一度必要無いと切り捨てた物をもう一度手に入れようとする行動は愚かな事なのだろうか。大きく例えるなら、お金に困って育てきれなくなった子供を捨てたりする行動。許された行為では無いのは確かだが、その子供が大きく育った後、もう一度やり直したいと親が迎えに来たら着いて行く?その親の事を許してしまう?
それは捨てられた子供本人が許してしまっても捨てた側の親には少なからず罪悪感が残るし、この行動が異常と考えたりもするだろう。結局事を犯した本人が1番苦しむ。
今の私みたいに。
何処かに置いてきてしまった想い、彼ヘの想いをもう一度と願ってしまう。でもそれは、Roseliaのメンバーにも、彼にも、望んでは居ないはず。Roseliaに全てを賭けろなんで言った本人がこうなんじゃ駄目よね。
耐えてきた。耐えてきたけど、今日の出来事で全てが崩れ落ちそう。だから私の為に忘れて欲しい。でも彼は...
「友希那の事が好きだから」
俺は友希那へ自分の気持ちを伝えた。忘れたくない理由。それは告白同然のものであり、溜め込んでいた想いをぶつけた。
告白したというのに、緊張や、心臓がドキドキすると言ったことは無かった。むしろ決心して、そういう気持ちにはなれなかった。
「え...えぇ?...」
友希那は言葉を失ったかのように呆然としている。
「好きな人との思い出を無かったかのようになんかしたくない」
「なんで...よぉ...」
「一緒に出かけられて楽しかった。手を繋げて嬉しかった。繋いでる時、心臓ドキドキしてた。今日の出来事でもっと友希那の事が好きになった」
俺はずっと考えて思っていた事を全て言う。
「...い...よ」
「これが例えフラれるとしても今日の事は忘れたくない」
「...るいわよ」
「え?」
「ずるいわよ!」
大声で言葉を発する友希那。いつもは聞かない、友希那の大声。それに顔は目を赤くして泣いている。
「慎也を想うようになってからも、昨日も、今日も、ずっと...耐えてきた。独りよがりで...自分の問題だと思って」
「え、えっと...」
俺は友希那の言ってる事がよく分からず頭の中を整理して、そうこうしていると、友希那が抱きついて来た。予想外で急な事であって反応する事も出来ず、友希那に後ろにあるベッドに押し倒されてしまった。
「えっ!?ゆ、友希那!?」
「私も好き..」
「え....」
「私も慎也の事...大好き、ずっとこのままで居たい」
「それって...」
「それでも...ダメ。これが叶ってしまったらメンバーにも慎也にも大きな裏切りになってしまう...」
さっきからずっと頭が追いつかない。好きで...ダメ?どういう意味だ?これってどっちなんだ...
「どうして?」
「全てを捨てた...全てを賭けろと言った。その本人がこうなんて、メンバーにも貴方にも酷いでしょ?」
「......」
「だから...せめて今だけはこうさせて、これからはもう変に関わらないから」
「...嫌に決まってる」
「え...」
俺は友希那の頼みを断る。さっきから友希那が言う頼み事は理不尽が多すぎる。
「付き合っても無い人とこうしては居られない」
「そ、そうよね...私に有益なことしか頼んでない。利用してるようにも見れてしまう。幻滅したでしょ?」
そう言って抱き合っていた体を友希那はゆっくりと上げていく。だが俺は手を伸ばし、友希那の背中に手をまわし、もう一度抱き寄せる。
「キャッ!」
無理に引きすぎたかも知れないけど、特に何処か痛めたようなこともないっぽいのでそのまま話し始める。
「俺の事とかさ、メンバーの事って言う理由で断らないでくれよ」
「え...」
「友希那自信がこの関係を断りたいならそれでいい。でも、メンバーはまだしも、俺にまで気を遣って断ろうとしないでくれよ」
「.......」
「好きな人が自分に、そんな小さな嘘、裏切りしたって幻滅とか、そんなのしない」
「小さなって....」
やっぱり俺も友希那も相手に対する責任にはシビアで小さな間違いも大きく感じてしまうんだろう。
「メンバーの事なんて友希那の方が俺より100倍は詳しい。それでも俺は今まで見てきたRoseliaはそこまで言う集まりじゃなかった」
「......」
そう。俺なんてRoseliaの先の部分しか知らない。彼女達の本心なんて1割も知っているとは言えない。でもやっぱり、1割にも満たない関係でも俺にはそうは見えなかった。
明るくて初めて練習を見に来た俺にも気安く接してくれて、周りをよく気遣えるリサ
生真面目で練習も凄く一生懸命。そこにギャップと言えるような意外な一面を持った氷川さん
元気でRoseliaのムードメーカーで唯一の中学生ドラマーのカッコイイ物好きな宇田川さん
いつもは控えめで大人しい性格だけど、音楽やRoseliaのことになると人一倍努力できる白金さん
一人ひとりそれぞれいい所を持って全員が優しい心を持ったメンバー。
俺は夫々メンバーのいい所を話して言った。
「俺もよく知らないRoseliaの大切なメンバーを勝手に自分が有益になるように言いたい放題言ってるぞ、幻滅したか?」
「....する..わけ無いじゃない」
「だったらその友希那の悩みも小さな事なんじゃないんか?他人の気持ちを考えるのは難しい事かも知れないけど、こう、意外と簡単な事もあるんだよ」
「.......」
「友希那、好きだ、誰よりも。今度は自分の想いだけで答えて欲しい」
友希那の肩を掴んで自分と向き合わさせて、もう一度告白をする。理由とかじゃなくて、今度は正真正銘の告白を。
「えぇ、まだ自分を許しきれてない、だけど私は慎也を信じる。私も...同じ気持ち。大好きよ」
お互いがお互いに自分の気持ちを伝える。ずっと心に閉まっていた気持ち、いつか伝えようとしていた気持ちを、ここで。
「FWFの為にも一人で考えるんじゃなくて貴方と一緒に頑張りたい」
「あぁ、手伝うよRoseliaに、友希那に全てを賭ける」
「ありがとう」
友希那の顔は泣いていた顔とは違い、今は顔を赤くして笑ってくれる。
「友希那....」
「慎也....」
お互いに名前を呼び合い、近かった顔が更に近くなっていく。友希那が目を瞑り、それと同時に俺も目を閉じて
「んっ...」
唇と唇を重ね合わせる。その時間は長いようでとても短く感じた。
「これ以上は両親が帰ってくるかもしれないから」
「あぁ、本当に今日はありがとう」
「お礼は私が言うべきよ」
俺はそのまま玄関に向かい家を出ようとする。
「慎也」
「ん?」
「また明日」
友希那がそう言って笑ってくれる。可愛い、やっぱりずっと一緒に居たい。だからまずは
「また明日」
おーきど博士さん、評価ありがとうございます。