魔女のヒーローアカデミア   作:陽紅

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MP19 プリーズ・ピース

 

 

 

 炎。高熱で焼くのでは無く、低温燃焼による酸欠を狙う。頭部を起点に覆うような球状の炎膜を作った。

 

 ──目の前に飛ぶ虫を払うような、無造作な腕の一振りで払われる。

 ……反撃で振り下ろされた拳を、紙一重で躱す。

 

 

 水。膨大な水で包み込めば、浮力で体は宙に浮く。さらに複雑な水流で掻き乱せば、力がどれだけ強くても、十分に活きないだろう。

 

 ──拳と拳を、自壊を構わずぶつけ合わせた衝撃で水を弾かれた。

 ……指を組み合わせ、振り下ろされた合拳。大地を広く砕く剛撃。直撃こそしなかったが、余波でだいぶ飛ばされた。

 

 

 風。吹き飛ばされながら研ぎ澄まし、カマイタチ。コンクリートを軽く断てる斬撃で、追撃に走る巨躯の四肢の腱を断つべく。

 

 ──紙一枚の斬線。切り裂き目的を成したが、数秒も経たずに完治された。

 ……追撃は止まらず、接近を許し……一発が必殺の威力を持つ連打が降り注ぐ。躱す。受け流す。掠る。受ける。反動で飛び、込み上げる胃液を必死に抑えて距離を取った。

 

 

 雷。生物である以上、生体電気が狂えば多少動きは鈍るはず。雷速を持って殺到する数十の槍は、回避不能の必殺技相応。

 

 ──直撃。されど微動だにせず。痛痒を与えられたかどうかすら怪しい。首を傾げられた。

 ……加速した思考ゆえか、やたらと低く聞こえる高笑いが外野から来たが、無視した。

 

 

 

 鋼。とっておき。収納している二十本の黒棒、剛性と延性に優れるが鉄の数倍の比重の特殊合金。それを球状に形成し、時速250kmで変幻自在に飛び回る砲弾として放つ。

 

 肉を抉り、関節を砕き……衝撃で巨体を空中に浮かして、そのまま浮かし続ける。わかりやすく言えば『空中ハメ技コンボ』。継続できれば、治療と避難の時間を十分稼げるだろう。

 

 

 

 ──加速された……思考ゆえか。やたらと低く聞こえる嘲笑が外野から来て……空中に浮かせ続けていた巨体が、黒い靄に覆われる。

 ……黒弾が殺到するが、手応えがない。それどころか、操作有効範囲外へ飛ばされたのだろう。反応が消えてしまった。

 

 黒靄中から落ちてきた巨体はいたるところが抉れ、ひしゃげているが……しかし、泡立つような音を立てて、元に戻っていき……数秒で、何事もなかったかのようになった。

 

 

 

 

 戦闘を開始し……時間にして──わずか、四十五秒。

 

 その短時間の攻防で汗は滝のように流れ、長時間呼吸を忘れていたかのように、息は荒れに荒れた。

 

 

 必死に呼吸を整えるなかで……早乙女 天魔は自身のやらかしたいくつかの不出来に唇を噛む。

 

 

 

(個性なしで特化個性持ちなみの身体能力だけじゃなく──痛覚が、ない。その上、私の治療魔法を使った時並みの、回復……超再生ですか)

 

 

 痛覚もそうだが、おそらく『生物的な本能』も相当に希薄なのだろう。炎に包まれて、水に覆われて、体を切り裂かれてもほとんど無反応。耐える様子も振り払う様子もなく……本当に『なんとも思っていない』のだ。

 

 さらに。

 

 

(二倍加速でも追い付けないとか……流石に堪えますね)

 

 

 連撃は本当にゾッとした。加速された思考、動体視力、身体操作を以ってしても、数発持ち堪えるのが精一杯とか勘弁してほしい。

 そして、その後は『相手が攻撃の手を止めてくれた』からこそ反撃できたが、それも無駄となった。

 

 

 ……パチパチと、やる気の無い拍手が一人分響く。

 

 

