デュエル・マスターズ Mythology 作:モノクロらいおん
「――で、すごすご逃げ帰って来たんだ?」
「黙れ。焼くぞ」
「怖いなぁ。でも、そのための神話も、もうあなたの手にはないじゃないか」
「物理的に焼く」
「……怖いなぁ」
彼は、女の言葉を透かすように、軽薄な笑みを浮かべる。
彼女からの報告は、《太陽神話》への敗北と、《焦土神話》の喪失。
それ自体は、彼にとってはどうでもよかった。相手が無知で愚かな少年であろうと、切った張ったの勝負の世界、
それに、別段女の持つ神話の力は、彼にとっては大きな意味を成さない。確かにそれは興味と関心の対象だが、だからといって彼は個々のカードに大きく固執はしない。
少なくとも、今は。
そして現時点というタイミングにおいては、それらに執着するよりも、優先することがある。
「じゃ、僕もちょっと出かけようかな」
「お前が動くのか? 珍しいこともあるものだな」
「まあ、ね。色んな縁が繋がってしまったのさ」
「縁……? お前らしくもない物言いだ」
「僕もそう思うよ。だけどまあ、種は蒔いておくべきだと思うんだ。そこには燦々と照りつける太陽があり、萌芽の恵みがある。であれば、育みを促す智と水が必要でしょうに」
「お前はなにを言ってるんだ?」
「あなたには関係の無いことだよ。ただ本当に、縁がある、というだけなのさ」
軽薄な笑みは、不気味に翳る。
女はそれを不審そうに見遣るが、彼を引き留めない。
「……まあ、お前のことだ。黒い腹積もりがあるのだろう」
「ははは! 酷い物言いだ。信用されてないねぇ、僕。いや、これはある意味、信頼なのかな?」
「不愉快だから黙れ」
「はい」
などと口では言うものの、彼は怪しい笑みを絶やさない。
そんな彼に女は苛立ち、蹴り出す。
「痛いなぁ……ま、あなたの言う通り僕にも考えがあってね。決して根拠のないオカルティズムや義理人情なんかではないとは約束しましょう。ただ縁があったから気付いた、気付いたから思考が及んだ。これは、ただそれだけのことなのです」
「お前がそうやって念押しすると、逆に怪しいんだが」
「そうは言いますがね。そもそも、僕らの狙いって全然関係ないんです。だから手を取り合えるし、貸し借りは作るけど干渉はしないって取り決めでしょう?」
「……ちっ。そうだったな」
「わかってくれてなにより。それでは僕も出立しようか」
彼は言葉を尽しながらも多くを語らず、真理を綴りながらも真実を示さない。
賢者の叡智を持ちながら、内なるものをすべて秘した愚者として、自分という駒を進める。
賢も愚も、飲み込んで――
……969文字? 少な! 1000も行かないじゃん! と思ったら、1000文字届かないと更新できないので無理やり書き足しました。
それでもこんなに少ない文字数は初めてですが、区切りの問題でこうするしかない。