進撃の飯屋   作:チェリオ

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第35食 ナポリタン焼きそばとバター炒め

 活動報告会の準備を始めて二週間。

 素人集団だった調理班はそれなりに育ち、エレンを始めとした一部は総司に認められメニューを開示されて調理を行うまでに至った。そうなると各自で役割が決まり出し、あとは当日まで技術を磨くのみ。

 講義や実習がある日以外は展示物の制作もあるので掛かりっきりと言う訳にはいかないが、順調に準備は整いつつある。

 休日であるが五回目の講義が行われる予定だった今日は、数名を除いて急遽中止となって休みとなった。理由は露店で着用する制服が完成したので試着して欲しいので、時間や都合によりこの日では無いといけないとの事だ。

 そう言う訳でエレン達常連メンバーは食事処ナオに訪れていた。

 常連メンバーだけなのはこれ以上増やして混雑するのは嫌だなと言う団長に兵長を含めた調査兵団常連全員の総意で知っているものだけとなった結果だ。

 

 「本当にこれでいいのかよ」

 

 着方を間違っている不安はない。

 自分に似合っていないという感情でもない。

 エレンは渡された衣装を着てまず思ったのが場違いという印象だ。

 上から下まで真っ白のスーツ。

 これで調理を行えば確実に汚れが付着して目立つ。担当している料理に赤いソースを使うから猶更。

 

 「着ましたけど」

 

 首を傾げながら個室より出てきたエレンは制服の制作者である飯田 総司の従妹である飯田 彩華に試着した事を告げる。

 なんでも彼女は総司の依頼で制服の制作をしたらしく、元々個人で衣装制作(趣味のコスプレ制作)していた事と安く生地も入手出来る伝手(向こうの生地)があるとか。

 

 「やっぱり元が良いから似合うねぇ」

 

 褒めてくれるのは嬉しいが、なんとも妙な感じだ。

 微妙に総司さんのような雰囲気がありながら、言動から感情を表しやすい表情などまったく似ていない。本当に同じ血筋なのかと疑ってしまう違和感。

 それは皆が感じ取っていることなのであえて言いはしないが。

 

 「馬子にも衣装ってやつじゃないのか?」

 「うるせぇ男女」

 「喧嘩しちゃだめだよ。本番前に服を駄目にしたら自腹の出費が待ってんだよ」

 

 売り言葉に買い言葉。

 ユミルの一言に反応して返したら、懐に響く一言を叩きつけられて黙るしかなかった。

 普通より安いとは聞いたけどスーツ一着を容易に支払う程懐は豊かではない。

 当然ながら食事処ナオは休みだがここで暮らしているユミルとアニは居り、ユミルはファーラン達と共に露店をやるらしいので調査兵団とは違う制服を試着していた。

 燕の尻尾を思わせる燕尾服にスラっとしたズボン、懐中時計や白手袋を着用している姿は貴族達が雇っている執事のようだ。

 何故男装させられているかと言うとファーランも含めて似合いそうだったのと、ピンクや黄色の鮮やかでフリフリレールで飾ったドレスや身体のラインがはっきりし太ももから足が覗くように側面が開いたスカートが特徴的なチャイナドレスを見せたところ、初めて出会ったにも関わらずにアニが着れるかと投げ飛ばしたのが原因なんだと。

 総司が見ていたらなんて言っていたか気になるが、リーブス商会やエルヴィン団長との打ち合わせがあって出掛けているので見れないのが残念でならない。

 

 「なんだか着慣れないね」

 「そうか?中々似合っていると思うがな」

 

 そんなこんなしているとライナーとベルトルトが出てきた。

 二人は俺と同じ調理担当……の筈なのだが制服が違うのだが!

 コックコートにコック帽、エプロンなど如何にもシェフらしい格好となっている。しかも長袖タイプのコックコートは調査兵団のジャケットを模しており、背中には自由の翼が描かれていた。

 

 「ヒストリアが着ると華やかに見えるな」

 「そう。ありがとう」

 

 ヒストリアが試着している女性用の制服は男性用とほとんど変わりないが、腰に巻いているエプロンが足首辺りまであるロングタイプから膝より上までのショートタイプへと変更されているぐらい。

 内心バクバクと心臓を高鳴らせながら表情には出さなかったライナーの言葉にヒストリアは微笑む。

 向けられた微笑を真正面から受け止め、結婚しよと想いを脳内で抱いているとライナーを押しのけてユミルがヒストリアに近づく。

 

 「いやぁ、ヒストリアは本当に何を着ても映えるな」

 「男装しているユミル、カッコイイね」

 「そうだろ」

 

