私の妹がこんなに天使なわけがない   作:電猫

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02 戦慄とお願い

 部屋に戻った私は、制服から堕天の衣へと着替える。

 やはり我が闇の衣装を纏うと心が落ち着く。これを纏う事により世俗の柵から解き放たれた気がするわ。

 そういえば衣装といえば、花さんだったかしら? あの子のトレーナーの中央に描かれたアフロの髭の生物、あれはいったい…最近の小学生ではあんな物が流行っているのかしら? まあたしかにインパクトがあって妙に頭に残ってしまうのだけれど。

 …まあ余計な思考のお遊びはこの辺にして、あの子達の元へと戻るとしましょうか。

 

「お待たせしたわね」

 

 再び居間へと舞い戻った私を待っていたのは、静寂と驚嘆の瞳。

 ふふっ、我が力の前にひれ伏しなさい!!

 こら、日向、呆れた目で私を見つめないの!

 ドヤ顔で登場した私に妹がジト目を向けてきた。

 

「す、すごい、ルリさん!? なにその衣装! ちょーかわいい!! ミャーさんのにも全然負けてない。ねえねえ、その服、余分にないの? 着てみたい。それ着たら絶対にあたし、かわいい! 間違いない!」

 

 意外な反応ね。

 先程は私を呆れた感じで見ていた乃愛さんが、掌を返したような凄い喰い付きを見せた。

 

「うそっ!? まさかの高評価!?」

 

 彼女の反応に妹が驚嘆の声を上げる。

 日向、それはどういう意味かしら? やっぱり一度よく話しをする必要がありそうね。

 それにしても予備ねえ。もちろん着替えは必要だからあるのだけれど…

 いえ、ダメだわ。これは私専用に作られた闇の祝福を受けた代物。常人がこの呪いに耐えられる筈がないわ。

 それに丈の合わない衣装を着せるなんて一介の作り手としても認められないわね。

 私が断りの返事をしようとするも、その前に花さんが不安そうな様子で尋ねてきた。

 

「ルリお姉さんは、私にそれを無理矢理着せたり、しないですよね?」

 

 ? どうしたらその様な発想が出てくるのかしら?

 

「貴女が何を言いたいのか理解出来ないけれど。これは私専用の物だから、貴女達に分け与えるつもりは無いわよ」

 

 私の断り返事に好対照な反応が返ってきた。

 

「えーーー、着てみたい〜。それでかわいくなったあたしを写真に撮りたい。ねっ、ルリさん、お願い、一回でいいから」

「ほっ、こっちのお姉さんはまともで良かった」

 

 胸を撫で下ろしている花さんの反応も気になるけれど、まずは乃亜さんに諦めて貰わないといけないわね。

 

「ダメよ」

「う〜〜〜〜〜」

 

 私の取り付く間も無い返答に不満そうな唸り声をだす少女。

 

「せっかく凄い服があるのに着れないなんて〜」

「むーー、みゃー姉の服の方が凄いぞ」

「ミャーさんの作る服は確かに凄いんだけど、ルリさんの服も凄いの! ここまで意匠が綺麗な凄いゴスロリ衣装が目の前にあるのに〜」

 

 乃亜さんが悔しそうに地団駄を踏んでいる。

 何を言われても服を着せるつもりは無いけれど、私の作品をここまで褒められるのは嬉しいわね。

 

「よくわかんねーけど、そのゴス? をみゃー姉に頼んで作って貰えばいーんじゃねーか?」

「はっ、それよ!? さすがひなたちゃん! ミャーさんに作って貰えばいいのよね♪」

「…それだと、私の分もあるよね」

「えっと、あははっ」

「おう、間違いないな」

「…………」

「あははーーー、今度ミャーさんの作るお菓子、あたしの分を分けてあげるから、お願い、はなちゃん」

「わかった。私からもお姉さんにお願いする!」

「頼んだあたしが言うのも何だけど、はなちゃん、そんなにチョロくていいの!?」

 

 目の前で行われる彼女たちの会話で納得出来ない事がある。

 私の作る衣装…いえ、我が力で生み出される衣が、一般市民に簡単に作成されるということは信じられない。

 私がこれを作るのに、どれほどの手間暇を掛けたと思っているの!

