ダンジョンで友人のお守をするのは間違いだろうか?   作:翠星紗

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青春は青い春と書きます。

ベートを外に投げ飛ばし、道で倒れ込むワンコの下に向かう。せき込み立ち上がろうとする瞬間、また頭を掴み地面へキッス♪

 

 

「あーなぁーたのぉキスを~数えましょ~♪ ひとつぅ~ひぃとぉつぅを~♪」

 

「ぶべ!? ごは!? おごぉ!?!?」

 

 

さぁリズムに合わせてワンコと地面にキスをさせていく。これぞリズム天国だ。

一曲歌い終わるころにはさすがのワンコも静かになっていたので、服をはぎ取り近くの冒険者へプレゼント。

パンツ一丁になったワンコ。懐に合った筆を取り出し、一筆したためる。思いの丈をぶつけた俺はかなり満足していた。

でもワンコの顔は赤く染まっていたので、近くの桶に入ってた水で顔を洗ってあげる。

というか、狼人間よりワンコの方が言いやすいな……あだ名変えてあげよう。

 

 

 

「あら? 不愛想なお顔。これは可愛くお化粧してあげなくちゃ♪」

 

 

そうと決まれば袖をゴソゴソと探り、紅を一つ取り出しては両頬に可愛い丸を書いてあげる。そして、口紅も必要よね。

でもこれだけじゃ誰か分からないから、おでこにワンコって書いといてあげるわね♪

 

 

「さぁ、次は目立つように柱に吊るしてあげて……よいしょっとぉ!!」

 

 

適当な柱を地面に突き刺し、ワンコの足に縄を括り付ける。暴れない様に手は縛るのも重要。

足の方から縄を伸ばして柱に括り付け宙吊りにして、ワンコの一本釣りが完成。周りに散らかっている筆や墨、紅を袖に仕舞いながら芸術作品に見惚れる。

我ながら良い作品を世に生みだしてしまった。

 

 

「自分の才能が恐ろしい……

 

 

あ、ベルちん探そうっと」

 

 

ワンコにあき……じゃなくて、出て行ってしまったベルちんを探すため豊穣の女主人を後にした。

その後、ワンコが数週間塞ぎ込んでいたらしいが……俺の芸術作品が気に入らなかったのかな?

 

 

 

 

ベルちんを追いかけて行ったのは良いが、拠点には帰っていなかった。というより、ヘスティアちゃんまで居ないんだけどどこ行ってんだよ、みんな。

廃協会にある朽ちた長椅子に座りながらベルちんの行きそうなところを考える。

 

ギルド?  いや、今は閉まってる

豊穣の女主人?   戻る勇気なんてないだろう

俺の家?  勝手に入ってたらしばく

 

悔しさ、やりきれない思いをぶつけるのに彼が行きそうなところ……

 

 

「……ダンジョン? マジで? 夜に?  ないわぁー」

 

 

 

でも、ありえそうなことだ。彼の心の丈をぶつけるにはそこしかないだろう。でも、一人でやみくもに向かわれても嬉しくない。なにその青春? 甘酸っぱくないんだけど?

もっと夕方の土手で夕日に向かってバカヤローとか叫んでてよ。夕方じゃなくて夜だけど、土手なんてないけど。

もうちょっと、見ててほっこりしそうなことしといてよ。危なっかしすぎるよ。

 

 

「……愚痴ってても仕方ないよね。今行くよぉーベルちーん」

 

 

重い体を引きずりながら、ベルちんが青春をぶつけてるであろうダンジョンに向かった。

 

 

 

ダンジョンに向かう途中、道すがら冒険者に聞いてみたら白髪の男の子がダンジョンに向かっていったと情報を手に入れてしまった。

本当に行ったんかいと、内心ツッコミを入れながら内部に入り辺りを探索。

現れるモンスターを退治しながら辺りを見ると、切り刻まれたモンスターの死体が落ちていた。魔石も回収されておらず、ただ切り捨てられていた。

完全にあの子だ。モンスターを求めてただただ斬り付けている。え? 青春じゃなくて、ただの切り裂き魔じゃないのこれ? ベルちん・ザ・リッパーの登場じゃない?

