私の妹がこんなに天使なわけがない   作:電猫

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「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」と「私に天使が舞い降りた!」のクロスオーバー作品です。


01 二人のひなた

 ガラガラと少し耳障りな音と軽く引っかかるような感触のある今時は珍しい横開きの玄関の扉を私は開いた。

 また油を刺さないとダメかしらね。私はそんなことを考えながら『ただいま』という言葉を紡ぎなら玄関をくぐり抜ける。

 『おかえりなさい』という返事は返ってこない。どうやら妹達は近くにいないようである。

 かわりに居間の方から賑やかな声が私の耳に届いた。

 

「あら、珍しい」

 

 靴を脱いで上がろうとした私の目の前には、見慣れない三足の靴がある。どうやらお客様がいるらしい。靴の大きさから判断するに末っ子の珠希でなく、次女の日向に友人が来ているのだろう。

 妹が家に友人を連れて来るのは珍しい。我が家は正直裕福な家庭では無いので、この家に友達を招くことはあまり無い。

 別に貧富差に卑屈になって招かないという訳では無い。ただ単純に遊ぶ道具が少ないからだ。私が好んで買っているゲームは女の子向けでなく、前に日向が友人とやった時に受けが悪かったそうだ。

 それから日向は家に人を招くより、友人の家へ遊びに行くことがほとんどであった。

 なので今回あの子が我が家に友達を連れて来るのは久しぶりの出来事なのである。

 

「我が魔眼で眷属の友たる資格の持ち主か、見極めてあげないとね」

 

 あの子の友人はどんな子達だろうか?

 キャンキャン噛み付いて来る丸顔の美少女にぐるぐる眼鏡の口元を緩ませたノッポさん、そして彼女らを見て困った顔をしているお兄さん。

 自分の友人達を思い浮かべ微笑ましい気持ちになりながら、私は騒がしい居間に向かい歩き出した。

 

「みゃー姉はサイコーにスゲーんだぞ! なあ、のあ、はな」

「うん、凄いのは凄いんだけど、あんまりひなたちゃんはハードル上げない方がいいと思うんだけど…まあ大変なのミャーさんだし、いいか」

「お姉さんが凄いのは認める。方向性はあれだけど…あとお菓子作りは本当に凄い。じゅるっ」

「うちのねーさまだって、すごいもん」

「ルリ姉も凄いよ。まあ星野の姉ちゃんみたいに綺麗で優しくて料理も上手くて、さらに格闘技の達人なんて完璧人間じゃあないけどね」

 

 これは入っていいものかしら? 話し全てを聞き取れた訳ではないけれど、私に関しての話ようね?

 私は襖の前で立ち止まり、部屋に入るか逡巡する。

 それにしても、珠希ならともかく日向も私を凄いと思っていてくれてたなんて…ふふっ、今日の夕食は奮発してあげないといけないかしら。

 私の頬に笑みがこぼれる。

 何がいいかしらね? 最近作っていないもの…ハンバーグにしようかしら。

 私が夕飯の献立を考えるいる間も彼女達の話は続いていく。

 

「ふふん、それだけじゃないぞ! みゃー姉は洋服もつくれんだぞ!」

「ミャーさんのそれは本当に凄いわよね。あたしに合うような可愛い服を沢山作ってくれるし、まあ花ちゃん用がメインなんだけどね…」

「凄いけど、それは迷惑」

「ねえさまだって、ふく、つくれるもん」

「へー、五更ちゃんのお姉さんも服作れんだー。どんなの?」

「ルリ姉もたしかに服を自分で作ってるよ。あーー凄い変なのだけどね」

「変とはなによ。我が堕天の衣を馬鹿にすると地獄(ゲヘナ)に突き落とすわよ!!!」

 

 しまった!? 妹の発言に思わず飛び出してしまった。

 私の登場に固まってしまう人々。

 ふっ、邪眼による刻への干渉、過ぎた力はやはり不幸を呼んでしまうのね。

 ………さて、現実逃避はこの辺りにして、この空気をどうしようかしら? とりあえず日向の夕食からおかず一品抜きは決定として。

 私がそんなことを考え、額にたらりと汗をかいていると、唯一刻の呪縛に囚われていない末妹がにっこり笑顔でとてとてと寄ってくる。

 

「ねーさま、おかえりー♪」

「えぇ、ただいま」

 

