遊戯王ARC-V Rーe:birth   作:深海の破壊大帝

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関係者以外誰も擁護しない榊遊勝と
無名の中学生に負けたのに熱狂的なファンがいるストロング石島
どこで差がついたのでしょうか?


舞台裏で動く者たち

「やっちまった・・・」

 

 舞網第二中学校の昼休みの屋上

 榊遊矢はストロング石島とのデュエルの後のことを思い返していた


「チャンピオン・・・」

 

 光あふれるスタジアムから暗い通路に入って行こうとするストロング石島に俺は呼びかける

 

「よせ!勝ったお前から言われるとむずがゆくて仕方ねぇ。で、なんだよ?」

 

 ストロング石島、彼には一つ言っておかなければならないことがある

 本編では2話以降の彼の姿は欠片もなく、

 マネージャーであるはずのニコ・スマイリーは遊矢のデュエルをプロデュースしていた

 彼について語ったのは権現坂の兄弟子ぐらいではないだろうか?

 まぁ、つまり彼は落ちぶれたのだろう

 

「じゃあ、石島さん・・・貴方にはこれだけは言っておこうと思いまして、

 すいませんでした、ごめんなさい。」

 

 そう謝罪しなければならない

 たとえあの頭のネジの吹き飛んでしまった

 覇王竜のたくらみの1つでしかなかったとしても、榊遊勝は俺の父親なのだから

 

「なぜ、謝る・・・」

 

「俺の父親がしでかしたこと、

 そして、貴方の知らないペンデュラム召喚を使って勝ってしまったこと・・・」

 

 この世界のデュエリストレベルは低い

 ここまでデュエルモンスターズが普及している世界でありながら

 ルールすらまともに分かっていないものも多いくらいだ

 まぁ、いわゆる コナミ語が難解な物もある為、俺も完璧に把握してはいないのだが、

 調整中のカードとかもあるし

 

 おまけにOCGと違い

 エクストラデッキを使用した召喚法はここ2年くらいにこの世界に普及し始めたばかりである

 つまり、カードプールそのものは9期まであるのだが、

 大半のプレイヤーは3・4期の融合なしというプレイスタイルである、だいたいが力技だ

 

「お前が勝った、それはどうしようもない事実だ。

 それを謝るなら相手にとっての侮辱に当たるぞ?」

 

「誰も知らない、出来たばかりのルールで勝つなんてフェアじゃないと思っただけです。」

 

「はっ、デュエル中はふざけたような態度を取っているくせに意外と真面目だな・・・

 道化師を名乗っていることだけはある。

 それと、お前の親父の事だが・・・」

 

 榊遊勝の事、これはやっぱり歯切れが悪い

 それはそうだろう

 一般的には逃げた榊遊勝の方が卑怯者として非難されているが、

 裏では彼に対するアタリの方が当時は強かった

 『空席に座ったお飾り』『賊』『賄賂疑惑』等々挙げればきりがない

 

 だがこの3年間、チャンピオンの座を守り通してきたのだ

 それもカードパワーとしては低い方の≪バーバリアン≫デッキで、純粋にすごいと思う

 彼の見た目や言動に反して誠実な性格やファンとの交流も積極的に行っているのも大きいだろう

 このスペシャルマッチの前にも抽選で当たったファンとの交流デュエルをしていたし

 

「あれは・・・この3年間、俺を縛り付けていた鎖だった!

 お前との5年前のデュエルも確かに気がかりだったが、

 純粋に俺が弱かっただけだ、悔いはねぇ。」

 

 気にはしていたのか

 苦紋様の土像とカース・オブ・スタチュー、サイバー・シャドー・ガードナー、宮廷のしきたり

 それと攻撃強要カードで嵌め殺ししたせいか、

 トラップコンボに対してトラウマがある様な印象をライブラリで受けたけど

 

「だが、榊遊勝と・・・

 あの世紀のデュエルスターと戦わずして、チャンピオンなんて名乗っていられなかった!

 空席に座っているだけという気持ちにさせられて!