 そんな私の心境が言葉として漏れる。

 

「みゃー姉さんとやらが、どの様な造り手かは知らないけれど、我が堕天の衣を真似られるとは思えないわね。余り無理な願望は抱かない方が良いわよ」

 

 私の発言に即座に星野さんが反応する。

 

「そんなことねーぞ! みゃー姉なら絶対に作れるぞ!」

 

 彼女の姉への信頼感は凄いわね。みゃー姉さんが同じ姉として少し羨ましいわね。

 でも、盲信と現実は違う事を教えてあげないといけないわね。

 私は再度、彼女へ忠告すべき為に口を開い…

 

「そうですよ。ミャーさんならきっと大丈夫ですよ」

「うん、お姉さんなら作ってしまうと思う」

 

 私が話し始める前に、星野さんだけでなく、乃愛さんと花さんからも作れるという発言が飛び出す。

 

「ルリ姉、前にノアに写真を見せて貰ったけど、星野のねーちゃんの作る服って凄かったよ。もしかしたらルリ姉の服も作れるかも」

 

 さらに私の衣装作成の様子を知っている日向までも可能と判断してきた。

 くっ、皆にそこまで言われるのであれば、頭から否定するわけにはいかないわね。

 でも、言葉では納得できないわ! そうね、写真があるのなら拝見してみないといけないかしら。

 

「乃愛さん、もしよければ、そのみゃー姉さんが作った服の写真を見せて貰えないかしら」

 

 私の要望に彼女は快く応えた。

 

「あ、いいですよ。私が可愛く映っている写真をみんなに見てもらいたいですし!」

「感謝するわ」

 

 私が乃愛さんから携帯を受け取ろうとしたところ、突然彼女何かに気が付いたという表情をして、手渡そうとしていたそれを両手で胸にかき抱いた。

 

「…それは、なんのつもりかしら?」

 

 彼女の不審な行動に私は冷たい視線を送る。

 しかし私の視線など意に介さずに乃愛さんが言葉を発した。

 

「ふっふ~んっ、写真を見せるのに、ルリさんにお願いがあります!」

 

 なるほどタダで見せるつもりは無いと言う事ね。

 ……先程の発言と矛盾していないかしら?

 

「お願いね。叶えてあげるかは分からないけれど、言ってみなさい」

「はい。写真を見せる代わりに、ルリさんの服の写真を撮らせて下さい」

 

 そういう事ね。

 たしかにみゃー姉さん…いまさらだけど私の姉というわけでもない、あった事もない人を姉さんと呼ぶのもおかしいわね。みやさんに変更しましょう。

 そのみやさんに服を作る能力があったとしてもモデルが無いと作ることは出来ないわね。

 別に写真の一枚や二枚かまわないわ。

 まあ私の闇満ちる我が聖域(ダークネスレギオン)の能力よって写真に姿が映るとは限らないけれどね。

 

「うわぁー、ルリ姉のあの顔、絶対に変な事を考えてるよ」

「へん、かお? ねぇさま、いつもきれいだよ?」

「あははっ、珠希はいい子ね」

「うん、えへへっ」

 

 なにやらあちらで麗しき姉妹劇場が開いているようだけれど、今はこちらに集中しましょう。

 あとで私も珠希の頭を撫でてあげないといけないわね。

 

「等価交換という訳ね。いいわ、それは魔術師としてそれは当然の要求だもの」

「魔術師? え、えっと、写真を撮っても、いいってことですよね?」

「ええ、でも先に写真を見せて貰ってもいいかしら?」

 

 おかしいわね? fateはもう一般常識の筈よね?

 まあいいわ。私は彼女から携帯を受け取り、中身を確認する。

 ……………これは、たしか…ホワイトリリーだったかしら?

 私は余り詳しくないけれど、桐乃がメルルほどじゃないにしても熱く語っていたわね。そういう事だからホワイトリリーの細かいところまでは覚えていないけれど、これは間違いなく出来がいいわね。細部までこだわりを感じるわ。

 次は…メイド服にチア衣装、猫耳パーカーに肉球グローブ!?

