魔女のヒーローアカデミア   作:陽紅

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(:・ω・)→アンケート内容結果

       (:。ω。)
       ↙︎
アンケート内容(下書き)


……4の記載間違えましたorz




MP6 最高のヒーローが刻んだ一歩目

ー50m走ー

 

 

 飛行に用いる黒い棒を虚空から(実際には『収納』から)取り出し、それを見た一同が静かにザワザワと騒めく。

 

 棒を宙に浮かせ、それに腰掛け……またざわりとするが気にすることなく、ブレーキを踏みつつアクセルをベタ踏みにする感じで、スタートの合図で急加速。

 

 

『早乙女 天魔。記録! 1.56秒!』

 

 

「はやっ!?」

「く、この種目で負けてしまうとは……! しかし、やはり飛行能力も……一体どんな個性なんだ彼女は」

「……チッ」

 

 

「んー、距離が短くて最高速まで行きませんでしたね」

 

 

 

 

ー立ち幅飛びー

 

 

 

「早乙女、次からその飛行無しでやれ。それと、出来れば種目ごとに別々なことでやってみろ」

 

「先生、私だけ難易度がやけに上がってませんか?いえ、まあ出来ますけど……」

 

((出来るんだ……))

 

「そして何事もなく空中走り出したぞ……え? マジでなに?」

 

 

 

 

『記録、62m!』

 

 

「ふう、あそこで風に煽られてなければ……もう少しいけましたかね」

 

「チッ!」

 

 

 

ー握力ー

 

 

「ここは、こう」

 

 

『記録! 測定不能!』

 

 

「……いや、勝手に動いてね?」

 

「早乙女……せめて計器を握れ。なに測ってんだお前は」

 

「あっ」

 

 

 

ー持久走ー

 

 

「それ、バイクですよね? 先ほどから色々と作られていたみたいですけど……」

 

「ええ! 私の個性は『創造』。作りたい物の素材や構造が分かれば、何でも造ることが出来ますのよ! ところで早乙女さんは……その、それは、どうやっているんですの? 普通に立っている様にしか見えないのですけれど……」

 

「? 普通に立ってるだけですよ?」

 

 

『記録! 同着一位!』

 

 

 

ー反復横跳びー

 

 

「きゃあ!?」

 

 

「自分の髪の毛踏んでコケた!?」

「……ごめん。今私すっごいキュンとしてもうた……大人っぽいのにあのギャップは反則やろぉ……!」

 

「けろ……大丈夫かしら。……私も気をつけた方がいいわね」

 

「あ、タイムアップ」

 

 

『記録! クラス最下位!』

 

 

 

 

ー上体起こしー

 

 

「あの、足をちゃんと抑えてもらえませんか? 動いちゃうと、その、やりづらいんですけど……」

 

「……やっぱ無理だ! 誰か代わってくれよ! なんか、その、変な気分になってくる!」

 

「オイラに代われ尻尾野郎! 合法的に触れプゲッ……」

 

「けろ。私がやるわ。先生、再測定でも大丈夫かしら」

 

「……。はあー、わかった。だがさっさとやれよ」

 

 

『記録! ちょっと遠慮してクラス13位!』

 

 

 

ー長座体前屈ー

 

 

「「「「普通に柔らかいのか」」」」

 

「え?」

 

 

『記録! クラス5位!』

 

 

 

 

***

 

 

 

 そして、最終種目――ボール投げ。

 

 これまでの各種目によるテストが準備運動代わりになり、さらにはある程度の『要領』がわかってきたのか、一同は一定以上の好成績を収めていく。

 

 だが、一人。明らかに顔色を悪くしていく男子生徒がいた。

 

 

「……緑谷さん。大丈夫――じゃあなさそうですね」

 

「あ、さ、早乙女さん。えと……その……」

 

 

 総合最下位は除籍、と相澤の言葉が重くのしかかってきているのだろう。天魔はクラス全員のテスト結果を見てきたが、各々不得意分野での成績は芳しくなくとも、得意分野では補って余りある成績を叩き出している。

 