 私は抱きついてきた珠希の頭を撫でながら応えた。

 桐乃じゃないけれど、この子が天使に見えるわね。

 さて、もう一人の妹は…

 

「あはは、おかえり、瑠璃姉」

 

 …引き攣った笑顔ね。

 まったくこの子ときたら…はぁ、まあ今回は許してあげますか。部屋に入る前の発言でプラマイゼロね。

 私は日向の様子に嘆息を吐いた。

 あと、珠希にはハンバーグを大きくしてあげないといけないわね。

 

「だ、誰だ。お前!」

「いやいや、どう見ても五更ちゃんのお姉さんでしょ」

「お、おじゃしています」

 

 あら、固まっていた彼女達の呪縛も溶けてしまったのね。なら挨拶しないといけないわね。

 私は挙動不審な様子の少女たちへ向き直る。

 

「いらっしゃい、我が館へようこそ。当館主人として歓迎するわ。私は千葉の堕天聖『五更瑠璃! 瑠璃だから、ルリ姉だよっ!!』ちょ、ちょっと、日向!?」

 

 私は右手を胸に添え、意気揚々と歓迎の言葉を発するも、妹が大きな声で私の発言を遮った。

 日向、私の名乗り上げを妨害するなんてどういうつもり!?

 

「ああ、お姉さんはそういう…」

「こっちのお姉さんも…」

「あちゃー、間に合わなかったか。まあよく考えたら、今さら取り繕ったってしょうがないよね、ルリ姉だし」

 

 私の名乗り上げ(妹の妨害が入ったものだけど)それを聞いた少女達がこちらを半眼に閉じた目で見つめてくる。

 ふんっ、所詮凡俗な人間の反応など気にならないわ。

 ただし貴女は別よ! 日向、よほど極小ハンバーグが食べたいようね。

 私が彼女達の反応をいつもの事と流そうとした時、三人の内の見るからに元気が有り余っていそうな娘が寄って来た。

 

「おおっ! よくわからなかったけど、カッコいいな!!」

 

 私の正面に立った少女は目をキラキラさせながら見上げてくる。

 あら、見所のある娘もいるじゃない。

 

「ねぇさま、かっこいい」

 

 珠希もありがとう。

 私は抱きついている珠希の頭を右手で撫でながら、左手で髪をかきあげ、目の前の少女に告げる。

 

「ふふっ、今の良さが分かるなんて、貴女只者では無いわね。真名を名乗りなさい記憶してあげるわ」

「なんだ? 名前を言えばいいのか? あたしは星野ひなた、11才だぞ!」

 

 少女は星野ひなたと言うらしい。ひなた?

 

「貴女もひなたというのね。妹と同じね」

「おう、そうだぞ! 二人合わせて、ひなひなだぞ! ひなでいいぞ!」

 

 私の言葉に少女が元気良く答える。

 ひなひな…彼女の言葉に妹の姿をしたヒヨコと目の前の少女型のヒヨコがピヨピヨと鳴いている姿が思い浮かぶ。

 

「プッ、いえ、ごめんなさい。そうね、ひなって言うのは、日向と紛らわしいから星野さんと呼ばせていただくわ」

「むーー-、まあ、別にいいけどな」

 

 思わず吹き出してしまった私の失礼な対応にも、太陽が似合いそうな見事なニッコリ笑顔で告げてくる少女。

 彼女のショートカットが良く似合う元気いっぱいな姿に

 私は…

 この娘はきっとクラスの中心にいそうな陽属性ね。陰に生きる私とは住む世界が違う、同学年なら話す機会もまず無いでしょうねと思う。

 だけど私じゃなくて、物怖じしない日向とは相性が良さそうだなとも思った。

 

「家の日向をよろしくね」

「おう、まかせとけ!」

 

 胸をドンと叩く彼女の姿に私は目を細めた。

 

「ちょ、ちょっと、ひなたちゃんだけに任せないで下さい。あたし達も五更ちゃんの友人ですから!」

「うん、わたし達も五更の友達」

 

 私達の様子を見て、他の二人(モブ)が話し掛けてきた。

 普段であれば、私を呆れた様な目で見るような人間は無視するところなのだけど、彼女達は妹の友人なのだし、ここは私が大人になりましょうか。

 えっ、大人なら素の自分を出さずにいればいいだろうって、それは私の矜持が許さないわ。

 