 くっ、いったい幾つの衣装を用意しているというの! しかもどれも違和感を抱かせないような丁寧な作りこみ。

 たしかに、このみやさんなら我が堕天の衣と同様の代物を作れるかもしれないわね。

 私はゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「ありがとう。ずいぶん沢山の写真があったけれど…み、みやさんはどれくらいの頻度で衣装を作っているのかしら?」

 

 私は乃愛さんに携帯を返しながら、質問をする。

 写真を見ているときに気が付いたのだが、どの写真も乃愛さんの成長の様子が無いのだ。

 彼女は日向と同じ小学5年生。つまり2年や3年の月日が流れれば、明らかに成長の様子がカメラに記録されなければおかしい。しかし、いろいろな衣装を着ている彼女の写真に成長の跡が見られない。これは、この1年いえ、半年以内に取られた写真という式が成り立つわ。

 それはつまり衣装が半年以内に何着も作られたということ。

 

「え~~と、けっこうすぐに作ってくれてるよね?」

「おう、そうだな。あたしと、はなと、のあの分合わせて、一週間くらい?」

「だいたい週に1回は着せられるから、それ位だと思う」

 

 信じられない。私がこれを作るのには3ヶ月以上の時間を費やしたというのに。

 もちろん簡易的なコスプレ衣装は数時間もあればできるのだけど、私やみやさんが作っている違和感を起こさないような凝った作りの物はそれなりの手間暇と時間をかける必要があるのだ。

 彼女はそれを三人分、しかも週一回のペースで作成しているという。

 作品を作る情熱、それに能力、どちらもS級の力ね。

 まさか近所に二つ名に値する者がいるとは…名づけるなら、そうね神速の創造者(ラピッドクラトゥール)とかどうかしら?

 

「まさか私の領域(テリトリー)で、そんな恐ろしい者が隠れていたなんて…彼女はどんな人物なの?」

 

 私の問い掛けに星野さんが間髪いれず答えた。

 

「みゃー姉はすげーんだぞ!」

「そう、どう凄いのかしら?」

「サイコーにすげーんだ!」

「ええと…具体的には?」

「?」

 

 不思議そうな顔をして首を傾げないで!?

 私の問いかけに純粋な目で見つめ返す星野さん。

 

「…とにかく凄いのね」

「おう、そうだぞ!」

 

 腕を胸の前にくんで、非常に満足そうなところ悪いのだけれど、全くみやさんの人物像が分からないわ。

 というか貴女、さっきは服を作れて凄いとかマシな事を言っていたじゃない! なんで問い掛けたら、余計に情報量が減るのよ!?

 

「あーー、ルリ姉。星野ちゃんの姉ちゃんは、さっき見てた服を作れて、優しくて、美人で、料理上手なうえに、格闘技の達人らしいよ」

 

 私と星野さんのあんまりな会話に日向がフォローを入れてくれる。

 なるほど、優しく、美人、料理が上手く……どんな完璧超人よ!?

 

「くっ、そんな漫画のキャラクターの様な人間が実際にいるなんて」

 

 私が知る優秀な人材は…丸顔だけど美少女で、運動神経抜群の陸上部エースながら読者モデル、学校の成績も良く、書いた小説が本になる……あの子も大概ね。

 まあ、桐乃の場合はそれを上回る位に残念な部分も多いのだけれど。

 そうよ残念な部分よ。世の中にそんな完璧な人間がいるはずが…

 

「なにかお姉さんの評判が一人歩きしちゃてる」

「う〜ん、まあ、ミャーさんだし、大丈夫じゃない?」

「なあなあ、のあ、あたし達なにしに五更の家に来たんだっけ?」

「なにって、五更ちゃんのお姉さんを見に来たんでしょ? あっ!?」

「そうだ。お菓子!?」

「あっ、ごめん。ルリ姉に頼んでなかった」

 

 妹達がなにやら話し合っているが、思考の海に囚われた私は一人顎に手を当てて考え込む。

 

「ルリ姉、ルリ姉」

 

 しかし考えがまとまる前に、日向の声が私をそこから浮上させた。

 

「うっ、あ、なにかしら?」

「ルリ姉、お菓子を作って」

「えっ?」

 

 時々、日向の行動が読めない事があるが、今回もそれね。

 

「突然に何を言うのかしら、貴女は?」

 

 何をどうしたら、いきなりお菓子を作ってくれとなるのだろうか?

