

 が、そんな中でなかなか乗り切れていない集団もいた

 

「す、すごい盛り上がりね、お父さん・・・」

 

「そ、そうだな、柚子・・・」

 

「うむ、さすがは現役チャンピオンと言ったところだな。」

 

 柊親子は石島ファンのノリに気押され、権現坂はいつもの調子である

 

「で、遊矢の調子はどうなんだ?」

 

「それがね

 ちょっと準備してくるって、すぐに控室出ていっちゃったから、よく分からないの」

 

「準備とはなんだ?」

 

「さぁ~?私に聞かれても分からないわよ」

 

「さぁ!その最強王者に挑むのは若きチャレンジャー!榊!遊矢ー!!」

 

「おっ!やっと遊矢の登場か・・・って、あれ?」

 

 対戦者が昇ってくるはずの階段、修造がそこに目を向けたが誰の影もなかった

 

「ゆ、遊矢君!どうぞ!!」

 

 ニコが名前を高らかに宣言するが遊矢の姿はどこにも見当たらない

 会場の誰もが3年前と同じか、逃げたのか、やっぱり親子そろって卑怯者だと罵りはじめ

 それが柚子の癇に障り、罵る者に何処からか出したハリセンで殴りかかろうとするが

 

『おいおい、カメラさ~ん、何処映してんの~?』

 

「「「遊矢!?」」」

 

 突如として会場のスピーカーから発せられる少年の声

 

『卑怯者だとか何だとか勝手に言っちゃってくれてさ~

 あの親父と俺とは何にも関係ないよ。』

 

「この声は・・・まさか!?」

 

 スピーカーから流れる声に城の天守で堂々と仁王立ちしていた石島に動揺が走る

 

『お~い、まだ見つけらんないの?

 こっちだってば!こっち』

 

 会場に備え付けられたカメラが声の主の姿を捉えようとあちこち映し出す

 観客たちも何処だ何処だと、会場を見渡し始める

 

「さっさと出て来い!榊遊勝の息子!!チャンピオンに対する礼儀も知らんのか!!」

 

 動揺を隠そうと石島は怒りの声を上げて、何処ともしれない声の主にぶつける。

 

『おや、チャンピオンもお分かりでない?仕方がないなぁ~』

 

 その返答があった後、石島は背後に異様な気配を感じその場から飛びのく

 そこに居たのは口が三日月の様に裂けた白い仮面を付けた黒いピエロ

 

「貴方の後ろだよ」

 

「やっぱり、てめぇか!!狂った道化師(マッド・ピエロ)!!」

 

 怒りが混じる声で黒いピエロの名を叫ぶ石島

 その名を聞いた観客たちにも動揺が走る

 

狂った道化師(マッド・ピエロ)だって!?」

 

「あの、大会荒らしの・・・」

 

「なんであいつが居るんだ?」

 

「ななな、なんとー!

 あれは7年もの間、各地の大会に出没し、無敗を誇る謎のデュエリスト!!

 狂った道化師(マッド・ピエロ)だー!!」

 

「おや、俺ってば有名人?チャンピオンに名前を憶えてもらっているなんて光栄だなぁ~」

 

 茶化すようなセリフを吐く、狂った道化師(マッドピエロ)に石島は怒りを表す

 

「て、てぇめぇ!忘れたとは言わせんぞ!5年前の屈辱を!!」

 

「5年前?あぁ、あの大会に居た大男さんか・・・

 トラップモンスターで嵌め殺しにしたんだったかな?

 いやぁ~立派になったねぇ~」

 

「そうだ!息子を引っ張り出せば榊遊勝が出てくると思ったが、まさかお前が出てくるとはな!!

 ディスクを構えろピエロ野郎!!あのときの借りを利子をつけて返してやるぜ!!」

 

「おやおや、もしかしてニコちゃんってば、チャンピオンにも伝えてないのかな?