「いやぁ、凄ぉい凄ぉい。この前よりも全然手数多いじゃん。色々出来るとか……マジチートだな。天然の脳無かよ。イレイザーヘッドがワンパンでダウンしたのに、ちゃんと戦いになってんじゃん」

 

「……事前に入手した教員のデータに該当するものはありませんでした。つまり、彼女は学生ということですか。金の卵の中でも一際際立っている。むしろ、既に若鳥と言えますか──いやはや、末恐ろしい」

 

「え……マジかよ、あれで高校生? 最近の子供はスゴイんだな。大人として自信なくしちゃうぜ……まあ、逆に将来ゆーぼーなら、ここで摘んどくか。ヴィラン的な思考でさ」

 

 

 顔は殆ど隠れているが、言葉と弓形に歪んだ目元で嘲笑っているのがわかる。

 

 

 

 天魔は大きく大きく息を吸い、止める。そして、時限加速のタイムリミット……一分を迎えた。

 

 

「……ふー。そういえば、()対一でしたね。そちらの転移の方を忘れていました」

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 悪意、無し。

 

 挑発する気、無し。

 

 本心純度、100%

 

 

 さらに言えば……死柄木 弔の煽りは時限加速中であったため、殆ど聞き取れていなかった。

 

 なお、念のためお知らせするが、死柄木 弔が天魔の眼中にないわけでは無い。むしろ彼の触れただけで必殺となる個性には細心の注意を払っていた。

 だが、結局のところ触れられなければ問題ない上に、数日前に完全攻略しているのである。故に、現状この場においての危険対象から外されたのだ。

 

 

 そして当然、そんな詳細を知っているわけがなく。自分の煽りを聞き取れていなかった事実を、知るよしもない死柄木 弔にしてみれば……存在そのものをガン無視されたようにしか見えないのだ。

 

 

 

 ──ガリ

 

 

「し、死柄木 弔……?」

 

 

 ──ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

 

 

 

 爪を立て、首を掻く。元からガサガサだった皮膚は簡単に裂け、血が滲むが……構うことなく掻き毟る。

 

 

 そして、視界の中で、仕切り直しだと言わんばかりに身構えた天魔が……思わずだろう、本当に一瞬だが、チラリと背後を見た。

 

 

 前回も見た魔女の分身。

 そこに固まるようにして集まる、人質用に残した子供たち。

 

 そして、魔女に手を翳され、淡く柔らかい光に包まれているイレイザーヘッド。

 

 

 

(──……。ああ、ああなんだ、そういうことか)

 

 

 遠距離攻撃が出来るのに、空も飛べるのに。なぜ、態々飛んできて接近戦に持ち込んできたのか。

 

 

 

 ああ、すごいなぁ、ほんとうにすごいなぁ。

 

 もうりっぱなヒーローじゃないか。すごいすごい。

 

 

 

「──脳無。後ろのガキどもから殺れ」

 

 

 

 

 ──ほんとうにすごく、きもちわるい。

 

 

 

 

***

 

 

 

(あと、少し……!)

 

 

 分身した数だけMPは等分され、また強度の高い魔法は使えなくなる。その制限は本体・分身体関わらず枷となり、その枷が相澤の治療を大いに妨げていた。

 

 ……それでも、眼球と視神経の治療と、眼球周辺の頭蓋の骨折処置が完了しているのは流石と言えるだろう。あと数秒もあれば、相澤を運び出せる状態まで持っていけるはずだ。

 

 

「さっ、早乙女さんっ!」

 

 

 そんな中、すぐ近くで上がった悲鳴。しかも自分の名前ががっつり含まれている切羽詰まった悲鳴に、分身体の天魔はそれを見た。

 

 

 

 まず、かなり無理矢理な姿勢で飛んでくる自分の本体。

 

 目立った負傷はないが、時限加速で相当な体力を使っているだろう。それに、MPの残量ももうかなり少ないはずだ。

 ──相澤の強化から13号の治療……そこから、分身で半分に割って、自身の総強化と時限加速・魔法攻撃の連続使用だ。訓練でもここまで酷使したことはないので、正直あと何をどれだけできるのか、使い切った後どうなるのか……全く未知の領域である。

 

 

 そして……

 

 

 こちらを見て、加速を始めた黒い巨躯がいた。 

 

 

 

(……いくら慣れてるとはいっても、流石にちょっと厄日がすぎませんか……!?)