 居心地が悪いってありゃしなかった!!」

 

 あぁ、やっぱり、彼の中でも『榊遊勝』と言う存在はスターなのか・・・

 卑怯モンとさんざん言っていたが、あれは憧れの裏返しの様な物か

 当の本人は『エラーカードを使ってデュエルを強制終了させる』

 という手段をとる、割と本当に卑怯者なのだが・・・

 

 あの日、榊遊勝は突然姿を消した

 漫画版の様に世界を巻き込んだ一大イリュージョンをしたわけじゃないだろう

 この世界消えてないし

 

 原作通りなら

 空間転移装置を勝手に使用して、目的地とは別の次元に行き、

 のうのうと暮らした後、本来の目的地にたどり着くも足を悪くして

 イケメン女子を松葉杖にしていることだろう

 

 列挙しているだけでどれだけ考えなしなんだ・・・

 せめて石島さんとデュエルしてから行ってくれ

 

「貴方は榊遊勝に勝っていますよ。」

 

「何?」

 

「だって、貴方は声援に応えて立ち上がったじゃないですか。」

 

「!!」

 

「榊遊勝は自分のファンの期待を裏切りました。

 それはスターとして、いや、エンターティナーとして失格です。

 そして、挑まれた決闘(デュエル)を放棄した。

 チャンピオンとしてもデュエリストとしても最低な行いをしたんです。

 

 だけど、貴方は声援に応えて立ち上がり、デュエリストとして俺と戦った。

 榊遊勝よりも貴方がチャンピオンとして相応しい姿を見せたんです。

 父さんが今どこで何をしているかなんて、分かりませんが

 相応しくない奴が座っている椅子なんて、蹴り倒してやった方がいいと俺は思いますよ。」

 

 石島さんは何だかぽかんとした顔をしている

 さっきまでの焦燥が嘘のようだ、いいことだが何か変なこと言ったか?

 

「お前・・・実の父親に対して随分、辛辣だな。」

 

 あぁ、そのことか

 

「当たり前じゃないですか、あの人がいなくなってから随分苦労したんですよ?

 学校じゃ、卑怯者の息子として虐められるし。

 自分で塾作ったくせに看板が居なくなったから潰れかけるし。

 講師として残っている人はルール把握してないし。

 

 まぁ、虐めてきた奴にはきっちり仕返ししたし、

 塾の方は俺が臨時講師することでなんとかなっていますがね。」

 

「ははっ、お前らしいっちゃ、お前らしいな

 と言うかその残っている講師は講師として大丈夫なのか?」

 

「駄目ですね」

 

――ハッ!クッシュン!!

 

 どこかでくしゃみが聞こえたような気がしたが、

 どうにか石島さんは軽口が出せる程度には持ち直したようだから気にしないことにしよう

 

「話がそれましたが、

 貴方はいない人をいつまでも追いかけるよりも、超えるようにするべきだと思いますよ?」

 

「ガキが良く言うぜ。

 でも、俺はお前に負けたんだ、これまでの様にはいかなくなるだろうな・・・」

 

 やっぱり自分の境遇が判っているな

 この街の住人は負けた者に対してはかなり辛辣だ、弱者にとことん冷たい

 おまけに派手な戦法を見せないとヤジが飛んで来るレベルなので、

 俺に負けたことで今後かなり苦労を掛けてしまうだろう

 予防策は張っておいたが、なにより・・・

 

「俺の悪名は割と知られているし、常勝無敗の人間なんてこの世に誰もいませんよ

 それに必死で応援してくれるファンを持つ貴方なら大丈夫。」

 

「!?」

 

「だいたい、デュエルは本来『勝っても負けても楽しいもの』でしょ?

 今日のスペシャルマッチ、お客さんは楽しんでくれたみたいだしよかったじゃないですか。

 貴方はどう思いますか、ストロング石島?」

 

 プロにとってデュエルはショーだ

 一番優先させることは観客を楽しませる事

 仕組まれた八百長でもストーリーがあれば観客は楽しんでくれるだろう

 

 だが、本気と本気のぶつかり合いの方が演者としては楽しい

 今回は、かつての王者の子供が今の王者に挑む前振りがあり、

 実は子供が王者に土をつけていたと分り、結果としてリベンジマッチになり、

 その中で逆転劇や新要素の発表が成された

 良くできたショーになったと思うよ、これは役者を集めたニコ・スマイリーの一人勝ちだな

 

「あぁ、そうだな・・・俺も楽しかった。」

 

 そう言い、石島さんは拳を付き出してくるので、俺もそれに応え、彼の拳に自分の拳を合わせる

 

「次は負けん」

 

「次も負けませんよ」

 

「ハハッ!このヤロウ

 だが、あの最後のペンデュラム召喚だったっけか?

