ライブが終わり、僕はCiRCLEの外へ出た。
感想としては、そうだな・・・圧巻だったと言っておこう。
これほどまでに何にかに熱を感じたのは初めてだった、そう思えるほどにRoseliaのライブはすごいと感じた。
後から聞いた話だが彼女たちは高校生だと言う。まさか僕よりも年下だったなんて・・・
それに比べて僕は・・・
どうしても自分と比べてしまう。と、弱気になっていると・・・
「どうだった?Roseliaのライブは、凄かったでしょ!」
月島さんも外に出てきて僕にそう問いかけてくる。いや、仕事はいいのか。
「はい、正直とても感動しました。なんというか・・心に響きましたね」
「うんうん、感想ありがとう。彼女たちにも伝えておくよ」
・・・いや、まったく知らない人からの感想を聞いたところで特に何も感じないと思うが・・・
「とりあえず、今日のところは帰ります。・・・仕事は明日からでいいんですよね?」
「うん明日の朝九時に来てくれればいいから、それじゃあ明日からよろしくね」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
そう言い僕は自宅へと向かった。
帰る途中で昼ご飯が無い事に気づき、コンビニへ寄った。
「いらっしゃいませー」
えらく棒読みだな・・・そう思いつつ弁当が置いてあるコーナーへと足を運ぶ。
今日はしょうが焼き弁当の気分かな・・・あとウーロン茶を・・・
お金が無いわけではないが、これから何が起こるかわからない、無駄な出費はやめておこう。
弁当と飲み物を確保した僕はレジへ向かう。
「~合計で540円になりま~す」
気の抜けた喋り方だなぁ・・・
人のことについてとやかく言うつもりはないが、それにしても特徴的な女の子だったと思う。高校生くらいに見えたからアルバイトをしてる娘かな?そう思いつつコンビニを出る
「可愛い子だったな・・・」
・・・こんなことを言うなんて、彼女は高校生?なんだぞ。僕みたいな男がそんなことを言ったらそれはまるで犯罪者のようではないか。
そう言った時の僕の顔はとても二ヤついていたのだろう、正面にいた女の子がこちらを疑視しながら怯えていた。
「・・・ひっ」
ちょっとまって、なにその反応。
その女の子は黒髪ロングヘアーで見るからにおとなしそうな子だった。
「ちょっと・・・今のは・・・」
「・・・いや・・・近づかないで・・・」
完全に犯罪者を見るような目をしていた彼女は後ろに少しずつのけぞりながら・・・転んだ。
「ちょっ、君、大丈夫かい?」
できるだけ怯えさせないように優しい感じの声音を出しながら手を差し伸べる。
「いや・・さわらないで・・・」
それが裏目に出てしまったのか、彼女をもっと不安にさせてしまったようだ。
「・・・」
さすがに僕もこれ以上はどうしようもないと思い、ただただ突っ立っていた。
「・・・!」
それを好機と思ったのか、彼女は一目散に遠くへ逃げて行った。
「・・・帰るか」
どっと疲れが出てきた。早く家へ帰ろう。
家に帰り着いてからは特にすることもなく、ベッドに横たわりながら今日ライブで見たRoseliaのことを思い出す。
「本当に、すごいよ。全く」
結局、考えることはいつもと同じ。どうしても周りと自分を比較してしまい、どれだけ自分が無能で無駄な人生を送っているか、いつもこればかりが頭の中を駆け巡る。
昔から物事に対して熱意を持ったことが全然なかった。興味を持ったとしても直ぐに飽きてしまう。そんな生活をしていたらいつの間にか学生を終え、社会人になり、会社の犬となっていた。それもすべて、僕自身が何にも熱中せず、自堕落な人生を送ってきているが故のことだった。
「わかっているんだ、僕にも。このままじゃまた同じだ。何か、なにかを変えないと・・・」
そうやって自分を急かして空回りする。いつもと同じ。結局僕は何も変われちゃいない。
何もかもが嫌になり何も考えないようにしていると、いつの間にか僕は深い眠りについていた。
目が覚めた。
時間は・・・午前三時。
なんとも微妙な時間に起きてしまった。だがかなり眠っていたせいか二度寝するような気分でもない。
ゆっくりと身体を起こし、少し夜風に当たろうと外へ出た。
ひんやりとした風が身体を包む。
「まだまだ季節は冬だなぁ」
今は十二月なので当たり前ではあるが。
「月が綺麗だ・・・」
・・・一人で何を言っているんだ僕は。
言って思い出したが、この言葉は遠回しな告白の言葉として使われるらしい。明確には「月が綺麗ですね」であるが、確かこの言葉は夏目漱石に関する逸話だった気がする。
まあ僕の人生にこれっぽっちも関係の無い話なんだけどね。
そう心の中で毒づきながら適当に歩く。飲み物でも買って帰るか。それに身体も冷えてきたし。
結局眠れなかった。まあ変な時間に寝て起きてしまったからしょうがないね。
時計の針は八時半を指している。そろそろ出るか。
手提げバッグに必要なものを詰めて外へ出た。今日も変わらず寒いな。
CiRCLEは家から割と近いので歩いて通勤することにした。他の公共交通機関だと待ち時間とかでもっと遅くなってしまうからね。
それにしても寒い。しかもいつもより風が強いな。
そんなことを考えていると・・・
「・・・あっ」
手提げバッグに無理やり詰め込んだメモ帳が風の勢いで飛んで行ってしまった。えぇ、そんなことある?
まだ間に合う、と思い少し駆け足でメモ帳を追う。
・・・よしっ もう少しで・・・
「あだっ⁉」
肩に衝撃が奔った。
そのまま何かにぶつかった勢いで後ろに倒れてしまう。
「あいたた・・・」
そう言いつつ身体を起こし目を開けると・・・
高校と思われる制服を着た女の子が倒れていた。
「いてて・・・」
そう言いながら女の子は身体を起こす。
「だ、大丈夫⁉」
僕は慌てながら手を差し伸べる。
「だ、大丈夫、です・・・すみません」
彼女はそう言いつつ僕の手をとった。あ、やわらかい。
と、あることに気づいた。
なんかどこかで見たことのある子だな・・・
その子は髪は茶髪のロングウェーブ、さらに軽くメイクをしているようで所謂イマドキのギャルのような外見をしていた。
「・・・そんなにジロジロ見て・・・アタシの顔に何か付いてます?」
「いや、ごめんね、どこかで見覚えのある子だと思って」
「・・・あー それはアタシがバンドのメンバーだからどこかのライブで見覚えがあるとか・・・」
「ライブ・・・? ああ!昨日やってたあの!」
「あ、昨日のライブを見てくれてたんですか?」
なるほど、だから見覚えがあった訳か。
「うん、たまたま縁があって見させてもらうことにしたんだ。とてもよかったよ、興奮した!」
「それは良かったです、えと、アタシはRoseliaのベース担当の今井リサです、またライブ見に来て下さい!」
そう、それが彼女との出会い。きっとこの時から僕は彼女に惹かれていたのだと思う。
文才がねぇ