土曜日。ライブ当日
昼過ぎの時計の短針が1を指し始めた頃。今、俺とRoseliaのメンバーはカフェテリアで集合している。ライブ当日だから流石に呼ばれないと思っていたが、メンバーが口を揃えて来てくれと頼まれた。皆と居て、何をすればいいんだ?
一応誘ってもらってるし、遅れないように10分前には集合場所に俺は来ていた。
「こんにちは、上倉さん」
「氷川さん、こんにちは。早いですね」
10分前だと言うのに、氷川さんは集合場所に来た。真面目な印象が強い氷川さんだけど、ここまで早く来るなんて、流石だな。
「それはお互い様です。上倉さんはどうして早く来られたのですか?」
「深い理由は無いよ。待たせたく無かったし、何より初めてだから、ライブ。楽しみで早く来ただけ」
「そうですか、期待以上の演奏をするので楽しみにしてて下さい」
「あぁ、楽しみにしてる」
練習で何度も聴いて来たが、それとはまた違うはず。Roseliaのライブでしか出来ない演奏を聴いてみたい。自分のお陰でなんて思わない。メンバーの個々の練習で上がった実力を是非みたい。
「あ、紗夜と慎也じゃん。やっほー」
「今井さん、こんにちは」
「リサも早いな、いつもこんなものか?」
「アタシはいつもこんなものかな。紗夜の次ってことが何時もだし」
リサって初めて会った時もそうだけど、ギャルっぽさがあるけど結構こういうのしっかりしてるんだよな。皆にも優しく、俺が初めて練習に来た時も気軽に話しかけてくれて、あの時は結構心に余裕が出来たんだよな。
「もう、友希那も来ると思うよ。あ、噂をすれば」
リサの指す指の先には友希那、宇田川さん、白金さんの三人が揃って向かってきていた。
「皆さんこんにちは!」
「こんにちは....」
「待たせて、ごめんなさい」
三人も到着して、Roseliaのメンバープラス1で揃う。
「いえ、時間前なので大丈夫です」
「そう、じゃあ皆、スタジオに向かうわよ、リハーサルの準備しないといけないから」
そうして皆がCiRCLEに向かっていく。俺も向かいたい所何だけど....
「ねぇ、俺はどうすればいいの?」
「それは私達が話を通せば大丈夫よ、リハーサルも来て欲しいから」
「そうなんだ」
友希那達が話してくれるらしく、問題はないらしい。まさかリハーサルまで行けるなんて。
「あ、Roseliaの皆さん!今日はよろしくねー」
「まりなさん、ありがとうございます。」
「うん、それと...君はRoseliaの関係者とか?」
いきなり話を振られたからなんて話せばいいかわからない。関係はあるけど大きな役目はしてないだろうし。
「え、えっと...」
「彼もリハーサルに参加してもらうから、通しても大丈夫よ」
「分かった。それじゃあ、期待してるね」
友希那の気の利いた行動にどうにかなり、俺も通して貰えるようになった。
「友希那、ありがとう」
「別に構わないけど、あれくらい、はいそうです、って言えば良かったのでは無いかしら?」
「す、すまん」
正直なところ大してRoseliaにいい事をしてないと思ったから、自分で関係者ですって言いにくかったんだよな。でも実際、友希那はあぁ言ってくれてるしな。どうなんだろう。
リハーサルも終わり、本番が近づいてくる。
「あー、緊張してきたー。やっぱりライブは何回やっても慣れないよ。りんりんは?」
「私も...かな、頑張ろう、あこちゃん」
夫々が声を掛け合って本番を迎えようとしている。
「それじゃ、俺は席に行ってるから、頑張ってな」
「えぇ、そのつもりよ」
俺は皆に一声掛けて楽屋から出る。
Roseliaのライブ。とうとう始まる。凄い楽しみだ。
席に着き、始まりを待つ。周りには沢山の人が居て居心地はあまり良くない。早くライブを聴き見して忘れたい。
突如ライブハウスの電気が切れて、それと同時に周りの人達が声を上げ始める。
そしてRoseliaのメンバー達が出てきた。
「Roseliaです。早速ですが1曲目、BLACK SHOUT」
掛け声と共に演奏が始まる。練習で何度か聞いた事はある。だけどその音は、まるで初めて聴いたかのような演奏に聴こえる。迫力も全く違う。スタジオではわからない、細かな音が耳の中に響く。
周りは声を出して、盛り上がっているが俺にはそれがする事が出来なかった。
唖然してしまうほど美しく輝いて見えるRoseliaを静かに見ることしか俺は出来なかった。
「次が最後の曲です」
何曲か演奏したのは分かっていたがもう終わってしまうのか?
という気持ちになった。それほど俺は演奏に引き込まれていた。
「最後は新曲です」
そう言い、演奏が始まる。これも聴いたことのある曲、俺が初めてRoseliaに関わった曲だ。聴いていると激しい音の中にあの歌詞も入っていた。
「本当に歌われるなんてな」
適当に書いた俳句の中七の部分が本当に使われていることにやっぱり、驚いてしまう。それでも、最後の最後まで俺は静かに聴いていた。
「ありがとうございました」
歌いきり、演奏し終えたメンバーに俺は目が離せず、ずっと見つめていた。演奏しきったメンバーにも感動をしていたが、俺は、美しく、華麗な姿をした、ボーカル、湊友希那から目を離せないでいた。
ずっと彼女を見つめていると何故だか気持ちが高ぶってしまう。
きっとこれは、Roseliaに対する何かの気持ちがそうさせてるんだろうな....
「皆お疲れ様」
「えぇ、ありがとう」
ライブが終わった後、友希那から楽屋に来て欲しいと言われ俺も楽屋に入った。
「それで、どうしたんだ?わざわざ楽屋にまで呼び出して」
「今日のライブ、今までで一番最高のライブに出来た気がする」
「....」
「それはきっと貴方が来て、Roseliaの為に努力してくれたからだからだと思うの」
俺はただ思ったことを口に出してるだけで、力になれてるなんて思ってもなかった。だからこう、ハッキリ言われるとなんか恥ずかしい。
「ありがとう。これからも、練習に付き合ってくれないかしら?」
「俺なんかが力になれてたのか?」
「えぇ」
友希那も、周りの4人も笑って俺の事をみて頷いてくれる。
「分かった。これからも....よろしく」
少し恥ずかしいけど素直に挨拶をして、俺はまた練習に来ることが許されたのだった。
「「「「「よろしく(おねがいします)」」」」」
にゃおーんさん、評価ありがとうございます。
N-N-Nさん、誤字脱字報告ありがとうございます。