 そして現状、最下位は緑谷 出久となっていた。

 

 

(……あの0ポイントロボを殴り飛ばせる筋力はたしかに壮絶……ですが、壮絶すぎて体が耐えられない)

 

 

 実際に治療した天魔だからこそわかる。

 

 上腕から指先に至るまでの全ての骨が折れ、筋肉はズタズタになっていた。その激痛は想像を絶するものだろう。使うのを躊躇うのは当然だし、使うにしても最も活かせる種目でなければ意味がない。

 

 

 だからこそ、ここまで……最後のこのボール投げまで抑えてきたのだろう。

 

 圧倒されていく敗北感を背負いながら。夢が潰えてしまうかもしれない不安を抱えながら。

 

 

 それでも諦めず、一つ一つを全力で。

 

 

 

「……個性使用後の反動は、私が即座に治します」

 

「早乙女さん……?」

 

「だから、貴方は全力で『結果を出すことだけ』に集中してください」

 

 

 反動による負傷は確かに重傷だが、分身していない――魔法行使に制限のない今の天魔であれば、瞬間的な完治も可能だ。

 

 

 

「――次、早乙女。用意しろ」

 

「わかりました。それじゃ、行ってきますね」

 

 

 

 ……拳を強く握る出久を後に、天魔はどこか呆れたような目をしている相澤から差し出されたボールを受け取る。

 

 だが、相澤はボールを軽く握って、すぐには渡そうとしなかった。

 

 

「……とやかくは言わんが、あまりお節介を焼きすぎるなよ。『お前がいるから大丈夫』なんて思い込まれたら、それこそ目も当てられないぞ」

 

「はは……まあ、初日くらいは大目に見てください。なぜか、背中を押してあげたくなるんですよ」

 

 

「……『魔女の後押し』――か。そう思わせるだけのモノがアイツにあったのか。

 

 なら、俺もアイツを見させてもらう。判断基準は……お前の次の一投次第だがな」

 

 

 遠回し的に『本気でやれ』ということだろう

 

 

「……わかりました」

 

 

 

 ボールを受け取り、円の中央へ。

 

 すぐには投げず、それどころか振り向いて、『今度は何をするのか』と周りに近付いていた一同と、計測のために近くにいた相澤を見た。

 

 

「あ、もう少し離れてください。特に、後ろにいると危ないですよ?」

 

 

 

 

 

 

「今度はなにすんのかね、あの子……あの人?」

 

「未だに個性が全っ然わかんねぇもんな!」

 

「――ちっ! どうせ器用貧乏だろ! さっさと終わらせろやクソロン毛女!」

 

「暴言が過ぎるぞ君! しかも女性の髪に対しての侮辱はいけない!」

 

「なんか文句あんのかクソ眼鏡! それよりも……おいクソデクぅ! んでテメェがここにいんだごらぁ!?」

 

 

 

「――なにあれ、感じ悪ぅー……あれでホントにヒーロー科なの?」

 

「今回の体力……いえ、もう個性テストですわね。その成績はかなり上位な方のようですけれど……」

 

「あんなに綺麗な髪をクソ扱いとか許すまじ! すっごいいい匂いしたよ! しかもサラッサラでツヤッツヤなの! 私もあんな髪にしたい!」

 

「いやアンタ透明だからショートかロングかもわからないじゃん。……っていうか匂い? まじ?」

 

「ち、ちなみにどんな感じやった? お高い系のやつなんかな?」

 

「ウェルカム、よおーこそー、ジャパンっへーっ♪」

 

 

「「「ツ◯キ!?」」」

「知らないメーカーですわ……どちらのブランドですの?」

 

「けろ。そろそろ静かにした方がいいわ。先生が凄い目で睨んできてるわよ」

 

 

 

 両手で口をふさいで恐る恐る担任を見る。言葉通り充血した目が鋭くこちらを向いていた。一同は注意が来るかと思ったが、その視線はすぐに外れる。

 

 外れて向けられた視線の先には測定者……早乙女という生徒が、ボールを前に突き出して立っていた。

 

 

