来週は予定通り投稿できるように頑張りますので…。
大貴族達が逮捕されて一週間が経った。
世間ではエルディア王が王座をレイス家に返還した事で、次のエルディア王の戴冠式が予定されたり、マーレとの関係が一変した事で戦争終結に繋がるのではと騒がしくなっている。
そんな中でアルミン・アルレルトは今の生活に早く馴染めるようにするだけで手一杯で、世の中の流れを気にしている余裕はない。
「ふぁ~…」
欠伸一つ漏らし、ベッドより上半身を起こすと思いっきり伸びをして固まっていた筋肉を解す。
エレンが調査兵団を辞めると後を追う様にアルミンも辞めて、皆で借りたトロスト区の一軒家でルームシェアをしている。
シェアしているのはエレンにミカサ、それとクリスタと自分の四人。
ミカサはエレンが辞めるならついて来るのは想像に容易いと思うが、クリスタはヒストリアやフリーダによってここで暮らす事になったのだ。
レイス家は次代のエルディア王を選出しながら、ウーリが王家への復帰を嫌がるのと大貴族のレイス家の職務がある為に貴族を続ける事になった。
貴族としてレイス家を継ぐのは予定通りフリーダとなり、王はヒストリアが受ける事になった。
つまり大貴族の血筋でエルディア王の妹。
最前線勤務の調査兵団では彼女の扱いが大変困難であると話が上がり、周りの反応から察したクリスタは自主的に調査兵団を辞めた。
フリーダは好きだがロッドには想うところがあってレイス家に戻れず、王の選定から外れたクリスタはだったらと自立を宣言。
しかしいきなりクリスタが自立して上手くやっていけるかと考えたヒストリアとフリーダはエレン達がルームシェアをすると聞いて、ならクリスタも一緒にとミカサに頼んだのだ。
エレンは別段気にすることなく許諾し、彼女に気があるアルミンは反対を口にする事はなく、ミカサはエレンが良いって言ったからとクリスタともシェアすることを受け入れて今に至る。
ちなみに
寝惚けながらも起きたアルミンは寝間着から普段着に着替え、自室より出てリビングに向かう。
勿論女子二人居るのでだらしなく見えない程度に身だしなみは整える。
廊下に出ると朝食の香りが漂い、寝起きであるもお腹が反応を示す。
ルームシェアをしているのだから調理は各自か交代制でするべきなのだろうけど、ここではエレンが朝食と夕食を担当している。と、いうのもエレンは食事処ナオで以前の経験から調理担当を志願し、今は見習いの身という事で練習を兼ねて作っているのだ。
今日は何かなと期待しながらリビングに着いたアルミンは固まってしまった。
リビングと厨房は繋がっており、厨房ではエレンが料理を作って、ミカサが皿やフォークなどをリビングのテーブルへと運んでいる。
それはいつもの光景なのであって、アルミンが固まってしまった理由ではない。
原因は椅子に腰かけているクリスタだ。
彼女は眠気眼を猫のようにくしくしと擦り、未だ寝惚けている様子を伺わせる。
そこまでなら良かったのだが、寝惚けているからか少し着崩れした寝間着姿で居るのだ。
第一、第二ボタンが外れ、襟元が緩んで肩を渡る紐や鎖骨が露わになっており、十代後半の少年には好意を寄せている女性のその姿は目の毒であった。
ドキドキと心拍数が上がり、顔が赤くなるのを感じてさっと顔を背けるも視線はおのずと向いてしまう。
口にするべきか、それともこのまま…などと頭を悩ましていると、エレンが振り返った際に気付いた。
アルミンが見せたような反応を見せる事無く、エレンは普通に注意した。
「服凄いことなってんぞ」
「ふくぅ?―――――ッ!?」
言われると視線を降し、ジーと眺めているとようやく認識して顔を真っ赤にして隠すようにして立ち上がった。
その際に目が合い、視線で「見た?」と問われて赤らめたままそっぽへと向き直す。
明確な答えが口にしなかったが行動が物語っており、さらに真っ赤に染まったクリスタは自室へと急ぎ足で引き返して行った。
「そんなとこ立ってないで座れよアルミン」
「あ、うん」
朝からなんとも言えない感情に苛まれたアルミンはエレンに促されるままに席に着く。
今日の朝ご飯はスクランブルエッグにヴルスト、それと市販のパンだ。
ミカサも席について早速と食べ始め、アルミンもフォークでスクランブルエッグを刺してパクリと口にする。