 あれ、お前の想定外だったんじゃないか?」

 

 やっぱりばれていたか、試合中にルール確認画面開いていたら当然か。

 

「えぇ、そうですよ。

 本来あの3枚はデッキに入れていませんでした。

 どうも少し目を離した隙に混ぜられてしまったようで。」

 

「気をつけろよ・・・

 珍しいカードを狙ってくる奴は山ほどいるんだ。

 にしても、突然入れられたカードの割によくも・・・

 まぁ、アンだけ言えたもんだなぁ?ピエロ野郎」

 

 そう、あのデュエルが終了した時 

 ややこしい事態を避けるためLDSに全て擦り付けようと

 新型デュエルディスクをお披露目する海馬社長のごとく演説しこの退場口に逃げ込んだ

 大半の人間がデュエリストであるためか、あの海馬節が受けてまた客が湧いていた

 

「新しい召喚法なんて、マスコミの恰好の的だ。

 それを初めて使った人間として、1週間は付きまとわれるだろうな。」

 

「マジですか・・・では、とっとと退場することにしますか。

 では、チャンピオン

 ニコちゃんに報酬の件、しっかりしといてと伝えておいてくださいね、では!!」

 

「はっ、調子の良い奴だな、まったく・・・」


 石島さんに言われた通り、会場出たらマスコミがごった返していたから

 デュエリストの謎の身体能力を駆使して、

 ビルから飛び降りたり壁を登ったりなんかして振り切った

 何も知らずに出て行ったら捕まっていたから、やっぱり見かけによらずいい人だな

 

「さて、放課後はどのルートで帰るか・・・」

 

「お~い!榊遊矢ー!!」

 

 Dパットでマスコミが張っていなさそうなルートを調べていると、

 屋上の扉が開かれ馬鹿っぽい声が木霊する

 

「おっ!いたなぁ~

 この俺様に探させるなんて、どういう了見だぁ?榊遊矢~」

 

「別に?お前をわざわざ、探すつもりもないからな、沢渡」

 

 沢渡シンゴ、基本茶髪に特徴的な金髪の前髪が特徴の男

 結構、二枚目な顔をしているのに残念な言動が台無しにしている

 馬鹿で高飛車だが誰でも分け隔てなく接するため

 よくヨイショしてくる取り巻き三人や、

 学校で疎まれている不良っぽいのとデータ好き、不幸体質の3人を子分にしている

 

 デュエルをするたび、対策を打ってくるという

 デュエリストとしては珍しいタイプで、俺も参考にしているくらいだ

 なので、頭の出来は悪くはない・・・筈

 

「おい、お前失礼なこと考えてなかったか?」

 

 なぜ、ばれたし

 

「あっー!やっぱり考えていやがったな!!」

 

「お前どんな勘をしているんだよ・・・で、何の用だ?」

 

「ふぅ、んなもん、わかんだろ?

 ストロング石島とのデュエルで使った・・・え・・えと・・・ぺ・・・ぺん?」

 

「ペンデュラムカードの事か?」

 

「そう!それ!ペンデュラム!!そいつを俺によこしな!」

 

「ふぅ~ん、ほらよ。」

 

「うおっ!あっぶねぇな!?」

 

 こいつカード手裏剣(コンクリートに刺さる)を取りやがった

 

「って、何だ、このカード?

 モンスターカードなのに下半分が魔法カードみたいに緑だぞ?

 それにテキスト欄が2つ付いてる?こんなの見たことがない・・・」

 

「その2枚がペンデュラム召喚に必要なペンデュラムモンスター、

 星読みの魔術師と時読みの魔術師だ。

 というか、知らずに欲しがったのか?

 お前だってスペシャルマッチ見てただろう?

 会場に来てなくてもテレビで生中継されてただろし。」

 

「うぅ~五月蠅いな!追試で見れなかったんだよぅ!!」

 

 あ、やっぱり馬鹿だ。

 

「って、こんなレアカード簡単に渡しちまって良いのかよ?

 って言うかここに描かれているモンスター見覚え有るんだが、こんなんだったか?」

 

「あー、何か唐突に書き換わった。」

 

「はっ?ニュースではLDSがスペシャルマッチ用に用意したカードとか言ってたぞ?

 どういうことだよ?」

 

「そんなの俺が教えてもらいたいね。

 家にあったカードも何枚かペンデュラムカードになっていたし、

 他にもペンデュラムカードに関するテキストが追加されているカードもあった

 おまけにルールブック見たら

 いつの間にかペンデュラム召喚に関する記述が追加されていたし、意味が分かんねぇよ。」

 

「マジかよ!・・・・本当だ!!なになに・・・・」

 

 沢渡は自分のDパットを取り出して、ルールブックを熟読し始める

 相変わらず、いちいちリアクションが大げさだ

 

「へぇ~こうやるのか

 っていうか、お前の話を信じるとペンデュラムカードはお前しか持っていないってことか?」

 

「そうかもな

 EM(エンタメイト)や他の魔術師もなっていたから一概に言えないけど。」

 

