ダンジョンで友人のお守をするのは間違いだろうか? 作:翠星紗
ガネーシャとの友情を確認し終え、ベルちんとダンジョンの6階層まで潜りモンスターとの戦闘を繰り返す。モンスターが現れてはベルちんに投げ、また現れてはベルちんに投げ……
「ほらほらベルちん、モンスター1000体ノック始まったばかりだぞぉ~」
「こんな鍛錬頼んでげほぉ!?」
あ、さっき投げたウォーシャドウがベルちんのお腹に当たり苦しそうに蹲った。でも、ここで甘やかしてはベルちんのためにならない。
モンスターの戦闘を経て、彼は強くなるのだから。その為にモンスターたちも協力してくれてるんだもんね。今、振り回しているカエル型のモンスターも涙流してるのは心を鬼にしてるんだよね!
「げほ! ごほっ!! だ、だからこんな鍛錬を 「うらぁ!!」 へ?」
ぱくっ!
「……お?」
投げつけられたウォーシャドウを咽ながらも倒し、少し足取りがおぼつかないベルちん。こちらを向いたのを確認してから振り回しているフロッグ・シューターを投げつけたのだが、対処しきれなかったみたいで頭から腰辺りまでパクっと食べられてしまった。
食べられながらも残った二本足で立っているから大丈夫なのかと思っていたら、徐々に飲み込まれる個所が侵食していく。
あれ? 膝くらいまで食われてね?
「おおおおぉ、ちょいまてぇえええ!?」
慌ててカエルからベルちんを助け出しました。
◇
なんとか、ベルちんを助けたのは良かったもののカエルの体液みたいなヌラヌラが体中に纏わりついており正直近寄りたくないです、はい。
「誰のせいでこうなったと思ってるのさ!?」
「対処しきれなかったベルちんのせいだろ。人に擦り付けるのよくない」
「僕はあんな方法で教えて欲しかったんじゃないよ」
「鍛錬だの、特訓だの、調教だの、練習だの、やることは一緒だ」
「調教は違うよね、絶対!」
「分かったから、ヌラヌラの状態で詰め寄るな。ほれ、タオル」
顔を近づけてきたせいで俺の服にベルちんのヌラヌラがかかっちまったじゃねぇか。
ゴソゴソと袖を探り大きめのタオルを顔に押し付けてやる。カエルの潰れたような声がベルちんから聞こえたが、文句を言うことなく俺の手から受け取り汚れた個所を拭いていく。
にしても、モンスター78体しかできなかったとは情けない。まだまだ半熟英雄だな。
「で、おふざけはここまでにするとして………。戦い方なんて別に我流でも良いんだよ。ベルちんは素早く動いて相手を翻弄し手数で攻める攻撃が向いてると思う。けど、周りの状況が確りと把握できてない。目の前の一体しか見えてないんだよ。だから、ウォーシャドウを倒すのに精いっぱいでカエルに丸のみにされるんだよ。気づくことが
出来てたら、倒すか避けるかの行動ができただろ?」
「……ミツキってしっかりと見てたんだね」
「喧嘩を売ってるのはこの口でちゅか~?」
「いふぁいぃいッ!!」
折角、懇切マジメに教えてやったのにバカにしたようなことを返しやがってベルちんめ。ぎゅーッ!!と、頬を引っぱり数秒遊んでやる。
少し赤くなり始めたからしょうがなく手を離すと腫れあがっていたが自業自得だ、バカ野郎。
「でだ……この後、これで目隠ししながらモンスターと戦ってもらう」
「手ぬぐい? これじゃ何も見えないって!」
「だからだろ? 眼だけで頼ろうとするな、音や気配で判断しろ。俺がそばで見といてやる、怪我はするが死にはしないさ」
「で、でも…」
「はいはい、ベルちんは黙って後ろ向く!」
文句を言おうとするベルちんを180度回転させて手ぬぐいでベルちんの目を塞ぐ。
簡単に取れない様に少しつよめにキュっと絞って完成。”できたぞ”と声を掛け肩を叩くと少しよろめいたが態勢を直し、辺りを確認するように両手を前に伸ばしてフラフラと歩いている。
俺は少し離れてそれを見学。
「とりあえず、周囲を確認することだ。モンスターが現れたら最初は教えてやるから、頑張れ」
「う、うん!!」
あらま。素直な子ですこと。
とりあえず、モンスターが出て来るまで酒でも飲みながら気長に待つことにしますかな。
袖から酒の入ったヒョウタンを取り出すと、ふたを開けてベルちんを肴にグビグビ飲みだすミツキであった。
そして、数十分後―――
「あ……ぐはっ―――」
「ングング……そんな簡単に行くわけないよ。気長に頑張れ」
何度も壁にぶつかり、躓いたり。モンスターには襲われ、ズタボロになって倒れたベルちん。
まるでぼろ雑巾みたいになっちゃったと、思いながら酒を飲み続けるミツキであった。