どうしようワトソン君。一人で止められるのこれ?

 

そのあとも、狂気のベルちんの痕跡を追い続け今じゃ6階層。少し俺はオコです。

出てくるモンスターなんぞ適当に払っているだけ、黙々と歩いていると金属音が微かに聞こえてくる。これは誰かがモンスターと交戦している証拠だ。

というか、もうベルちんしかいないよね? 俺は音のする方へ近づいていき、一発目何を言ってやろうかと考えていると見えてきた光景に唖然とした。

 

ベルちんいた。確かにいた。

けどね? 数十体のモンスターに囲まれて一人で戦ってるなんて誰が予想するよ?

しかもあのモンスターって全部ウォーシャドーじゃん。人型で陰に潜むモンスター、攻撃方法は手の爪だが伸縮自在であり6階層では強い方だ。

そんなモンスター数十体と戦えているベルちんを見て、成長したなぁ……なんて感じていたがよくよく見ると、体中斬られた跡があり、息も上がってた。

完全に無茶してる。あのバカ、無茶してる。俺は盛大にため息をつくと、袖白雪を抜き取り刃に魔法を込める。

 

 

 

「次の舞・白漣ッ!」

 

 

刀を振る直線状に冷気の刃が飛んでいく。冷気の刃に触れたウォーシャドウは接触面から徐々に凍り付いて動かなくなった。

ベルちんの周りにいるモンスターをこれで氷漬けにして一掃していく。

 

 

 

「はぁはぁ……ミツキ?」

 

 

自身の目の前に白い刃と肌寒い冷気が通り過ぎたかと思うと、目の前のモンスターが奇声を上げながら凍り付いていた。

こんな技を使うのは一人しかいない。次々に飛んでくる冷気の刃を辿れば、そこにはミツキの姿が…

 

 

「うわああ!? あぶな!!」

 

「ちぃっ!! 当たらなんだが……」

 

 

冷気の刃が自分の身体を貫こうと迫っていた。慌てて避けると、何とも残念そうにこちらをみるミツキの姿。

って、なんで僕が狙われなくちゃいけないんだよ!?

 

 

「何するのミツキ!!」

 

「うるさいは青春野郎!! いや、ベルち・ザ・リッパー!!」

 

「なにそのあだ名!? すごください!」

 

「んなことどうでも良いわい! あほベルちん! 夜に一人でダンジョン潜るなんてお前みたいな初心者がやることじゃないんだよ、あほちんが!!」

 

「あだ!?」

 

 

ガツン!!と、殴りつけると痛そうに頭を押さえてはいたが先ほどまでも勢いはなくなり、静かに黙りこくってしまった。

まるで、生徒に説教しているみたいになってため息が漏れてしまう。ガシガシと頭をかいて。未だに白髪をこちらに見せるベルの頭を撫でる。

 

 

「これ以上問い詰めるつもりはない。何を考えてこんなところまで来たのか、俺はお前じゃないから知らん。ただなベル。仲間を不安にさせるような行動をとる奴は一人前の冒険者じゃないぞ?」

 

「……ごめん」

 

「よっしゃ、なら帰るぞ? 俺は眠たくてたまらん」

 

「ねぇ、ミツキ」

 

 

刀を仕舞い軽く体を伸ばし眠気を抑える。トボトボと歩く俺の後ろからベルちんは声を掛けてきた。

振り返ると、とても純真でそれでいて真剣な彼の綺麗な眼差しがそこにはあった。

 

 

「どった、ベルちん?」

 

「僕、強くなりたい……」

 

「……そっか」

 

 

俺は笑顔を返してやった。純粋に強さを求める若き冒険者がすごく眩しく見えて、なんだか心が騒いでいた。

 

 

「あっと、ベルちんベルちん。これ飲んどけ」

 

「わっと! これは?」

 

