なぜRoseliaの娘たちがここに?と思ったがどうやら今日はライブへ向けての練習で来たみたいだ。
「凪さん、せっかくだから見に来なよー」
リサがそう言う。とそこにさっきのクール系女子が話に割って入ってきた。
「勝手に話を進めないでください、それにいったい今井さんとはどういう関係なのですか?」
鋭い目をしながら問いただしてくる。その眼光だけで死人が出るのではないだろうか、さすがに失礼か。
だがそれほどにこちらを警戒するような視線をこちらに向けていた。
「そんな大した関係でもないよ、さっき道端でちょっと話しただけさ」
「ちょっとちょっと紗夜ー、そんな警戒しなくていいって」
「今井さん、あなたは警戒心が足りなさすぎるんです。こんなどこの馬の骨ともわからない・・・」
どこの馬の骨て。
「ははは・・・紗夜、さすがにそれは失礼かなーって」
「・・・失礼しました、それに、名乗ってなかったですね、私は氷川紗夜といいます」
「・・・別に気にしてないよ、僕は天ヶ瀬凪、どう呼んでくれても構わないよ」
「天ヶ瀬さんですね、では私たちは練習があるのでこれで」
そう言いRoseliaの五人はスタジオの方に歩いて行ってしまった。
「ごめんねー」
そのリサの言葉を最後に。
「はあ」
つい口からため息が出てしまう。仕事を辞めたばかりなのに疲れてばかりだな。
「じゃあ後はよろしくねー」
そう言いまりなさんはどこかへ行ってしまった。
とりあえず今日の仕事は、まりなさんの代わりにここで受付をするようにとのことだった。今まで現場仕事しかやってこなかったし人と絡むこともあまり無かったので接客は得意ではないのだが、まあやるしかないだろう。
「ちょっとモカ!待ってってば!」
「一番乗り~」
早速新たな客が来た。五人組の団体様である。
これはまた個性的な面々だな・・・赤メッシュ入れてる子とかいるし・・・
それにそのモカと呼ばれた少女、なぜか見覚えがある。
「んー、おにーさん、あたしとどこかで会ったことある~?」
その少女も僕と同じことを思っていたみたいだ。いったいどこで・・・あ、
「君、ここの近所のコンビニで働いてる子だよね、僕も最近そのコンビニに行ったからその時に顔を見かけたんじゃないかな?」
そうだあの時の店員だ。あのマイペースな感じの喋り方と似ている。というか一緒だ。
「なるほどーおにーさん名推理~」
「推理って程でもないよ・・・で、一応僕はここで受付をしているんだ、どういったご用件で?」
接客のやり方なんてわからなかったので、結局いつもどおりの話し方になってしまった。
「わたしたちバンドをやっていて、Afterglowって言います、今日はその練習のために来ました」
赤メッシュの子が簡潔に説明してくれた。なるほど、つまりRoseliaと同じってことか。
「それなら一つ空いてるスタジオがあるのでそこを利用してください」
「はい、ありがとうございます」
そう言いその五人組をスタジオの方へ誘導した。
「凪くーん、先に昼休憩入っていいよー」
戻ってきたまりなさんがそう言ってきた。今まではまともに休憩をとれる職場ではなかったのでそれだけで僕は感動した。休憩とれるって最高。
「はい、では、お先に休憩を頂きます」
「もう、堅いなあ」
とは言っても昼ご飯を食べた後は特にすることもなかったので寝た。
午後も午前と同じで受付をしていたが、なんというか、暇だった。いや、暇に越したことは無いんだけどね。
「凪君、今日はもう上がっていいよ」
何もすることなく時間が過ぎ、上がる時間になったので、まりなさんにそう言われる。それにしてもかなり時間が長く感じた。暇なのはそれはそれで辛いかもしれない。
帰り支度をしていると、スタジオから出てきたリサと目があった。そうかまだいたのかRoselia。
「リサ、もう練習は終わり?」
「だよー、今から今日の反省も含めて外食するんだー、あ、そうだ、凪さんも来る?」
まさか誘われるとは思わなかった。
「いや、部外者の僕が行くわけには行かないよ、それに僕は音楽のことなんて全く分からないし」
「えー、アタシは構わないけど・・・」
「いや、遠慮しとくよ、それに、氷川さん?にまた睨まれたくもないし」
「んー、わかった、それじゃあまた今度誘うから、その時は断らないでよね!」
「わかった、また誘われたら行くよ」
まあ、無いと思うけど。
「約束だよー?」
「うん、約束だね」
約束。そんな薄っぺらい言葉なんて僕は信じちゃいなかった。きっとすぐに忘れて、あれは冗談だったなんて言うんだろう。
そう、この時僕はまだどうしようもなく歪んでいて、リサのことをこれっぽっちもわかっていなかった。
これからどうなるんだろ