元社畜と陽だまりの彼女   作:野兎改二

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すみません、遅くなりました。


第五話

 「おはよー、凪さん」

 

 朝から元気よく挨拶をするリサ。朝から元気だな。今日も僕はCiRCLEでバイトだ。そもそもこれ以外やることなんて無い。

 ちなみに僕は朝に弱いので、返す言葉も素っ気ないものだった。

 

 「ああうん、おはよう」

 

 その反応にリサも疑問を持ったのだろう、なにか戸惑ってる様子だ。

 

 「どうしたの?テンション低いね~、なにかあったの?」

 

 そんな中心配してくる辺り、リサは周りに気を遣えて本当に優しい子だと思う。きっとRoseliaのメンバーからも信頼されていて大事な存在なのだろう。

 

 「いや、朝に弱くてね、素っ気なくてごめんね」

 

 「なるほどねー、いやアタシもそういう日はあるよー?なんか調子悪いっていうか」

 

 いい大人が何回年下の女の子に気を遣わせる気だ、自分でも恥ずかしい。

 

 「そうそう、来週の土曜日、またRoseliaのみんなでライブやるんだけど今度こそ見に来なよー」

 

 そうリサに提案される。できるのなら見たいし、あの時感じた熱をもう一度感じたい。就職してから今まであれほどの熱と興奮を感じたことはなかった。いや、もしかしたら生まれてきてから今まででも一番かもしれない。

 

 「そうだね、時間があったら見に行くよ」

 

 本当は見に行く気満々なのだが無駄に大人ぶって余裕をみせたりする。

 

 「うんうん、絶対来てね!」

 

 リサは眩しいほど明るい笑顔を見せながらそう言った。

 

 ・・・!

 

 なんだろうこの気持ちは、なにか霞がかったような、モヤモヤするような・・・

 

 僕は今まで感じたことのない気持ちを感じていた。だけどそれは今までのような、悪い気分ではなかった。むしろ気分は晴れやかだ。

 

 「うん、善処しよう」

 

 「むー、絶対だって言ってるのに」

 

 僕は感じたことをできる限り顔に出さないように、平静を保ちながら余裕を見せるようにそう言ったがリサはちょっと不満げな顔をしていた。

 

 「おはようございます。今井さん、天ヶ瀬さん」

 

 するとそこに氷川紗夜・・・氷川さんがこちらを睨むような目つきでこちらを見ながら立っていた。

 

 だからなんでそんな敵対視してくるんだ。

 

 

 

 

 

 

 僕は彼女・・・氷川さんが苦手だ。

 

 まあそもそも気弱な僕があんな狼のような子に苦手意識を持たない方がおかしい。

 

 花咲川女子学園の物であろう制服を纏った彼女はツンとした表情でこちらを見つめるが、僕はその視線から逃げるように目を逸らした。

 

 「おはようございます」

 

 そのあとに続くように他のRoseliaのメンバーがCiRCLEに入ってくる。

 

 「おはよう、それにしても今日はみんな学校じゃないの?」

 

 僕はそう尋ねる。こんな朝から練習なんて、まさかサボり・・・?

 

 「なにを言ってるんですか?今日は日曜日で学校は休みです、なので技術向上のため朝から練習をしに来ているんです」

 

 相変わらずツンケンしながらそう言い放つ氷川さん。

 

 「ああ、日曜は休みになるのか、いつもなら普通に仕事だったし全然わからなかったよ」

 

 前の職場だと定休日が平日だったせいか全く予想もできなかった。というか我ながら一年でよくここまで社会の闇に飲みこまれたものである。

 

 「紗夜、リサ、早く行くわよ、時間は待っていてくれないわ」

 

 そう言ったのはRoseliaのボーカル、湊友希那さんだ。正直僕はRoseliaのライブを最初に見たとき、彼女の歌声に心惹かれた。とても力強く、そして透き通るような声で僕の心をあっと言う間に奪い去っていった。初見の僕にここまで言わせるんだ、それだけ音楽に力を入れているのだろう、だからこそきっとそれ以外の時間は惜しいと思っているのかもしれない。

 

 「はい、湊さん、白金さんも宇田川さんも、行きますよ」

 

 「・・・はい・・・」

 

 「はーい」

 

 氷川さんに呼ばれた二人、白金さんと宇田川さんも湊さんを追いかけるようについていく。

 

 ん・・・?

 

 白金さん、と呼ばれた子、どこかで・・・

 

 最近こんなことばっかりだな、と思っていると・・・

 

 「・・・あ、あなたは、あの時の変態さん・・・?」

 

 白金さんも思い出したかのようにそう言った。

 

 「い、いや!アレは誤解なんだって!」

 

 そう、CiRCLEでの面接の後、コンビニを出たときに僕をみて一目散に逃げて行った女の子である。というか前回RoseliaがCiRCLEに来たとき僕も彼女も互いに気づいてなかったのか。

 

 「変態・・・?やはりそうだったのですね、最初から怪しいと思っていました」

 

 そこに氷川さんまで加わる。ちょっと待って。

 

 「だから、誤解なんだって!」

 

 僕は必死に弁明する。詳しく言うとあの時コンビニでみた店員が可愛くてにやけてたところを・・・って、完全に変態じゃん。誤解も何もなかった。とはいえ僕も男だ。そういうこともある。だがそんなことで納得する彼女らではないだろう。どうしたものか・・・

 

 「まあまあ、二人とも落ち着いて、ね?なんの話かは分からないけど凪さんはそんな悪い人じゃないって!変態かどうかはともかく」

 

 そこにリサが助け舟を出してくれた。いやでも変態は否定してください、変態だけど。

 

 「とにかく、もう行くわよ」

 

 付き合ってないとばかりに湊さんは宇田川さんを連れて先へ行ってしまった。

 

 「あ、待ってよ!ねえ 友希那~」

 

 リサも後をついて行ってしまった。まってリサがいないと味方と呼べる存在が・・・

 

 「では、私たちも行きますので、今回は今井さんに免じて不問ということにしておきますが、これからはあまり関わらないでください」

 

 「・・・失礼します・・・」

 

 氷川さんが去り際にそう言い、白金さんは控えめな挨拶をしながら立ち去るように行ってしまった。

 

 どうしてこうなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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