 別に菓子を作れないわけではない、実際に何度か作って妹達へ振舞った事がある。

 ただ、それは私の思い付きでやっただけであり、妹から頼まれるというのは今回が初めてだ。

 友人が来ているからお菓子が欲しいというのはわかるが、それでも私が作ったものよりも市販の物の方がいいだろうから、やはり私に作ってというのはおかしな話だ。

 

「えっと、さっき話した星野の姉ちゃんって、お菓子作りが凄いって話でさ」

「その完璧超人(みやさん)の話が、なんで私にお菓子を作って欲しいに繋がるのかしら?」

「ええとだから…星野達にルリ姉だって、お菓子作れるんだぞーって流れから…」

「へえー、それで?」

「どっちのお菓子が美味しいかって話に発展しちゃったんだ。てへっ」

「なるほど」

 

 そう、つまり私は知らない内に完璧超人(みやさん)と料理対決をする事になっていたのね。

 

「貴女はなんで、そう、勝手に決めてしまうのかしらね」

「いひゃい、ごみぃんにゃさい、わゆかったでしゅ」

 

 私は妹の頬を抓り上げる。

 

「えっと、迷惑だったのかな?」

「ガーーン、お菓子出てこない!?」

「なんだ? どうして五更は頬つねられてんだ?」

「ねえさま、おこってる?」

 

 私達の様子を見た彼女たちがそれぞれの表情で窺ってくる。

 ………はぁ、勝手に頼まれた約束とはいえ、それを反故にするのも悪いわね。

 それにめったに来ない妹の友人だもの、おもてなしをしてあげる位かまわないか。

 

「仕方ないわね。ホットケーキでいいかしら?」

「やった。さすがルリ姉っ!」

 

 私の言葉に日向が抱き着いてきた。

 やれやれ、生意気なところも多いけど、こういうところは可愛いわね。

 こういうのがギャップ萌えというのかしら?

 

「はいはい、ちゃんと手伝いなさいよ」

「えへへっ、もちろん!」

「ねーさま、たまきもてつだう」

 

 私たちの会話を聞いて、珠希が右手を天に伸ばして宣言する。

 日向と一緒なら、簡単な作業なら任せても大丈夫よね?

 

「そうね。じゃあ、日向と一緒にお願いね」

「うん」

 

 私の言葉ににっこりと微笑む末妹。

 さて、心が和んだのはいいのだけれど、この人数分の材料はあったかしら?

 私はちらりと日向の友人達に視線を送る。

 あっ、目があったわね。

 

「私にも、お手伝いをさせて下さい」

 

 花さんが気合の入った声で宣言をしてきた。

 お客様にはゆっくりしていて貰いたいのだけれど、ここまでやる気を見せている人間を無下には出来ないわね。

 それと、ついいつもの感覚で言ってしまったけれど、友人が来ている日向に手伝いを頼んだのも失敗ね。

 ここはみんなでやった方が良いかしら?

 

「了承よ。貴女の力を借りま…」

「ハナは、大人しく、ゆっくりしてて、あはは」

「はなちゃん、今日も大人しく見ていよ、ねっ!」

「はな、また失敗するぞ」

「みんな、酷いっ!?」

 

 私が言葉を言い終えるまでに、妹を含む三人が彼女の言葉を撥ねつけた。

 ? 彼女に何か問題でもあるのかしら?

 

「う~~~~、あんな小さい子も手伝ってるのに」

 

 あら、大人っぽい娘と思っていたけれど、子供っぽいところもあるのね。見事なふくれっ面だわ。

 

「たまき、ちぃっちゃくないもん」

 

 あらら、こっちの娘までふくれてしまったわね。

 花さんの言葉で拗ねてしまった末妹を私は宥める。

 

「はいはい、珠希は小さくないわよね。私と一緒にホットケーキの材料を探しましょう」

「……はい、ねーさま」

 

 あちらは日向に任せて、私はさっさとホットケーキを作ってしまいましょうか。

 私は珠希の手を握り、冷蔵庫のある台所へ足を向けた。

 

「何があるかしら、これと、これで」

 

 冷蔵庫の中には幸いな事に生クリームがあった。これとバナナを加えたら良い物が出来そうね。

 勝手に決められた勝負といえど、やるなら真剣にやるのが私のスタイルだ。料理上手なみやさんに勝てるかは、難しいけれども、勝負なら勝ちを目指したい。

 勝算は低い、ふふっ、だけど勝ち目が薄い闘いの方が燃えるわよね!

 私は右手に卵、左手に牛乳を持ち、不敵に笑った。

 




感想に高評価ありがとうございます!!
ただただ感謝感謝です。

書きたかった脳裏に浮かんだイメージその2
みゃー姉のコスプレ作成能力に脅威を感じる黒猫。

まあそんな訳で頭に浮かんできた物を書きなぐった自己満小説(オナニー)ですが、読んでもらえるとありがたいです。
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