さらに融合次元編で出てきた敵が弱すぎる・・・そして少なすぎる。なので
―十乱風埠頭 早朝―
「ハァ、ハァ、これで最後~・・・」
「タァ~・・・まったくなんで俺たちがこんなことを・・・」
レンガ造りの街の港に不自然なほどに浮いている一隻の船
木造の帆船、ガレオン船と呼ばれるこの船の帆には堂々とドクロと交差された剣が描かれており、この船をほとんどの船がこう口にするだろう「海賊船」と
「そこ!文句言ってないで、さっさと出港準備をしろ!
じゃなきゃ、今日の食事もあのクソまずい缶詰だけになっちまうぞ!」
「「へぇ~い」」
「まったく・・・まぁ不満も仕方ないか。」
「副船長もお目付け役、ご苦労様ですね~」
「茶化すなよ。俺は早く帰って、この野菜で好物のシーザーサラダが食いたいだけだ。」
「ははっ、それはそれは。」
「まったく、食糧庫にゴキブリだの、鼠だの、青虫だの、衛生管理はどうなっているんだ!」
「いや、それがそれだけじゃねぇんでさ
なんでも、船が鯨にぶつかって壊されたり、この辺にいないはずの駄津が飛んできたり、エンジントラブルだったり・・・アカデミアに向かうと碌な目に合わないって最近の船乗りはアカデミア行きを渋るようになっちまったみたいで。」
「何?そんなのたまたま起こった事故だろ?」
「船乗りは信心深いからねぇ、それに」
「『海賊』が、出るみたいだぜ?」
「「船長!」」
紫のコートにモノクル、極めつけにドクロと羽飾りの付いた海賊帽、彼の名は『キャプテン・ソロ』
胸毛の生えた胸板やガラガラ声に割れた顎から中年と思われがちだが彼らと同年代の18歳の青年である。趣味はコスプレ
「船長、海賊って・・・」
「あくまで憶測だがな?ちょっと前からもぬけの殻の船が見つかるみてぇなんだ。
それもアカデミアへの物資を運んでいた小型船が。
アカデミアへの物資は質のいいものも多いからな。状況からそれを狙った海賊がいるって事になったらしいぜ?」
「それは・・・でもらしいって何です?まさか下手人が見つかってないわけじゃ。」
「それが見つかってねぇんだとよ。
どういうわけかレーダーにも不審船は見つからないし、見つかった船も計器類がみんな壊れていて手がかりが何もないと来ている。」
船員たちはソロの言葉に驚愕した。
アカデミアは間違いなくこの世界最高の組織だ。
そのアカデミアにまったく悟らせない海賊とはいったい何なのか?
それこそ幽霊が海賊をしているんじゃないかと、考えがオカルトな方に傾いてゆく
「ほら、さっさと帆を張れ!出航だ、野郎ども!!」
ソロは船員たちの不安を吹っ飛ばすように声を上げる。
どんな海賊が来ようともこの海賊船(モーターボート)に乗った自分を含めた精鋭たちなら任務を全うできると信じている。
これが12時間後に海上でもぬけの殻のこの船が見つかる前の光景である。
「これで海賊の噂は本格化するなぁ。」
「あぁ、他の海運業者にも広がってアカデミア周辺海域に近づく船はほぼなくなるだろう。」
融合次元に来て一か月、零児達がやっていたネットによる情報操作、物資や補給に携わる業者、職人への根回しに加え、迷信や噂、ゲン担ぎ等によりアカデミアに向かう船舶を減少させた。
転送だけはどうしようもないが原理的に頻繁に行えるものじゃないし、外界とのアクセスが減り食料自給ができないあの島は異世界編も同然だろう。
「君はエクシーズ次元で僕たちと戦っている間もこのようなことを画策していたのか・・・」
「上手くいっているのは社長たちのおかげだがな。
今頃、教育中の奴らは不安と不満によるストレスでハゲそうになってるんじゃないか?」
尤も俺は孤島のアカデミアなのだから兵糧攻めを候補の一部としていただけだが、現地で集めた情報をもとに会社まで買って本格的にやったのは零児たちだ。
なんだレッドホース海運って・・・これで赤馬 零王曰く経営者二流なんだよなぁ~まぁ確かにあの「社長」に比べたら二流以下の凡骨社長だろうが
「おい!榊遊矢!!俺たちはいつまでこのクッソ暑い島でキャンプ生活なんだよ!?」
「そうだぜ!!俺は一にも早くリンを助けてぇっていうのによ!!」
騒がしい沢渡とユーゴに交じって、黒咲も無言で睨んでくるが