 

 

 

 目標を変えた。変えられた? とにかく……初速は天魔の方が早かったので、彼が皆に合流するほうがわずかに早いだろう。先日の一件で自分を狙ってくると思ったのだが……。

 

 

(最善手は……)

 

 

 『分身体(自分)が特攻して時間を稼ぐ』──却下。一撃でも受ければこの身は消える。そうすれば本体が行動不能になり、他の皆が危ない。

 

 『全員を無理矢理引っ張って撤退』──却下。先生二人の治療はギリギリ終わっているので耐えられるだろうが、本体と二人がかりでも全員を連れては速度が出ない。

 

 『全員で戦う』──却下。嬲り殺される。下策中の下策。

 

 

 

 

 

 

『ああ、もう──……

 

 

 

 そんな決意に満ちた顔、しないでくださいよ……!』

 

 

 

 

 逃げられない。戦えない。なら、どうするか。

 

 

 簡単だ。

 

 

 

 

 ──『   』ば、いい。

 

 

 

 

 前へ出る数歩。手を伸ばしてくる本体。

 

 ガッチリと手を組み、自らを軸に回転とブレーキを無理矢理かける。

 

 着地と同時に本体と分身が肩をならべ……さながら、遮る壁のようにお茶子たちの前に立った。

 

 

 

 

 

 

「『時限加速(タイムアルター)……ッ!』」

 

 

 

 

 

 心臓が軋む。全身が軋む。……本能が警鐘をかき鳴らした。

 

 

 

 

 

  ──『「三倍加速(トリプルアクセル)!!」』──

 

 

 

 ……構うものかと、その一歩を踏み出した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 ……振りかぶる大きな拳が迫る。本命の狙いは、状況の推移に混乱するしかできないお茶子たちだ。魔女はその前に立つ障害物に過ぎず、邪魔だから壊す、その程度の認識だろう。

 

 

 その拳は──振り切る前に止められた。衝撃が自分の体を叩くが、目の前の障害物は壊れていない。

 

 

 

 

《……?》

 

 

 

 

 一発は、すぐに連打へ。それは本来ならば『平和の象徴』と打ちあっただろう連打。周囲に何人も寄せ付けぬ暴風を生み出したその攻撃を──魔女は、完璧に封殺した。

 

 

 打ち出される拳を、止める様に掌を出す。

 もちろんそれだけでは止められないので一工夫。……相手の拳よりやや大きい、湾曲した障壁を、拳と掌がぶつかる瞬間に超短時間展開する。

 

 激突の衝撃は湾曲した障壁によって流され、敢えて『硬く脆く』作られた障壁は、完全に振り切る前の、威力が最大になっていない一撃を止めるとガラスの様に呆気なく割れていく。

 

 

 あとは、それを連続で。ただひたすら、繰り返す。

 

 毎秒数十発という密度に食らいつく。刻一刻とゼロに近づいていく自分の中の力の源に焦燥しながら、それでも必死に耐える。

 

 

 視界から色彩が消え、音が消えて耳鳴りだけがドンドン強くなっていった。

 

 

 振り返る。障子と砂藤がそれぞれ相澤と13号を担いで、なんとか離れようとしている。そして瀬呂が焦りながらも、へたり込んだ女子の腕を引っ張るが、今にも泣き出してしまいそうな二人を見ると……腰が抜けたか、足に力がはいらないのか。

 

 

 

 

「くそ、さっさと潰せ脳無っ何を遊んでやがる! お前は『対平和の象徴(オールマイト)』用に作られたんだろうが! そんなガキになに手間取ってんだ!?」

 

 

 脳無側に突き抜けた衝撃波をもろに受けたのか、地面に這いつくばるように耐えている死柄木と、体の靄を盛大に散らしている黒霧。

 

 

