デュエル・マスターズ Mythology 作:モノクロらいおん
この話、分割前はたった18000字しかなかったのですが、分割するだけで五話になるっていうのはなかなかおっかないですね。こんな短い話なら、一話に纏めた方が後から読み返す時にも楽なんじゃねーかという気もするのですがどうでしょう? そもそも読み返す想定をする方が変かな。
太陽神話 サンライズ・アポロン 火文明 (12)
神話クリーチャー:メソロギィ/ファイアー・バード/アーマード・ドラゴン 15000
■神話化―自分のファイアー・バードまたはアーマード・ドラゴンを含む火のクリーチャー1体以上の上に置く。
■神話降臨[火]
■神々供犠[火]
■神々調和[火]
CD6:自分のファイアー・バード、ドラゴンはすべて「スピードアタッカー」「パワーアタッカー+5000」を得て、アンタップされているクリーチャーを攻撃できる。
CD9:このクリーチャーが攻撃する時、またはバトルに勝った時、自分の山札の上から5枚を見る。その中からファイアー・バードまたはドラゴンを1体を選び、バトルゾーンに出してもよい。残りを山札に加えてシャッフルする。
CD12:このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーの下にあるカードをすべて山札に戻してシャッフルしてもよい。こうして戻したカードが3枚以上なら、このクリーチャーはこの攻撃の終わりにアンタップし、次の自分のターンの初めまで、パワー+15000され、「ワールド・ブレイカー」を得て、相手がこのクリーチャーを選ぶ時、または相手のカードの効果でバトルゾーンを離れた時、相手は自身のマナゾーンにあるカードをすべて持ち主の墓地に置く。
■T・ブレイカー
その炎は、ただ激しいだけではない。ただ荒ぶるだけではない。ただの、破壊のためだけの火ではない。
燃え上がる両翼で天を翔け、燃え立つその身で輝きを放つ。
すべてを照らす光、等しく命の火を灯す焔。
それは、あらゆる信仰の頂点にして、奇跡の具現。遙か遠くに存在する、万人の願望そのものたる神話。
即ち――《太陽神話》
すべての命を導く輝きそのものが、現世へと顕現した。
「《太陽神話》……!? 引いていたのか……!」
女は、明らかに動揺を見せていた。
戦況を覆しかねない“神話”の顕現に。
そしてなにより、その威光に。
彼女は、屈しかけていた。
「行け――《アポロン》!」
夕陽にはなにもわからない。
この神話という存在がなんなのか。クリーチャーなのか、そうでないのか。
どうして召喚できたのかも。どのような能力を持ち、それをどのように使えば、勝利をもぎ取れるのかも。
なにもかもがわからなかったが、しかし。
ただ一言、告げるだけで良かった。
それだけで、太陽は天地すべての命あるものを、その陽光が届く場所にある万物を、導いてくれる。
《太陽神話》は、燃え盛る両翼を羽ばたかせ、戦場を、大空を翔ける。
それは正しく光の速度。一瞬の焔が陽炎となっては消え、大風を巻き起こす。
そして《太陽神話》は供物を、己が魂をも燃やし、我が身を一つの太陽として、敵陣の要塞を――貫いた。
「っ、ぐ、うぅぅ……っ!」
女を守る盾は、一瞬ですべてが蒸発した――が、そこまで。
この時点ではまだ、女は生きている。身を守るものこそ失ったが、まだ死んではいない。
と、思った矢先。
「! 増援か……!」
かの神話が座する天空こそが、《太陽神話》の領域。そしてその領域を舞うものは皆、《太陽神話》に寄り添い天翔けるもの。
即ち《太陽神話》の臣下なり。
臣下の龍と鳥は、女へと一直線に下降する。
「舐めるな……! S・トリガー! 《ドンドン吸い込むナウ》! 《ゼンメツー・スクラッパー》!」
龍も鳥も、最後の砦に秘された罠に絡め取られ、墜落する。
――まさか神話同士がぶつかり合うとはな。滅多にない体験だが、いい経験だ。
女は冷や汗を拭いながらも、笑みを浮かべていた。
《太陽神話》の威光。圧倒的な輝きと、統率力。瞬間的な破壊力、速度。それはあらゆる信仰の頂点に立つ、奇跡の具現と言うに相応しい力であった。
無論、その力のすべてを目にしたわけではないが、しかし状況次第では、完膚なきまでに叩き伏せられていたであろう。神話の格としては、《焦土神話》よりも上かもしれないと、女は考えた。
だがこの場は、戦場なのだ。
なれば、戦場に生きる軍神こそが、より強大な力を得るのは必然だ。戦場において、軍神――《焦土神話》に勝る神話など、存在しない。