昨日のに比べてバターの量を増やしたのか風味が強い。
少し強すぎるかなと思いながらパンを齧ると、二つが合わさればそんな事ないかなと思えるほどに良くなった。
エレンは口や目付きは悪いけど根は真面目だ。
毎日作る料理は適当にではなく何かしら目的を持って、技術向上に努めようとしている。
今日のはパンに合う様に味付けを変えたのだろう。
アルミンは食べて感じたことをエレンに伝えて行く。
伝えられた感想を聞いて頷きながら、エレンはパンに目玉焼きとヴルストを挟んで齧り付く。
出勤にはもう少し時間があるのだが、総司が朝食をアニ達に振舞うので作っているところを見学して学ぼうとしているので、彼だけはあまり時間の余裕がない。
感想を聞きながら食べ終えるとそのままフライパンなどを洗って、すぐさま家を出る準備を行う。
同時にミカサも準備を始める。
エレンに続いて辞めようとしたミカサだったが、まだヒィズル国キヨミ・アズマビトとの交渉にはミカサが必要との事で、交渉が終わるまでは在籍して欲しいとの事で未だ調査兵団所属の兵士なのだ。
まだ時間に余裕があるアルミンは食べ終えて用意する二人を傍目に、食事を続けていると普段着に着替えたクリスタが戻って来て何事も無かったように食事を始める。
…いや、なかったように振舞おうとしているだけで耳は真っ赤なのだが…。
「じゃあ先に出るな」
「待ってエレン。襟が曲がってる」
「俺は子供か!自分で直せるって!!」
急いで出ようとしたエレンを止めて、ミカサが襟の乱れを直そうとして照れて抵抗する。
その光景を眺めていると夫婦みたいだなと思うのだが、決して口にしようとしない。
すればエレンは必死に抗議してくるし、ミカサは真っ赤になって俯いて動かなくなるので言わないようにしたのだ。
そうこうしているうちに二人連れ立って家を出て行く。
残った僕とクリスタは時間にまだ余裕があるので、ゆっくりと朝食を終えて片づけを済ませて他愛ない会話を交えながら準備を整える。準備と言っても制服やエプロンは食事処ナオに置いてあるので財布などの持ち歩く貴重品と家の戸締りだけ。後はクリスタが身嗜みを整えるぐらいか。
一人先に行くのも悪いので、本を読んだりして時間を潰し、八時半頃に到着するようにクリスタと共に家を出る。
到着するとまず最初にするのは店内の掃除だ。
途中途中に挟むのを抜きにすれば掃除は開店前と閉店後に行われ、九時から十七時までの前半パートを受け持つ僕らは朝の掃除を行う。
前半パートにはフロア担当としてアルミンとクリスタ、調理担当はアニとエレンが入ってのだが、フロアを新人のみで見るのは昼食時や三時のおやつ時は難しいので、デザート担当のユミルがフロアチーフを兼任してみる事に。
無論客入りが少ないと言っても兼任していては手が回らない場面も当然出て来るので、そこは総司がフォローする話になっている。
本当なら新人を前半と後半で分けて配置すれば良かったのかも知れないが、正直慣れるまでは夕食時以降の時間帯を任せるのはかなりきついので、ユミルには悪いが数的に余裕が出来るミカサが調査兵団を辞めて食事処ナオに就職するまでの間まではこれで回すしかない。
ちなみに午後パートはフロアにイザベルとファーラン、調理にはニコロとライナーが担当する事になっている。
「…ナウ」
ひと鳴きしたナオがアルミンの足元を歩き、扉から外へと出て行った。
また自身が定めた縄張りを確認し、時には客を連れて帰って来る。
本当に変わった猫だなぁと思いながら掃除を終え、手洗いを済ませて奥の一室で仕事着に着替えてフロアに立つ。
九時になって開店するとまばらではあるが客が訪れて、客の少ない広い店内と食事を楽しむが基本暇である。
だからと言ってだらけたり、サボる訳にもいかないのでテーブルを拭いたり、客が帰れば埃が立たないように掃除をしたりを繰り返す。
ちらりと厨房に視線を向ければ千切りキャベツや玉葱の微塵切りなどを行い、総司さんやアニから調理の手ほどきを受けているエレンの姿が見えるが、あちらは本当に忙しそうだ。
厨房担当ではあるが見習いのエレンは皿洗いも仕事に含まれており、休む時間がフロア担当に比べて無いと言っていい。
