ダンジョンで友人のお守をするのは間違いだろうか?   作:翠星紗

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倒れたって恥ずかしくない もう一度立ち上がれば

リリとの約束の時間、俺は玄関前で一人静かに待っていた。

一応、ダンジョンに向かうのだから普段の漆黒の和装に愛刀である袖白雪を帯刀し、両手にはヒマワリの花束。彼女が来るのを今か今かと待ち続け……

 

 

「何をしているのですか?」

 

「おぉ…リリっち。今日も可愛く愛らしい! 俺の気持ちをここに詰め込んだので受け取ってくれないか!!」

 

 

とことこと俺の近くに来て、軽く怪しんだ表情でこちらを見ていた。裾がボロボロになっているフード付きのコートを羽織り、自身よりも大きなカバンを背負っている。

そんな彼女に花束を押し付ける。その言葉の通り、彼女の顔にヒマワリの花束をグリグリと……

 

 

「―――邪魔です!!」

 

「んがぁ!? 俺の花束がぁ!!」

 

 

それは綺麗にヒマワリの花束をリリっちが叩き落とす。俺の手から落ちたヒマワリは地面に叩き付けられ茎がペキッと折れ、無数の花弁がその場で舞っていた。その光景を見た俺はその場で膝間づき項垂れる。

 

 

「何なんですか、あなたはいつもいつも! 渡すにしても人の顔に押し付ける必要ないじゃないですか! 少し鼻がムズムズしてますよ!」

 

「えぐ、ひっぐ………」

 

「そこまで泣くことですか!? ほら、早く行きましょうよ」

 

「ぐじゅ……びぇ……」

 

「早く泣き止みなさい!!」

 

 

泣きじゃくる青年を叱りつける少女の姿が朝一のオラリオで見られていた。

 

 

 

 

朝のバカ騒ぎからやっとの事、ダンジョンに潜り始めたミツキとリリ。現在、6階層。

前をミツキが歩き襲ってくるモンスターを倒しては、器用に袖白雪で魔石を弾き出し、それをリリが受け取り鞄に入れていく。

リリも援護用にショートボウガンを装備しているが全く使用していない。する暇がないのだ。

彼の間合いに入るモンスターはたとえ背後だろうと簡単に切り伏せられ、さらにはリリの背後から出てきたモンスターさえ、苦無を投げてすぐさま倒してしまうのだ。

 

 

「カラダはぁこんなにぃクタクタに疲れてるのにぃ~ ココロはぁどうしてぇドキドキが止まらないんだろぉ?」

 

 

それにさっきから聞いたことない歌を口ずさみながらモンスターを倒している。ニコニコと楽しそうにしていることから少し狂気じみた気配をリリは少し感じていた。

そんな彼の姿を見ながらリリは色々と考えてしまう。このダンジョンに入る前、自分のLvを確認してきてそこにあった階層でしか冒険しないといった。

モンスターからでたドロップアイテムを回収している間、彼はリリの周辺を警戒して安全に作業できるようにしてくれていた。まるで、彼がリリのサポーターのように行動するのを見て、彼に聞いた。

 

 

---気にせず、冒険して頂ければいいのに。ミツキ様は甘すぎますよ?

 

---あ? だって、仲間を気遣うのは当たり前だろ。それに一緒に冒険してるんだから楽しくした方がいいじゃん。

 

 

屈託のない笑顔。今までの冒険者とまるで違う、調子が狂う。やりづらい……

 

冒険者なんて―――

 

 

 

 

「リリっち。そろそろ昼飯にするべぇー」

 

「え? お昼?」

 

 

ミツキの声でリリの意識が戻る。ふと、声のする方を見ると行き止まりの先に風呂敷を敷いて座り込んでいる彼の姿が見えた。

ダンジョンの中でそれもセーフティエリアではない所で昼飯、相変わらず常識離れした冒険者である。リリは近付いて、また注意しようとした瞬間、微かにハーブの香りが鼻腔を擽った。

嫌な臭いではない、それどころか心が落ち着くような気がする。

 

ふと、彼の座る横を見ると御香たく小さな器具が置かれていた。リリの視線に気づいたミツキは、それを持ち上げる。

 

 

「これか? 簡易の乾燥させたハーブを焚くためのでな。中のハーブは知り合いの薬師が試供品で作ったモンスターが本能的に嫌がる匂いがする奴なんだと」

 

「そんなアイテム。聞いたことがありません」

 

「そら、お友達特権てやつだよ。それよりご飯にするよぉ」

 

 

そういって、両袖に手を入れてゴソゴソ……

袖から出てきたのは二つのお弁当とお茶。何処にしまっていたのかとミツキを見つめるが気にした様子はない。

おいでおいでと、敷いた風呂敷を今も叩くのでとりあえず隣に座る。ほいっと渡されたお弁当を受け取り、中を確認する。

 

 

卵焼き、香草入りの豚の腸詰。白身魚の焼き物。そして、白いご飯の上には”リリの顔”が様々な食材で作られていた。

 

 

「って、何処のお母さんですか!!」

 

「リリちゃん、夫人のお弁当嫌だった?」

 

「ミラージュ・ツベルクス・キュリー夫人再来です!!」

 

「あ、大丈夫よ。デザートにフルーツの盛り合わせこっちにあるから♪」

 

「お弁当のクオリティ超えてます!! その袖の中身どうなってんですか!? どう見ても許容量超えてますよね!?」

 

「こら! 食事中は静かにしないか!!」

 

「今度は誰ですか!? 夫人の旦那さんですか!!」

 

「執事のセバスチャンです。セバスと及びください、お嬢様」

 

「まさかの執事です!!」

 

 

ハァハァと息を荒げるリリを見て、クスクスと楽しそうに笑うミツキ。そんな彼を見て、怒るのがバカらしくなり手渡されたお弁当を食べることにした。

 

 

「美味いか?」

 

「……美味しいです」

 

「そりゃよかった」

 

 

「……ふん!」

 

「あだ!?」

 

 

なんか悔しいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ダンジョンを出てギルドで換金し今日の成果……3000ヴァリス。

 

 

「っしゃ!! じゃんけん三回勝負で勝った方が2000ヴァリス!!」

 

「急に何言いだすんですか!?」

 

「はい。最初はグー!!」

 

「ちょ!? 急に始めないでください!!」

 

 

結果……

 

 

「……ぐじゅ…えっぐ」

 

「泣くくらいならやらなきゃいいじゃないですか…」

 

 

じゃんけん勝負。0-3でミツキの大負け。

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