「それって、ずるじゃねぇか!!」

 

「そぉ~なんだよぉ~

 でさ、そいつらをお前に預けるからさ

 LDSにペンデュラムモンスターの開発をたのんでくれないか?」

 

「はぁ?なんでそんなこと

 お前が独占してりゃ、使いたい放題じゃねぇか?」

 

「お前だって、ズルって言ったじゃん

 それにペンデュラム召喚があったところで、必ず勝つわけじゃないし。

 それに遅かれ早かれ、LDSはペンデュラムモンスターを自力で開発するだろうしな。

 それに・・・」

 

「それに?」

 

「デュエルはフェアじゃなけりゃ、俺が楽しめないだろ?」

 

 俺のその言葉を聞いて、沢渡はぽかんとしている・・・なんだよ。

 

「お前って、やっぱり戦闘狂だな・・・」

 

「やっぱりって、なんだよ!?やっぱりって!」

 

「あっ!戦闘狂で思い出した!!

 お前、大会荒らしの賞金稼ぎ狂った道化師(マッドピエロ)だったらしいな!

 なんで黙っていたんだよ!!」

 

 やっぱりお前も聞いてくるか、柚子たちに散々質問攻めされたっつうのに・・・

 

「言う必要がなかったからな。

 まぁ、始めたきっかけはただの小遣い稼ぎさ。」

 

 そう、俺がこの世界で初めてぶち当たった壁は、カード物価の高さだ

 パックで当てる分には何の問題もないのだが

 シングル買いだと、どうしても10万単位で金が吹っ飛ぶのだ

 

 素性を隠した理由は始めた当時の年齢が低すぎたことと、

 榊遊勝の息子であるということを隠す為である、下らないことで悪目立ちしたくないし

 

「ここ三年は、生活費や塾の運営費にも当てているがな。」

 

 さすがに7年も続けていると、金があぶれてくるので

 余った金は潰れかけた遊勝塾の経営費や塾からの支給金と言うことで、間接的に家に入れている

 原作通りになるか判らないが、あの親父がいつ戻って来るかわからない以上、

 チャンピオン時代に稼いだ金と母さんの内職費だけで生活を続けていくのは厳しいのだ

 

「そ、そうか・・そうだったな・・・すまん。」

 

「いいんだよ、謝るなんてらしくない。」

 

「っと、話が変わるがなんでこのカードを俺に預けるんだよ?

 悪用されるとか考えなかったのかぁ?

 こんな激レアカード売っぱらっちまうかもしれないぜ~?」

 

 ひらひらカードで呷ってくる沢渡、確かにこいつならそういうことしそうだが・・・

 

「そいつら2枚だけなら、デッキに投入したところで大して役に立たないし、

 お前がそのカードを売ったとしてもLDSが血眼になって探し出すだろうさ。

 第一、俺がお前に『預けた』だけのカードを売ったら

 最終的に被害を被るのはお前だけさ、何の問題もない。」

 

「うっ!?それもそうか・・・

 はぁ~それならLDSから褒章貰った方がましだな、わかったよ。

 この俺様、沢渡シンゴが届けてやるよ!大船に乗ったつもりでいな!!はっはっはっ!!」

 

 うっ、とか褒章とか言わなきゃいいのに

 まぁ、カードだし乗っているのが泥船でも流れて勝手に岸につくだろう

 

――キーン、コーン、カーン、コーン

 

「やべ!もう予鈴じゃないか!?早く戻ろうぜ。」

 

「あぁ、あ~それとこいつは前金だ。」

 

 ランニングスタイルで走り出そうとする沢渡に、

 どうせ来るだろうと思って用意していた紙袋を渡す

 この世界に売っているとは思わなかったが・・・まぁ、甘党のこいつには丁度いい

 

「こ、これは・・・

 あのパティスリー・ターミナルで即売り切れの幻のプリン!トリシューラじゃないか!!」

 

 沢渡の目がこれでもかというばかりに輝いている、やっぱりツボだったか

 

「ちゃんと渡したと確認できれば

 マドルチェシャトーの『ティーチャーグラスフレ・メェプルと共に』も買ってきてやるよ。」

 

「マジか!!ヤッフッー!!