 褒めに行ったのに逆に褒められて上機嫌なユミルにアニは何してるんだかと眺めるが、それ以上に試着したは良いが彩華より寿司を受け取るや否や店内の端っこでゆっくりと味わいながら笑みを浮かべているファーランは如何なものか…。

 

 「お待たせ」

 「どうかな…似合ってるかな?」

 

 今度はミーナとクリスタのフロア組だなと振り返った矢先、ユミルとライナーは目を見開いたまま時が止まったかのように膠着した。

 フロア組の制服も調査兵団の制服を模していたが厨房組と違って簡素ながらもふりふりのレースや花飾りなどで装飾されており、その上で動き易さを求めたメイド服となっていた。

 特に目を引いたのが短めのスカートに二―ソックスによって隠されていない太ももだろうか。

 ハッと我に返った二人は感想を述べる前に彩華に一言申す。

 

 「絶対領域は今でも健在だね」

 「おい!さすがに露出させ過ぎではないのか?」

 「こいつの言うとおりだ。クリスタの生足をそう易々晒すなんて」

 「そう言うんならクリスタちゃんの太ももガン見するの止めてから言いなよ」

 

 目はクリスタ、言葉は彩華に向けた二人は言われてからようやく目を合わせて抗議。

 しかしながら一番注視していた二名を例にメイド服の客引きの意味合いを唱えられてあっさり撃沈。

 

 「にしてもそれ寒そうだな」

 「まぁ、冬場は寒そうだけど別に大丈夫でしょ。それよりエレンは何か言う事ないの?」

 「なにが?」

 「…これだからエレンは。ミカサにはそういう風にしちゃだめだからね」

 「はぁ!?なんでミカサが出てくんだよ」

 

 ミーナに呆れられたエレンは意味が分からないようだが、その場に居た全員が満場一致でエレンの鈍感さにため息を漏らす。

 

 「ちょっと!これどういう事!?」

 

 ようやく出てきたアルミンの衣装(・・)に皆が注目し、何名かが目を輝かせた。

 黒いウサ耳がついたカチューシャ。

 胸元や肩や背中を露出させ、腰のあたりにウサギの尻尾を模した毛玉がある上着。

 ひらひらとした黄色いスカート。

 ヒールのある黄色い靴に黒の網タイツ。

 女性ものと言わんばかりの衣装に口火を切ったのは目を輝かせたクリスタだった。

 

 「アルミン可愛い!」

 「そう言われても嬉しくないよ!?」

 「似合っているわね」

 「似合ってるな」

 「うん、似合ってるよ」

 「いやいや、似合ってないって!」

 

 クリスタを筆頭にヒストリアにライナーにベルトルトがアルミンを褒めるがアルミンは慌てて否定。

 幼馴染のエレンと言えば助け舟を出す訳でも褒める訳でもなくただ「否定する割にはちゃんと着るんだな」と思いながら眺めていた。

 恥ずかしがりながら視線を彩華に向けるアルミンだが…。

 

 「写真見た時から一番似合うと思って」

 

 自信満々に発せられた言葉にバッサリ。

 周りの評価も相まって認めざるを得なく、アルミンは苦笑いを浮かべるしかなかった。

 その前に一つ聞きたいのだがフロア担当の制服ってアレなのか。それともアルミンだけなのか。

 これをハッキリさせなければ露店は大変なことになりそうだなとエレンは思う。

 

 「ところでお前だけ違わないか?」

 「あぁ、俺もずっと思ってたんだよそれ」

 

 ライナーの一言で自身の服装を再確認する。

 食事処ナオの従業員メンバーは執事をイメージした制服で、アルミンを除く調査兵団メンバーはメイドやらコックの制服を調査兵団様にアレンジした物。なのに俺だけ何故か純白のスーツ。ただでさえ浮いているというのにさらに目立ってしまっている。

 何か意図があるのだけど視線を向けても何故かニヤつくばかり。

 

 「あ、あの!」

 

 不意に届いた声にミカサが出てきていない事を思い出しながら振り向くと、開いた扉より頭だけ覗かせているミカサの姿があった。それも顔を赤らめて恥ずかしそうに。

 サイズが合わなかったのか、着方が分からなかったのか。

 どちらにしても男性のエレンはどうしようもない。

 理解が及ばず寄ろうとしたエレンをアルミンとクリスタが止める羽目になり、その間に彩華が楽しそうな笑みを浮かべて通り過ぎて行く。

 助けが来たと言わんばかりの安堵の表情も束の間、ミカサは彩華に背を押されて急激に焦り始める。

 

