進撃の飯屋   作:チェリオ

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 最近夏バテが酷く、頭が回らない上に打つ速度が低下しており、ギリギリの投稿になってしまった…。



間食15 山の日

 飯田 総司は大荷物を大型のリュックなどに詰めて、山の坂道をゆったりとしたペースで歩いていた。

 空は晴天。

 風は穏やか。

 気温は少し暑めな感じか。

 しかし高温多湿ではなくカラッと乾いた暑さで、不快感は然程感じなかった。

 

 「やはり日本と違いますね」

 「ナゥ」

 

 隣を並んで歩いていたナオに語り掛けると、小さく頷きながらひと鳴きした。

 エルディアは自然豊かな場所が多いので、山も森も人の手が加わっていない自然そのもの。

 当たり前と言えば当たり前なのだが、夏場と言うのに蝉の鳴き声一つしないのは寂しく感じる。

 本日は“山の日”と言う事もあって総司は休日を利用して山に訪れていた。

 ただ総司と一緒に居るのはナオのみで他には誰も居ない。

 理由は簡単で、食事処ナオが快適過ぎるのが原因だった。

 電化製品が普及どころか製造されてないエルディア国内で唯一“扇風機”や“クーラー”を筆頭に暑さを緩和する電化製品を有する食事処ナオの店内及び居住スペースは夏でも涼しく過ごし易い。

 イザベラやファーラン、ユミルやアニなど住んでいる面子は勿論だが、ニコロやエレン達出勤組も日中は居座っている。

 他にも総司の美味しい昼食にありつけると言うのも有るが、一番の理由は暑さを感じない快適な空間だろう。

 

 あえてそれを楽しんでいる彼ら・彼女らを無理に誘う事はしない。

 それに最近は二人(一人と一匹)の時間を作れなかったのもあるので、たまにはこういうのも良いだろう。

 舗装されていない山道を山に詳しいサシャより貰った手書きの地図を頼りに歩く。

 初見であるのにナオが補足するように道を示すので迷子になることなく、おすすめされたポイントに到着する。

 

 木々が開けた場所で少し進むと泳いでいる川魚がはっきりと見えるほど澄んだ水が流れる川があり、川上に視線を向けると結構な高さより振っている滝が見える。

 周囲の木々や風景に相まってなんとも言えない大自然を肌身で感じる空間を作り上げていた。

 大きく深呼吸すると涼し気で澄んだ空気が肺を巡って身体に行き渡るようだ。

 

 「良い所ですね」

 「ナォウ」

 

 またもひと鳴きしたナオは川を流れて丸みを帯びた石が並ぶ河原へと進み、川の近くに近寄ると近くを素通りしようとした魚を猫パンチで川より弾き飛ばす。

 水に恐れないどころか魚を熊の様に狩って来たナオに驚く様子なく頭を撫でて褒める……が、ナオは手を払い除けて取った魚を加えて前に置く。

 クスリと苦笑を零し、リュックを川より離れた位置に降ろす。

 すると置いた魚を再び加えたナオはついて行き、同様に魚を置いた。

 

 「すり身…焼き魚…刺身」

 「ナウ!」

 「刺身ですね」

 

 刺身と聞いた途端大きく鳴き、ナオは川へと戻って行く。

 もう少しゆっくりしてから食事にしようと思っていたのですが、ここまで遠出してきたのでお腹が空いていたのでしょう。それに最近は生魚を出していなかったのもありましょう。

 ナオは異様に賢いと言っても、まだ若い猫である事は変わりない。

 一応であるが「気を付けて下さいよ」と注意喚起するも、どうも自然の雰囲気に当てられたのか興奮気味のようで聞いているか怪しいものだ。

 苦笑いを浮かべながらリュックに仕舞っていた道具を取り出し、簡易の作業台を組み立てる。

 父親に連れられたキャンプであるならば大型のキャンプ用のコンロに肉に野菜、魚介類を用いてのバーベキューをしていたが、自分とナオだけならそんな大荷物はいらないと全て小型の道具にとどめた。

 ナオの食事も作るが、同時に自身の食事の準備も始める。

 とは言っても誰かの為でなく自身の食事なので簡単に済ませるつもりだ。

 作業台にナオが狩った魚以外にベーコンの塊を乗せ、その存在感に笑みを零す。

 

 「ナァオウ…」

 

 ジトっと視線を感じて視線を降ろすとナオが何か言いたげに見つめ、二匹目の魚を差し出していた。

 何となく察した総司は苦笑いを浮かべる。

 

 「たまには豪華にしても良いじゃないですか?ナオにはこちらを用意してますから」

 