 この俺様に任せておきな!その代り約束忘れんなよー!!」

 

「はいはい、まったく調子の良いやつ・・・」


 レオ・コーポレーションの地下に造られた観測室

 そこでは先日観測された強力な召喚反応について、寝る間も惜しんで調べられていた

 さらに、遊矢がペンデュラムカードは

 LDSがデモ用として用意したものと発言してしまったため、相談所への問い合わせが殺到

 

 さらに世界中で所持していた一部のカードが

 ペンデュラムカードやペンデュラムに関する効果に書き換わる事案が発生

 結局答えられる場所もここしかないため、勤めの職員たちは表への対応にも追われていた

 

「社長、やはり、全サーバーデータのルールブックが改変されています。

 さらにEM(エンタメイト)や魔術師モンスターがペンデュラムモンスターに何枚か書き換わる他

 ペンデュラムと名のつくカードなどにペンデュラム召喚やペンデュラムカード、

 ペンデュラムスケール、ペンデュラムゾーンに関する効果が出現したとの報告も」

 

 サングラスに黒スーツの大男が

 室内でも何故かたなびいている長いマフラーを巻いた細身の青年に話しかける

 青年は赤いフレームのメガネに液晶の光を移しながら、分かっていたという風に応える

 その表情は口元を組んだ手で隠している為、うかがい知ることは出来ない

 

「やはりか・・・」

 

「はい、こんなことは初めてです。

 ディスクの個別用のものまでも・・・履歴すら残っていません

 それに所持していたカードがいきなり書き換わるなど、まるで・・・」

 

 LDSが管理するデュエルモンスターズの管理サーバー

 それは蟻の子1匹通さないとばかりの

 厳重な警備と何重もの鋼鉄の隔壁に隔てられ、

 数秒おきに書き換わる何十桁のパスワードと強力なファイアーウォールに守られたものであり、

 社長である青年すら立ち入ることが困難な代物である

 

 そんな管理サーバーに見られた異常

 多数の承認許可が必要なルールブックと登録されたカードデータ-の改変

 さらにデュエルディスクに登録されている個別のサーバーまでも改変を受けて、

 何千枚もある世界中のカードが書き換わる

 それは、まるで初めからそうであったかのように世界そのものが上書きされたかのようだ

 

「どういたしましょうか?」

 

「改変についてはそのままでいい

 それよりも、今は一刻も早くペンデュラムカードの開発に専念しろ。

 書き換わったカードについては、実験用のカードが流出してしまったとでもしておけ」

 

「はっ!

 ですが、実働データが少なすぎます

 開発にはかなりの時間を要するかと・・・

 問い合わせのあったカードを一時回収するにしても、回収しきるだけで一週間はかかるかと」

 

「・・・・・・」

 

 男の言葉を聞いて青年は無言で返す

 その威圧は屈強な大男も内心震え上がるほど恐ろしいものだったが、

 突如管制室に響き渡った能天気な声がそれをぶち壊す

 

「おーい!社長ー!!」

 

「沢渡か・・・」

 

「そう!レアなカードに愛されたグレートな俺様、沢渡シンゴの登場だ。」

 

 青年の威圧などなんのその

 自分のペースを崩さない沢渡にその場にいた全員はある意味尊敬の念を抱く

 

「何の用だ。」

 

「そら、社長に届けモンだ、ちゃんと渡したぜ?」

 

 沢渡の投げたカードを何の苦も無く後ろ手で受け取った青年は、一瞬目を見開く

 受け取ったカードは今回の事の発端である2枚のカード

 『星読みの魔術師』と『時読みの魔術師』のカードだったからだ

 

「どうしてこれを?」

 

「渡した奴曰く、ソイツをしばらく預けておくからペンデュラムカードを制作しろだとさ。

 あぁ、できたら真っ先にこの俺様に使わせろよ?

 この天~才デュエリストたる俺様にかかれば、どんなカードでも使いこなしてやるからよ!」

 

「ふふ・・・」

 

 沢渡が未だ自分のことをアピールし続けるが、

 彼は自身の手に握られた2枚のカードに視線を落とし薄く笑うばかりで聞いちゃいない

 

「やはり・・・榊遊矢・・・彼とは一度会ってみる必要があるようだな。」

 

 そう言い、彼『赤馬 零児』はメガネの位置を直し

 その奥の鋭い眼光をこの場に居ない道化師の少年へと向けるのであった

 




どこの世界でもマスコミてぇのはしつこいねぇ
スクープのために俺に血眼、ところが捕まらないんだなぁ~これが
なに、ちびっこたちがペンデュラム召喚が見たいって?
やれやれ、生徒たちにリクエストされたんじゃ、答えないわけにはいかないな
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『遊矢先生のパーフェクトペンデュラム教室』で、また会おうぜ

「CC」カード群の効果について

  • 制作したものをそのまま使用
  • 後付け効果を削除
  • メインに入るカードの後付け効果のみを削除
  • EXのカードのみをアニメ寄りにして使用
  • 完全にアニメカードそのまま

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