TS転生しちゃったけど、俺は絶対にメス堕ちしない。 作:棺祀師
士道が村雨先生に連れて行かれたあの日から、彼は部屋に引きこもりがちになった。いや、前からその気配はあったけど、前にも増してっていうか……。とにかく様子がおかしい。かく言う今も彼は部屋に篭っていて、先生と何かあったのかと心配になる。
「失礼しま〜〜す」
という訳で、彼には悪いが彼の部屋を覗いて様子を見てみようと思う。小声で申し訳程度に断りを入れ、ゆっくりと扉を開けていく。顔を通せるほどの隙間を開け、そこに顔を突っ込んで中の様子を伺う。薄暗い部屋の中で彼は、何やらモニターを見ているようだった。モニターの中央には美少女キャラが映し出され、画面下部4分の1ほどに四角いメッセージウィンドウ。
この特徴的な構図はもしかして、エ、
『お兄ちゃん、私、宇宙に行きたいの。』
画面の中のキャラクターは顔を赤らめつつそう台詞を放った。内容的には、SF妹モノだろうか……って、ずっと部屋にこもってやってた事ってコレだったのか!!
俺はなんとも言えない感情のまま扉を閉める。まあ確かに?士道もお年頃だしそういうことに興味が出るのは当然ですもんね?
「……心配して損したじゃんか!!」
俺が勝手に一人で心配していただけなのだが、やっぱりやっていた事がやっていた事なだけに不服に感じてしまう。うぅ、そんでもって少しショックだ。今なら我が子の性事情を目の当たりにしてしまった親の気持ちがわかる気がする。
俺は頭を抱えながらリビングへと向かう。そうだ、別に何か問題があるわけじゃないんだからそんな気にすることじゃなかったよな! そう自分を納得させつつも、やはりどこかモヤっとしてしまう。
リビングに入ったところで、ソファーの向こう側から白いリボンがピョコリと飛び出ているのが見えた。琴里ちゃんだ。彼女はいつものようにアメを舐めながらテレビを観ていた。
「こ、琴里ちゃん。」
「わっ!なに!?」
突然話しかけたためびっくりさせてしまった。しかし大事な事だから許してほしい。
「しばらくは士道の部屋に入っちゃだめだからね。絶対に。」
「え?わ、わかった。」
もし万が一琴里ちゃんがアレを目撃してしまったら教育上非常によろしくない。五河家の為にもここで釘を刺しておく。彼女も疑問符を浮かべながらだがわかってくれた。この家の風紀は守られたのだ。ふふん。
「あ、そういえばお姉ちゃんさ、」
「んー?」
「この前の空間震の時ってどうやって帰ってきたの?」
「え、」
その質問に、思考が止まる。忘れようと、隠そうとしていたコトに突然触れられ、背中にじんわりと嫌な寒気が広がっていく。
「あ、え、な、なんでそんな事聞くの?」
上手く言葉を紡げずしどろもどろになる。まずい、動揺してはならない。落ち着け、落ち着け。
彼女も俺の変化に気がついているのか少し首を傾けたが、それ以上は特に気にする様子も無く会話を続けた。
「だって心配だったんだもん。お兄ちゃんも、お姉ちゃんも巻き込まれたって言ってたし。」
大丈夫、士道に言った事と同じことを言えば良いだけだ。
「あ、えっと、実は知らない人に助けられたんだよ。あはは、心配かけてごめんね!」
「え〜!そんな人がいたのか!ならちゃんとお礼言わないとね!」
「そ、そうだね、また会ったらちゃんとお礼しないとね!……ごめん、ちょっとお手洗いに行ってくるね。」
とりあえずここは戦略的撤退を試みる。あまり彼女の前にいてもボロを出すだけだろう。
俺はトイレに入るとすぐ鍵をかけ、便座に座り込み頭を抱える。
ここ数日、悩む機会が一気に増えた気がする。今まで皆を騙してきた分の皺寄せが今になって来てるのだろうか。
「……ごめんなさい」
口をついて出たのは、誰に向けたものかもわからない謝罪だった。
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「知らない誰かに助けられた、ねぇ……。」
廻が後にしたリビング内で、チュッパチャプスを口の中で転がしながら独り言ちる。
あの日、彼女が士道を追って空間震の現場に向かった所は確認できていた。しかし、そこから先の動向が完全に不明なのだ。
空間震の影響で観測できなくなったうちに消え、そして彼女の代わりと言わんばかりのタイミングであの精霊が現れた。
知らない人に助けられたと彼女は言っていた。士道も同様に、廻は現れた精霊によって救われたと報告していた。
その精霊は数秒で人一人を移動させる能力を有しているのか、それとも……。
彼女に精霊のような霊力反応は無い筈だが、実際にそうと思わせるだけの要素も揃ってしまっている。
先程の不自然な反応といい、何かを隠しているのは間違い無いだろう。
しかし、今問い詰める訳にもいかない。精霊に関する情報は極秘のものだ。仮に私の推測が間違っていた場合、彼女に精霊の情報を与えこの騒動に巻き込むことになる。まだ不確定要素が多い中でそんなリスクは犯せない。
「これはもうちょっと探る必要がありそうね。」
お久しぶりです……(2回目)