デュエル・マスターズ Mythology   作:モノクロらいおん

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 今更過ぎるけど、本作品はオリカ中心に話が回るし、デッキ構築や対戦パートもそれを真ん中に置いた上で進めるから、リアリティあるデュエマを望む人の期待には応えられないかもです。


2-4「戦場の太陽 Ⅳ」

焦土神話 フォートレシーズ・マルス 火文明 (12)

神話クリーチャー:メソロギィ/ヒューマノイド/ビートジョッキー 16000

■神話化―自分のヒューマノイドまたはビートジョッキーを含む火のクリーチャー1体以上の上に置く。

■神話降臨[火]

■神々供犠[火]

■神々調和[火]

CD6:このクリーチャーが攻撃する時、相手のパワー4000以下のクリーチャーをすべて破壊する。

CD9:このクリーチャーが攻撃する時、相手のマナゾーンからカードを3枚選び、持ち主の墓地に置く。

CD12:このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーの下にあるカードをすべて山札に戻してシャッフルしてもよい。こうして戻したカードが3枚以上なら、このターン自分のクリーチャーがブレイクする相手のシールドは、手札に加える代わりに持ち主の墓地に置く。

■T・ブレイカー

 

 

 

 

 

 灼熱の鎧に、爆炎の兜。

 腰には大剣を、背には大槍を。

 そして、そのほかの全身のあらゆる箇所と、その周囲に浮遊する、無数の重火器。

 軍神。成程、その武具に兵器の数々は、戦をするに相応しい装備だ。軍神と呼ぶことは間違いないのかもしれない。

 けれど、これはそんな見てくれの問題ではない。

 その男の“存在”そのものが、あまりにも圧倒的すぎた。

 神という言葉ですら足りない。それは、一柱の神の生涯すべてが詰まった、あらゆる武勇の具現そのもの。

 

 即ち――“神話”。

 

 夕陽は、その凄まじいまでの存在感に、言葉を失っていた。

 そしてその間にも、女は軍神と共に、武器を構える。

 敵対者を――夕陽を殺すための、武器を。

 

「あたしの手札が一枚、よってマスターG・G・G(ゴゴゴ ガンガン ギャラクシー)発動! 《“轟轟轟”ブランド》を召喚!」

「っ……!」

「一枚ドローし、これを捨てることで《ボルシャック・NEX》を破壊!」

 

 盤面も崩れつつある。

 1ターンでクリーチャーが二体も処理された。相手には特大の切り札(フィニッシャー)

 トリガーに賭けて逆転を狙う。夕陽には、それしかなかった。

 

「S・トリガーがあれば、反撃できるとでも思っているのか?」

「!」

 

 女は、見透かしたように鋭い言葉を夕陽に突き刺す。

 もはや発言の一つ一つ、一挙手一投足すべてが、殺意に溢れていた。

 

「お前の惰弱な希望など、《焦土神話》の前では塵芥と同じ。雑兵以下の死体となり果てるがいい」

 

 それが合図だった。

 軍神が――動き出す。

 

「《マルス》で攻撃! その時、神々調和(コンセンテス・ディ)、発動!」

 

 その時、軍神――《焦土神話》は、剣を振り抜いた。

 炎が巻き上がり、戦場を薙ぎ払う。

 

「CD4、相手のパワー4000以下のクリーチャーをすべて破壊する!」

 

 剣の一振りは、めらめらと大地が炎上し、燃え広がる。

 戦場に弱者は必要ない。軍神は、戦場に弱者が立つことをなによりも嫌う。

 故に、戦場の掟に従い、軍神は弱き者を容赦なく焼き殺す。

 

「っ……だが、《ルピア・ラピア》は破壊される代わりにマナに送られる! そして、マナからドラゴンを回収――」

「させるものか。CD9、相手のマナゾーンのカードを三枚、墓地へ叩き落とす!」

「なっ、マナもか!?」

 

 剣を収めると、次は背中の大槍をふたつ、掴み取った。

 それを投げ放つと、大槍は夕陽目掛けて飛来する。

 

「っ……!?」

 

 果たして大槍は、夕陽には当たらなかった。

 しかし、夕陽の足下――マナゾーンに突き刺さり、その場を燃やす。

 火を放ち、焼き焦がし、刺して、砕いて、蹂躙する。

 

「最後だ、CD12! 《マルス》の下のカードをすべて墓地に送る!」

 