それでも文句ひとつ言わずに真面目に言われることを熟し、それ以上を望んで努力する様子に昔と全然変わらないなと少し懐かしい気分に浸る。
するとこつんとユミルに小突かれ、仕事をするようにと軽い注意を受けてしまう。
反省しながら仕事に戻り、たまにエレンの手伝いをしたりとして時間が過ぎてゆく。
昼食という事で客が極端に多くなる十二時頃。
あまりに忙しくて食事を取る暇がない食事処ナオの従業員は十一時より交代でまかないが提供される。
そろそろかなと厨房へと視線を向けると、ちょうど総司がまかないを作り始めたところであった。
じゅわ~と鶏肉が油で揚げられる音が響く中、総司はタルタルソース作りに移る。
鍋でゆで卵を作りながら玉葱とパセリを刻み、出来上がったゆで卵をフォークで潰してマヨネーズに砂糖、酢、塩コショウに刻んだ玉葱とパセリを入れて混ぜる。
混ぜていると鶏肉がしっかりと揚がり、綺麗な焦げ目のついた唐揚げが姿を現す。
それだけでも美味しいのだけれども、唐揚げは皿ではなく網を乗っけたトレイの上に置かれて余分な油を落としていく。
フライパンに甘酢あんとなる醤油に砂糖、酢、片栗粉を入れて片栗粉と砂糖が溶ける様に混ぜながら温める。
ふつふつと温まって、液体にとろみが付くと唐揚げを投入。
甘酢あんをしっかりと絡めて今度こそ皿の上に置いた。
最後に作ったタルタルソースをスプーンでかけて完成。
「今日のまかないはチキン南蛮ですよ」
アルミンは席に着くとフォークを手に取り、一つに齧り付いた。
サクリと香ばしい衣が音を立てるも、甘酢あんが絡まった事で口当たりはしっとりして硬さの中に滑らかさが合わさっている。
衣を歯が破れば中より鳥の旨味が詰まった脂がジューシーな肉の食感と共に溢れ出す。
口いっぱいに広がる旨味。
その分、脂が溢れている証拠であるが甘酢あんによりさっぱりとして脂っぽさが軽減されて食べ易い。
甘酢あんをかけただけでもこれだけ美味しいのに、チキン南蛮にはタルタルソースまでかけられている。
今度はタルタルソースが掛かっている所をガブリと齧ると濃厚なタルタルソースの味が広がる。
マヨネーズを主体にしながらも酢や玉葱でさっぱりして食べ易いのに濃厚という贅沢なソース。
甘酢あんとも唐揚げとも相性が良く、噛み締めれば刻んだ玉葱のシャリシャリした食感が心地よい。
ライスとも合うけど僕はやはりパンの方が好みかな。
焼きそばパンなどに使うコッペパンを貰い、縦に切れ目を入れるとチキン南蛮を挟む。
唐揚げの旨味に甘酢あん、そしてタルタルソースと濃い目の味のチキン南蛮はパンの具材として申し分ない。
大口を開けてガブリと食べて満面の笑みを浮かべていると、横からの視線に気付いて振り返る。
そこには微笑ましそうにしているクリスタが居た。
見つめられていた事に戸惑いドキマギしていると「美味しそうに食べるね」と言って、同じようにコッペパンを貰ってチキン南蛮を挟んで齧り付こうとする。
が、ごろっとした唐揚げをコッペパンに挟んだので豪快に食べようにもクリスタの口には大き過ぎであり、仕方なく小口でちまちまと食べて行く。
その様子があまりに可愛すぎて頬が緩んでしまう。
幸せそうな笑みを浮かべながら口は濃厚で甘酸っぱいチキン南蛮を味わい続ける。
時刻は十一時過ぎ。
人によっては込む前に昼食を食べようと訪れる時間帯で、その客達は美味しそうにチキン南蛮を食べるアルミンとクリスタを目撃し、今日は
厨房で次々に鶏肉が揚げられる音を聞き、周囲に客が増えだしたことに気付いたアルミンは残っていた一口分を詰め込む。
指に着いたソースまで舐め取り、昼食を終えたアルミンは小さく息を吐き、「今日もがんばるぞ」と気合を入れて仕事に戻るのであった。
●現在公開可能な情報
・新人の為に…
エレンもライナーも以前総司より習ったとは言え、店で出すにはまだ未熟。
なので鍛えなければならない。
アニの提案により皿洗いや料理に使う材料の下準備、アニやニコロも体験した安い値段で新人が料理を提供するメニューなどが行われることになったのだ。
ただ調理系の時間が減った事で、総司は何処か寂しそうでそわそわする事が多くなり、時たまにエレンの手伝いをしようとしてアニにこっぴどく叱られている…。