 「待って!」

 「隠れちゃってどうしたのかな?さぁさぁ」

 「お、押さないで!……あ」

 

 背中を押されてミカサが姿を晒し、クリスタの時のように歓声が漏れる事もエレンの時のように首を傾げる事もなかったが、その場の全員が息を呑んで見惚れた。

 ふわりと柔らかく、過度な装飾は一切ない清楚感漂う純白のドレス。

 シワも染みも一切見られず、細部に至るまで無駄はない仕上がり。

 思わずエレンも見惚れ、はっきりと認識したミカサの頬がさらに赤らむ。

 

 「こういう時に言う言葉があるんじゃない?」

 

 いつの間にか横に立った彩華に肘でちょんちょんと突かれながら言われた一言に眉を潜めた。

 なんで俺がと口走りそうになった口に軽く人差し指を当てられて黙らされる。

 

 「誰でも良い訳じゃないの。彼女は君に言われたがってる。君はあの姿の彼女を見てどう思ったの」

 

 いつものエレンなら噛みついていただろう。

 ぎゃんぎゃんと吠える様に叫びながら抗議の言葉を並べていただろう。

 けど、先ほどと異なり優し気な眼差しを浮かべながら微笑む彩華に、エレンは面食らっていつもの調子が出ずに真剣に考え込む。

 

 「ほら、素直に言ってあげて。男の子でしょ」

 

 トンと背中を押されて一歩前に出たエレンは一瞬よろめいたがすぐさま体勢を立て直し、ミカサの前で立ち止まってしまった。

 目と目が合い、なんとも気まずい空気が流れる。

 どういえば良いのか悩みながら、照れ臭くなり頬を掻きながらそっぽを向く。

 

 「に、似合ってるぞ。その…綺麗だ……」

 「……うん…ありがとう」

 

 ポツリポツリと漏れる言葉にミカサもエレンも耳まで真っ赤に染め上げ、先の表情は何処に行ったのやら彩華はニヤケながら写真を一枚撮った。

 各々違う表情を浮かべながら見守る中でエレンは、心の中で巻き上がる今までに感じたことの無い感情に戸惑っていた。

 

 

 

 

 

 

 嬉恥ずかしい思いをしたミカサは着替えを終えて店内に戻る。

 戻るとほとんどが席に付いて厨房の方へ視線を向けており、同じく視線を向けると食事処ナオのエプロンを借り、昼食を作るエレンの姿があった。

 フロア組であるミカサは露店で提供する料理がどんなものか知らない。いや、フロア組というよりも総司が合格を出した厨房組の一部しか知らされていない。

 今回提供する料理は利権が絡んでいる。

 総司が調査兵団から依頼されて作った料理はタルタルソースの時と同じくこのエルディアには存在しなかったもので、調査兵団は新たな財源確保のために販売することを考えた。しかしながら戦闘技術においては最強の彼ら彼女らでも、商いとなると素人である。そこで総司が仲介してリーブス商会を巻き込む事に。会長のディモ・リーブスは総司の話に乗り、調査兵団が特許を取得してリーブス商会が売り上げの何割かを調査兵団に収める代わりに販売権を貰う契約を交わした。

 この件の発端である総司が特許の取得をするべきだろうと話が上がったのだが、自分が考えたものではないので断ろうと取得は辞退して調査兵団に丸投げした。それではいけないとディモ・リーブスとエルヴィン・スミス両名の説得の結果、開発したとしてそれなりのお金を強引に渡され、渡された総司はそのお金をどうするべきかと頭を悩ませているとか…。

 話が逸れてしまったが料理から素材まで一切の公表を特許申請中の今は情報の漏洩を恐れ、報告会で調理を任される人物以外の公表は控えているのだ。

 

 けれども調理する側としては自分達以外の反応が欲しく、ならばと情報を漏らさない事を条件に試着メンバーに食べて貰う事となり、エレンを中心とする調理班が準備を行っているところである。

 慣れた手つきでライナー、ベルトルト、ヒストリアが玉ねぎをくし切りに、人参とピーマンを細切りにしてゆく。

 エレンはと言うとコンロと言う簡単に火を起こす機器の上に鉄板を置き熱し始め、鉄ヘラと今回の料理の為に造られたトマトを多めに擦り下ろしたニンニクに林檎に生姜に玉葱に人参、セロリや香辛料を入れて煮た特製ソース(ケチャップとウスターソースを混ぜた物)などを用意していた。

 その中に見慣れない麺が混ざっていた事に気が付いた。

 くねくねと捻じれ柔らかそうなことからパスタと違って茹でる訳でもなさそうな変わった麺。

 