 ――すべての砲門が開いた。

 砲弾が放たれる。銃弾が放たれる。爆弾が放たれる。

 光線が放たれる。電撃が放たれる。火炎が放たれる。

 白煙も黒煙も笑い合って共に噴き上がり、蒸気が狂乱の叫びを上げて歓喜し、熱は自惚れに溺れて戦場を縦横無尽に駆け回る。

 至る所から戦火が上がる。破壊と破壊と破壊。殺戮に殺戮を重ねた殺戮。蹂躙の先に至る蹂躙。

 すべてが収まった時、この戦場は確実に焦土と化す。

 そうだと断言できる。それほどに、苛烈で凄烈な砲撃と爆撃だった。

 

「このターン、あたしのクリーチャーがブレイクするシールドはすべて焼却される――さぁ、この戦場と共に燃え尽き、焦土と化すがいい!」

 

 いつの間にか、《焦土神話》は、戦車に騎乗していた。

 四頭の神馬に引かれ、目にも止まらぬ速度で、絶え間ない己の砲弾の雨の中、戦火を潜り、戦場を駆け抜ける。

 そして、二本の槍と、一振りの剣で、夕陽のシールドを――焼き切った。

 

「っ、あ、ぐ……あぁ……っ!」

 

 破壊的な熱風が襲いかかる。盾はもはや、盾としての機能を果たしていない。

 あまりの熱に喉が焼けて、まともに声すら出せず、嗚咽のような醜い声が漏れるだけ。

 シールドは溶けてしまい、余波の炎があたりに散る。

 勿論、それだけでは終わらない。

 ここは戦場。兵隊は、軍神だけではないのだ。

 

「《“轟轟轟”ブランド》でWブレイク! 《マルス》の能力で、そのシールドも焼却する!」

 

 兵士は隊列を為して強襲する。

 さらに二枚、盾が打ち砕かれ、燃え上がった。

 燃え尽きる盾。S・トリガーなど使えるはずもない。

 身を守る五枚の盾も、逆転の芽を残す罠も、すべて灰のように燃え果ててしまった。

 

「とどめだ――《エナジー・チュリス》!」

 

 終わりは呆気なく、つまらない。

 足軽の槍の一突きで、雑兵の剣の一振りで、人は容易く絶命する。

 たかが小鼠と言えども、規律ありきこの戦争においては、その歯を突き立てられるだけで死に至るだろう。

 小さな疵は即死。その一撃は、心臓をナイフで抉られたに等しい。

 如何に矮小な兵であろうと、殺すのは簡単だ。ただ、食い破ればいい。攻撃を、当てればいい。

 それだけで死ぬのだ。

 

「……っ、ま、だ、だ……!」

 

 そう――攻撃が、当たれば、の話だ。

 

 

 

「革命0トリガー! 《ボルシャック・ドギラゴン》!」

 

 

 

 夕陽は手札から一枚、カードを投げ放つ。

 マナを吸うことなく、炎をまき散らしながら、その一枚は宙を舞う。

 

「山札の一番上を捲って、《ボルシャック・NEX》をバトルゾーンへ!」

 

 天を翔ける焔に続き、新たな命の火が灯る。

 火の鳥を呼び集める装甲纏いし龍――その龍は、進化する。

 同じ原初の名を冠する、革命の龍へと。

 

「《NEX》を《ボルシャック・ドギラゴン》に進化! そして、能力発動!」

 

 《NEX》があらゆる世界線を飛び超え、進化した革命龍、《ボルシャック・ドギラゴン》。

 革命の《ボルシャック》は拳を握り締めると、その鉄拳を地を這う小鼠へと叩き付けた。

 

「《エナジー・チュリス》とバトル! 破壊だ!」

「ちっ……取り零したか」

「さらに《NEX》の能力で《コッコ・ルピア》をバトルゾーンへ!」

 

 ――生き残った。

 激しく、荒ぶる爆撃の中、夕陽は生き残ったのだ。

 あまりの灼熱に、眼も、喉も、全身が干からび、焼け付くようだが、それでもまだ自分は立っている。

 

「エンド時、《マルス》は破壊される……が、《エナジー・チュリス》のセイバーで、代わりにこいつを破壊する」

 

 ――だが、ただそれだけだ。

 生きている、だけだ。

 

「僕の、ターン……」

 

 《焦土神話》は、命を狩り残した。

 敵将を仕留め損なった。

 だが、それがなんだというのだろう。

 これは奴らにとっては戦争。この場は戦場。

 一度では殺せぬのなら、二度目で殺せばいい。

 反乱、逆襲、返報。そういうことも、あるだろう。

 しかし、それでも、だからなんだと、と奴らは一蹴する。

 反撃が怖いというのなら、反撃できないほどに蹂躙すればいいだけ。

 そして事実、夕陽は――蹂躙された。

 

