TS転生しちゃったけど、俺は絶対にメス堕ちしない。 作:棺祀師
随分と待たせた割に出来は最低ですが、お手柔らかにお願いします……!
——死が、溢れる。
黒い霧の中から、粘性を持った赤黒い液体が流れ出ている。その不気味な液体は辺り一面にに広がっていく。
突如、悲鳴にも似た、甲高い音と共に霧が中心部に吸い込まれていく。霧の中から現れたのは屍の山。骨や腐った屍肉が乱雑に纏められ山のようになっており、どんな生物の屍なのかは判別がつかない。
——死が、溢れる。
おもむろに、山の中心部が盛り上がる。無数の屍に埋もれていた何かが立ち上がろうとしている。上に重なっていた肉塊達が、ボトボト、ビチャビチャと気味の悪い水音を立てて落ちていく。
何かが、立ち上がった。それは人の形をしている。背中をそらして空を見上げ、両手をだらんと下げている。
屍肉のようなフードから出ている、不気味なほど真っ白な髪。隙間から覗かせる真紅の瞳、その姿はさながら墓から蘇った屍者のようであった。
——死が、溢れる。
両手は、それぞれ棒のようなものを掴んでいる。棒の先には大きく湾曲し、所々錆ついた刃がついている。巨大な鎌だった。右手のそれは体と同じくらいの大きさで、もう片方はそれよりは小さい。だが、農作業で使うような物ではなく、武器として、確実に命を刈り取るであろう形をしている。
何かはその鎌を地面に引きずりながらゆっくりと、精霊達の方へと歩き出した。
死が、溢れる。
——————————————
「士道……。」
俺は士道を探す為にこの気待ちの悪い、肉塊の山から降りる。
そして、先程空間震が起きた場所へ向かう。鎌を担がず引きずって歩いているので、一歩進む度に鎌が地面に擦られてガリガリと大きな音を立てる。決意はしたつもりだったけど、その音が俺の決意を揺るがせる。
本当にいいのか?士道の前で力を使って。一歩進むたびに恐怖が湧いてくる。
でも、それでも、行くしかない。
ガリガリ、ガリガリ。
「何だ?お前は……」
家屋や道路の瓦礫の中、どこかのお姫様のような紫のドレスを纏った女、いや、化け物が、美しく輝く大剣を片手で持ち立っている。
そして、向けられた剣の先には————
「……!!」
「な、何なんだ次から次へと!」
士道がいた。所々制服は汚れてはいるが目立った傷もない。良かった。本当に良かった。ただやはり彼は、恐怖と怯えを孕んだ瞳を、目前の化け物だけでなく俺にも向けて来ている。そんな目で見られたくない。これ以上彼の前に立ちたくない。怖がられるのは辛い。
でも、それよりも、彼が傷つく方がもっと辛い。
「……なんで、彼に剣を向けてる?」
俺は少しでも化け物の注意を逸らす為にそう話しかける。さっきも喋っていたし話は通じるだろう。
「なんで?当然ではないか、こいつも私を殺しに来たんだろう?」
化け物は物憂げな表情を浮かべてそう言った。
は?士道が?何を馬鹿な。
「彼が、そんな事する訳が無いだろ。」
「……っ、何でそんな事……でもそうだ!俺は何もするつもりはない!」
そう言った俺と士道に、化け物は驚いたような目を向けてきた。ただ、まだどこか疑っているようでもあった。
その時、
「……ちっ!」
来る。化け物も気付いた様で、眉をひそめている。
俺らの上空に浮かんだ奴らが大量のミサイルを放ってきたのだ。
俺は即座に鎌を収納。士道の方に飛び彼を押し倒し、覆い被さる様にして守る体制をとる。
「ふん……」
来るはずの衝撃に備え、全身に力を入れ歯をくいしばったが一向に爆発が起こる気配がない。ちらと空見てみる。
ミサイルが上空で、何かに掴まれているかのように静止していた。