(……あれほどの実力者が、ただの生徒? 末恐ろしいなんてものじゃない……ここで確実に潰さなければ。計画の本筋は叶いませんが、あの生徒と教師二人を殺せれば十分な成果でしょう。ほかの生徒も殺せていれば、ヒーロー社会への楔としても十分でしょうし)

 

 

 オールマイトを殺すために今回の計画を立てたわけだが、結果としては、今この場にオールマイトがいなくてよかったのかもしれない。

 ……所詮は子供と侮って、相手方の戦力を過小評価していた。

 

 

 

 そして、その過小評価は……現在進行形でし続けている。

 

 なにせ『もう終わった』と──そう、思っているのだから。

 

 

 

─*─

 

 

  ──必殺技でござるか? ううむ、拙者といたしましては、実はこれ、あんまり胸熱案件ではないのでござるよ。いや、だって『当たれば必ず殺す技』でござろう? 漢字的にも感じ的にも? ヒーローとしては『それ大丈夫でござるかぁ?』と常々思ってる次第でしてハイ。

 

  ──そ・こ・で! ここで拙者が敢えて推すのは『禁手(きんじて)』!! ヴィランの人命とか建物被害とか一切合切を全無視した超火力魔法! でござる。

 

  ──あいや、基本的に絶対使わない、使ってたまるか! って精神でござるよ? ……でもこう、早乙女氏の四回不幸見てるとなんか頻繁に使いそーな……。うーん。

 

  ──どちらにせよ『出来ない』のと『出来るけど使わない』ではスポーンとムーン! ……あ、あの、冷静なツッコミはダメでござるよ? 早乙女氏のツッコミというかマジ顔訂正って結構な恥ずかしダメージを刻んできやがりますので、それが最近ちょっと快感にゲフンゲフンゲッフォオエっ。

 

 

 

  ──別に、拙者はヒーロー目指してるわけではござらんし、見ず知らずの他人のために命を賭けることなんて出来んでござる。でも、早乙女氏は違うでござろう? 故に、()()()()()での『必殺技』が必要だと……拙者は思うてござる。もうあとがない、どうしようもない、けどなんとかしたい──という時に、用いてくだされ。

 

 

  ──だいじょーぶ! 多分世間とかケーサツとかピーチクパーチクなるでしょうが 、拙者は早乙女氏の、まあ、絶対の味方ですゆえ! ……あの、薔薇姉様? ちょーっとその手に持ったボイレコ的な機器をおよこしやがれください? ……おいこら待てBBA!

 

 

─*─

 

 

 ……障壁の質を変える。硬く脆くから、柔らかく粘り強いものへ。角度を変え、捻るようにして受け流す。

 そこに生じた、刹那よりも短い空白へ分身が跳ぶ。打つために引かれる拳に自分を巻き込ませれば、勢いよく背後へ回れる。

 

 

 そして、虚空から大きな布を取り出し……脳無の顔を覆い、視界を奪った。

 

 

 

『解禁/直結』

 

 

 

 禁手。絶対に使わないようにと、だけど、いざという時には使えるようにあらゆる状況を想定した。

 

 経験はないが……万が一、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ……燃料として焚べるそれは、MPではない。MP(それ)を感じられるならHP(こっち)もあるのでは、と助言から得た着想だ。

 

 

 

 合わせた両手から溢れ出すのは、ただただ純粋な破壊力の塊。そこから迸るスパークが地面を焼いて抉るが、ただの余波で生じたものだと、見ている誰が信じようか。

 

 

 歯を食いしばり、一歩。

 

 暴れる腕を掻い潜り、禁じた一撃を解き放つ。

 

 

 

 

────(未だ名もなき)────(私の必殺技)

 

 

 

 

 極光。

 

 そして、轟音。

 

 

 直撃した脳無が両腕で防御姿勢をとるが、その両腕を瞬く間に削り崩していく。

 堪えるように踏ん張る両足は、長い二本の線を地面に刻み、あっという間に死柄木と黒霧の立つ場所まで押し込んでいった。

 

 

 

「っ、お、おい黒霧! 何やってんだ早くゲートだせ! ここから離れるぞ!」

 

「了解しま……、っ!? そんな、開かない? まさか……!」

 

 

 

 ──「にが、すかよ……」

 

 

 途切れそうになる意識と、歪みそうになる焦点を合わせ、意地でも抹消を行うのは……プロヒーローであり、教師であるイレイザーヘッドだ。

 

 障子に支えられながらだが……それでも、この土壇場で役目を果たした。

 

 

(生徒が、頑張ってんだ。……なら、俺だって頑張んなきゃいかんだろうが……!)