「そう…先程も紹介されたけれど、あの子の姉の瑠璃よ。呼び方も瑠璃でいいわ」

 

 上手く出来ているか分からないが、私は微笑みを浮かべた。

 

「あたしは姫坂乃愛です。あたしの可愛いさほどじゃあないにしても、ルリさんも綺麗ですね! よろしくお願いします。乃愛って呼んでください」

「……よろしく」

 

 私は褒められた気が全くしない褒め言葉を受け取り困惑する。

 この少女は自分の可愛いさに絶対の自信を持っているようね。

 確かに服装も流行に合わせつつ、自分合う物を選んでいるようで、明るい髪と良く似合っているわね。

 初対面なのに屈託無い明るい様子からファッションと相まって、私の友人のあのスイーツを連想させる。

 いえ、いくら初めての挨拶でナルシストぶりを発揮する娘でも、丸顔の妹狂信者(桐乃)と一緒にするのは可哀想ね。

 

「私は白咲花です。えっと、花でお願いします。よろしくお願いします、瑠璃お姉さん。」

 

 もう一人の少女は癖のないストレートの綺麗な黒髪に真面目そうな雰囲気。

 将来的にはギャルゲーのメインヒロインを飾っていそうな美少女………比較対象にギャルゲーを出すなんて、京介だけじゃなくて、いつの間に私も毒されてるわね。

 その場にいなくても、この影響力。くっ、なんて始末に悪い女なのかしら。

 私は自分が桐乃の影響を受けているという事実に、どうしてか緩んでしまう頬を抑える。

 気を取り直して、私の知り合いでは……そうね、前に一度会った桐乃の友人の娘に似てい(そいつ(新垣あやせ)はヤンデレだから一緒にするのは失礼)……何かメタ的な電波を受けた気がするわ。

 

「? お姉さん大丈夫ですか?」

 

 黙り込んでしまった私を心配そうに少女、いえ花さんが声を掛けてくる。

 ふふっ、優しい娘なのね。

 

「ごめんなさい。大丈夫よ。二人も日向の事をよろしくね」

「うん、まかせて!」

「はい」

 

 この娘達なら大丈夫そうね。

 さてと、それじゃあ日向の友人の見極めも終わりましたし、退散しましょうか。

 

「歓待はしないけれど、飽きるまでゆっくり滞在して行くといいわ」

 

 私は自分の部屋(サンクチュアリ)へ舞い戻るべく踵を返す。

 

「ちょっと待って、瑠璃姉!」

 

 邪魔者は去ろうというのに、日向がそれを止めてくる。

 まだ何かあるのかしら?

 あっ、そうね! 珠希の事ね。

 

「珠希、一緒に行きましょう」

「はい、ねぇさま」

 

 私は珠希の手を掴んだ。ギュッと握り返してくる小さな掌は保護欲を掻き立てられる。

 せっかく友人が来ているのだから、妹の面倒は私が見ないといけないわね。

 私が帰って来るまで末っ子の世話してくれ、遊びにも行かない日向にはいつも感謝をしているのだ。口にすると調子に乗りそうだから言わないけれど。

 

「違う、違う、珠希の件じゃなくて、ルリ姉に用があるの!」

「私に?」

「そうだぞ! るり姉に用があるんだ!」

「はい、今回の訪問の目的はルリさんなんです」

「実はそうなんです」

「ようーー♪」

 

 日向だけで無く、三人娘とおまけで珠希まで引き止めてきた。

 何事かしら? だけど、とりあえず…

 

「私に用事が有るのは分かったわ。だけど先に着替えをして来ても構わないかしら?」

 

 制服のままでも構わないが、何をするか分からないなら装備は整えておきたい。

 

「あっ、うん、さっきの服の件も見てもらった方が分かりやすいし…了解だよルリ姉」

 

 妹の許可も得たので、私は部屋へと足を向けた。

 それにしても、私への用とは何なのかしら?




完結してから出す予定が、アニメ最終回までに間に合わず、急遽投稿。

とりあえず、まず書きたかったこと【ひなひな】

他にいくつかのシーンが脳裏に浮かんだら、いつの間にか書いていた…何を言っているのかわからねーと思うが、気が付いたら投稿してたんだ。恐ろしいもの(わたてんの面白さ)の片鱗を 味わったぜ。
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