(マナが、三枚……)

 

 手が震える。少ない手札を取りこぼしそうになる。

 《焦土神話》は、あらゆるリソースを焼き払った。

 クリーチャーが全滅するだけなら、まだよかった。

 だが奴は、クリーチャーを呼ぶためのマナを、焼き落とした。

 さらに盾を、反撃のための手札さえも、焼き払った。

 手札は少なく、マナも不十分。このターンにチャージしたところで、4マナにしかならない。

 たった4マナで、勝てるのか。

 あの、軍神に――

 

「…………」

 

 今の手札に逆転の手はない。幸いにもバトルゾーンにクリーチャーは残ったが、これでもワンチャンスに届くかどうか。

 守りには入れない。かといって、攻めに転じるにも厳しい。

 《焦土神話》――これこそが、かの神話がそう呼ばれる所以。

 かの神話が駆け抜けた戦場は、一切合切が蹂躙され、鏖殺される。草木の一本さえも残さず燃え果てる。

 戦場のすべてを“焦土”へと変貌させるからこそ、奴は《焦土神話》なのだ。

 

「兵站も、補給線も絶った。もはやお前に生路はなく、降伏も死だ。最後まで足掻いて――死ね」

 

 慈悲も、温情も、あるわけがない。

 ここは戦場。冷徹と非情の空間。

 前に進めなくなったのならば、待つのは死だ。

 

(なんで……なんだって、こんなことに……!)

 

 行き場のない、怒りのようなものが込み上げる。

 しかしそれもすぐに虚しくなる。

 なにも、どうすることもできない。

 太陽はただ沈み行くのみ。夕刻の陽は潰え、夜の闇が帳を降ろす――

 

「ドロー……」

 

 ――はずだった。

 

「! このカードは……!」

 

 太陽は、まだ沈んでいなかった。

 夕焼けの陽であろうと、中天と宵闇の狭間にあろうと、中途半端な輝きであろうと。

 それが太陽であることに変わりはない。

 それは、最後の一瞬まで、輝き続ける。

 

(このカードがあれば……でも、マナが足りない……いや)

 

 いつの間にかあった、あの一枚。

 どう使うのかも、どのような力があるのかも、わからない。

 しかし、このカードがあの軍神と類するものであるならば、あの女の言葉が手掛かりになるはずだ。

 

(神話……そういえば、あいつも……)

 

 

 

 ――神話降臨。神話が現世に降る時だ。捧げた供物に導かれよ、我が焦土の神話。

 

 

 

「神話……降臨……」

 

 捧げた供物に導かれる。

 供物。神に供える、生贄。

 その導きによって、神話は降臨する。

 夕陽は、それをジッと見据える。

 縋るように、願うように。

 太陽を信仰する、民草のように。

 

「お前は……僕を、助けてくれるのか……?」

 

 答えはない。

 けれど、少しだけ、指先が暖かい。

 そんな気がした。

 

「……情けない話でごめん。けど頼む。僕を――助けてくれ」

 

 ――赤い泡沫が、ふたつ。

 それと共に、赤い輝きが放たれる。革命なりし龍と、小さな火の鳥を巻き込んで、嵐の如く焔が渦巻く。

 膨張する炎。竜巻の如き嵐風。そして、焼けるほどに輝かしい陽光。

 それは神聖で、誰もが願う奇跡の煌めきだ。

 

「進化……いや」

 

 これは進化に非ず。

 これは進化ならざる神話の再現。

 故に、これは――

 

「――神話化!」

 

 供物(クリーチャー)と、巨大な(マナ)が、混ざり合う。

 炎の中で、その魂は受肉する。

 これなるは、大空と陽光の火を灯した神話なり。

 

 

 

 かの神話は、奇跡の太陽神。

 神々よ、調和せよ――

 

 

 

「――《太陽神話 サンライズ・アポロン》!」




 元々のメソロギィを知っている人からすれば、マルスの種族が変わっててビックリするでしょうね。元はヒューマノイドにボルケーノ・ドラゴンだったけど、こいつにドラゴン要素なんて微塵もないし、軍神で戦車に乗るならジョッキーだろ、みたいなノリでジョッキーになりました。アーマード・ドラゴンならまだよかったんだけどね。というかボルケーノ・ドラゴンはむしろ、アポロンっぽいよな……
 ちなみにこれを最初に投稿した時点では《轟轟轟》は殿堂入りしていなかったので当然のように現れていますが、殿堂入りした今から見ると、めちゃくちゃ上ブレムーブですねこれ。
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