「まぁまぁそう急かすなって、今だってエドとデニスを特攻させて囮にすれば生徒を誘導できるかもしれないが。」
「おい。」
「ハハ、相変わらずひどい扱いだ。」
「それ以上に怯えたガキをおびき寄せるのに、いい囮ができそうなんだ。」
―ガヤガヤ
その日、月に一度のアカデミア行の巨大クルージング船の前はごった返していた。
普段は高額のチケットにより、富裕層のアカデミア生徒の親くらいしか乗船しないこの船はその巨大な船体もあって満席になることはまずない。
だが、この日は定員を裕に超え、座る余裕もないほどに乗船しようとしていた。
乗り込む人々の顔は皆険しい。
それはエクシーズ次元でのアカデミアの大敗の噂だ。
正式な発表があるわけではないが、連日のように報道されていたアカデミア大勝の報道がぱったりと途切れ、以前アカデミアに様子を見に行った親たちが皆暗い表情だったとなれば、他の親たちの心配も爆発することだろう。
「子を思う親の気持ちはどこも同じか・・・」
「親を欲する子の気持ちもな・・・されど我らは忍び。」
「うむ、与えられた役目を全うするのみ!」
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出航から数時間、クルーズ船は静かにアカデミアへと近づいていた。
「陽動、人質救出も大事だが私はアカデミアそのものの、機能を停止させる案を提案したい。」
「なんだよ社長、アカデミアそのものの機能って?」
「アカデミア出身の者たちから話を聞く限り、アカデミアの技術のキモはリアルソリッドビジョンだ。」
「まぁ当然だな。あちらの首領はそれの開発者なのだから。」
ランサーズたちが遭遇したアカデミアの技術は軍事転用されたデュエルモンスターズの他
副産物を利用した洗脳、転移技術、精霊と人の融合など多岐にわたるが、その大本はその方面に縁がない権現坂でもわかるほど明らかだ。
「あ~なるほど、電力か・・・」
「そうだ。リアルソリッドビジョンには膨大な電力を使用する。」
「いや、俺たちはこのちっせぇ電池使ってるじゃねぇか。」
「沢渡、この電池、すごい電気ため込んでるんだぞ?
それにデュエルでまともに運用できているのはリアルソリッドビジョンの相乗効果によるものだし。」
「そう、四六時中、リアルソリッドビジョンが展開されているのなら、それに伴う膨大な電力を消費しているはずだ。それを断つ!」
「うむ、だがエド殿、デニス殿・・・セレナ殿もだが発電施設の場所などわかるのか?
この見取り図には書いてなさそうでござるが?」
日影が話を元アカデミアの3人に振るが
「ん~・・・それはねぇ~・・・」「緊急時の非常電源なら説明を受けているが・・・」「わからんな!!」
「いや、逆を言えば3人が知らない場所に発電施設があるということだ。
そうなると・・・ここか?だがこんなところ・・・」
遊矢は書かれた見取り図の中でひときわ大きな空間を示す。
「中央の塔のちょうど中心でござるな。」
「あぁ、こんな何もない島で何で発電しているのかわからないが。」
「一応、土地柄、地熱発電ができそうでござるが?」
「いや、地熱発電程度では常時、リアルソリッドビジョンを展開することは不安なエネルギー量だ。
それに地熱発電なら施設は地下、この訓練施設の更に下になるだろう。
ふむ・・・そこも攻撃ポイントにした方がいいか?」
「それならば、一の策を終えた後の我らが探ろう。」
「うむ、闇雲ほどではないにしても、事が始まれば急を要するでござるからな。」
作戦が固まっていく中、遊矢は考える
大きな川がなく、常に風が吹くわけでもなく、南寄りの島とはいえ日照時間が長いわけでもない。
タンクのような施設もなく、重要人物がいる建物の中心部である点から相当安全な発電機だということ
「いや、まさか・・・」
「どうしたの遊矢?」
「いや、アカデミアがシンクロ次元にいた理由・・・・零児、ここにあるであろう発電機には俺が行こう。
予想通りなら・・・止められるのは俺だけかもしれん。」
「・・・・・・なるほど、確かにその可能性はあるな。
それで、潜入方法だが・・・」
「まずは僕らが囮として裏手から侵入して非常電源を目指すっと。」
「仕方ないとはいえ、命綱なしで崖上りとはな。」