(……何する気だ、あいつ)

 

 

 大凡『物を投げる』という姿勢ではないことは確かだ。予備動作かなにかかと思って見ていたが、そのまま振りかぶることもせずにボールを手放してしまう。

 

 ――落ちる、と思われたボールは、しかし重力に逆らって其処に浮かび続けた。

 

 

 その光景に、遠巻きに見ていた生徒の視線は別の人物に集中する。

 それは、このボール投げでクラス一位の記録……『(無限)』を叩き出した少女だ。

 

 彼女と同じことを!? と眼鏡が騒ぐが、場を満たす雰囲気からして違う。

 

 

 その証拠に、耳鳴りの時に聞くような甲高い音が鳴り始めた。

 

 気のせいか? と思える大きさはすぐに超えた。次第に大きくなるその音を例えるなら、飛行場の滑走路で大型のジェット機が近いだろう。

 

 ……そんな音が、ボールから聞こえて来る。

 

 

 次に、長い黒髪が風に揺れる。揺れ続ける。どんどん強くなり、まるで台風の日に外出して、風を真っ向から受けているように。

 

 

 

 最後に、前に突き出したままにしていた手を、三十度ほど上方へ角度修正。ボールも連動した。

 

 

 

 そして――砲弾でも着弾したような衝撃波が投者の背後に突き抜け、ボールは長い残像を残しながら直線軌道で空の彼方に消えていった。

 

 

 

「……。あ。き、記録は!?」

 

「グ、グラウンド越えていったぞ!?」

 

 

 担任の手にある端末に映る数字が凄まじい勢いで跳ね上がっていく。メートルはとっくに計測範囲として役に立っておらず、二桁、三桁と……どんどん勢いを上げていき――四桁に到達しようとしたとき、赤くerrorと点滅した。

 

 

「……測定不能。おそらく落ちる前に、燃え尽きたな」

 

「……。あの、先生。マジで、彼女どんな個性なんですか?」

 

「雑談は後。次の奴、準備しろ。あと……爆豪。次にあからさまな恐喝やら暴言やら吐いたら、成績に関わらず問答無用で除籍にするからそのつもりでいろ」

 

 

「なん……!? くっ、ちぃっ!」

 

 

 無理やり言葉を飲み込み、苦し紛れに舌打ちをする爆豪に、「あ、言おうとしたなこいつ」と一同は心を一つにしたそうな。

 

 

 

 

「さて……と」

 

 

 魔女の次。出席番号順で、筋肉質の男子生徒が結構な量の砂糖を流し込むように飲むのを横目に、相澤は出久に向かう。

 

 現時点で成績は最下位。どれも個性使用無しで計測した場合の平均範囲だ。

 ――諦めることなく、全力かつ真剣に挑む姿は教師としては好ましいものだが、それに結果を伴わければ意味がない。

 

 

 所謂崖っぷち。後がないはずのその生徒は――

 

 

 

「……なんだ、存外良い顔してるじゃないか」

 

 

 

 魔女の目利きか……と呟き、一言くらいならアドバイスしてやるか、と。

 

 少し硬いが、しかし笑顔を浮かべている生徒の元に足を向けた。

 

 

 

***

 

 

 

『緑谷。お前の個性の件は、試験の時に見ている。――早乙女に治療されたこともな』

 

 

『ヒーローはな、ヴィランを倒して終わりじゃないんだ。そも、一対一なんて好条件、滅多にない。……お前は『一発殴って足手まといに(動けなく)なるヒーロー』で満足か?』

 

 

 

『その握り締めた拳を忘れるなよ――試験の時のあの結果、plus ultra(上書き)してみせろ』

 

 

 

 試験の時の状況を、現実に置き換えて考えて見る。

 

 無数のヴィランが町中で暴れまわる。自分がやったことは、リーダー格の一人を撃破しただけ。そしてあとは、ただの要救助者だ。

 

 ――現実だったなら、残存しているヴィランの対処をしなくちゃいけない。それに、市街地だから当然一般市民もいる。逃げ遅れた人の避難や、怪我をして動けない人の救助だって必要だ。