 そう言って取り出したのはミンチ肉のパック。

 少し考え込んだようで、唸っていたナオは納得したのか魚を足元に置いて戻って行った。

 置き方が先ほどと違い、押し付けるようだった事からこの二匹目は“やる”と言う事なのだろう。

 有難く魚を貰うと腹を裂いて内臓を取り出して、綺麗な川の水で洗い流す。

 いつもなら粗を使って粗汁でも作るところだが、今日は鍋を持ってきてないし、少々不安があるので今日は捨てる事にする。

 ナオの魚は小骨を抜いて刺身のように切り分け、貰った魚は串を指して焼き魚にしようと思う。

 コンロで焼いても良いのだが、それでは味気ない。

 川近くに石を積み上げて即席の暖を作り、乾いた木々に火を付けて焼けるように串を地面に指す。

 そうやって魚を焼いている間に厚めにベーコンを切ってコンロで焼く。

 中元の売り残りのセットで半額で購入したとはいえ、やはり普段自分が食べる物より高い。

 そんな自分の為に奮発した厚めのベーコンがパチパチと脂を散らしながら焼けて行く。

 

 魚とベーコンを焼きながら総司はミンチ肉に刻んだキノコ類に潰したさつま芋を混ぜて捏ね合わせて行く。

 猫にとって毒となる玉ねぎを抜いた猫用のハンバーグ。

 形を形成すると空気を抜き、早速焼き始める。

 一瞬、いつもの癖でソースや味付けを考えてしまい、ナオの食事なのだからと思い返して笑ってしまう。

 そのナオはまた二匹ほど狩り、今は浅いところを走り回ったりして遊んでいる。

 焼き上がったハンバーグに刺身を距離を離して皿に乗せ、そっと地面に置くと出来上がったのを察したナオが魚を加えて駆け出して来た。

 

 「熱いから気を付けて下さい」 

 「ナオゥ」

 

 火傷しないように少し冷ましたハンバーグや刺身を美味しそうにがっつくようにを眺めながら、いつもより高めの猫用のミルクを飲む用の皿に注いでおく。

 そうして自分の食事を始める。

 魚は十分に火が通り、皮にはわずかについた焦げ目が視覚的に食欲を刺激する。

 「頂きます」と呟き、串を持ちカプリと齧り付く。

 塩を振ったわけではなく、そのまま焼いただが本来の魚の味わいと程よい塩気があり、口に含むとほろりと崩れる身と共に広がった。

 

 「うん、良い塩梅。これなら塩や味付けはいりませんね」

 

 採ってすぐという新鮮さと、大自然の中で育った天然物。

 贅沢だなぁとしみじみ思い、二口目を齧るとナオがジッと物欲しそうに見つめていた。

 

 「食べられます?」

 

 一度あげたものだからかプイっと顔を背けたが、欲しがっているのは明白。

 食べていた魚を台の上に置き、ナオが新たに取った魚の内一匹を同じように内臓を取り出して洗い、串に刺して焼き出した。

 嬉しかったのか脛を擦ってくる様子が愛らしい。

 数回擦ると焼かれている魚をじっと見て焼きあがるのを待つようだ。

 その間にコンロで焼いていたベーコンを食べようと、串を刺して口へと運ぶ。

 黒コショウの混ざった香りを嗅ぎながら、噛み締めると最初にカリッとした食感が音を立て、中に歯が食い込むとジューシーで食べ応えのあり、歯が食い込んだ分だけ中から旨味たっぷりの肉汁が溢れ出る。

 ゆっくりと単体では濃い目の味わいを噛み締め呑み込む。

 

 …なんだろう。フライドポテトとチーズを合わせたセットで提供したらハンネスさんとか喜びそうだな。

 などと食べながら思うとお酒が欲しくなる。

 

 焼き上がった魚を皿に乗せると、ナオはハフハフと口に発生した熱を逃がしながら食べ始める。

 ナオの食事は出し終えたので、組み立て式の簡易なチェアを組み立て、どさっと腰を乗せて身を任せて座る。

 持って来たクーラーボックスより缶チューハイを取り出して、ベーコンや焼き魚を齧りながらちびりちびりと飲む。

 別段酒に弱い事はないが、特段飲もうとは思わない総司が飲む酒と言えば、チューハイか日本酒を少々飲む程度。

 そもそもこの後の帰りを考えるとアルコールをそれほど入れる訳にもいかないというのもあるが…。

 

 僅かなアルコールであったが気分的にほろ酔い気分に浸り、大自然の景観に空気を感じた総司は大きく息をつく。

 いつの間にか食べ終えたナオが総司の膝に座り、二人してぼんやりとゆったりした時間を楽しむのであった。




●現在公開可能な情報

・ベーコンの新メニュー
 山より帰宅した総司は翌日には新メニューとして、ベーコンとポテト、チーズのセットの提供を始めた。
 最初は他の店にもあるセットだったので、頼む者も居なかったのだが、口にしたハンネスが他の店に比べて肉厚なベーコンや濃厚なチーズ、胡椒でピリリと引き締まったポテトなどが酒に合うと絶賛し、酒飲みの間ではしばしば頼まれるようになった。

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