 「エレン。その麺はなに?」

 「あぁ、なんでもヤキソバっていうリーブス商会に特注で作って貰った麺らしい」

 

 わざわざ作って貰ったという事は何か理由があるんだろうなと思っていると、エレンの隣にもう一個鉄板を用意していた彩華も料理を始めた。

 彩華が厨房に立ったことでファーランの瞳が輝く。

 

 「あー、先に行っておくけど寿司ではないよ」

 「――――ッ!?」

 

 がっくりと肩を落とし落胆している様子に逆に寿司という食べ物が何なのか気になるところではあるが、調理に入るので後でも良いかと聞きはしない。

 もし聞き忘れたとしても後で総司さんに聞けばいい訳だしね。

 

 「生魚嫌いな子が多いって聞いてたからこっちを用意したのさ」

 

 取り出したのはイカにタコにホタテにほうれん草にコーン(トウモロコシ)と言った海の幸と野菜類。

 ここにニコロが居たら海鮮類に反応していただろう。

 本日アニを除くマーレ組従業員は休みである。

 元々は休みに講義などを充てていたが、今日は試着会と言う事で休日となったのだ。

 だったらとマルセルは借りてる宿屋で身体を休め、ニコロもマルセルとは別の格安の宿で料理研究を行うと店には来ていないのだ。

 あと、ただ飯が食べられると聞けば必ず来る筈の特別枠のサシャが居ないのは、ニコロが休日などに料理研究をすると聞き、試食要員はいりませんかとそちらに行ったためだ。今頃はニコロが作った料理にがっつり喰いついている頃合いだろう。

 本人は男性の家に上がる事を然程意識していないようだったが、ミーナにしてみれば良い話題を見つけたと言わんばかりにどうだったかを聞くのを楽しみにしている。勿論両方からである。

 

 「なにを作るの?」

 「文字通りバター炒めを」

 

 食事処ナオでもあまり使わない知らない食材(海鮮系食材)に反応したアニが問うが困ったように苦笑いを返し、頬をポリポリと掻きながら申し訳なさそうに返す。

 

 「総兄みたいに凝り固まった料理馬鹿じゃないから簡単な物をちょっとね。楽して美味しいのが一番って考えだからさ。無論寿司職人だから寿司に関しては本気だけど」

 

 そう言って彩華はぼとりとバターを鉄板の上に落す。

 じゅわじゅわと固まっていたバターが溶けだして鉄板を濡らしながら、バターの香りを店内に放っていく。

 溶けだしている間にイカにタコを一口大に、ほうれん草はざく切りに切り分ける。

 バターの上にホタテ、イカ、タコの海鮮類を放り込んで炒め、バターを絡める様に混ぜながら塩コショウを振るう。

 そこにコーンとほうれん草を入れてしんなりする程度に熱し、タラリと醤油を垂らして軽く混ぜる。

 バターに焦げた醤油の香りが混ざってなんとも言えない香ばしさが漂う。

 

 彩華のバター炒めに空腹感を刺激されている中でエレンも調理を開始し、鉄板にオリーブオイルを引いて玉葱、人参にピーマンの順番にしんなりとするまで炒め始める。

 熱が通ったところで焼きそば麺を入れ解し、特製ソースを惜しみなく掛ける。後は混ぜるだけなのだがエレンは鉄ヘラを使って腕を大きく動かして、大仰な動作で混ぜ始めた。

 調理の実習を開始してエレンがよく腕を痛めていたのを知っていたミカサは表情を歪める。

 あれだけ無駄な動作をしていては腕が痛むのは道理。

 見ていられなくなったミカサはエレンに言うべきだと思う。

 

 「エレン。貴方の混ぜ方は無駄が多すぎる。それでは腕を痛める」

 「良いんだよこれで」

 

 いつものように反発される覚悟で口にしただけにこの自信満々に答えられた事に面食らった。

 ニカリと笑ったエレンはそのままの動作で混ぜ続ける。

 するとふわりと空腹感を誘う香りが広がった事に気付いて、自信満々に答えられた意味を知った。

 ソースが熱せられた鉄板に触れる事で湯気となり、大きくエレンが混ぜる事で湯気が風の流れで周りに香りと共に吐き散らされ、それを嗅いだ人間はソースの香ばしくもトマトを連想させる匂いに興味をそそられて振り向く。

 昼食時などに露店でこれをやられれば周囲の人間は足を止めるだろう。

 

 「ほい、出来たぞ」

 