存在しない――はずだ。
はずだった。
なの、だが。
「もう一度だ――《アポロン》!」
「なに……っ!?」
再び、《太陽神話》は、空を翔ける。
太陽はいまだ沈まず。
たとえ沈めど、再び上る。
暁があれば、夕陽がある。
しかし夕刻を過ぎたあとに、朝日が昇る。
戦場であろうと関係ない。そこに信じる者が、陽光を願う者がいる限り。
太陽はいつだって、昇り続ける。
「とどめだ――!」
《太陽神話》は、燃え滾る拳を構えて、女へと突貫する。
灼熱の鉄拳。あらゆる命を一瞬で消し炭に、打ち砕く、太陽の一撃。
勝敗は決した。太陽は苛烈な輝きで以て、無情な炎を振り下ろす。
太陽の神話は、焦土に立つ軍神を――飲み込んだ。
◆ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ ◇
「…………」
呆然と、立っていた。
夕陽――そして、女も。
「どういう、ことだ……?」
《太陽神話》の拳は、確実に打ち砕いた――《焦土神話》を。
女へと向けられた鉄拳は、間に割って入った《焦土神話》が受け止め、そこで軍神は消えた。
「あいつが……庇った、のか……?」
少なくとも夕陽には、そう見えた。
その時だ。
「っ? うわっ」
一枚のカードが、手元へとやって来る。
《焦土神話 フォートレシーズ・マルス》。
そのカードには、そのような名が記されていた。
「これって、お前の……ど、どういうことだ?」
「……勝者が戦利品を手に入れるのは、当然の権利だ。そしてこの“ゲーム”では、神話を奪い合う結果こそが、義務となる」
「戦利品……?」
つまりこのカードは、《焦土神話》は、夕陽が勝ち取った、ということだろうか。
まだ頭が追いつかず、ぼぅっとする夕陽をよそに、女は踵を返した。
「な……お、おい!」
「あたしはもう、惨めな敗残兵だ……生き残ってしまったがな」
女は重苦しい声で言った。
そこにはもう、敵意も、殺意も、冷徹で燃えるような意志もない。
しかし、死んだ声ではなかった。
「生きてれば、次もあるだろう……お前もな」
「え?」
「“ゲーム”に関わったんだ。お前も、無関係とは言えまい」
「それって、どういう……!」
もっと詳しく問い詰めたかったが、気付けば女は闇夜へと消えていた。
夕陽の手は、虚空を掴む。そこにはなにもない。
けれどもう片方の手には、戦利品。そして――
「――《太陽神話》、か」
悪い冗談だ。悪夢だ。そう思いたかったが、このリアリティ、現実感。とても今の自分の環境を、夢だと断じることはできなかった。
と、その時、携帯が鳴る。
今までの非現実的で非日常なそれから逃れたかったので、縋るように通話ボタンを押した。相手は、妹だった。
『おにーちゃーん! いつになったら帰ってくるのさー! ご飯が冷めるでしょーが!』
「……あぁ、悪い」
『しっかりしてよね。ところで、ちゃんと買えた? 牛乳とワサビ』
「買えた……けど、なくなった」
『なくなった!?』
「その、なんだ……暴走トラックに潰された」
『はぁ!? トラックに潰されたってなに!? お兄ちゃんはだいじょーぶなの?』
「悪い。僕も混乱してるんだ。切るぞ」
『え? あ、ちょっと――』
――うん。やっぱり現実だな。
認めたくはないが、どうもそうらしい。
もはや、理屈とか感情だとか、平等だとか利益だとか、善だとか悪だとか、そんな中途半端さは意味を成さない。
なにもわからない。わけのわからない状況だが、これがなにか恐ろしく、そして人智を超えたような凄まじい出来事だということだけは、理解できた。
「さて……どうしたもんか」
気持ち的には、相当に切羽詰まっている。けれども夕陽は煮え切らない。中途半端で決めきれない。
それでもいつかは決断しなければならないだろう。なにかはわからないが、そんな予感があった。
ともかく帰るか、と夕陽は頭の中の思索を振り払い、重い身体を引きずる。
――明日の朝食はない。きっと、太陽を拝むだけだ。
そんな憂鬱な想像をしながら、夕陽は太陽の沈んだ空の下で、家路につくのだった。
この日、空城夕陽の平凡で中途半端な“物語”は、“神話”へと変わり行く――
今回で序章の第二話は終了。ま、第二話と言っても、プロローグというか、導入みたいなものなのですが。
ひとまずちょっとした区切り。序章はもう少し続きます。ま、世界観の解説のようなものです。神話だって、最初に天地開闢の様子を描き、世界観を描写します。
では、誤字脱字、感想、その他なにかありましたら、遠慮なくどうぞ。