「はは、まぁあの最低の爆撃に巻き込まれる可能性がないだけましじゃない?」
エドとデニスが空を見上げるとはるか上空に黒い影がぽつんと存在している。
それは黒咲の持つ
爆撃機のように翼に弾薬を備えることができるこのモンスターのコンテナには今あるものが詰め込まれている。
『・・・・・・うん、黒咲、そのスピードを維持して前進、その2分後に投下して。』
「・・・・・・解った。」
アカデミアの地形はかつてここにあったセレナが過ごしていた村では岩山から流れ出る水と海から齎される海産物によってほそぼそと生活していたが、今は岩山そのものが中世の城や砦を思わせるアカデミアの本校となり、砂浜だった場所は鋼鉄によって埋め立て増設された港となっている。
そして今日、普段なら厳しい訓練や授業を行っている生徒たちはこの鋼鉄の港から海を臨んでいた。
「私のお母さんも来てくれるんだって!」
「俺の親父も!普段なら馬鹿野郎がって、蹴とばしてくるくせによ!」
負け続けのアカデミア、教師たちは口をそろえてそんなことはないというが、アカデミアの中でも成績優秀者が集められエクシーズ次元に投入されたが、誰も戻ることがなかった。
そうなれば、どんな馬鹿でも戦況というものが理解できるだろう。
そうなれば、不安になるだろう。
不安になれば、親が恋しくなるだろう。
「おい見ろよ!!来たぜぇ!!」
誰が言ったのか、その声に従いガヤガヤとしていた生徒たちは皆静まり海を見た。
そこに浮かぶ紫がかった鋼鉄のクルーズ船、それは間違いなく生徒たちの親が乗っているはずの船
海を堂々と力強く進むその船は、心がすり減った生徒たちのまさに希望を乗せたノアの箱舟
港に集まった生徒たちはまだ聞こえるはずではない距離なのにもかかわらず声を上げたり、手を振ったりして船を出迎える。
この場だけは彼らは他世界を侵略する兵士ではなく、無垢な子供でしかなかった、ゆえに
――ドオオオオオォォォォォォオオオオオン!!
――!!!!?
突然、船から吹き出た爆炎に一瞬、思考が停止した。
遠目からもわかるほど、鋼鉄の船は炎と煙を上げている。その現実に数秒ののちに理解が及んだ彼らは
――きゃああああああああぁああああああ!!
「お父さん!!お母さん!!」
「おい!!誰か助けに!!飛べるモンスターを持っている奴は!?」
「んなカードを持っている奴らは皆エクシーズだよ!!」
彼らが主に使う「アンティーク・ギア」というカードカテゴリーの中でも飛行能力を持っているものは数体いるがそれを使用できるのは成績優秀者のみ
教師たちがガス抜きしないと何を仕出かすかわからないと、この場に来ることを許可した程、幼稚な思考しかできない彼ら彼女らは肉親を助け出したい気持ちはあるものの、何もできないことに絶望し、やがてその足を折って嗚咽を漏らすことしかできなくなる。
抱いた希望が大きければ大きいほど、それを奪われたときの絶望も大きくなるのだ
――ヒュウウウウウゥゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥ・・・・・
その嗚咽に混じって空から空気を割く音が響き渡る。
突然だがシュールストレミングという缶詰をご存じだろうか?
スウェーデンで主に食べられている塩水漬けの魚の缶詰であるが、特徴として刺激臭のプロピオン酸、腐った卵のような硫化水素、腐ったバターのような酪酸、酸っぱい臭いの酢酸等を発生させる細菌が発酵を促す為、世界一臭いと言われるほど強烈な臭いを放つ缶詰である。
その背景として、土地柄、塩を節約しなければならず塩蔵ではなく塩水に漬けたということが伝えられるが、その扱いによっては軍隊が出動するほどの事態になるほどだという。
――パンッ!パンッ!パパパパンッ!!
その原因は缶詰でありながら中の発酵を促す細菌が生きており、放置しすぎると勝手に爆発してしまうということである。
もし、そんな危険な缶詰を気圧の低い環境に持っていき、地上に落としたらどうなるか・・・
この缶詰は船でのみ輸出入が認められているのはそういうことである。
――ぎゃあああああああああああああああああ!!!!!
絶望の中降り注いだのは、彼らの心を代弁するような雨ではなかった。
異様に臭い、非常に臭い!ものすごく臭い!!