「グミタイプのポーションだよ。噛んで飲めばハイポーションと同じ効果を持ち、リンゴ風味のその味は癖になる。ひとよんでアップルグミだ」

 

「そ、そんなのあるの!?」

 

「あぁ、試作品なんだが貰いもんでな? 疲れてるベルちんには必要だろ」

 

「ありがとう、ミツキ。それじゃ……」

 

 

渡された赤色のグミを口に入れ噛んで呑み込むベルちん。ゴクっとグミがベルちんの喉を通る。

 

 

「どうだ、ベルちん?」

 

「えーーと、なんだか効いて……る、よお―――な?」

 

 

喋るベルちんに強烈な睡魔が遅い、意識が切れたようにその場で崩れ落ちた。

ミツキがベルちんの口元に手を近づけると、規則正しい寝息が漏れている。それを確認して、ミツキは眠る彼の左足を持ち、ズルズルと引きずる。

 

 

「ったく。簡単に人を信じるのは悪い癖だよ、ベルちん? 本当に危なっかしい子だねぇ」

 

「Zzz……Zzz…ンゴォ!?」

 

「あ、段差があったか。ごめんね、ベルちん。でもこれも勉強だよ、冒険者としてね?」

 

 

実は勝手な行動をとったベルに対して、まだ怒っていたミツキであった。

そのままズルズルと引きずり、ダンジョンを出て街を通り廃協会に入り奥の扉を抜ける。そこにはヘスティアちゃんが返ってきていた。

ベルちんが居なかったことに心配してたのか、扉が開いた瞬間に飛び切りの笑顔が見えれたがベルちんがズタボロになって引きずられてるのを見て顔面蒼白。面白いロリ巨乳さまだ。

俺に怒鳴りつけてくるヘスティアちゃんに事象を説明すると、落ち着いてくれてベルちんの行動に呆れてる表情を見せていた。

 

 

「全く。ベル君は危なっかしいね」

 

「ま、出来るだけ俺が見といてやるよ」

 

「ありがとうね、ミツキ。けど、睡眠薬で眠らせる必要あったのかい?」

 

「うん? 俺の気晴らしのため」

 

「……はぁ、相変わらずだよミツキは」

 

「けど、ヘスティアちゃんにも朗報だと思うけどね?」

 

「ん? どういうことだい?」

 

「ベルちんをよく見てごらん? ズタボロの上に砂まみれだ。こんな状態で眠らせるには彼も可哀想だろう?」

 

「どの口が言うのさ。けど、そうだね」

 

「俺はもう帰らなくちゃいけないから、ベルちんをお風呂に入れてあげなよ」

 

「へぇ!? ぼ、ボぼのぼの僕がベルきゅんを!?」

 

 

俺の一言で想像したのだろう。無抵抗で意識のないベルちんを生まれたままの素肌にしてヘスティアちゃん自らが彼の身体を洗う光景を。

一瞬にして顔を真っ赤にして頭から煙が出てる。しかし、そんな彼女にも少しの理性があったのか思いとどまって少し冷静になりだした。

 

 

「い、いやいやいや。流石にそれはまずいよ……」

 

「あ、ちなみに薬は明日の昼頃まで切れないよ? これは実証済み」

 

「へ?」

 

「ベルちんには俺が体を洗ってやったとか言っとけばいいんだよ?」

 

「ちょ!」

 

「なに。いつもヘスティアちゃんを心配させて困らせてるんだ。これぐらいのことしても許されるさ」

 

「………ミツキ、君って奴は―――

 

 

本当にいい子だよ!!」

 

 

最高に良い笑顔で握手を交わす二人であった。

ミツキはそそくさと拠点を出て自分の家に帰る。ベルちんの初めてが散らないことを祈りながら。

 

 

 

 

 

 

 

次の日。ヘスティアファミリア拠点内―――

 

 

「神様? どうして、こっちを見てくれないんですか?」

 

「へぇ!? み、見てないぞ!! 僕はベル君のなんて見てないんだからな!!」

 

「はい?」 

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