あの化け物がやったのか?俺たちを助けた?いや、あいつはだだ自分の身を守り、俺たちは偶々その範囲内に居た。それだけだろう。自分の考えを一蹴する。
化け物が停止させたミサイルは、その場でひしゃげ爆発した。
そして攻撃が効かなかったのを見かねたのか、空を飛んでた奴らの一人が降りて来た。腰部に大きなブースターを付けた、いかにもなSF少女。こいつ、どこかで見たことがある気がする。
「鳶一……折紙……」
腕の中の士道が、そう呟いた。
あぁ、あの時の昇降口に走っていった子か。
「五河士道……!!」
折紙と呼ばれた少女も、士道に気が付いたらしい。という事は当然俺にも目が行く。彼女は俺が彼を襲っているように見えているのだろうか。まるで親の仇を見るような目で俺を睨み付けている。
「ふん、そいつも私を殺しにきたのか……」
カツカツと背後から歩いてくる化け物。
状況は非常に悪い。化け物の注意は折紙に向いているが肝心の折紙は完全に俺をロックオン、一触即発の膠着状態。気を抜こうものなら即爆発する状態だ。身体中から冷や汗が流れ出て来るのを感じる。チラと士道の方に目をやると彼も彼で冷や汗をかいているらしい。
無音の状態が続く。
「♪——————」
その時、俺の腕の中から軽快な音楽が流れ出した。おそらく士道の携帯だろう。その音が合図だった。
その音とほぼ同時に折紙も化け物も剣を構え俺の方に向かってきた。その移動した衝撃だけで地面のアスファルトが砕け剥がれる。
「ケータイはマナーモードにしとけって……!!」
俺は一瞬遅れ士道を抱きかかえ真上に跳ぶ。
「士道っ!逃がさない……!」
折紙が俺を叩き落とそうと、跳躍しようとするが
「どこを見ている?」
「くっ!!」
化け物の標的はやはり俺では無かったようだ。化け物は走ってきた勢いのまま折紙に剣を振るう。しかし、鳶一も体制を崩すこと無く剣で受け止めた。その剣戟は凄まじい衝撃波を生んだ。周りの瓦礫が吹き飛ぶ。勿論空中にいる俺たちも例外ではない。
「う、うわあああ!!」
「大丈夫だから!」
腕の中の士道にそう言いきかせる。そして、その衝撃波を利用して先程の跳躍の勢いと合わせて更に高く跳ぶ。
ここまで来ればこっちの物だ。この体は何故か飛ぶ能力を持っている。その能力で発生する浮力を足元に一点集中。足場のようなものを形成し、空中を蹴るようにして真横に跳んだ。近くのまだ崩れていないビルの屋上へ着地。それからまた跳躍し、建物の屋上を伝ってその場から逃げる。
しばらく飛び続け、周囲の安全を確認してから適当なビルの屋上に着地する。なんとか2人から離れる事ができた。追ってくる気配もない。
そこに士道を下ろすと、彼は腰が抜けてしまったのか、ヘロヘロとその場に座り込んでしまった。
「……大丈夫か?」
俺はそう尋ねながら手を差し出す。
「あ、ありがとう。」
彼は俺の手を掴んでくれた。そのまま彼を引っ張って立たせる。
「それより、何で俺を……?」
知っている?助けた?何と言おうとしたのかはわからない。ただそう短く呟いた士道の瞳は、先程の化け物に剣を向けられていた時と同じように恐怖、猜疑と困惑、さまざまな負の感情に彩られていた。
「っ、それは……。」
思わずたじろいでしまう。
良いのか?ここで正体を明かして。
実は私は、貴方のよく知る王ノ輪 廻なんです。
怯えないでください。私は貴方に危害を加えるつもりはありません。
怖がらせてごめんなさい。ただ、貴方を助けたいだけなんです。
そんなことを言えば彼はいつもみたいな顔を向けてくれるか?今朝のように「何やってんだ」と呆れた表情で俺を叩いてくれるか?