 

「〜っ、この、くそ、くそ! チートどもが。俺が、こんなっ! 耐えろ脳無!」

 

 

 

 凄まじい破壊を生んだ両腕はすでに無い。……あと少しと振り絞るが、それももう限界が近い。強すぎる威力に天魔自身も押され、掲げた手は今にも屈しそうだ。

 

 

 ……それを後ろから。天魔の体を支えるように、いくつかの手が伸びてきた。

 

 

 

「──悪い。本当に悪い! 俺ら、なんもできねぇ役立たずでよ! でも、でも後少しだ、踏ん張れ早乙女!」

 

 

 腕を瀬呂が。そして、衝撃で飛ばされそうな体を、麗日と芦戸が足に抱きつくようにして支える。先生を担ぐ砂藤と障子もすぐ後ろで、女子二人を覆い守るように位置取っていた。

 

 

 

 そして全てを出し切り、やがて光が、完全に消える。……砂塵の向こう。上半身の前側を完全に削られ、頭部の側面も大きく削られている脳無がいた。

 

 電源が切れたように動かないその巨体に、誰もが勝敗は決したものと判断し、歓喜と憤怒の表情をそれぞれ浮かべ──

 

 

 

 

 

 

 

 

『っ!?  まだです、逃げて!』

 

 

 真っ先に気付いたのはヴィランの誰でもなく、背中に張り付き視界を奪っていた天魔の分身体だ。

 本当ならば自分ごと貫かせるつもりだったのだが……皮肉にも頑強すぎる脳無の体が盾となり、無傷とは言えないもののギリギリのところで無事だったのだ。

 

 

 その盾となった巨体から……聞いたことのある泡立つような音が、ボコボコと。

 

 

 

 むき出しになった腹筋と胸筋が蠢き伸びていき、形を整え黒い外皮で覆う。

 

 両肩から白い骨が嫌な音を立てて延長していき、肩周辺の筋肉が無理矢理伸びて、上腕筋、前腕筋と……わずか数秒のうちに。

 

 最後に頭──ギザギザした歯は生え揃い、半ば潰れていた眼球も何事もなかったように元に戻ってしまった。

 

 

 

 

 決意も努力も、その何もかもを、全否定するかのように。

 

 

 

 

「は、ははっ! そう、そうだよな。先生が作ったオモチャが、そう簡単に壊れるわけない! やれ脳無っこのゲーム、俺たちの勝ちだ!」

 

 

 命令に対し、脳無は変わらぬ速度で走り出す。

 

 打つ手は、もうない。完全に無い。すぐ近くで息を呑むいくつかの音が聞こえ……せめて、直撃だけでも回避させようと届く範囲を抱きかかえ、身をよじる。

 大した差にはならないかもしれないが、それでも、守らなければ、と。

 

 

 

 

 ……だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ──パシン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と……予想よりも、ずっとずっと呆気ない音が、聞こえた。

 

 それになにより、いつまで経っても痛みどころか、巨大な拳が当たった感覚さえない。

 

 

 

 そして──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当に」

 

 

 

 

 

 気付けば……自分たちのすぐそばに、大きな大きな……大きすぎる存在がいた。

 

 

 

 

「本当によく、頑張った……! あとは任せて、ゆっくり休みなさい」

 

 

 

 

 

 ──もう、大丈夫。……なぜって?

 

 

 

 

 

 

──私が来たッ!!」

 

 

 

 

 

 最強のヒーローにして、日本における『平和の象徴』。

 

 

 ──オールマイトが、そこにいた。

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございました! 

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