生ごみを直射日光の下で数日間放置したような異様な臭さを孕んだ。ドロドロに溶けた魚介類の断片が混じった汚水である。
――うっ!?エエェエェェェエエエエエェェッェ・・・・・
――ゴフォ!!フォエェェエェェエ・・・
絶望の涙は今や刺激臭と運悪く濃い塩水が目に入ってしまったからとなり、嘔吐による嗚咽、引き付け、中には気絶までしてしまう生徒もいた。
それもそのはず、非常に臭いとはいえ飲食物である本来のシュールストレミングと違い、降ってきたのは調理の際に出た魚の内臓や、ダイオウイカやエイなどのサメ類等、飲食に適さないが釣れてしまったものを南の島で適当に腐らせた正真正銘の、最臭兵器である。
そして、そんな異様な事態に見舞われた彼らを待つわけもなく、というか何故か船は速度を上げてアカデミアに向かって一直線に向かっている。
幸いにも多くの生徒が集まっていたエリアからズレてはいたが、炎上中のクルーズ船はその質量をいかんなく港にぶつけ、砕きながら乗り上げ最後には横転
さらには発酵によって生まれたガスに引火でもしたのか、火は壁のようになって港と校舎を隔ててしまった。
「ヒュー!間一髪だったな!」
「バッカヤロー!!言ってる場合か!!この!!危うく死ぬところだったじゃねぇか!!」
隔てられた内側で2人のアカデミア生が言いあっている。
それは明らかにこのような事態になるであろう事が解っていたような口ぶりだ。
「樽で海渡るとか、わけわかんねぇことされた上にこれかよ・・・」
「柚子が海流を計算してくれたから、ちゃんと着いたろ?
生徒に混じっての第一声で、船の方に意識向けさせたのナイスだったぜ、沢渡。」
「ふん!で、俺たちはうまくいったけどよ、他の奴らは大丈夫なのか?特に、人質組は。」
「その人質組の為にも、こんなところでだべってないでさっさと行くぞ。
今頃は海の上だろうからな。」
アカデミアの東西の海岸線には螺旋状の階段が特徴的な巨大な鉄塔が存在する。
この塔こそがエクシーズ次元とシンクロ次元から連れ去われた『黒咲 瑠璃』『リン』の両名がそれぞれに捕らわれている場所。
その構造は階段を除けば最上階の監禁部屋だけというシンプルな構造だ。
「ランクアップ・エクシーズチェンジ!!現れろ!
爆撃を終えた黒咲はすぐさま転身し、
その脇には合流したダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンとクリアウィング・シンクロ・ドラゴンが主人と赤馬兄弟、権現坂を乗せて再度アカデミアへ向かう
それは次なる攻撃の為?否
――ガシッ!!
「よし、行け!!」
「応!!行くぞ!スサノ―O!!」
スサノ―O「オオオオオオォォオオオオオオ!!!」
アーセナル・ファルコンが西の塔の最上階をつかむと、ダーク・リベリオンで待機していた権現坂が塔の上部をスサノ―Oで切断する。
そのすべての素材を鋼鉄で作られた塔は切断されても崩壊することなく形を保ち、アーセナル・ファルコンは塔の上部ごと人質を持ち去った。
なお、この塔の番人をしていたコスプレ好きな『ディアナ』という女性は例の汁を被った上に腰を抜かした。
「・・・よし、次だ!」
次の標的は反対の海岸線に建つ東の塔
番人である『アポロ』というコスプレが趣味の大男は西の塔の惨状を目にしたが、立て続けの異常事態に頭が回っていない。
アーセナル・ファルコンが塔の上部を掴むと今度はクリアウィングの上から円盤が出撃する。
「よっしゃああぁぁ!!頼んだぜぇ!零羅!!」
「零羅、行けるな?」
「うん、大丈夫・・・行こう、ウォーター・ソード。」
――ビュアアアアァァァァアアア!!
CCCウォーター・ソード、金属の円盤に剣が嵌った奇妙なこのモンスターは高速で撃ちだした水であらゆるものを切り裂くことができる。
それはもちろんただ巨大なだけのこの塔だって変わらない。
――キイィイン!
西の塔と同じく人質が収容されている最上階のみをアーセナル・ファルコンが2体のドラゴンと共に持ち去っていく。
鳥籠の中の小鳥たちは無事だろうか?否、その身の奥に蠢くものがいることだろう。
「上手くいったか・・・だが、ここからは彼らの戦い、そして、私の戦いの時だ・・・!!」
青年は弱さに蓋をする。賽は投げられたのだ、もう戻ることはできない。
「兄さん・・・・」
少年は強くなりたいと願う。もう誰にも奪わせないために
う~む・・・やはり、人間というのは弱いですな。
感覚、感情などというものにここまで乱されるとは・・・あなたもそう思いませんか?
次回 遊戯王ARC-V Rーe:birth
『汚される魂』
誇りだ。正義だなど、本当に下らぬことで身を滅ぼしたものですが、その強さは私が使ってあげましょう。
「CC」カード群の効果について
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制作したものをそのまま使用
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後付け効果を削除
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メインに入るカードの後付け効果のみを削除
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EXのカードのみをアニメ寄りにして使用
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完全にアニメカードそのまま