 人が悪いねぇ~」

 

「なに?」

 

 ディスクを起動させ臨戦態勢に入る石島だが狂った道化師(マッド・ピエロ)の言葉でニコをにらむ。

 

「あ、いや、その」

 

「まっ、いっか!では盛大にネタばらしと行きますかね!!」

 

 狂った道化師の黒い衣装と白い仮面が取り払われ

 白を基調とした舞網中学の制服を着崩した赤と緑の髪を持つ少年が姿を現す

 

「どうも~狂った道化師(マッド・ピエロ)こと、榊 遊矢

 チャンピオンの招待にはせ参じました。」

 

 仰々しく見事な礼をする遊矢

 突如明かされた長年謎に包まれてきた大会荒らしの正体に石島も観客も

 そして、柚子たちも動揺を隠せない

 

「お前が・・・榊遊勝の倅?

 あの、狂った道化師(マッド・ピエロ)がこんなガキだと・・・

 だったら、俺はこんな子供に負けたのか・・・?」

 

 動揺を隠しきれない石島、これでは前に進まないなと思い喝を入れる

 

「子供だからって馬鹿にしないでくれるかな?

 デュエルの世界で年齢なんて大した差にならないはずだよ

 どんな相手でも最後は勝ったか負けたかでしょ?」

 

「くははははは!!そうだな!だったら、今度は勝たしてもらう!

 5年前の俺と同じだと思うと痛い目を見るぞ!!」

 

「そうそう、ノリが悪いと倒し甲斐がないからね、っと!」

 

「おぉっと!いきなり意外な展開になりましたがとにかく役者はそろいました。

 さぁ、双方手札を5枚ご用意を!

 戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が、モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!

 見よ、これぞデュエルの最強進化系!アクションー!!」

 

 2人がデュエルディスクを展開したのを見計らい

 ニコがオーバーなアクションで開始の宣言をする

 世界を巻き込む、始まりの戦いの合図を

 

 

 

「もう、まったく遊矢ったら・・・そんなに前からそんなことをしていたのね。」

 

「うむ、俺も初耳だったぞ。」

 

「いや~俺も知らなかったんだよ~

 遊矢がそんなことをしているなんてさ

 それに情け容赦無用で大会を荒らしまくるって噂の賞金稼ぎ、狂った道化師(マッドピエロ)なんてさ」

 

 正体をばらした後、柚子と権現坂は修造に詰め寄っていた

 もっとも修造が答えることが出来たのはそんな、当たり障りのない事だったが

 そして渦中の人である遊矢もニコがオーバーアクションで司会をしている中

 別のことを考えていた

 

(このデュエルがペンデュラム召喚が初めて世に出るデュエル・・・

 つまりペンデュラムさえしなければ、ややこしい事態を加速させずに済む。)

 

「それにこんな大事なデュエルなのに・・・

 大事なカードをデッキに入れ忘れるなんて、

 枚数制限でエラーが出たらみんなに笑われちゃうわ。」

 

「ん?それはどういう事だ、柚子?」

 

「それがね。」

 

(そして、今回用意したデッキはペンデュラムモンスターになりそうなカードを)

 

「星読みの魔術師と時読みの魔術師を」

 

(抜いてきた!!)

 

「入れ忘れていたから、戻しておいたわ」

 

 舞台の流れは1人の意志程度じゃ変えられない

 それを知らない役者は高らかに開演の幕を上げる

 

「「『決闘(デュエル)』!!」」

 




いつの間にかチャンピオンに因縁を作ってしまった俺
ただの小遣い稼ぎの活動だったのに、なぜこうなった?
げっ!?何で抜いたはずのこいつらが!?
まぁ、来てしまったものは仕方がない
さぁ!ショータイムだ!
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『開演告げる鐘 ペンデュラム召喚』 

「CC」カード群の効果について

  • 制作したものをそのまま使用
  • 後付け効果を削除
  • メインに入るカードの後付け効果のみを削除
  • EXのカードのみをアニメ寄りにして使用
  • 完全にアニメカードそのまま

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