 

 

 ボロボロの僕を治療してくれたあの一回分の力で、どれだけの人が助けられるだろう。

 

 

 

「あの……早乙女さん。その、さっきの治療の件ですけど……いりません。でも、見ていてもらっていいですか?」

 

「緑谷さん? ですが……」

 

 

「お願いします」

 

 

 じっと見つめられる。試されているわけじゃないんだろうけど、逸らしちゃいけないと思って、強く見返した。

 

 

 

「――わかりました」

 

 

 目を閉じながら微笑んで、一歩後ろへ下がる。

 

 

「……健闘を、心から祈ります。だから、頑張ってくださいね」

 

 

 すれ違いざま、小さく聴こえたその声に……円に向かう足が速くなったのは、まあ、しょうがない事だろう。

 

 

 

 

 渡されたボールを握る。強度の高いゴム質の、握りやすいボールだ。

 

 

(……強がったけど、ワン・フォー・オールの制御は全然できない。圧倒的な力は出せるけど、先生の言うように一回だけ。投げて腕がボロボロになれば、普段通り動けるわけがない)

 

 

 個性を使えば足手まといの出来上がり。個性を使わずとも最下位で除籍。

 

 ボールを強く握る。男子平均程度の握力しかなかった出久のそれでは、全体どころか指さえ押し込めることが――……。

 

 

 

「……あっ!」

 

 

 カチリと頭の中で、完成する音。

 

 五本の指で握り締めていたボールを握り直す。投球フォームを初心者ながら意識すれば、滑り止めの利いたゴムボールに指はしっかりとかかった。

 

 

(あとは、タイミング……)

 

 

 

 

 ――いいかい緑谷少年! 『力』を使う時のコツはね、こう、ケツの穴をギュっと締めて、こう叫ぶんだ!

 

 

 

 

 上腕を通り、肘を通り、前腕も通って、掌へ。さらにそこから、人差し指と中指に全ての力を一気に集める。

 

 激痛が来る。先端は神経が集中しているらしい。だからどうした? そんなもの、歯を食いしばって耐えればいい!

 

 

 

『――SMASHッ!!』

 

 

 

 投じられたボールは、高い角度でカッ飛んでいく。100mはすぐに超えた。500mを超えても衰えず、しかし落下を開始。

 

 それを成しただろう二本の指は、どす黒い紫色に変色しているが、構うものかと拳を握る。

 

 

 

「先生……!」

 

 

 

 『記録! ――827m!』

 

 

 

「まだ、動けます……!」

 

 

 

「で、でた! ヒーローらしい結果!」

 

「クラスでも上位陣に食い込むぞ! しかし、あの指は……やはり個性を使うととてつもない反動がくるのか」

 

 

 視界が激痛で赤く明滅する。苦鳴をあげそうになったが、歯をグッと食いしばって、口角をグイッと上げることで飲み込んだ。

 

 

 

 ――誰よりもスタートで遅れている。だから、誰よりも努力しようと思った。それは正しくて、きっと、間違ってはいないのだろう。

 

 ――でも、それ以上に。誰よりも劣るからこそ、少しずつでも前に進む結果を、僕は残していかなくちゃいけないんだ。

 

 

 

 ……出久が好成績を出したことで、クラスの幾人かが顔色を変える。

 

 純粋に結果を喜ぶ者。状況次第では順位逆転されると今更ながらに焦る者。そして、担任から打たれた釘がなければいますぐ爆撃しかねない怒りを滲ませる者。

 

 

 多くの感情を揺さぶりながら、体力テスト(もはや個性把握テスト)は終了した。

 

 

 

 




読了ありがとうございました。

アンケートにご参加していただいた方には大変に、大変に申し訳ないのですが、表現の致命的なミスがあったため再アンケートさせていただきます……!

ヒロインアンケート改 深く考えずに直感で

  • A組女子
  • B組女子
  • ヒーロー科じゃない女子
  • 前提が違う。天魔がヒロインで皆ヒーロー
  • 八木先生(ネタですヨ?)

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