 出来上がって皿に盛り分けられた料理をクリスタにミーナ、ミサカのフロア組が配っていく。

 二種類の料理が並び、全員が席に付く。

 

 「そういえばこの料理ってなんていうんだ?」

 「これか。ナポリタン焼きそばっていうらしいぞ」

 「ねぇ、冷めないうちに食べましょうよ」

 「それもそうだな」

 

 ナポリタン…。

 焼きそば同様聞きなれない名前だ。

 総司さんは色々な料理を知っているなぁと想いながらミサカはフォークでエレンが作ったナポリタン焼きそばを巻取って口へと運ぶ。

 含むとべっとりと濃厚で甘味の有るトマトの風味に深いコクのソースと硬さは感じずもっちりと柔らかい焼きそば麺の食感に襲われる。

 何処か子供っぽさを感じる味わいだけども妙に癖になる。

 しんなりとした玉葱を噛み締めれば甘味が滲み、ピーマンが苦みを放って複雑な味わいをもたらす。

 ゴクリと一口目を呑み込んで美味しいと言葉を漏らし、二口目を巻き取って運ぶ。

 始めた時もそうだったが、この捻じれた麺にソースが良く絡まるのでしっかりとソースを味わう事が出来る。

 エレンが作ったという事もあってより美味しく感じ、ナポリタン焼きそばばかり食べてバター炒めに手を付けてなかったことを思い出して彩華のバター炒めを頬張る。

 イカやタコの強い弾力のある歯応えに噛めばほろりと解けながら噛み締めれば旨味が溢れるホタテ、しんなりと柔らかいほうれん草に噛めばプチリと潰れて甘味が弾け出すコーン。

 単体でも美味いのが解かる食材達がバターがしっかり浸み込んで香ばしさと塩気をもたらす。

 バターで炒めただけだというのにこの美味しさは何なのだろう。

 パクパク食べ、再びエレンのナポリタン焼きそばを食べる。

 塩気が強かった分、ナポリタンの甘さがより強く感じてこの組み合わせは悪くないと思う。

 

 「うまっ!」

 「本当に美味しいよエレン」

 

 皆がエレンや彩華が作った料理を食べては感想を口にする。

 美味しそうに食べては笑みを零す様子を目にしたエレンは微笑を浮かべながら軽く顔を伏せた。

 

 「どうしたのエレン?」 

 

 嬉しくなかったのだろうかと思い聞いてみるとなんとも困った表情を浮かべられた。

 言葉にし辛いのかし難いのか解らない。

 ただ待つしかないミカサの視線を受け、エレンは重くなった口をようよう開いた。

 

 「…いや、なんていうか。こういうのも良いなって思ってさ」

 

 何処か照れたようで嬉しそうにエレンはそう語った。

 その笑みを見ているとポカポカと胸の辺りが温かくなる。

 感じた幸せと一緒にナポリタン焼きそばを噛み締め、ミカサはこんな日が続けばいいなと思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 食事処ナオより帰路についた彩華は少し考えていた。

 総兄よりコスプレ制作を受けた時は驚いたものだ。

 いつも寿司の出来を見て貰っているのと、総兄から頼られる事自体少ないので嬉しくて二つ返事で受けたけど、今思い返すと変な依頼である。

 スリーサイズに各部の寸法を手書きで書いた資料に総兄が撮った写真で作り、本人と会うのは難しいので極力避けてくれと言われた。

 資料として渡された彼らの制服と言う茶色いジャケットはどう見ても普段着ではなくコスプレの類。

 それも普通に完成度は高いことは見てみれば分かる。

 腕の良い作り手が居るのに何故私に頼んだのか。

 どうしてコスプレイヤーらしき外国人少年・少女達とそういう趣味の無い総兄が仲良くなったか。

 考えれば考えるほど疑問が出て来る。

 ………が…。

 

 「ま、良いか」

 

 出てきた疑問を面倒臭く思ってどうでも良いかと一言でばっさり切り捨て、彩華は帰って残っている数着を仕上げてしまおうと帰るのだ。




・食事処ナオに飾られた写真
 
 飯田 総司の従妹である飯田 彩華によって数枚の写真が撮られ、現像された数枚が食事処ナオの店内に張られた。
 試着に参加した全員が並んだ集合写真。
 フロア担当と厨房担当に解かれた担当別。
 ユミルとクリスタの執事とメイドのツーショット。
 アルミンのバニー姿を中心に集まった女性陣。
 それと純白のドレスにスーツ姿と言うミカサとエレンの一枚。

 余談であるが最後の一枚を目撃したとある憲兵団新人が白目をむいて気絶した。
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