自分の感情に押し流され、たまらずギュッと目を瞑ってしまう。
俺の姿が醜いのは分かってるんです、でも、頼むからそんな目で俺を見ないで——
「なぁ、一つ頼んでいいか?」
再び話しかけられた事に驚きながらも、士道の方を見る。
「あっ、ああ……。」
声が震えるのを必死に抑え返答する。
「あの場にもう1人女の子が居なかったか?居たら、その子も助けてやってほしい。あいつは俺の、大切な家族なんだ。」
閉口。複雑な感情が俺を襲う。俺の事を大切だと思ってくれていた。嬉しい?いや、彼が心配してくれているのは俺ではなく、人間の廻なのだ。
そして彼は、俺の正体が廻だとは気付いていないらしい。このまま隠し通せばまだ彼の言う”大切な家族”で居られる。今までと同じように。
わからない。わからない。
「……そいつなら、もう、大丈夫だ。」
まともに回らない思考で何とか絞り出した返答は、欺瞞に満ちた醜いものだった。
「あぁ、良かった……。ありがとう……!!」
士道は心底安心したような表情で、俺にそう言ってきた。
……もうダメだ。このままではこの感情に押し潰されそうだ。俺はたまらず、別れも告げずにビルから飛び降りる。
「なっ!?おい!!」
飛び降りる直前に引き留めようとする声が聞こえたが、俺は聞こえないフリをして、逃げた。
結局俺は、臆病で、嘘つきな、醜い、意気地なしなのだ。
——————————————
玄関を開けると、今朝拾った猫ちゃん達がミーミーと鳴いているのが聞こえた。玄関には琴里ちゃんの靴が置いてある。どうやら先に帰って来ていたらしい。無事で良かった。
琴里ちゃんの部屋まで行くが、ドアは空いていない。おそらく寝ているのかもしれない。そっとしておく事にした。どうせ、今の俺じゃ会っても上手く話せないだろうし。
俺はそのままの足で猫達を置いてある場所へ行く。猫達の前でしゃがみ込むと、一匹が寄ってきたのでその子を持ち上げる。
「……あれで、良かったのかな。」
「にゃー」
つい、持ち上げた猫に話しかけてしまう。猫は意外と抵抗もせずこちらを見ている。
今までもずっと騙してきたのに、いざあの姿で彼の前に立つと今まで忘れていた罪悪感に押しつぶされそうになってしまった。いや、忘れてなどいない。ずっと忘れたフリをしていただけだ。
そんな自分に自己嫌悪感が湧いてくる。
おかしいな。
「うぅ……」
「廻!」
突然、背後から声がかけられた。声がした方向を見ると、士道が立っていた。気がつかないうちに帰ってきていたらしい。
「あっ、士道!無事だったんだ!良かったぁ。すごい心配したんだぞ!!」
持っていた猫を下ろし、そう言う。
上手く、何時もの自分を演じる事ができているだろうか。
「ごめん!俺のせいで……」
「本当だよ全く。あんな馬鹿な事して!今回は無事だったから良かったけど、今度は絶対しちゃ駄目だからな!!」
うまく、笑えているだろうか。
「俺、
「へ、へー!そりゃすごいね!」
うまく、だませているだろうか。
「廻もその子に助けられたのか?ともかく、無事で良かった——廻?」
「ど、どうしたの?」
「なんで、泣いてるんだよ?」
「えっ?」
咄嗟に自分の目元に手をやる。そこで初めて自分が涙を流していることに気が付いた。
「あっ、えっと、あはは、士道が無事だったから、嬉し涙だよ!いやー!恥ずかしい恥ずかしい!」
やってしまった。必死に取り繕うが、彼の眼差しは変わらない。きっと彼は、心配してくれているだけなのだろうが、その眼差しが俺を追い詰める。
「……ごめん。今日は色々あって疲れたからもう寝るね。」
「お、おい廻!」
結局、先ほどと同じ様に俺を引き留めようとする声を、聞こえないフリをして逃げる。
俺は、最低だ。
思いつくままに書いてたらめんどくさいメンヘラみたいになってしまった廻ちゃんくんちゃん……。でもぼくこう言う娘が好きなの。(性癖)
もっと悩ませたいけど描写力がないから、こんな感じになっちゃいました。